そういえば、こんなことあったのね。
琴美は忘れていた過去をなぞりながら、探し物をみつけようとしていた。
(今日は別の先輩とクライアントのところに
出向くんだったわね。
今日は、中澤さんと・・・・か。)
隣に座っている中澤の携帯が鳴る。
「はい・・・お、海藤か。どした?
あー、おまえなー・・・・わかった。
無理すんな。オレがやっとく。ああ、うん。
解析の件な。問題ないぞ。心配すんな。
なんとかつないどくから。じゃな。」
ふっと一息ため息をついて、携帯を閉じる中澤。
「海藤さん、具合わるいんですか?」
中澤の方をみながら、琴美が話しかける。
「食欲ぜんぜんないらしくて、熱もあるらしい。」
「風邪ですか?」
「インフルじゃないらしいが。疲労かな。」
「そうなんですね・・・もしかして、昨日徹夜したのかも?
私にはすぐ帰って寝ろって言ってましたけど・・・」
「まあなー。なんでもひとりで背負っちゃうからな。
こっちに振ればいいのに・・・・」
「私が力不足ですいません。」
「いやあ、琴ちゃんのせいじゃないよ。
というより、琴ちゃんの負担にならないように
できるとこまで完成させようとしたんだろうな。」
「・・・・・・そうなんですね・・・・
私、むっとしたりして悪かったな・・・・」
「いやあ、それはわかるよ。
あいつ、言い方がな・・・・言ってることは正論なんだけど
実直すぎてオブラートに包むということを知らないから
言われた方はさ、最初はカチンときちゃったりするんだよな。
わかっちゃうと、あー、不器用なやつ!で、
笑って済ませられるけど」
「そうなんですね・・・私知らなくて、つい
無礼な態度しちゃいました。」
「はっはっは!あいつ相手に無礼な態度したの?
勇気あるねえ?みんな怖がって、遠巻きにしちゃうんだけど。
でも、君はどこふく風で、くぬぅーって、しがみついて
負けんと必死についていってる。
彼はそういう相棒の方がやりがいを感じるからね。
あいつの技量にはだれもついてこれないけど、そんなやつの
才能を見抜いて、一歩でも近づきたいっていう人を
求めているんだよね・・・・なかなかいなかったんだなー。
で、やっと見つけた、かな。
それで、はりきっちゃったのかもな。
こりゃー追い越されるかも?っていう
ある種の恐怖感とライバル心を煽ったのかも」
「え・・・・やっぱり追い詰めたの私じゃないですか」
「いやいや、気にしなくて大丈夫。
あいつ、いつも溜めて溜めて溜めまくって
ぶったおれるのよ。自分自身を追い込むの得意だから。
今まだこの段階なら、周りでフォローできるから無問題。
進んじゃったら、やつしか処理できなくなる。
そうなると、高熱でも仕事しなくちゃと無理するやつだから
ますますコトが厄介になる。
俺だったら、クライアントに待ってもらうけどねー
『諸事情で遅れてます、すんません!』って
奴はそれをしない。そんなことをすること自体
許せないっていう、一本気な奴だから。
職人堅気なんだよ。
ごめんねー、不器用なヤツで。」
「いえ・・・とんでもないです。
私のこと嫌いなのかと思っちゃいました。」
「とんでもない!君のことは期待してるって
言ってたよ。見込みがあるって。」
「ほんとですか!!!
うれしい!あの・・・お見舞いとか行ったら
かえって迷惑ですよね・・・・
スィーツとか届けたいんですけど・・・
今は食欲ないかもしれませんが
少しでも食事できるようになったら
食べてほしい・・・」
「やさしーねー。あ、俺さ、データ届けようと
思ってたから、一緒に渡してあげるよ。」
「え!ありがとうございます!
ヨックノックのチョコサンドあるんです。
いただきものなんですけど・・・
オフィス戻ったら、渡します。
あと、これは先輩の分です。どうぞ召し上がってください。」
「おーーーーー!ありがとー
これはあがるね。じゃ、海藤に渡しとくよ。
琴美ちゃんからって。」
「とにかく無理なさらないようにって
伝えてください。あと、失礼なことして
ごめんなさいって。」
「りょ!
じゃ、さっさとクライアントへの報告
済ませちゃおう。納期も伸ばしてもらうように
俺から交渉する。」
「はい。わかりました。」
(たしか・・・この後だったかな。彼が治ってから・・・
だったような気がする。あと少しで見つかりそうだけど
無駄にタイムトリップするわけにはいかない・・・)
そろそろ探し物がみつかりそうな気配。
滅多に倒れない私ですが
たまにぶったおれることがあります。
いろいろストレスがたまったりすると
体調を崩しやすくなりますよね・・・・
幸い、今の私は体調良好ですが、不可抗力な
外的なストレスは、ほんと・・・・困ったものですね・・・・
海藤さん、お大事にーーーーー