春「一条先輩とお姉ちゃんをくっつけたい」   作:秋野親友

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春ちゃんがお姉ちゃんと一条先輩をくっつけるために奔走する話、第2話です。

またまた、和菓子屋おのでらの手伝いに来た一条先輩と、今度は自分がイチャイチャしようと企みますが……


第二話 ヤキモチ

一条先輩との勉強会から数日後

 

 

―小野寺家リビング―

 

 

小野寺母「ったく、また急に二人も来られなくなるなんて。いっそ解雇してやろうかしら」

 

小咲「まあまあ、その日は私も春も手伝えるし、運が良かったよね」

 

小野寺母「それでも一人足りないんだよ。あ、そうだ小咲、あの坊やにまた来てもらえるか聞いてみてよ」

 

小咲「一条君?うん、わかった!」

 

小咲(また一条君と一緒に働けるんだ!ふふっ、今から楽しみだな~)

 

 

どたどたどた

 

 

がらがら!

 

 

春「今一条先輩って聞こえたけど!?」

 

小野寺母「あぁ、春。そうだよ、店の手伝いに来てもらうの。あんたも嬉しいんじゃないの?ほら前家に呼んだ時だって」

 

春「あーあー!!それはもう良いから!」

 

小咲「春はまだ一条君と仲が悪いの?」

 

春「いや、そういう訳じゃないんだけどさ、なんか条件反射で……」

 

小咲「ん?」

 

春「な、なんでもない。あ!風ちゃんと電話中だった!それじゃ!」

 

 

ばたばた

 

 

小野寺母「ふふっ、青春だね~」

 

小咲「私も一条君にメールして来れるか聞いてみるね」

 

小野寺母「お、あんたいつの間にメアド交換なんてしてたの?でも告白するならやっぱり直接言わなきゃ─」

 

小咲「ちがう!そんなんじゃないってば//」

 

小野寺母「ま、あんたらのどっちかとくっついてくれれば、あの坊やはこの和菓子屋『おのでら』のものだ。よろしく頼むよ?」にやにや

 

小咲「もおー//お母さん///!」

 

 

─春の部屋─

 

 

春「ごめんね風ちゃん、戻ったよ」

 

風ちゃん『どうしたの?急にどっか行っちゃって』

 

春「えっとね、一条先輩がまたお店の手伝いに来るみたいなんだ」

 

風ちゃん『へえー、良かったね、春』にやにや

 

春「わ、私は別に嬉しくないよ!お姉ちゃんは嬉しいだろうけどさ」

 

風ちゃん(春ももうちょっと素直になればいいのにな~)

 

風ちゃん『また二人の距離を近づけるチャンスだね』

 

春「そうなんだけど……」

 

風ちゃん『どうかしたの?』

 

春「私がちょっかいかけると、毎回ろくなことにならない気が……」

 

風ちゃん『弱気になっちゃだめだよ!春!春ならきっと一条先輩と付き……小咲先輩をくっつけられるよ!!』

 

春「う、うん?そうだね!私が頑張らないと!やっぱりまた二人きりにさせれば良いのかな~?」

 

風ちゃん『いや、きっとあの二人は、二人きりになるだけで満足しちゃうよ』

 

春「う~ん、どうしたら良いんだろう」

 

風ちゃん『ずばり!小咲先輩にヤキモチ妬かせれば良いんだよ!』

 

春「え、ヤキモチ?お姉ちゃんが?誰に?」

 

風ちゃん『一条先輩と春に!!』

 

春「わ、私と一条先輩?で、でも─」

 

風ちゃん『春と一条先輩が仲良くしてるのを見れば、私も負けてられない!って思うはずだよ!!そしたら小咲先輩も積極的になるかも!』

 

春「……うん、確かに!よし、私やってみる!」

 

風ちゃん『がんばれ!春ならできるよ!!』

 

風ちゃん(そのまま一条先輩とくっついちゃえ~)

 

 

~数日後~

 

 

─和菓子屋おのでら─

 

 

小野寺母「それじゃ坊や、よろしく頼むよ。私はちょっと出てくるから」

 

一条「はい、よろしくお願いします」

 

小野寺母「あ、そうそう、前みたいに備品壊したりするんじゃないわよ。もしやったら……」ぎろり

 

一条「は、はい!気を付けます!」ぞわっ

 

小咲「あはは……それじゃあ一条君は、春と一緒に厨房手伝ってくれるかな?私はお店の方にいるから」

 

一条「わかった、任せてくれ!」

 

 

─厨房─

 

 

春「あ、おはようございます、一条先輩」

 

一条「おはよう、春ちゃん。今日はよろしくな」

 

春「こちらこそ、足引っ張らないでくださいね」

 

一条「分かってるって、任せてくれ!」

 

春(よし、作戦その1!まずはお姉ちゃんに楽しい会話を見せつける!私たちが二人で楽しげに話してたらお姉ちゃんも一条先輩にもっとアタックしたくなるはず!)

 

春「じゃあ一条先輩はあんこをお願いします。私は栗を調理するので」

 

一条「へえーもう栗なんて使い始めるんだな」

 

春「試食用ですけどね。評判良くて、もう予約したいってお客さんもいるんですよ?」

 

一条「そりゃすごい、俺もぜひ食べてみたいな」

 

春「きっと気に入りますよ♪目を閉じれば真っ赤な紅葉のお山に、いちょうの葉っぱが敷き詰められた道が目に浮かぶような─」

 

一条「ぶふぅ!」

 

春「なっ///ちょっと何笑ってるんですか//!!」

 

一条「ごめんごめん!いや、良いと思うよ、そういうの」

 

春「そう思うなら笑わないでくださいよ!!まったく、ほんっとにデリカシー無いですよね、一条先輩って」

 

一条「むっ、そんなにか?何度も言うがあれだって俺のせいじゃないんだからな」

 

春「え?あれってなんのこと……せんぱい?」

 

一条「怒るなら風とガチョウにだな、春ちゃ─」

 

春「一条先輩のヘンタイ!!!」

 

 

ばちーん!

 

 

小咲「え!?な、なに!?」びくっ

 

 

作戦その1、失敗

 

 

一条「いてて……」

 

春「もう!まったく!もう!!」

 

一条「ごめん!ごめんって!」

 

 

ぱたぱた

 

 

小咲「何か大きな音がしたけど、大丈夫?」

 

春「おっ、お姉ちゃん!なんでもないよ!大丈夫!一条先輩と親睦を深めてただけだから!」

 

小咲&一条(親睦?)

 

小咲「そ、そう?じゃあ、私はお店の方に──」

 

春「あっ、ちょっと待って!」

 

春(作戦1は失敗しちゃったけど次は大丈夫!このまま作戦2を実行する!)

 

春「秋の試作品用に栗を調理したんだけど、まだ味付けに慣れてなくて。ちょっと味見してくれる?」

 

小咲「うん、いいよ」

 

 

ぱくっ

 

 

小咲「うん!美味しい!これで良いと思うよ」

 

春「良かった!ありがとね」

 

一条「良いなぁ、俺もちょっと味見していいか?」

 

春(きた!作戦その2!お姉ちゃんの目の前で一条先輩に「あーん」する!お姉ちゃんならきっと羨ましくなるシチュエーション!)

 

小咲「うん、これとっても美味しいよ!はい、どーぞ」

 

一条「え、あ、ありがとう」

 

春(……あれ?)

 

一条(うぉお!小野寺に『あーん』されてる!?しかも小野寺がさっき使ったスプーンで!!良いのか?良いのか!?)

 

 

ぱくっ

 

 

一条「た、たしかに美味しいな//」

 

一条(うおおおおおおおぉぉぉぉぉ!味なんて分からん!!でもめちゃくちゃ嬉しい!!)

 

小咲「ね!とっても美味し……い、よ……ねえええええええ!?!?」

 

 

ぼんっ!!

 

 

一条「おぉ!?」

 

春「ちょ、お姉ちゃん!?」

 

小咲「い、一条君//ち、違うの、こ、これは……違うの~~~~~~~!!!」

 

 

ぴゅーん

 

 

一条「あっ……」

 

春「自分でやったくせに」

 

春(お姉ちゃんの天然のおかげで期待以上の出来事が……なんかちょっと羨ましい。いや、私がヤキモチ妬いてどうするの!まあ、予定とは違ったけど、結果オーライだよね!これで二人は良い感じに!)

 

一条「はぁ。やっちまった……」

 

春(良い感じになるって思ったんだけどな~何なんですかこれ)

 

一条「小野寺になんてことをさせちまったんだ……」ぶつぶつ

 

春「あの、一条先輩?」

 

一条「今からでも謝りに……いや、謝っても小野寺を傷づけることに」ぶつぶつ

 

春「一条先輩ってば!」

 

一条「えっ!なんだ!?」びくっ

 

春「なんだじゃないですよ!なんで落ち込んでるんですか!?お姉ちゃんに「あーん」してもらっておいて!私の作ったお菓子を!お姉ちゃんに!!」

 

一条「な、なんで怒ってるんだ?」

 

春「はぁ、もういいです。とにかく!今からお姉ちゃんを呼んでくるので作ったあんこを味見してもらってください。もちろん「あーん」して食べさせるんですよ?」

 

一条「えっ!どうしてそんな話になるんだ!?」

 

春「どうしたもこうしたも無いです!まったく!私には「あーん」ができてお姉ちゃんには出来ないなんてこと無いですよね!さっきのお礼とでも言ってささっとやっちゃってください!分かりましたか!?」

 

一条「は、はい……」

 

 

ぱたぱた

 

 

一条「なんなんだ……?」ぽかーん

 

春(まったく……何なんですかあの人は!人の気も知らないで!!私だって、私だって一条先輩に「あーん」したかったんですからあああ!!)

 

 

―和菓子屋おのでら―

 

 

おじいちゃん「ありがとね~小咲ちゃん」

 

小咲「ありがとうございました~」ぺこり

 

 

ぱたぱた

 

 

春「お姉ちゃん、午後の分の仕込み終わったから、作るのお願いできる?」

 

小咲「うん、わかった。じゃあ店番お願いね」

 

春「はーい」

 

 

てくてく

 

 

春(こうなったら全力で二人をくっつけてやる!これでしばらくの間お姉ちゃんと一条先輩は二人きり!一条先輩がお姉ちゃんに「あーん」すれば二人はもっと仲良くなる!今回こそは上手くいく……わけないよね、どうせあの二人のことだもん。はぁ、さっさとくっついてくれれば私も素直に諦められるのにな~)

 

 

がらがらがら

 

 

小野寺母「ふぅ~やっぱ暑いわね~」

 

春「いらっしゃいませ~」ぺこり

 

小野寺母「あんた何ぼーっとしてんのよ」

 

春「あっお母さんだった、お帰りなさい!」

 

小野寺母「ただいま。店番は私がやっとくから、あんたは二人の手伝い行ってくれる?」

 

春「はーい」

 

春(うーん、二人の邪魔はできないし。そうだ、ちょっと覗いてみようかな。どうせ何にも起きてないんだろーけど)

 

 

─厨房─

 

 

小咲「お疲れさま、一条君」

 

一条「おつかれ、小野寺。店番交代か?」

 

小咲「うん、今度は私が作る番!って言っても仕上げだけなんだけどね」

 

一条「それでも十分すごいよ。小野寺の飾りつけはホントに綺麗だからな」

 

小咲「そ、そうかな?ありがとう//」

 

春(あれれ?なかなかいい雰囲気)

 

小咲(うぅ、さっきのこと、気にしてないといいな)

 

一条(さっきのことはスルーした方が良いのか?思い出させるみたいで悪いしやっぱり味見は普通に……いや!これはチャンスなんじゃないのか?そうだ、言われてとかじゃない!俺が小野寺に「あーん」したいんだ!)

 

春(あっ、あのへたれ一条先輩が決意に満ちた目をしている!)

 

一条「小野寺、餡子の仕込み終わったから、味見してもらってもいいか?」

 

小咲「あ、うん、わかった」

 

一条「はい、小野寺」

 

小咲「はい……え?」

 

小咲(な、なんで!?なんで一条君が私に「あーん」してるの!?)

 

春(一条先輩、ホントに「あーん」しようとしてる!?)

 

一条「お、小野寺?」

 

一条(うっ、やっぱりやめといた方が良かったか?)

 

小咲(どうしよう、一条君が困ってる……はっ!もしかしてさっき私が恥ずかしがってたこと気にしてくれてるのかな!?)

 

春(あ、お姉ちゃんの目がぐるぐるしてる!)

 

小咲「え、えっと……いただきます///」

 

 

ぱくっ

 

 

小咲「う、うん、おいしいよ///」

 

一条「そ、そうか、なら良かった」

 

小咲(きゃああああああああ////)

 

一条(よっしゃあああああ!!!!)

 

春(……)ずきっ

 

小咲「じゃ、じゃあお菓子仕上げちゃうね!一条君は片付けしてくれる?」

 

一条「お、おう!」

 

春(これでいいんだよね。二人ともあんなに嬉しそうなんだもん、邪魔しちゃ悪いよ。これでホントに私の恋は終わりだね……部屋で少し休んでよっかな)

 

 

とぼとぼ

 

 

小咲(うぅ、嬉しすぎて爆発しそう///これって一条君も嫌じゃないってことだよね!こんなに一条君と仲良くできるの初めてかも。えへへ、一条君と一緒に和菓子屋で働いたら毎日こんなに幸せなのかな//……はっ!ひょっとして今日はアタックのチャンスなんじゃ!!よし、頑張れ小咲!私ならできる!)

 

 

ぱらぱら、こねこね、ぺたぺた、とんとん、くるくる、

 

 

一条(嬉しい!嬉しすぎる!!和菓子の勉強しといてホントに良かった!!それにしても、もぐもぐしてる小野寺の顔可愛かったな~……ん?ぱらぱら?)

 

小咲「一条君!お饅頭できたから、良かったら一つ食べてみて?はい、どーぞ♪」

 

一条「あ、あぁ、ありがとう、小野寺」

 

一条(あああああ!小野寺のそばに謎の粉が!!)

 

小咲「い、一条君?」

 

一条(……はっ!!そうだ!!小野寺が直接「あーん」してくれるなんて!!!!こんなチャンス2度と来ない!!ここで食わなきゃ男じゃねえええええええ!!)

 

 

ぱくっ……ごっくん

 

 

小咲「ど、どう?一条君///」

 

一条「うん、おいし……い」

 

一条(もう、人生に悔いはない……)ふらっ

 

 

ばたん

 

 

春(あれ?私あんまりヤキモチ妬いてないかも……私も大人になったってことかな♪)

 

小咲「あれ?一条君?一条君!一条くーーーーーーーーん!!!」

 

 

 

 

 

 

 

おわり

 

 

 

 

 

 

 

小咲「はぁ、せっかく距離を縮めるチャンスだったのに。また私の料理のせいで……」

 

るり「あんたのそれも、ある意味『胃袋を掴んでる』ってやつよね」

 

小咲「るりちゃん!?」




読んでくださってありがとうございました!

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