召喚勇者は死にました   作:黒桜@ハーメルン

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13 アラクネの村

「まずは自己紹介といこう。私はこのアラクネ族族長、名をアラルという」

 

 暗い部屋の中、下半身が蜘蛛の魔物アラクネと対面して座っている。一緒に来た青髪たちは、先にオレの右に座っていた赤髪の横に座っていた。

 

 ……自己紹介か。今世にはまだ名前がないんだよな。前世の名前って名乗っていいのか?

 

 「初めまして、アラルさん。残念ながらオレには名前がないので名乗れませんが、まあ、呼ぶときは好きな呼び方で構わないです。」

 

 とりあえずないことにしておく。だが、そのオレの(ほとんど紹介していない)自己紹介を聞いて、アラルは不思議そうな表情を浮かべていた。

 

「え、えと……なんか、オレおかしなことでもいいました?」

「ああ、いや……名前のない人間には会ったことがなくてな」

「え、人間?」

 

 今度はオレが頭にはてなマークを浮かべることになった。

 人間?なんでここで人間の話になるんだ?ていうか、アラクネなのに、人間とあったことがある?

 

(おそらく、赤髪がマスターを人間だと勘違いしたのでしょう)

 

 あ、なるほど。それはありうるな。

 

「あのー、族長さん。オレの種族、なんて聞いてます?」

「おお、娘から人間だと聞いて居るが……」

 

 ルシファーの推測通りだ。まあ、確かに人型だし間違えるのは仕方ないことだな。

 

 てか、ポニテお前族長の娘だったんかい。

 

「オレ、魔物です」

 

 直球に宣言する。

 

「えええ? そうだったのか?!」

 

 ポニテが驚きの声を張り上げる。そこまで驚くことか?

 

「…………」

 

 部屋にいる残りの2人は無言だったが、黒髪は多少驚いたようで、表情に現れていた。

 

「これ、少し落ち着け」

 

 族長の声に、赤髪が恥ずかしそうに座りなおす。青髪は気づいていたのか、相変わらず微笑んだままだ。

 

「すまない、娘たちが失礼をした」

「いえいえ、オレが言ってなかったのが悪いですし……ところで、オレが魔物だとしたら何かまずかったりします?」

「いや、何もない。ただ……どう礼を返したものか困ってしまってな。人間の客は良く訪れてくるものなのだが……」

「ああ、ならしばらくの間、ここに滞在していいですか?ちょうど生活の拠点を探しに旅をしていまして」

 

 ここぞとばかりにオレが提案をする。

 

「代わりと言っては何ですが、オレは武器を創れます。作り方は教えられないのですが――」

 

 そういいながら、アイテムボックスから解体用の短剣を取り出し、族長に見せた。

 

「これくらいなら、一日に一本は創れますよ」

「ううむ、しかし、それではお前さんがむしろ損をしてしまうのでは?」

「いえ、大丈夫です。オレが武器を創るのにコストはほとんどかかりません」

「うううむ……まあ、お前さんがそれでいいのなら……」

 

 なおも族長は悩むが、結局いい案を考え付けなかったようだ。

 

「それで、どこに住むつもりだい? 人間が来た時の為の家はあるが、そこで構わないかい?」

「ええ、かまいません。屋根さえあれば大丈夫です」

 

 話はそこでまとまり、今日はもう遅いとのことで早速これから住むという建物に案内してもらうことにした。

 

 

 族長の家を出て、歩くこと五分、村の端にあるその家は、多少の小さい損傷はあるものの、がっしりとした木造の家だった。丸太が壁になっているから、ログハウスっていうのかな?ぶっちゃけ、族長の家の何倍も立派で、違和感が半端じゃない

 

「……これ?」

「ええ、これです」

 

 ちなみに案内してくれたのは青髪だ。

 

「……立派すぎない?」

 

「建てたのは私たちではなく、昔訪れた人間です」

 

 なるほど、なら仕方がない……のか?

 まあ、そんなことはいいや。とりあえず早く入ってスライムたちを下ろしたい。こいつら日が暮れたらすぐに寝るから、頭に乗せるのがつらいのだ。

 

(この村唯一の)扉を開き、中に入る。

 中は一つの部屋があっただけで、思ったよりきれいだった。

 家具とかはほとんどなく、窓際にベッドが一つと、そのすぐ横に木箱、そして天井から一つの白いハンモックがつるされているのみ。…………ハンモック?

 

 気になったので近づいて触ってみる。予想外にハンモックの縄は弾力性があり、とても寝心地がよさそうだった。

 しかしいったいなぜこんなところにハンモックが?

 

「? どうかしましたか?」

 

「いや、なんでこんなところにハンモックがあるのかなって思ってさ。埃もないし、誰かが最近まで住んでたのか?」

 

「はんもっくが何なのかは知りませんが、誰かが、というより私が住んでいますよ。」

「え、ここに住んでいるの?」

「ええ、そうですけど何か問題でも?」

「いや、問題があるわけじゃないけどさ……家には帰らないのか?」

「五年ほど前魔物に襲撃されたときに全壊してしまいました。親もその時に亡くしてしまっているので、立て直す必要性を感じずにここを借りて住んでます。」

 

 あれ、話がなんか重くなったぞ?どこで地雷踏んだ?

 

「へ、へぇ。しかし、よくここが借りられたね」

「ええ、族長には族長の家で済んでもいいって言われたのですが、ずっと迷惑をかけるわけにもいかないので……母が族長と仲良かったおかげか、ここを借りることができました。」

 

 ダメだ。話題を変えることに失敗した。このままではまずい。なにがまずいって、青髪の顔ずっと笑顔のままなのに声がどんどん沈んで行ってるんだよ。

 

「そ、そうだったんだ。と、ところでその寝床って、寝心地よさそうだな」

「これ以外で寝たことはないので比べられませんが、試してみますか?」

 

 青髪の声が元に戻る。よ、よかった。今度は成功した。

 

「ああ、ぜひ試してみたい」

 

 スライムたちを木箱の上に置きながら、青髪に返事する。

 

 振り返ってみると、青髪がハンモックを引っ張って上りやすい位置まで下げてくれていた。

 

 気遣いに感謝しつつ横になってみる。

 

「……これは、いい」

 

 驚くほどに寝心地が良かった。ハンモックの網が体に食い込むこともなく、それでいて体が沈みすぎないほどの弾力性。正直、地球にあるベッドよりも寝やすい。

 

「気に入ってもらえましたか?」

「ああ、最高だ。これから毎日これで寝たいほどだな」

「なら、お作りしましょうか?」

「え? いいのか?」

「ええ、3分ほどかかってしまいますが」

 

 たった3分も待てないほど子供ではないので、お願いする。てか3分でできるってすごいな

 

 すると、青髪の背中が少し膨らみ、裾から蜘蛛の足が出てきた。

 そしてまるで某アメリカンヒーローのように手首から糸をだし、合計十本の手を使って器用に編み始める。

 

 その様子を眺めているうちに三分が経ち、青髪のと同じような、けれどよく見るとほんの少し小さくなった、オレの身長に合わせたハンモックが出来上がっていた。

 

 早速赤スライムを頭の来る位置に置き、枕として寝てみる。

 

「どうでしょうか? 一応サイズは調整しましたが、余計でしたか?」

「いや、むしろいい。ありがとよ、えっと……そういえば名前聞いてなかったな」

 

 というか、族長の名前しか聞いてない。

 

「私たちの種族で名を持つことができるのはのは族長のみですので、好きな呼び方で呼んでもらって構いません。」

 

(へえ、そりゃあ不便そうだ)

(アラクネ族は同種でのみ使えるテレパシー能力を持っています。ほんのわずかな情報しか送受信できないですが、名を持たないのはそのおかげかと)

 

 心の中に思い浮かんだちょっとした疑問に、ルシファーが丁寧に回答してくれた。流石相棒。

 

「ふむ、なら…………ラピスラズリ、ってのはどうだ? 綺麗な青い髪の色しているし、長いから愛称でラピス、とか……」

「ふふ、ありがとうございます」

 

 笑いながら青髪――ラピスはそう返した。ずっと微笑んでいたから表情はあまり変わらなかったが、喜んでいるのが分かった。

 

 緑スライムを念力で持って、掛布団のように体の上に降ろす。木箱はすぐそこにあるのだが、あまりの寝心地の良さの為にそのくらいの手間すら面倒だと思ってしまった。

 

「それじゃあ、ラピス。おやすみ」

「? おやす、み?」

 

 同じく寝床に入ったラピスが不思議そうに返してくる。いつの間にしまったのか、蜘蛛の足は見当たらない。

 

「ああ、オレのいた場所の習慣でな。寝る前に言うんだ」

「そうなんですか。……いえ、そうなんでしょう。おやすみ、白髪さん」

 

 ラピスはそういうと、目を瞑る。一分もしないうちに、静かな寝息が聞こえてきた。

 

(寝るのが早いな。……しかも、今日あったばかりのオレがいるのに。まあ、信頼されている証だと考えればうれしいことなんだが、オレが野獣だったら危なかったぞ)

 

 あまりにも無防備だったので、ついそんなふざけたことを考えてしまう。

 だがラピス手製のハンモックはそんな無駄な思考をオレから奪い去り、代わりに速やかな安眠を与えてくれた。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 ――次の日の朝――

 

 まだ日が昇っておらず、かすかに空が明るくなってきたころに目が覚める。

 同時にスライムたちも起きたようで、もぞもぞと動き始めた。いつもはオレが少し早いのだが、昨日寝る時間が遅かったから多少ずれたのだろう。

 

 先にスライムたちを降ろしてから、自分もハンモックから降りる。ラピスはすでに起きたようで、部屋の中にはいなかった。

 

 とりあえず背伸びをして、体をほぐす。別に筋肉がないから伸ばす必要もないのだが、気持ちの問題だ。

 

「あ、お目覚めですか?」

 

 突然扉が開く音とともに、ラピスの声が聞こえた。どうやら外に出ていたみたいだ。

 

「ああ、今さっ……」

 

 振り向いて返事をするが、その言葉は途中で止まってしまう。

 

 開いた扉の所に立っていたのは水浸しになった、肌色90%のラピスだった。

 

「? どうしました?」

 

 特に気にする様子もなく、部屋に入ってくるラピス。あまりにも突拍子的だったため、オレの思考回路は軽く麻痺していた。

 

「……服は?」

 

 辛うじて出た言葉がこれである。なんとも情けない。

 

「水浴びしたついでに洗いました」

 

 答えるラピスの顔は、それが何か?と言いたげな表情だ。

 

「いや、そうじゃなくて……とりあえず服着ようぜ」

 

 思春期男子にとって、女性の生まれたままの姿というのは精神を潤s間違えた破壊しかねない危険なものなのだ。元思春期男子のオレも、理由は違うが多少のショックを感じていた。

 

「洗ったのでないです」

 

 なん、だと……?

 予想外だ。オレの中の女性の衣服に対する常識にひびが入る。

 いやでもアラクネ族って魔物だから人間の常識が通じる方がおかしいのか……?

 

「……まあ、いいや」

 

 最終的にオレは、思考を放棄した。裸のラピスが気にしていないのに、オレが気にするのもおかしな話だし。

 

「ところで白髪さん。今日は何をするんですか?」

 

 思い出したように、ラピスは聞いてきた。

 

「特には考えてないな。聞いてきたってことは、何か考えていたのか?」

「ええ、白髪さんしばらくはこの村にいることなので、村を案内しようかと。あと村の人たちにも滞在することを知らせる必要がありますし」

「なるほど、なら今日はそうしよう」

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 3時間後

 ドアを開けて外に出ると、まだ朝の今でも十分に強い夏の日差しが焼き殺さんとばかりに降り注いでくる。まあ、転生したオレは不自然なほど真っ白なのでむしろ焼けたほうがいいのかもしれないが、この体って色素作れるのか?

 

 オレに続いて、ラピスが出てくる。スライムたちはすでに定位置についており、オレ達はそのままラピスが先導するままに村を廻り始めた。

 

 最初についたのは集会場らしき建物だった。ラピスに聞いてみると、この村の【狩人】たちが使っている場所らしい。

 

「どうもー、おはようございまーす」

 

 ラピスに続いて、オレも中に入る。

 

 中には――

 

「おはよう、昨日のことは聞いたわ。災難だったわね」

「ねえねえねえねえどんな魔物だったの?大猿?銀狼?それとも――」

「こら、少しは自重しなさい。……でもあなたたちが負けそうになった魔物、気になるわね」

 

 地球の町中を歩けば10人中8人は振り向くような美女たちがいた。そんなアラクネたちはラピスに気付くと、次々と話しかけた。

 

「ところで助けられたって言ってたけど、もしかしてその子?」

 

 ラピスと会話していた一人が、オレの存在に気付く。180センチはあろうかという高身長の、“お姉さん”な見た目の人だ。いや、“お姉さん”な見た目なのはオレとラピス以外のここにいる全員だ。

 

 その言葉に、室内の注目が一気にオレに集まる。注目されることに慣れていないオレなので、どうすればいいかわからずとりあえず笑ってみた。

 

「「「…………」」」

 

 無言でじーっと見つめてくる“お姉さん”たち。え、なに?なんか変なことした?つーか転生してからこんな状況に合うの多いな、オレのコミュ力のせいなのか?

 

「……かわいい……」

「え!? こんなかわいい子があんたたち三人より強いの!? こんなかわいい子がその、あんたたち三人でも負けかけた大蛇を一撃で倒したの!?」

 

 人によっては貶しているようにも聞こえるいいようだが、普通に驚いているだけだろう。

 

「ええ、すごかったですよ。私たちの武器じゃかすり傷しかつけられないような硬い鱗をあっさりと首ごと真っ二つに切っちゃってました」

「そういえば、人間が“鉄”とかいうもので作った武器を使っていたっけ。骨なんかよりよっぽど切れる鉄でそれって、本当に災難だったわね」

「というかどうやったらそんなの切れるのよ!ねえ、えーっと白髪ちゃん?いったいどうやったの?」

「え?あ、えーと……なんか木に乗ってジャンプして近づいたらそのままばっさりと?」

 

「「「いや、それじゃわからないわ」」です」

 

 ですよねー。ていうかラピス、お前見てたのになんで説明求める側にいるんだ。

 

「なら、実演しますか?ちょうどいい的があればだけど……」

「なら森に行こう。よし、そうと決まれば早速出発だ!」

 

 オオーー!男勝りなアラクネの掛け声に、周りのアラクネ全員で返す。どうやらここにいたのは全員体育会系だったようだ。

 

 

 

 静かな森の中に、突如轟音が響き渡る。直径2メートルもある大木が倒れたことによって発せられたそれは、森の生物たちを騒ぎ立たせた。

 

 言わずもがな、大木を倒したのはオレである。黒大蛇に比べてはるかに柔らかいただの大木であるが、まあ実演するにはちょうどいい太さだったから的に選んだ。

 

「こんな太い木を簡単に切り倒すなんて……疑ってたわけじゃないけど、本当にすごいわね」

 

 実演を見についてきたアラクネたちは唖然としていた。誰かが上げた驚きの声は、みんなの心を代弁したものだろう。

 

「剣のおかげでもあるよ。ぶっちゃけこの剣、自分でも性能がおかしいと思うし」

 

 そういって、剣を地面に突き刺して見せる。すると真っ先に3人ほどのアラクネが食いついた。黒髪といい、結構武器に興味津々なアラクネがいるのは何故なんだ?

 ちなみに言葉使いがフランクになっているのは、そんな堅苦しい喋り方じゃなくていいって言われたから変えた。しかしラピスもいつも敬語なのに、いいのかね?

 

「鉄みたいな見た目してるけど、こんな細身の鉄剣じゃあ切れるわけがないし……他の金属か?」

「そういえば、過去に“みすりる”なる金属でできた武器を持っていた人間がいましたけど、それでしょうか?」

「いや、あれとは色が違う。“みすりる”はもっと、こう……」

 

 他の人を置いてけぼりにして、3人は議論を始めていった。他にも剣に興味があったらしいアラクネがいたが、3人のノリについて行けず一歩踏み出した姿勢で硬直してた。残りはラピスを残して惚けている。

 

「えっと……とりあえず、あの剣って人間が作ったものなの?」

 

 惚けていた一人がオレに聞いてきた。

 

「ああ、いや、オレだよ」

「え?」

「だから、創ったのオレ。あとまだ勘違いされてるっぽいから言っておくけど、オレ人間じゃないからな?」

「ええ!?てっきり人間か「「「この剣キミが作ったの!?」」」」

 

 質問したアラクネの驚きの声に、議論していた3人が驚きの声をかぶせてきた。いや、驚きというよりは、こっちに食いついてきた声かな。

 

「あ、ああ」

「作ってくれとは言わない!せめて作り方だけでも教えてくれ!いや教えてください!」

 

 もう土下座しそうな勢いだ。

 

「いや、なんというか……能力で作ってるから、教えるのは無理なんだ」

「マジ……ですか……?」

「うんうん、マジだからさその絶望しているような表情止めて」

 

 悪いことしているように思えてからマジで勘弁して。すごい心に刺さる。

 

「ほしいなら作るから。武器ぐらい作るから」

「マジですか!?」

 

 さっきと全く同じセリフなのに、籠っている感情は全く逆だった。

 

「うん、マジだからさちょっと離れてくれ。そんなに近づかれるとこいつらが驚いちゃうから」

 

 今は懐いているとはいえスライムたちの警戒心はかなり高い。気を許していない相手が間近にいるというのはその警戒心を煽り立てることだ。実際、青スライムはプルプルと震えており赤スライムは今にもとびかかりそうな様子だ。

 

「ところで白髪さん」

 

 ん?

 

 今までほとんど空気と化していたラピスが、何かを聞きたそうに話しかけてきた。

 

「少し気になったんですけど、白髪さんって種族何ですか? ここら辺には人型の魔物って私たち以外いないはずだから、どこか遠くから来たということはわかるんですが……」

 

 種族。種族ねえ……

 やべえ、わからん。相棒、オレってなんていう種族なんだ?てか種族として存在するのか?

 

(存在しません。マスターみたいな不死身性のある魔物が種単位で存在していたら人類は滅んでいます)

 

 やっぱりな。てか、オレそんな化け物に転生しちまったのか。改めて考えると、ルシファーってすごい。

 

(褒めても何も出ませんよ)

 

 で、ラピスにはなんて答えたらいいんだ?

 

(……さあ?)

 

 デスヨネー。

 

「……あー、なんていうかその、だな」

「? 答えられない理由があるのですか?」

「いや、そうじゃ無くてな……オレ、自分の種族がないんだわ」

「……?………………あ」

 

 少し考えるそぶりをすると、何かに気付いたような声を出し、深々と頭を下げてきた。

 

「心中、お察しします」

 

 そして真剣な声でそう言った。え?なに?なんかひどい勘違いされてない?

 

(恐らく、何かしらの事情で種が滅んだのだと勘違いしていると思われます)

 

 ああ、なるほど。って違う違う!なんで今の発言でそんな勘違いが生まれるんだ!

 

(「自分の種族がない」を「自分の種族はもうない」と解釈したのでしょう)

 

 分析ありがとうございます。じゃない。

 

「あー、ラピス? 種族がないって、そっちの意味じゃなくて……」

「いえ、いいんです。今の質問は忘れてください。」

「いや……だから「そういえば、キミが狩った大蛇はどこら辺にあるんだい?できれば他の魔物に食われる前に回収したいんだけど」

 

 誤解を解こうとするもラピスに止められ、それでも諦めなかったら話を変えられた。何なんだこの一体感は。テレパシーでも使えるのか?

 

(昨日説明したようにアラクネ族は簡易的なテレパシーが可能ですが)

 

 そうでした。

 

「あー……今持ってるよ」

 

 まあ、オレの種族は実際たいして重要じゃないから、変えられた話に乗る。

 

「え?どこに?」

 

 案の定、首をかしげる。

 

「魔法でちょちょいとな。なんなら出して見せるか?」

「そんな魔法があるのか……ああ、聞いたところかなりでかいんだろう?」

 

 コクリと頷く。

 

「なら村の解体場に入らない可能性があるから、ここで解体を済ませてしまいたいな。お願いする」

「ああ、了解。」

 

 言いながら、アイテムボックスを空中に開く。実演に木を切ったおかげでできた広場に、ドスンと鈍い音を発しながら大蛇が落ちた。

 

「この後も村を回ってみたいから、ちゃっちゃと終わらせよう」

「……今のが、魔法?」

「ん?そうだけどどうかしたか?」

 

「いや……すごいな、魔法って」

 

 感動したように、そうこぼす。

 

「とりあえず、解体を始めようぜ」

 

 アイテムボックスから短剣を取り出し、再度そう声をかけた。

 

 

 魔物の核さえあればいいオレと違って、アラクネたちが必要なのはむしろそれ以外だ。なので解体も皮を剥ぎ、内臓を取り出して骨と肉を分ける丁寧なものになる。

 

 結局解体が終わったのは、太陽が頭上を通り過ぎて傾いてきたのが見てわかるほどの時刻となった。




読んでいただきありがとうございます
書いてるうちにめっちゃ脱線しちまったやつです
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