春「一条先輩とお姉ちゃんをくっつけたい」   作:秋野親友

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一条先輩とお姉ちゃんをデートさせたい春ちゃん。
思いついたのは動物イチャイチャ大作戦!


第三話 オノデラ

──春ちゃんの部屋──

 

春(う~ん、いい加減お姉ちゃんと一条先輩をデートさせたいんだけどな~。二人とも奥手なんだよね……いっそのこと一条先輩を説得して、お姉ちゃんに電話させちゃおうかな。どうせ両想いなんだし、二人とも喜ぶのに……なんて、電話する勇気なんてないよね~)

 

かちゃかちゃ

 

春(一条先輩にもらったキーホルダー……そうだ、水族館の時みたいに、とりあえず私から電話してみようかな。お姉ちゃんが先輩と出かけたがってるって言えば、あの鈍感さんも流石に──)

 

プルルル♪

 

春「わっ……一条先輩からだ」

 

プルルル♪ ぽちっ

 

春「もしもし、小野寺です」

 

一条『お、春ちゃんこんばんは!』

 

春「……夜遅くに女の子に電話なんて、デリカシーの無い人ですね」

 

一条『ひどい言われようだな……ごめん、もう寝るところだった?』

 

春「い、いえ、大丈夫ですよ//で、どうしたんですか?」

 

春(その言葉は反則ですよ!先輩//)

 

一条『実はな、かくかくしかじか……』

 

話を聞くと、どうやら学校が休みの間に動物のお世話をしてくださっていた、キョーコ先生という方がご結婚されたそうです。それでお仕事を退職なさったので、夏休みの間も何日か飼育係が登校しなきゃいけない、という事のようです。

 

春「寿退社なんて素敵ですね!憧れちゃいます!」

 

一条『そういうもんなのか?』

 

春「まあ人によるとは思いますけど」

 

入学当初、一条先輩の独り言を聞いた私は、先輩のよこしまな野望を食い止めるために飼育係になっていたのです。まあ杞憂に終わったわけですが……でもそのおかげで思わぬチャンスが舞い降りました!今回こそは上手くいく予感ですよ!!

 

作戦名!一条先輩とお姉ちゃんの動物イチャイチャ大作戦!

 

一条『って事なんだが、春ちゃん手伝い頼めるか?』

 

春「そういうことでしたら、もちろん行きますよ」

 

一条『ありがとう、まじで助かるよ。実は千棘が急用で来れなくなっちまってな、二人じゃちょっと大変かもしれないけど、がんばろーぜ!』

 

春「千棘先輩も飼育係だったんですね。そうだ、そういうことなら、お姉ちゃんにも手伝い頼んでみますね」

 

お姉ちゃんは優しいから、動物にとっても好かれるんです!夏休みの学校、私がいなければ二人きりで動物のお世話!シチュエーションはばっちりです!……私の理想のデートプランとかじゃないですよ?

 

一条『え、小野寺にも頼んでくれるのか!?』

 

春「……知ってるとは思いますが、私も一応小野寺なんですよ?」

 

一条『う、うん?まあ分かってるんだけどさ。』

 

春「やっぱりまぎらわしいので、私と話してる時くらいお姉ちゃんのことは『小咲』って呼んでくれませんか?」

 

一条『い、いや、それはやっぱり恥ずかしいっていうか……』

 

春「そうですか?なんなら『小咲ちゃん』って─」

 

一条『わかった、わかったから!……えっと、こ、小咲が手伝いに来てくれるのか?まあ、人が増えるのは有り難いな』

 

春「後で聞いてみますけど、お姉ちゃんのことですから、手伝ってくれると思いますよ?」

 

一条『それじゃあ、悪いけど頼むよ、春ちゃん』

 

春「いえいえ。それではまた明日」

 

 

─小咲の部屋─

 

 

こんこん

 

小咲<はーい

 

がちゃ

 

春「お姉ちゃん、突然なんだけど、明日一緒に一条先輩のお手伝いに行かない?」

 

小咲「お手伝い?」

 

春「そう、飼育係の仕事で、動物のお世話をするらしいんだけど、千棘先輩が急用で来られなくなっちゃったみたいなんだ」

 

小咲「そうなんだ。うん、いいよ。行こっか、手伝い」

 

小咲(やった!一条君と動物のお世話!楽しみだな~)

 

春(はっ、私はそもそも行かなければ良いのでは……い、いや、私がいれば、一条先輩はお姉ちゃんのこと下の名前で呼ぶし!それが目的!!私が一条先輩に会いたいとかじゃ……)

 

 

~千棘の用事に付き合わされてる一条side~

 

 

──千棘宅──

 

 

一条「それじゃあよろしくな、春ちゃん。また明日」ピッ

 

千棘「はぁ~せっかく動物たちに会いに行けるチャンスだったのにな~……小咲ちゃんと春ちゃんにも会いたかった!!」

 

一条「お父さんとのお出かけだろ?楽しんで来いよ」

 

千棘「言われなくてもそのつもりよ。ところで、楽って小咲ちゃんのこと下の名前で呼んでたっけ?」

 

一条「えっ、い、いや……ほら、俺たち、もう一年以上色んなこと一緒にやってるし、もうちょっと皆と仲良くなりたいな~……なんて」

 

一条(やべ、とっさに変な言い訳しちまった!素直に『小野寺』ってのが分かりづらいからって言えば良かったのに!)

 

千棘「ヤクザの息子ってのも大変よね~友達が少ないからって焦っちゃって」にやにや

 

一条「んだと!?」

 

千棘「……私も舞子君のこと、集って呼んだ方が良いかしら……」

 

一条「……やめとけ」

 

 

──次の日──

 

 

春「おはようございます、一条先輩」

 

一条「あ!おはよう春ちゃん。あれ、やっぱり小野寺は──」

 

春<じーーー

 

一条「……やっぱりこ、小咲は来れなかったのか?」

 

春「お姉ちゃんも来ますよ。いい加減慣れてくださいよ、毎回噛むとか失礼ですね」

 

一条「俺のせいなのか……」

 

てくてく

 

小咲「おはよう一条君」

 

一条「おはよう、小野寺」

 

春「いちじょーせんぱーい?」

 

一条「お、おはよう、こ、小咲//」

 

小咲「えっ///ど、どうしたの一条君//」

 

小咲(一条君に下の名前で呼ばれちゃった~~~~~!!!!!)

 

一条「えっとだな//春ちゃんも名字は小野寺だし、分かりにくいってことで、名前で呼ぼうかなって」

 

小咲「そ、そうなんだ//」

 

春(だから付き合いたてのカップルかっての。でもこれはチャーンス!!)

 

春「せっかくだし、お姉ちゃんも一条先輩のこと下の名前で呼んでみたら?」

 

一条(なっ!?)

 

小咲「ええ!?うーん//ど、どうしようかな……」

 

一条<そわそわ

 

小咲(前に『楽君』って呼んだ時、一条君ちょっとびっくりしてたしな……)

 

一条「べ、別に、無理しなくてもいいんだぞ……小咲」

 

小咲<びくっ

 

小咲(うぅ、一条君に小咲って呼ばれるの、恥ずかしいけどすごく嬉しい//よし、わ、私も!)

 

小咲「今日は動物のお世話頑張ろうね、ら、楽君!」

 

一条「お、おう//」

 

一条(よっしゃああああ!!!)

 

小咲(だめ、私だけは恥ずかしすぎる//)

 

小咲「春もほら、ら、楽君と仲良くなるチャンスだよ!楽君のこと『楽先輩』って呼びなよ!」

 

一条(うおおおおぉぉぉ!小野寺の『楽先輩』はやばい!まじでやばい!)

 

春「……まさかとは思いますが、お姉ちゃんに下の名前に『せんぱい』づけされて、ドキドキなんてしてませんよね、一条先輩?」

 

一条「」

 

春「はあ……無駄話しててもしょうがないですし、ちゃっちゃと終わらせちゃいましょうよ、ら、楽先輩///」

 

一条「お、おう……」

 

春「……」

 

春(もうちょっと嬉しそうにしてくださいよこのバカーーーーーーー!!!!!!!)

 

 

────

 

 

一条「今日は基本的には餌やりと、飼育ケースの掃除がいくつかだな。」

 

春「じゃあお姉ちゃんと楽先輩は動物の餌やりをお願いします。わたしは掃除をやりますので!」

 

一条「え?良いのか?言っちゃなんだが一番大変だぞ?」

 

春「任せてください!」

 

春(掃除より餌やりの方が楽しくやれそうだしね……私ってばこんな人想いだったなんて)

 

小咲「ありがとね、春。じゃあ私たちは餌やりかな?」

 

一条「そうだな、頑張ろーぜ、小咲」

 

小咲「う、うん//」

 

春(……羨ましくなんか!羨ましくなんか!!)

 

 

────

 

 

小咲「マルゲリータ・ド・佐藤三世君久しぶり!元気だった?」なでなで

 

一条(相変わらず動物に好かれてるな……羨ましい!!マルゲリータが!!!)

 

 

────

 

 

一条「よし、じゃあまずは水槽にいる子たちからだな」

 

小咲「おさかなさんの餌は……これだね!」

 

一条「金魚一匹に対して餌2.4g、この水槽は5匹の金魚がいるから全部で12gだな!よいしょっと」がちゃん

 

小咲(は、量り!?そこまで正確にするんだ!ふふっ、一条君はまめだな~)

 

一条「む、0.2g多くなってしまった。これより小さい匙あったかな」

 

小咲「えっと……あ、これかな」

 

一条「お、サンキュー小咲」

 

小咲「ひゃいっ///」

 

がたんっ!!!ぼちゃっ

 

小咲「わあああああ!!!全部はいっちゃった~~!!!」

 

一条「やべっ、小咲もこれ使ってすくい出してくれ!」

 

小咲「ひゃうっ//」

 

つるんっ!!ぼちゃっ

 

一条「あああぁぁぁ!スプーンまで落ちた!!」

 

 

────

 

 

小咲「じゃあ私はお花の水やりをしようかな……」

 

一条「お、おう、ありがとう。あ、液体の肥料もあるから、ちょっとあげてくれ」

 

小咲「うん、分かった」

 

小咲(へぇ~サボテンなんてあるんだ!かわいいな~。あ、これって水あげすぎたらダメなんだっけ?)

 

一条「あ、小咲、そのジョウロ壊れてるから、こっち使って──」

 

小咲「はひっ//」

 

ぱきんっ!!ばしゃあーー

 

小咲「ああああぁぁぁ!!全部かけちゃった!!」

 

一条「サボテンジョーージィー!!!」

 

 

────

 

 

小咲「は、ハムスターの飲み水を変えてくるね」

 

小咲(これならきっとできる……はず)

 

一条「小咲、ハムスター用の栄養ドリンクがあるから、これを付けてくれ」

 

小咲「ひゃ、うん、わかった」

 

小咲(うぅ、やっぱり恥ずかしいな//でも、もう大丈夫!よし、私も頑張ろう!)

 

小咲「終わったよ、ら、楽君//」

 

一条「お、おう//……あれ、その手に持ってるのって──」

 

小咲「ん?──あれ、栄養ドリンク、ちゃんと付けたんだけど……!?!?」

 

植物用液体肥料<スタンバイオーケー!

 

小咲&一条「………………」

 

ハムスター<お水お水♪

 

小咲&一条「だめえええええええええ!!!!!」

 

 

──数十分後──

 

 

春(私が掃除をしてた間、お姉ちゃんと一条先輩はずっと二人きりで動物と戯れることができたはず!……羨ましいな、やっぱり。かなりいい雰囲気になった、はず、なんだけど……なんでかな~)

 

春「……餌やりしてたんですよね?なんでそんなに疲れてるんですか?」

 

小咲「ちょっといろいろあって……」

 

春「はぁ、そうなんだ……とにかくこっちの掃除は終わりましたよ」

 

一条「ありがとな、春ちゃん」

 

春「全くですよ、感謝してください。それで、他には何かあるんですか?」

 

一条「えっとだな……ちょっと使い切った餌とか土の買い出しが……」

 

小咲「うっ、ご、ごめんなさい」

 

一条「いや、気にしないでくれ、本当に!手伝ってくれて助かってるから!ホント!」

 

春(お姉ちゃん、一体何したの……)

 

 

小咲「じゃ、じゃあ私が買い物に行ってくるね!買い出しに行くのも、私がたくさん失敗しちゃったからだし……」

 

一条「いや、気にしなくて大丈夫だから!買い出しなら俺が行くよ!!」

 

小咲「でも……」

 

一条「……小野寺」

 

小咲<びくっ

 

一条「うん、やっぱりこっちの方が落ち着くよ、俺」

 

小咲「……一条君?」

 

一条「小野寺と下の名前で呼び合うの、すげー楽しいんだけどさ、なんつーか、照れくさくてさ//」

 

小咲「//うん、私も、楽しかったけど、恥ずかしかった、かな」

 

春(……なんなんですかこの甘ったるい空間は。私がいること完全に忘れてませんか)

 

一条「俺たちは、俺たちのスピードで仲良くなってこうぜ!」

 

小咲「そうだね!一条君!えへへ//」

 

一条(よっしゃあああ!!!!楽しかったって言ってくれた!!嫌じゃなかったんだ!!!やったぜえええええ!!!!)

 

小咲(やっぱり一条君はかっこよくて優しいな~~~//どうしよう、さっきよりもドキドキしてるかも//)

 

春(……幸せそうで何よりですよまったく)

 

小咲「やっぱり、買い物は私が行ってくる!」

 

小咲(私ももっと頑張らないと!)

 

一条「お、おう。あんまり無理すんなよ?ゆっくりでいいからな」

 

小咲「うん!それじゃあ、行ってきます、一条君//」

 

たったったっ

 

一条(くぅううう!!「行ってきます」だってさ!おい!)

 

春(……良いなあ、お姉ちゃん……私だって今日頑張ったし、ちょっとぐらいご褒美が欲しいんですよ?楽先輩……うぅ、やっぱり私、諦めきれてないよ……)

 

一条「いやあ~今日は良い日だな!!なあ春ちゃん!!」

 

春(でも、私がけしかけたんだし、頑張って二人を祝福してあげないと……本当にお似合いなんだから)

 

春「顔緩みきってるじゃないですか……ほら、楽先輩。片付けやっちゃいましょう」

 

一条「おう!さっきは雑用沢山させちゃったし、汚れ仕事は任せてくれ」

 

春「はいはい、よろしくお願いしま──ん?」

 

しゅるるる~~~

 

春「きゃあっ!へ、蛇!?せ、せんぱい!!」

 

だきっ

 

一条「おっと、大丈夫か?あいつは臆病だし、毒も無いから心配しなくていいぞ」

 

春「楽先輩……」

 

一条<きらりん☆

 

春「そーゆーのは……」

 

一条「ん?どうした?」

 

春「そーゆーのはお姉ちゃんにやってくださいってぱ!!!」

 

ばちんっ!!!

 

一条「なんでえ!?」

 

春(だから!!!!なんで、なんで!!!この人は!!!!!もおおおおおおお!!!!!)

 

何だかんだと忙しい一日でしたが、実のところ今日一番の成果は、私が先輩を下の名前で呼べるようになったことでした。

 

おしまい




読んでくださりありがとうございました!

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