彼女はエスパー   作:coltysolty

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茉莉沙は街のブティックに勤める店員だ。
彼女自身のもつ特殊な能力のせいで恋愛には臆病だった。

彼女に関心を持った一人の男が彼女の能力を見抜く。
茉莉沙と男の微妙な関係が、茉莉沙の心を次第に動かしていく。



雨男ですか?

桜のつぼみがふくらみはじめた暖かい日差しが降り注ぐ午後。

茉莉沙は店の入り口の扉を開けた。

 

「いらっしゃいませ」

 

笑顔で客を迎え入れると、中へ案内し声をかけた。

 

「どうぞごゆっくりご覧下さい」

 

(この客はただの冷やかしだな・・・これ以上の声かけは必要ない)

 

茉莉沙は客に微笑みながら会釈をすると、すこし離れた場所から

客の物色する様子を窺っていた。

 

(あー、高くて手がでないわ。この辺のデザインは好きなんだけど

カードでもちょっと無理っぽい。だめだ。ボーナス後に来よう)

 

「あの、このチュニックの1サイズ下で、別の色ってありますか?」

客が茉莉沙に尋ねた。

 

「こちらの商品でございますね。少々お待ち下さい。」

茉莉沙は一旦店の奥に引っ込むと、在庫を確認し、戻ってきた。

 

「サイズのご用意はございますが、お色はこちらにございます

ライトブルーとライムグリーンの二種類がございます」

 

「そっか・・・暖色系がよかったんですけど」

 

(断る理由を探しているのね)

 

「暖色系ですと、オレンジでしたらお取り寄せできますが」

 

「んーーー、そうですか・・ちょっと考えてからまた来ます」

 

「かしこまりました。またのご来店をお待ちしております」

 

こういう客はあまり執拗に他の服を勧めても、買う気がないのだから

いろいろ注文をつけられるのは目に見えている。

 

茉莉沙は、丁寧に応対し、客を見送った。

アパレル業界での業務は長くなかったが、

茉莉沙自身の特殊な能力のおかげで、ここでの売り上げは茉莉沙が一番だった。

 

(今日は天気も悪いし、お客さんはあまり来ないようだわ。

在庫チェックをして、すぐにお店を閉められるよう準備しよう)

 

茉莉沙は目玉商品とショールームに展示してあるもの以外の商品を

奥の方から片づけていった。

 

すると、又、一人の客が店の扉を開けた。

「すいません・・・!まだお店やってますか?」

 

「いらっしゃいませ。まだ閉店ではございませんので

見て頂いて構いません。どうぞごゆっくり」

 

茉莉沙は笑顔で、男性客に感じよく応対した。

 

(あー、フォーマルなんて着たことねぇんだよな。スーツとかって

どうやって選ぶんだ?結婚式とかってめんどいな。あの店員さんにきいちゃおうかな)

 

「あ、あの・・・スーツなんですけど。選んでもらったりとかできますか?」

 

「はい、どういった感じのものをご希望されますか?」

 

「実は友人の結婚式なんですよ。二次会はでないので、とりあえず式だけに

出席しようかと思ってるんですが、スーツとかって就活の時に着ただけで

結婚式とか用のって、持ってないんっすよ」

 

「フォーマルでしたら、こちらにございますので、お好きなデザインを

御試着いただいて結構ですよ。」

 

「あ、じゃ、これとこれ、いいですか?」

 

「どうぞ。こちらが試着室でございます」

 

男はスーツ2着を携えて試着室に入っていった。

 

「あ、あのぉー、見てもらえますぅ?」

 

「はい、お客様。失礼いたしますね。カーテンをお開けいたします」

 

男は腕が長かったため、袖まわりに違和感があった。

 

「お客様は腕が長くていらっしゃいますので、このサイズよりワンサイズ

上をお召しになられたら如何でしょうか。脇の詰めなどは、このタイプでしたら

無料で行っております」

 

「あー、じゃ、ワンサイズ上ので、詰めてください。どれぐらいかかります?」

 

「1週間お時間をいただけましたら、仕上がります。」

 

「それじゃ、お願いします。」

 

「かしこまりました。それでは採寸させていただきますね」

 

(え?採寸とかすんのかよ・・・今日、おれ下着きったねーの

着てるから、見られたら恥ずか死ぬぜ・・・やべえ)

 

「お客様、採寸はこのままで結構です。肩と胴回りと

腕の長さを測りますので」

 

(え゛?オレの心の叫び聞こえたの?)

 

「それでは、こちらを向いていただけますか?」

 

「あ、はい・・・・」

 

茉莉沙は手際よく、スーツの上から、肩幅と

腕の長さを測り、スーツの中に手を回し、胴回りを測った。

 

採寸が終わると、名前と連絡先を簡単に

申込書に記入して貰い、茉莉沙は控えを男に渡した。

 

「お仕上がりは、1週間後になります。ご来店をお待ちしております」

 

「よろしくお願いします。」

 

男が店を出た途端、バケツをひっくり返したような、どしゃぶりにやられた。

茉莉沙は急いで、店のシャッターを閉めた。

 

(この店、感じは悪くなかったんだけど、なんつーか

なんか、オレが考えてること、見透かされてたよーな気がする・・・

まぁ、店員さんだから、客慣れしてんのかもしんないけど・・・

やべ!料金聞くの忘れてた!!!!)

 

男は、急いで店へ引き返した。




相手の心が聞こえてしまうやっかいな力のおかげで
恋愛には臆病だった茉莉沙。

ところがこの一見チャラそうな男との出会いから
人生が変わってくる・・・・
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