彼女はエスパー   作:coltysolty

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晴れ女と雨男が一緒にいると
お天気はどうなるのでしょう?


晴れ女と雨男

事情聴取を終えて鈴木煤無は茉莉沙の病室に戻ってきた。

どうやら、今回の犯人捕獲劇の一幕に煤無が関わっていたようだ。

 

襲撃犯人が茉莉沙を捕らえ立てこもっていたとき

煤無と真己人そして木菟がかけつけた。

そこで見た光景はあまりに衝撃的で、だれもが息をのみ

ただ立ち尽くすだけだったのに、煤無はとっさに持っていた

Y字型の木の枝でつくったパチンコを、犯人めがけて

飛ばしたというのだ。

 

それがちょうどうっすらと開いていた自動ドアの隙間を通り抜け

犯人の眼球に直撃したものだから

襲撃犯はパチンコ玉を見事に食らって悶絶したらしい。

 

現場検証をした警察官が発見したパチンコ玉と、

現場付近に居合わせた煤無の手に、パチンコ用の輪ゴムのついた木の枝が

あったため、事情をきかれることになったのだ。

 

まず、居合わせた理由については、警察はすぐに納得した。

ところが、なぜそんなパチンコを持っていたか?ここが問題だった。

 

煤無によれば、なんでも近所のこどもに手製のパチンコを

みせびらかしたというのだ。いつも、おにいちゃんおにいちゃんと

慕ってくる幼稚園児に作ってみせて、一緒に遊んだと。

幼稚園児にパチンコ玉飛ばさせるなんて、危険極まりないではないか!

 

という警察官の説教にも

 

「いや~。俺だってそこまでバカじゃないっすよ。

きゃわいぃ幼稚園児には、プカチュウ柄の軽いスポンジ玉で

飛ばしてやったんっす。ほら」

 

と、プカチュウが描かれた黄色いスポンジ玉を

警察官に手渡した。

 

にわかに信じがたかったが、別の警察官に連絡し

煤無が言っていた公園を捜索すると、煤無が持っていたものと

同様のスポンジ玉が発見され、またこどもたちやその保護者からも

証言がとれたため、煤無は無罪放免となった。

 

「・・・・ということだな。うん。まあ、おれっち一瞬

重要参考人になっちまったってことさぁ~」

 

煤無は頭をボリボリ搔きながら状況を説明した。

 

「にーちゃん!!!!なに呑気なこといってんの!!!

こんなすごい事件に巻き込まれて・・・てか、かってに

巻き込まれにいって!下手すりゃ、まっきーのねーちゃんに

迷惑かかるとこだっただろ!

 

てか、もし、命中しなかったら、犯人が逆上したかもしれないじゃないか!」

 

ベッドに横たわっていた茉莉沙は

体を起こしながら木菟の腕をつかんでたしなめた。

 

「木菟君、大丈夫よ。おにいさんがきてくれなかったら

きっと今頃私は、あの犯人にメッタ切りにされていたと思うわ。

正直、あの瞬間、もうダメだと思ったの。

 

でも、おにいさんが行動を起こしてくれたから、

警察も動けたのよ」

 

うんうん、と頷きながら、無邪気な英雄は弟の方を向き

自慢気に話し始めた。

 

「おい、愛する弟よ。俺が全国パチンコ大会優勝者だってことを

知らなかったのかな?」

 

「は?なにそれ?そんな大会あるの?」

 

「おー、あるぞ。ググッてみ?俺が小学校6年のときに大会があって

全国大会出場したんだよ。それで見事優勝!

 

だからね、絶対の自信があったんだ。自動ドアの隙間もわかってた。

あそこなら、通過できる、って確信した。しかも、ちょうど良い所に

犯人が陣取ってたから、こりゃいける、って思って、それでやったんだ。

もし勝算がなかったら、やらねーよ。

 

おねーさんの命がかかってんだから」

 

はじめはふざけていた煤無もようやくマジ顔で

説明を始めた。

 

「そこまで考えていてくれたんですね。ありがとうございます」

真己人が深々と頭をさげた。

 

とにもかくにも、事件は一件落着した。

 

 

 

ΘΘΘΘΘΘΘΘΘΘΘΘΘΘΘΘΘΘΘΘ

 

 

事件の重きを鑑みて、店では茉莉沙に1週間の休暇を与えた。

体調は悪くないとは言え、心理的に負担があったことと、

やはり体力的にも万全を期して、完全復帰には数日必要であろうという

会社上層部の判断だった。

 

久しぶりに10時間以上眠った。

茉莉沙はベッドから起き上がろうとした

その瞬間

 

なんだか胸がわさわさした。

理由はわからないが、胸のあたりに違和感がある・・・・

 

こんな感覚初めてだ。

 

通常は半径200m以内なら、人の心の声が飛んできたり

するため、普段はそれらを遮断するようにしている。

 

それなのに、だれかの心の鼓動が伝わってきているかのように

胸のあたりがもやもやしている。

 

「・・だれか、そう、私がすでに思考を読み取ったことのある

誰かが具合悪くしているか、なんらかの理由で気分が悪くなっている」

 

茉莉沙はなんとなく、その対象人物像について、感じ取っていた。

 

「あとで、マッキーにたのんで様子を知らせてもらおうかな・・・

今日はお天気もよいし」

 

晴れ女の茉莉沙にとって大切な日はいつも晴れている。

小学校の遠足で、傘を持って行った記憶がない。

仕事中も、自分が出勤してくるときは、いつも晴れている。

その後、茉莉沙が店内にいる時は雨が降っても、帰宅時には晴れていたりする。

したがって、傘はビニール傘しかもっていない。

 

しかしながら、命の恩人である鈴木煤無が店を訪れた後

土砂降りにやられたので、もしかしたら、木菟君のお兄さんは

雨男なのかもしれないな、と、ぼんやり考えていた。

 

おそらく、胸のわさわさは、鈴木煤無から発せられているものだろうと

ほぼ確信していた茉莉沙だった。

 

「木菟君のお兄さんに、何かあったのかもしれない・・・

具合でも悪いのかな・・・」

 

茉莉沙は携帯から文字メッセージを真己人に送り、

木菟を通して様子を窺ってほしいと頼んだ。

 




自分の経験として、晴れ女あるいは晴れ男と
雨女OR雨男が同時期に居合わせた場合、調子の良い方に
軍配があがるようであります。

つまり、晴れ女絶好調!ってときは、そこは晴れる。
しかし、雨男攻めの体制・・・なんてときは、雨だー

ちなみに友達の雨女(西洋人)の家に行くときは
いつも雨が降っていました。

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