茉莉沙は丁寧に応対する
「すいません!さっきこちらで注文した者ですが!」
閉じられたシャッターを強くたたきながら男は叫ぶが
雨音にその声はかき消されてしまう。
「すいませーーーん!誰かいませんかーーー!」
(やっべーよ。値段きいとかねぇと、給料前だから準備がない!)
茉莉沙は、雨音にかき消された男の叫び声ではなく
心の声を聞きとった。
店の奥から、入り口に向かい急いでシャッターを開けると、ガラスの扉の向こうに
通り雨にあたってずぶぬれになった男がいた。
「今、お開けしますね。お待ち下さい」
(あーーー、助かったーーーーー)
茉莉沙は持っていたタオルを差し出した。
「こちらをお使い下さい」
(うっわーーー、親切な店員さんだな・・・値段聞くだけなのに)
「あざっす!助かります!」
「いえ・・・急に降ってきましたね。先程、私
お仕上がり後の料金をお話しするのを失念してしまいました。
大変申し訳ございませんでした。こちらのスーツは58,300円で
ございます。」
(うぐっ・・・軽く6万てとこか・・・まあ相場なのかな。ご祝儀代もあるから
ちと痛ぇな・・・紳士服のノナカとかだったら半額ぐらいなんだろーなー)
「そうですか・・・・」
「お客様?私がお値段を申し上げるのを忘れてしまったために
ご迷惑をおかけしてしまいました。雨にまで濡れてしまって・・・
お詫びと言ってはなんですが、割引させていただきまして5万円で
提供させていただきたく思います。」
(うわっ!助かった!ものがいいってきいて、ここにきたから
3万ってことはないだろーと思ってたけど、5万ならなんとかなるな)
「ありがとうございます~。いやぁ助かります」
「こちらに使い捨ての傘がございますので、どうぞご利用ください」
「え?いーんすか?」
「はい、突然の雨天時用に、お客様に使っていただくためにご用意させていただいておりますので
お気軽にお使いください」
「いろいろありがとーございます!いい店ですね!また利用させてもらいます!」
「どうぞごひいきによろしくお願い致します」
男は機嫌よく店を後にした。
茉莉沙が過剰サービスをしたのには、理由があった。
男といえば、だいたいが女の顔をみたら次には舐め回すように
体を物色しはじめる。顔が好みではなくても、次に首の下に視線を移し
胸の大きさを確認すると、ウエストのあたりをみて、腰回りを見る。
そして、衣服の中の裸体を想像する。
茉莉沙は二次成長以降、男のそんな思考が飛んで来る度に
えずきそうになる最悪の不快感を覚えていた。
いつの頃からか、茉莉沙は男性という生物に対して
嫌悪感しか抱かなくなっていた。どんな男も獣のように思えて仕方なかった。
唯一こどもだけは、瞳をしっかりと見て、無邪気な笑顔で接してくれるため
心を許せる存在だった。
ところが、先程店に訪れた男は、成人の男性であるのにもかかわらず、
茉莉沙の体物色を行うことなく、また勝手な男性経験を決めつけることもなく
あくまで、茉莉沙の応対に対しての反応をしていただけだった。
また、純粋に洋服を買いにきただけということも、好感がもてた。
心の中を覗いても、みだらふしだらな念を一切感じなかったため
上辺だけではない心からのもてなしを自然に行っていた自分に
茉莉沙自身も驚いていた。
チャラ男君、以外にナイスガイなんでしょうか?
さて、次は茉莉沙の弟君が登場します。彼もなにか能力を持っているようですよ?