召喚勇者は死にました   作:黒桜@ハーメルン

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32 少しは自重を覚えようか

 

 なぜ私は、彼がそういった時に止めなかったのだろう。

 

 いや、別に後悔をしているわけじゃない。後悔するような事態なんて起きなかったし、その時の私は何故かそうならないと確信を持っていたようだ。

 

 地底で見たあの光景を、私は一生、忘れることはないだろう。

 

 

 小さなコンサートホールくらいはありそうな大広間を、大小さまざまなゴブリンが埋め尽くしている。中央のゴブリナを背に武器を構えるその姿は、普段のゴブリンからは想像もできないものだ。

 

 彼ら普通に戦うとなれば、例えランク6冒険者であろうとも苦戦は免れないだろう。ゴブリンのレートは最底辺だが、それは連携を取らないことに起因する。彼らには連携をとるほどの知能がないのだ。

 しかし彼らは、その頭脳となる指揮官を手に入れた。その結果何が生まれるか。

 簡単だ。知能のないゴブリンたちは、知能を持つ上位種に絶対服従。命令さえあればその命すら投げ出す、死すらも恐れることのない軍隊が生まれてしまうのだ。

 

 

「……ブランさん。なんか思っていたのより多くない?」

 

 広場に繋がる洞窟の、曲がり角に隠れて様子をうかがう。ゴブリンたちは洞窟に住んでいるので暗視はできても、耳や鼻はあまりよくないようだ。こちらに気付いた様子は全くない

 

「そうか?だいたい予想通りだとは思うんだけど……」

「いや、アレどう見ても200匹はいると思うんだけど」

 

 うんだから予想通り。というか、視た通り242匹いる。入る前に視たときより多くなっているのは、外に出ていたのが戻ってきたからだろう。

 

「大丈夫だ。問題ない」

「……まあ、そう豪語するからには何か作戦が―」

「作戦なんてないぜ?」

「え?」

 

 当たり前だろう?ゴブリン如きに作戦なんていらない。

 

「正々堂々、正面から叩き潰すさ」

 

 曲がり角へと一歩踏み出す。同時にそれはゴブリンの視界への侵入を意味し、甲高い奇声が空間を支配した。

 

「ディナ」

「うん? 主、なに?」

 

 鼓膜を破りそうな反響の中、オレはディナへと“指示”を出す。

 

「使っていいぞ」

 

 途端に、ディナの表情が喜一色へと変わる。まるで小学生の、1日に1時間だけのゲーム時間がやってきたときのようなそんな表情。事実オレはディナに、指示があったときと緊急時以外はそれを使うことを禁止していた。

 この数であれば、使わないで殲滅するのは面倒だろう。

 

 ディナはコートの袖に手をかけ、ボタンをはずしていく。すると袖の肘より先が取り除かれ、同時にディナはその外れた袖を《胃袋》へと収納。

 

「よーっし、《喰手》!出ろ!」

 

 能力(スキル)鍵言葉(キーワード)を唱えると、掌が紅に染まる。そして一瞬のうちに紅は広がり、肘あたりまでを覆いつくした。

 

 さて

 

 アイテムボックスから白剣を取り出し、大広間へと一歩踏み出す。

 

 蹂躙劇の始まりだ。

 

 

 こちらに短剣を構えるゴブリンに向かって、ディナが一直線に突っ込む。当然のごとく待ち伏せをしていたゴブリンはディナへと短剣で攻撃をするが、ディナがそれを紅の腕で触れると、振り下ろした短剣は刃の部分が消滅していた。

 ありえない事態にたじろぐゴブリン。その頭狙って、ディナが進む勢いのまま右手を振るった。

 

 全身鎧(フルメイル)をも殴り飛ばすディナの一撃が、ゴブリンの上頭部をえぐり取る――破裂したのではない、まるでプリンをスプーンですくった時のように、硬い頭蓋の手の振れた部分がきれいさっぱり無くなっていた。

 

 身体を制御することができなくなったゴブリンの死体は、その場に崩れ落ちる。その間にもディナは次の獲物を定め、慄くゴブリンの軍団の中へと猛然と突入していった。

 

(久しぶりの狩りでテンション上がってんなー)

 

 間合いに入るゴブリンを次々と切り捨てながら、ディナの戦いを眺めてオレはそんなことを考える。このペースでいけば、多分五分ほどで殲滅が終わるだろう。《魔刃》を使う必要もなさそうだな。

 

「ガギャギャァ!」

 

 突然、ゴブリンにしては野太い鳴き声が洞窟内に反響する。するとオレの周囲にいたゴブリンが一斉に離れ、そしてクイーンゴブリナがいる方向から、身長2mはある一匹の巨大なゴブリンが現れた。他のゴブリンと違い、装備もしっかりしており肉付きもがっしりとしている。

 ゴブリンの上位種、ジェネラルゴブリンだろう。女王を守る親衛隊といったところか。

 

 「ギャギャギャ!!」

 

 再度ジェネラルゴブリンが吠えると、オレに向かって錆びの乗った大剣を構える。周囲のゴブリンは武器こそ手放していないものの、突っ立っているオレを中心に円を作っていた。

 

 これはアレか? 一騎打ちの誘いなのか?

 

 とりあえず剣をジェネラルに向けると、醜い顔がさらに醜くゆがむ。一際大きく吠えたと思うと得物に見合わない俊敏さで接近し、オレの脳天目がけて大剣を振り下ろした。

 

 単調すぎるし、遅すぎるんだけどね。

 

 右足を引き、斬撃を躱す。そして回転する勢いのまま剣を振り、ジェネラルの首を刎ねあげた。

 

 くるくると回る首が地に落ちるのと同時に、ジェネラルの巨体が前のめりに倒れる。

 

 周りを囲むゴブリンは動かない。いや、動けないと言ったほうが正しいだろう。頼れる親分が、一瞬のうちにやられてしまったのだから。

 

「まあ、そんなことオレには関係ないけど」

 

 再びオレは歩き出す。そして動かない肉の的を、ただ斬って斬って切り進んだ。

 

 見る見るうちに、足元がゴブリンの死体であふれていく。そしてついにクイーンゴブリナと取り巻きジェネラルが2匹、偶然にも蹂躙から逃れることができたゴブリンが数匹だけとなる。

 

 逃げようにも、クイーンはこの広間から逃げることができない。惰眠と生殖のみの日々に巨大な体は太りに太り、どの通路も通ることは不可能。

 追い詰められたクイーンは、悲鳴にも似た怒号を上げる。それに呼応するようにジェネラルたちは武器を構え、2匹がかりでディナへと襲い掛かった。

 

 一対一より、二対一。強力な個を数で押すというのは常套手段ではあるが、この場合はいささか、いやとてもじゃないが十分であるとは言えないだろう。現に今、2匹のジェネラルはディナに心臓を食われて血だまりを作っている。

 

 クイーンはここで、自分を守る術をすべて失った。それでもなお手下を招集しようと吠え、必死に重い体で逃げようと這いずる。

 

「やー!」

 

 無防備なその背中を、ディナは躊躇なくえぐり取った。

 

 一瞬、大きく痙攣するクイーンゴブリナ。口から血を吐き足がもつれたかと思うと、そのまま周りと同じ、物言わぬ肉塊と化して地面に倒れ込んだ。

 

 ディナは《喰手》を解除すると、大きく背伸び。とてとてと無邪気に走り寄るその姿は、頬に着いている返り血とのギャップが半端じゃない。

 

 ……少しは躊躇い持とうよ。ほら、ユースティも引いて――引いてない?

 

 ディナに顔を向けるユースティは、しかしどことなく焦点が合っていない。どこか遠くのものを見つめているような目だ。

 

「ユースティ、大丈夫か?」

「……ゴブリンの軍団が、こんなに早く……」

 

 どうやらユースティは、衝撃的な光景に放心状態の様である。このままではどうしようもないので、オレはどこかの本で読んだ、大きな音がでる手の叩き方を彼の耳元で試してみる。

 

 パァン!

 

「うわ!?」

 

 洞窟全体に響くような乾いた音に、ユースティは驚きの声を上げ耳を抑える。

 

「え? え? 何? 今度は何?」

「オレだよ、ユースティ」

「……なんだ、ブランさん、驚かせないでよ」

 

 ほっと溜息をつくユースティ。

 

「と言われても、お前が放心してたからこうするしかなかったんだけどな」

「……いやだって、こんな状態を見たら誰でも腰を抜かすと思うんだけど」

 

 そういって彼は、オレ達が起こした死屍累々の惨状に目を向ける。ちょうどディナが転がるゴブリンの死体を、一か所に積み上げていた途中であった。

 

「そうか?そんなに大したことじゃないと思うけど」

「……こんな簡単にゴブリンの巣を全滅させられたら誰も苦労しないよ」

 

 先ほどとは明らかに違う意味でため息を吐くユースティ。まあ確かに、それもそうか。

 

 ちなみにユースティ、お前は一つ忘れている。確かにオレ達は狩りでは苦労しないが、今から別のことで苦労するのだ。

 

 獲物を得た狩人が、必ずしなければいけないこと――すなわち、解体作業である。

 

 

 

 結局その後、30分の時間をかけてオレ達はゴブリン200匹弱の解体を終えた。たった30分で終えることができたのは、ひとえに獲物がゴブリンだったからだろう。耳と核を回収できればそれで終わり。骨も皮も使い道などなく、肉は人間にとっては臭くてとても食えたものではないらしい。

 うちのスライム2人はそれを食うわけなのだが、骨皮肉関係なくすべて食す彼らに解体は不要だ。

 

 そんなわけで目の前には3つの山が。一番低い山はゴブリンの核が積まれており、中間の山は討伐証明部位である耳。そして一番、他2つと比べて圧倒的に大きい山はゴブリンの死体を積み上げたものだ。少し離れた位置のその山は、麓に赤い湖を作っている。

 

「こんなもんか……ディナ、まだ駄目だからな?」

 

 物欲しそうな目で肉の山を見つめるディナにそう注意をする。食べるのはいいんだけど、流石に人前だしな。最近ずっと人型になってたせいか、食事の時もスライムに戻らなくなってるし……未調理の魔物は《喰手》を使って食べているのが唯一の救いか。

 

「えー……わかったー」

 

 口を尖らせながらも、ディナは素直に従う。そして山から飛び出た1匹のゴブリンの頭を突っつくディナを横目に、オレは大きめの布袋を2つ取り出した。

 

「ユースティ、悪いけど核回収するの手伝ってくれないか?」

「え?あ、うん、わかった」

 

 頷くユースティに布袋をいくつか渡す。そしてオレも耳の山に手をかけ、無造作に広げた袋の中へと放り込んでいく。

 

 解体作業とは違い、ものの数分で山が消えた。

 

「ブランさん……これ、結構重いね……」

「まあ、200個近くあるからなあ」

 

 同時に回収を終えていたユースティから袋を受け取り、耳の入った袋ともどもアイテムボックスに放り込む。

 

「……ブランさん達って、ほんととことん苦労しなさそうだなあ」

「ん?どういうことだ?」

「なんでもないよ」

 

 なんか呆れられた気がするんだが……まあいいや、さっさとゴブリンの死体も回収してここから出よう。時間的にはまだ昼になっていないはずだ。

 

「あ、ブランさん、ゴブリンって素材に全く使えないから持って帰っても意味ないよ?」

「うん?あー……まあ、気にしないでくれ」

 

 流石に食べるためって言えない。それもディナ達が食べるって言ったらどんな顔されるかわからない。

 

「さて、出るか」

「道は覚えてる?」

「もちろん」

 

 視界に映る光の筋を辿れば問題ない。流石相棒、オレが忘れていたことを平然とこなしてくれる。

 

 灯りをともしながら洞窟を進む。ゴブリンのいなくなった帰路は、しかし上り道であったために往路と同じくらいの時間がかかった。

 

「あ、ブラン様。ユースティさんもお帰りなさい」

「やーっと返ってきたっす」

 

 洞窟を出ると、出迎えたのはなんら変わった様子のない2人。つい2、3時間前に分かれたばかりだから変わるはずもないけど。

 

「中のゴブリンはもう全部倒したので?」

「ああ、バッチリな……外の方はどうだったんだ?」

「この通りですよ」

 

 そういってラピスは、丸々膨れた袋をオレに見せる。かなりの数を狩ったみたいだ。

 

「……ユースティ? どうしたんだ?」

 

 ラピスたちの成果を受け取ってアイテムボックスに放り込むと、後ろのユースティがしきりに周囲を見回していることに気付く。

 

「いや……ゴブリンを倒したにしては随分ときれいだなって思って……」

 

「ああ、そういうことね。まあ気にするな」

 

 やったのがユズハだしな……血の一滴も残さないって、ほんとどんだけ食いしん坊なんだか。

 

 釈然としない、って表情のユースティにはあえて触れずに、オレは四人に声をかける。

 

「ゴブリンはこれで片が付いたし、もう一つの依頼――大森林に向かおう」

 

 その後オレ達が東の森を出るまで、ゴブリンの一匹とも会うことはなかった。

 

 

 

「……よし、通っていいぞ」

 

 真新しい冒険者証を衛兵から受け取り、オレ達は西の門をくぐる。

 時刻は黄昏時。太陽は森の向こうに沈んでおり、赤い陽光が雲に映る。

 

 午前中と違い、ワームの依頼は順調に終わらすことができた。獲物が見つからないというようなこともなく、また大量発生とかいった予想外の事態が起きることもなく。

 せいぜいスライムたちが欲張って森を駆け回り、10匹ほど余分に狩ったあげく夕の鐘に遅れそうになったくらいだろう。

 

 「ふう……何とか間に合ったようだね」

 

 帰り道はほとんど走りっぱなしだったため、ユースティは軽く息が上がっている。それでもへとへとに疲れ切っていないのは、伊達にランク四まで登ってきただけではないようだ。

 

 「悪いな、こいつらのわがままのせいで」

 「はあ、はあ……主、オレも頑張ったんですから労って欲しいんすけど……」

 「お前は知らん」

 

 原因が何言ってるんだ原因が。

 

 「あはは……ユズハ君、お疲れ様。それにしてもブランさんもだけど、ディナちゃんもすごいよね。あんなに走ったのに全然疲れているように見えないよ」

 

 まあ、ディナだからな。食べたもの全部が『胃袋』に栄養として収納されてるわけだし、軽く1年くらいは何も食べなくても生きれるくらいは溜まってるんじゃないか?

 

 「フンフーン♪」

 

 ちなみに当の本人は今も軽快な足取りで前を歩いており、鼻歌まで歌いだす始末だ。

 

 大通りに出たところで、夕の鐘が鳴り渡る。しかし商業街であるそこが閑散とするはずもなく、むしろここからが本番だとでも言いたげな賑わいを見せていた。

 

 人波に流され、飲まれつつもやがて商業街を抜け出す。そしてすっかり暗くなった街並みの中、ほどなくしてオレ達は冒険者ギルドにたどり着いた。

 

 木製の扉を引き、中に入る。外とはまるで対照的に、ギルド、酒場は明るく、そして人であふれかえっていた。

 

 「あ!やっと帰ってきた!」

 

 受付に座るレヴィがオレ達に気が付き手を振ってくる……今まさに手続きをしている冒険者をほったらかしにして。

 

 とりあえず仕事しろとジェスチャーを送ってから、レヴィのいる列に並ぶ。特に長い時間を待つこともなく、オレ達の順番が回ってきた。

 

 「ブラン。ずいぶんと遅かったじゃん」

 「そういわれてもな……まあ、確かにギリギリだったけどさ」

 「ふーん……依頼は確か、ゴブリンの討伐とワームの皮だったわね。どうだった?」

 

 特に心配した様子もなく、レヴィは気軽にそう聞く。

 

 「ちゃんとこなしてきた。討伐証明とかはここで出してもいいのか?」

 「……ねえ、それってもしかしてかなりの量だったりする?」

 

 初日の件があるせいか、声を落としてレヴィがそう聞いてくる。

 

 「結構多い……とは思う」

 「よしわかった、ブラン倉庫に行こう。君がそう思っちゃうなら絶対多いから」

 

 なんだろう……馬鹿にされたわけでも何でもないのに、こう、釈然としないんだが。

 

 受付から出たレヴィの後に着き、いつぞやにも入った倉庫へと入る。流石にここには明かりがついておらず、手提げランプで照らさなければ何も見えない。

 

 「じゃあ、ここにお願いね」

 

 頷き、アイテムボックスを開く。まずはゴブリンからかな。

 

 「あれ?これだけ?」

 「……いや、これだけでも十分な量だろ」

 

 どんだけ警戒されてたんだよ。一応巣を丸々一個壊滅させてるんだぜ?

 

 「ちょっと驚いた……でも、これだけだったら私でも何とか出来そうかな」

 

 そういってレヴィはランプを持ったまま、片手で器用に袋を開き――

 

 そして、動きが止まる。

 

 「……ねえ、ブラン、ちょーっと聞きたいんだけどさ……」

 

 ぎこちない動きで、レヴィがゆっくりと振り向く。その表情は驚きと困惑と、若干の怯えを混ぜ合わせたようなもの。

 

 「もしかしてこの4つの袋って、全部ゴブリンの耳、だったりする……?」

 「そうだけど……」

 

 オレが答えたのとほぼ同時にレヴィは頭を押さえる。

 

 「……うん、とりあえずこれは一旦置いておくわ。ブラン、ワームも……流石にこの倉庫に入るよね……?」

 「多分大丈夫だ」

 「……ものすごく不安を煽る返答ね」

 

 まあ、おそらく横に並べたら入らないかもな。ここって結構小さめだし。

 

 とりあえず、狩ったものの中でも大きい個体を5体、地面に並べる。数匹程度の超過は予想していたのだろう、レヴィの表情に変化はない。

 

 2段目にワームを4匹、一段目のくぼみに載せるように積み上げたところレヴィの表情が強張り始める。続いて3段目、4段目……最後に頂上に1匹積み、きれいな3角形が出来上がるころにはまるで笑い方を忘れてしまったかのような、ものすごく吊った笑顔がレヴィの顔に浮かび上がっていた。

 

 「これで全部だけど……レヴィ、大丈夫か?」

 「え、ええ……ちょっと狩りすぎじゃない?」

 「こいつらが欲張っちゃってな。帰りが遅くなったものそれが原因だ」

 「……そういうことだったのね」

 

 はあ、とため息を吐き、レヴィは再びワームの山に目を向ける。

 

 「とりあえず、この量を今日中に解体、裁定するのは無理ね。明日の夕方……いや、昼くらいまで待ってくれるかしら」

 

 別に今すぐ報酬が必要ってわけでもないから、オレとしては問題ない。

 

 「ユースティさんはそれで大丈夫ですか?」

 「はい……というより、私何もしてないから報酬を受け取っていいのかな……」

 「……あー、なるほどね」

 

 ユースティの言葉から察したのだろう、曖昧な苦笑いを浮かべるレヴィ。

 

 「報酬の分割方法は当人同士で決めることだから、私からは何も言えないわ……基本報酬ならすぐに出せるけど、どうする?」

 

 少し考えて、オレは頷きを返す。

 

 「じゃ、表に戻りましょ。ここに置いたものはギルドが責任もって保管するわ」

 

 

 

 

 ギルドの外に出ると、真冬の乾風が頬を撫でる。夜の帳が降り切った今、薄暗い街灯と窓から漏れる明かりが唯一の道標だ。

 

 「ブランさん、今日はありがとうね」

 「どういたしまして……それで、どうだった?」

 

 オレがそう尋ねると、ユースティは半笑いを浮かべる。

 

 「なんていうのかな……想像より上で、もうよくわからなかったよ」

 「まあ、自分でも多少の無茶苦茶をしてる自覚はあるからな」

 

 でもこれがオレ達の実力であり、通常なのだから仕方ない。

 

 「ユースティ、これを」

 

 ポケットから大銀貨を5枚取り出し、ユースティに渡す。

 

 「え?でも私、ほとんど何もして……」

 「ワームを一体倒しただろ?あの依頼の報酬が大銀貨4枚だったから、これでちょうど4等分だ」

 「……ホント、ブランさんたちはすごいよ」

 「こういうことはしっかりと決めときたいだけだ」

 

 少しためらいがちに、大銀貨を巾着にしまい込む。下を向く彼の横顔は、どこか寂しそうに見えた。

 

 「……機会があったら、また一緒に依頼でも受けるか?」

 「え?」

 

 なのでオレのこの言葉は、きっと意外なものだったのだろう。

 

 「まあ、なんだ。今日みたいにオレ達の依頼にユースティが混ざるのは厳しいだろうけど……なんか困ったときは、言ってくれれば手伝うよ」

 

 言いながらもだんだんと小恥ずかしくなって、オレはついそっぽを向いてしまう。

 

 「……ありがとう。その時は、よろしく頼むね」

 「ああ。任せろ」

 

 差し出された右手を握り返し、オレ達はお互いに硬い握手を交わす。

 

 「それじゃあ、また」

 「バイバーイ!またねー!」

 

 ディナが元気よく手を振り、オレ達はそれぞれ逆方向に帰路に着いた。

 




読んでいただきありがとうございます。明後日に次の話を投稿します
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