彼女はエスパー   作:coltysolty

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新超能力者登場。茉莉沙らといつか出会える日が来るのだろうか。


あの日に帰りたい

20XX年10月1日

照橋琴美はある海沿いの部屋に宿泊していた。

 

こんなところに年頃の女性が一人で泊っていると

妙な気を起こすんじゃないかと訝し気に思われてしまう。

カモフラ用のパソコンをテーブルにセッティングし、

書類が詰まったブリーフケースを開いて夜の食事配膳を待つ。

 

和室ふすまの向こうから、配膳をするために仲居が声をかける。

 

「こんばんは。お客様、お夕食お持ちいたしました。」

 

それの呼びかけに琴美が応じる。

 

「はい、どうぞ」

 

(こんな若い女性が一人で宿泊って・・・)

 

琴美の予想通り、仲居は一瞬顔を曇らせた。

その表情から、やはり女性一人の宿泊は一旦、怪しまれるという

前情報はガセではないことが明らかになる。

 

いかにもとばかりテーブルに広げた書類をみながら

パソコンを打つ手を止める琴美。

 

「あ、これ、いまどけますね」

 

テーブルの様子をみて、仲居は納得した表情でお盆を畳の上に

一旦置いた。

 

「あら、出張かなにかですか?」

 

用意しておいた台本通りの答えを、淀みなく自然に述べる。

 

「ええ、ちょうどこのあたりの土地に関するリサーチがありまして

こちらの宿が一番近かったものですから、数日お世話になります」

 

安堵の表情を浮かべ饒舌になる仲居。

 

「あら、お忙しいのね~。ここの温泉はお湯がいいから

ゆっくりお休みくださいね。入浴時間は深夜1時までですから

お食事後のお好きな時間にご利用いただけます」

 

「ありがとうございます。お食事もよいと伺っておりましたので

楽しみにいただきますね。あ、これ、少しですけど」

 

琴美は1000円札をたたんで入れた小さい封筒を仲居に渡した。

 

「あらあ、お気遣いくださってありがとうございます!」

 

「ほんの心ばかりですが・・・」

 

(若いのにチップとは気が付く子ね。育ちがいいのね。)

 

仲居は気をよくして、お茶を丁寧に入れて配膳を済ませ

部屋をあとにした。

 

(ほっ・・・これで、とりあえず怪しまれることもないわ。

ここなら、少しタイムトラベルしてきても戻りやすいし、怪しまれない。

食事を済ませたら、予定通り●●年の11月に戻らなくちゃ)

 

輝橋琴美はタイムトラベラーだ。なんどかタイムトリップを行っているせいか

実年齢よりは上に見える。また雰囲気も落ち着いているため、ビジネス旅行での

宿泊という名目でも、なんら不自然ではない。

 

タイムトリップ前の第一段階の作戦は成功だ。

 

時間旅行上の法則は、時間軸を狂わせないことだ。

時間をさかのぼったときに、仮に自分がいた場合、同場所に存在することは

できない。ただし、琴美は憑依能力も持ち合わせているため

当時の自分に憑依して、タイムトリップを達成できる。

 

なくしたものを探すため、数年前のある場所にいく必要があった。

深夜、宿泊客も寝静まった頃、琴美はタイムトリップをするための

手はずを整えた。布団を敷き、いったん中に入り、寝ていた形跡をつくる。

テーブルの上には、飲みかけのお茶を置いておく。これで準備は整った。

 

精神を集中させ、日時と場所を念じ大きく深呼吸し、いったん息を止める。

体中に大きな圧力がかかる。ほんの数秒とはいえ、時間旅行がこれほど

肉体に負担をかけるのは、なんとかならないものかと、毎度思い知らされる。

 

静寂が琴美を包む。ゆっくり目をあける。

そこは公園の木陰だった。

 

(あ・・・俊だ・・・海藤俊。間違いない。あの頃の俊だ。

足が長いのに、スリムだからってワンサイズ下をえらぶから、

制服のパンツがつんつるてん。くすっ・・・おかしい。

久々に笑ったわ。ここ最近、笑ってなかった気がする。

 

さて、自分を探すか・・・みつけたら、憑依しなくちゃ)

 

ちょうどその年その日、その場所に4年前の琴美がいる筈だ。

 

(あ!いた!走ってる。ちょうどいいわ。今、憑依すれば

自然ね。)

 

精神を集中させ、走っている自分の体に現在の自分を

憑依させる。

 

同日同時刻に同じ人間が居合わせるということは、時間軸の法則に

逆らってしまう。犯してはならないタイムトラベルの法則だ。

したがって、琴美は戻った時の自分の体にすぐさま乗り移ったのだ。

 

(あ!私だ・・・。走ってる。そして、車に戻ろうとしている。

[海藤さんが戻ってくる前に車に戻らなくちゃ]

ぷっ・・・当時の私、こんなこと考えてたのね。意外にまじめだわね)

 

自身に憑依した場合、その人物の思考が憑依した方の脳に

流れ込んでくる。したがって、過去の自分の思考を、現在の自分が

把握できるということだ。その逆は不可。つまり、一方通行。

過去の自分は乗り移られた方の思考はわからない。

 

(俊は・・・?あ、戻ってきた

[あー、海藤さん、戻ってきた。怒られるかな・・・]

なんだって?怒るだとー?ケツを蹴り上げてまえ!琴美!)

 

車に戻っていた琴美をみて、海藤が話しかける。

 

「あ、戻ってきてたんですね。次のお客さんはなかなか

手ごわいですから、気を引き締めて行ってくださいね」

 

車にもどるやいなや、琴美に指導をする海藤俊。

琴美より早く入社したため、仕事上では先輩ということになる。

ただし、同年代なのにもかかわらず、琴美は落ち着いているため

取引先でも、琴美が先輩に見られがちだ。

 

そのことを海藤は気にしてか、琴美にはきつい言葉を

投げかけることもあったようだ。その実、海藤は琴美の仕事ぶりを

買っており、一刻も早く一人前になってほしいと思っていた。

しかしながら当時の琴美は、そんな海藤の気持ちなど露知らず、反発することも

度々あった。

 

とにもかくにも、目指していた時間軸に到達することに成功した琴美。

探し物は見つかるのだろうか。

 

 




タイムトラベラー琴美。エスパー茉莉沙や真己人と巡り合い
力を合わせる日がくるのかもしれない。
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