スタンド使いになって騒動の完結を目指す   作:たくヲ

1 / 1
九州のスタンド使い

 西暦2000年8月14日。九州地方。

 

 有名なあの大予言も外れ、「俺は外れると思っていたよ」と自慢げに言う人も減ってきた時期。

 

 普段なら人通りの少ない真昼の小さな駅の前だが、夏休みのお盆と言うこともあり学生や帰省客が多くそれなりのにぎわいを見せていた。

 

 そんな中で、駅の改札を抜け一人の若い男が駅前に姿を現した。

 

「こんなところにぼくの求める題材(ネタ)があるのか?」

 

 『岸辺露伴』。某誌にて『ピンクダークの少年』を連載中の人気漫画家である。

 

 週刊誌である某誌もお盆休みということで発刊されていない。そのタイミングに合わせて岸部露伴はおせっかいな編集者に「九州にでも言ってみたら? 案内役に最近九州で有名な人達に依頼するからさァ」と言われ、いい機会だと思い来てみたのである。

 

(あの編集者、勝手に依頼までしておいて自分は来ないとは、この岸部露伴をなんだと思っているんだ)

 

 聞けば結構さまざまな作品の編集を務めてきたベテランだと言うが、露伴にとってはそんなことは関係はない。むしろ自分の『マンガ』のおかげで稼げているのだから感謝しろ、と思うばかりである。

 

 露伴は、ベテランでも性格や行動次第では敬意を払う対象にはならず、たとえ新人や一般人であっても性格や行動によっては敬意を払う人間である。

 

(ためしに『読んで(・・・)』みたが、ネタになりそうにはなかったからな)

 

 そんな考え事をしながら駅前の柱によりかかっていると、露伴は声をかけられた。

 

「漫画家の岸部露伴先生ですか」

「?」

 

 見ると、薄緑の涼しげなワンピースを着て、黒の長髪でメガネをかけた高校生くらいの女が立っている。

 

(なぜだ?)

 

 露伴は怪訝な顔をし、その女を見る。

 

(なぜこの女は頭に猫を乗っけているんだッ!?)

 

 そう、話しかけてきた女の頭の上にはなぜか黒猫が乗っていた。

 

 女は軽くお辞儀をする。頭の上の黒猫は頭が傾いたため、落ちそうになるのをしがみついてこらえている。

 

「『九州ミステリー研究会』所属、早緑(さみどり)(あや)です。依頼者の岸部露伴さんで間違いありませんね?」

「あ、ああ。確かにぼくが岸部露伴だが……」

「わかりました。それでは事務所のほうに案内させていただきます」

 

 女は振り向いて歩き出す。

 

 岸部露伴は不審げにその女を見つつも、その後ろについていく。

 

 本来、岸部露伴という男は初対面の相手に、このように言われるがままについていくような男ではない。

 

 が、しかしこの露伴はこの『早緑文』という女がなぜ頭の上に猫を乗せているのか、と言うことの答えをある程度推測していた。

 

 この女は露伴と同じ『スタンド』という能力を持っていることを推測していた。

 

(この女の頭に乗っている黒猫。こいつは周りの人間には見えていないようだな。頭に猫なんて乗っけている女を見たら普通、動物園のパンダでも見るみたいに物珍しげに見られるはずだ)

 

 にゃん、と猫が鳴く。よく通る大きな声で鳴いたにもかかわらず、周りの人間は誰も反応しない。

 

(『スタンドは基本的にスタンド使いにしか見えない』。この女のスタンドはこの黒猫、か。人通りも少なってきたことだ、この女を本にして情報をみる必要がある)

 

 『傍に立つ者(スタンド)』の呼び名からわかるように、『スタンド』は(例外はあるが)基本的に『(ビジョン)』を持っている。『(ビジョン)』は、人型の機械のような姿であったり、六人の小人ような姿であったり、リボルバー式拳銃だったり、どこからどう見ても鉄塔だったりと、さまざまであり一目で『スタンド』だとわからないものも多い。

 

 そして『スタンド』はそれぞれ特殊な能力を持っている。

 

 岸部露伴の持つスタンド『天国への扉(ヘブンズ・ドアー)』の持つ能力は相手を本にするという極めて強力なものだ。

 

 この能力で本にした後は、本を読んで対象の情報を読み取ることも、本の余白に命令を書き込んで操ることもできる。

 

 幸い、今歩いている所は人通りのいない歩道である。文を本にして情報を見ても、それを見る人はいないだろう。

 

「おい」

「なんでしょうか?」

「『ヘブンズ・ドアー』――ッ!」

 

 文が振り向きこちらを見る直前、露伴の隣に現れた帽子をかぶった少年のような『スタンド』、『ヘブンズ・ドアー』が文を指さす。たったこれだけで相手を本にする力が文に発動する……はずだった。

 

「……?」

「なッ!? 『ヘブンズ・ドアー』がきかないッ!?」

(なぜだ……? あのクソッたれ仗助のように目をつぶったわけでも、怒りで何も見えていないわけでもないッ! 盲目ということもない。それにぼくの成長した『ヘブンズ・ドアー』はいままで能力が聞かなかった仗助や、目を閉じた相手もにも効果があったはずだッ!?」

 

 文は首を傾げるも、露伴の隣に浮いている『天国への扉(ヘブンズ・ドアー)』の『(ビジョン)』を見て言う。

 

「なるほど。あなたはこの子が見えていたんですね」

 

 文の頭に乗っていた黒猫が地面に飛び降りる。

 

「あなたも私たちと同じ『能力』を持っているようですが……どんな『能力』であっても、私の『嫉妬(エンヴィー)』の前では無意味です」

 

 露伴が選んだのは逃走だった。

 

 振り向き迷わず駆けだそうとする。

 

 その瞬間、少し後ろに停まっていたダンプカーがバラバラになり、積み荷が崩れて、退路をふさいでしまう。

 

「くッ!?」

(これもこの女の能力か!?)

 

「岸部露伴さん。こちらへ」

 

 文の方を振り向くと彼女はその先の曲がり角から手招きをしていた。その顔には少しの焦燥の色がある。

 

(まさか……今のはあの女の『スタンド能力』じゃないのか?)

 

 文の方に向かい露伴は走る。

 

 すぐに追いつき、彼女に問う。

 

「今のは君の『スタンド能力』じゃないのか?」

「私の『嫉妬(エンヴィー)』は鳴き声を聞いた人の固有の『能力』を5分間使用できなくする『能力』……いえ、『スタンド』です。といっても、『スタンド』の『(ビジョン)』自体を消すことはできませんが」

(つまりスタンドの『固有能力』だけが強力なわけじゃない、承太郎さんの『スタープラチナ』のようなスタンドにはあまり効果がないわけか。だが、僕にとっては天敵だな)

 

 どこからか黒猫、『嫉妬(エンヴィー)』が駆け寄ってくる。

 

 よく見ると『嫉妬(エンヴィー)』の尻尾は機械のようになっているのがわかる。が、それ以外は完全に普通の猫だ。

 

「今、『嫉妬(エンヴィー)』をさっきの場所で鳴かせてきました。あれが『スタンドの能力』によるものなら、あれ以上攻撃してくる可能性は少ないでしょう。とりあえず、この道だと遠回りになりますが、事務所まで逃げましょう」

「そもそも、なんでぼくは君と一緒に逃げなければいけないんだ? ぼくが君についていく意味はないだろう?」

「相手の攻撃が始まったのはあなたが『スタンド』を持っているとわかった時からです。おそらく、相手の目的はあなたでしょう。まあ、私を狙う変態であるである可能性はありますが、低いでしょうね」

 

 さまざまな通りを走り、路地に入り、大通りに出る。

 

「……これはジョジョ……いえ、丈さんに要報告ですね」

「? 今言った『丈さん』っていうのは誰のことだ?」

「私たちの『九州ミステリー研究会』の会長でまとめ役です」

 

 今の言い回しで露伴は気が付く。

 

(まさか、『九州ミステリー研究会』というのはッ!?)

 

「質問はいろいろあるとは思いますが、そういったことは全て中で話しましょう。露伴先生」

 

 目の前には安っぽいプレハブの一軒家。庭はないも当然の大きさである。

 

 ポストに小さく『九州ミステリー研究会』と書いている以外は普通の家といってもいいだろう。

 

「そういえば、丈さんに言うようにい言われていたんでした」

 

 扉を開きながら、文は言う。

 

「岸部露伴さん。ようこそ九州へ」




 原作で一番好きなキャラのは『ンドゥール』、作者のたくヲです。

 第一話にして主人公登場せず。

 これから『スタンド使いになって騒動の完結を目指す』をよろしくお願いします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。