彼女はエスパー   作:coltysolty

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先日の男ができあがったスーツをとりに来た。
今まで出会った客の中で、最も好感が持てた人物だ。

茉莉沙は快く応対を続けた。


超能力者達

茉莉沙がほとんど管理を任されている

ブティック「ナカJ」は、女性服や紳士服の

フォーマルやアイビー系の洋服を主に扱っている。

いわゆるトラッド(トラディッショナル)分野だ。

 

たまにセール品でラフなTシャツなどを扱うことも

あるが、主にフォーマルよりのカジュアル系や

ガチのフォーマルを置いている。

 

質のよさに加え、シンプルでコンサバーティブなデザインが

年齢層幅広く人気が高い。

 

先日訪れた男性客も比較的若い方だろう。

はじめてのフォーマルを新調する人も多く

この店を紹介されて訪れることも珍しくない。

 

「先日のお客さん、仕上がり日はすぎているけど

お忘れになってるのかしら?」

 

茉莉沙は、お預かりのお品ものを確認しながら

連絡先を探した。

 

「つー・・・ただ今電話にでることが・・・・留守番電話に・・・」

仕上がりの案内をするために、電話をかけたところ

留守電に繋がった。

 

「先日はご来店ありがとうございます。お直しのスーツができあがっております。

ご来店お待ちしております。」

 

茉莉沙は、電話を置くと、男が注文したスーツを倉庫にしまおうとした。

その時、

 

「あーーーー!!!すいません!仕上がり日、昨日だったと

おもうんすけど、遅れちゃいましたぁーーー!」

 

男が思い切りドアを開け、素早く入り込んできた。

 

「いらっしゃいませ。お待ちしておりました」

茉莉沙は笑顔で答えた。

 

「さいせん!ちょっと仕事たてこんじゃって

昨日これなかったんっすよ。」

 

「たった今、お電話でご案内さしあげたところでした。

留守電にメッセージを入れてしまいましたので、後ほど

消去ください」

 

「え?わざわざ電話くれたんっすか!記念におねーさんの

声の録音、残しときますよっ!」

 

くすっ、と茉莉沙は笑った。

 

「こちらが仕上がりのスーツでございます。

試着していただけますか?」

 

「あ!はいはいはいはい、着てみます。」

 

男は来ていた上着を脱いで、お直しスーツに袖を通した。

 

「おーーーー!すごいっすね。ぴったりっすよ」

 

喜ぶ男の顔をみながら、茉莉沙は笑顔で応対した。

「よく、お似合いですよ。ネクタイを変えれば

冠婚葬祭どちらにもお使いいただけますので、

長く着ていただけます。」

 

「あーーー、っすねーーー。持ってたほういいっすよね。」

 

「もし、ネクタイがご入り用でしたら、いつでもお申し付けください。

お直しご注文いただいたお客様には会員様割引が適用になります。」

 

「あ、ネクタイないんだった。とりあえず結婚式用の

それも一緒に包んでください。葬式用は・・・まだ、いいや」

 

「それでは、こちらのお品ものが3割引適用になりますので、

おつけいたしますね。」

 

「あざっす!助かります!今度もおねーさんにお願いしますねっ」

 

「はい、お気軽にお申し付けください」

 

(いっやー、いろいろ助かったなーーー。冠婚葬祭とか言われても

なに着たらいいかわからねーし。この店員さんに相談に乗ってもらえたらいいよね。

聞きやすいし)

 

ちゃらちゃらしているようで、考えていることは至ってシンプル。

邪な考えがないこの男に、茉莉沙は好感を持った。

 

なぜなら、これまで対応した男性のほとんどが、茉莉沙を不快にさせる

思考ばかりだったからだ。

 

「じゃ、いただいていきます!」

 

「ありがとうございました。またのご利用をお待ちしております」

 

男を送り出すと、茉莉沙は店内を片づけながら、インターネットラジオをつけた。

 

「今日のテーマは【超能力】。世の中には、不思議な力を持つ人がいるらしく

未だカミングアウトも解明もされておりません。

 

何十年か前にサイコキネシス(念力)と思われる人物がテレビに登場しましたが

インチキと判断され、画面からは消えてしまいました。

また、クレアボヤンス(透視)やテレパス(読心)の存在も

能力を持った人の証明は、やはり手品の類とされ、能力についての確信を

持つことができませんでした。タイムトラベラー(時空間移動)に関しても同様

その存在を認めてしまうと、時空の法則が狂ってしまうため、あってはならない

ものとして、存在は否定されました。」

 

茉莉沙が子供のころ、サイコキネシスと思われる少年がテレビに登場した。

彼は、自由自在にスプーンを曲げたり、ぽきっ、と折ったりする能力を

披露した。

 

会場に居合わせた人達は、一同、驚きの声を上げたが、やがて

インチキと言われ、避難されたあげく、プライバシーも侵害されてしまう

困難に追い込まれてしまった。

 

ただ、超有名なコメディアンが、彼と酒の席を共にしたときに

アルコールが入るとその力が倍増するらしく、目の前でガンガンスプーンを

曲げ切り落としたらしい。

 

現状を目の前でみたコメディアンは、彼はインチキではなく、ホンモノだ。

と、真剣な面持ちで語ったのだそうだ。

 

茉莉沙自身も幼稚園児代一緒に遊んでいた男の子が、おもちゃに触れず

自動車や他の玩具を動かしていたのをみたことがある。

 

当時、茉莉沙は自分の能力に気が付いていなかったが、目の前にいる

男の子は頭で命令すると、ものに触れずにそれを動かす力があるのだということは

漠然とわかっていた。

 

親の転勤でその男の子は茉莉沙のいた幼稚園から離れてしまったため

今の所在はわからない。

 

今現在、自分以外で同じような能力を持っているのは、弟の

真己人(まきと)で、他に超人的な能力をもった人がいるかどうかは

茉莉沙自身は知る術がない。

 

 




不思議な力をもつ茉莉沙だったが、この世には他にも種類は違うが
同じような能力をもつ人間がいるのだろうか。
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