楽しみは一時お預け。
「おお~。皆様、よくいらっしゃいました。
どうぞごゆっくりしていってくだされ~
海道、美女をお連れだなあ?」
アメリカンフットボールで鍛えた強靭な体格を備え
態度も大きく、威圧的なこの男は海藤を揶揄した。
「牧田さん、それはどうも」
そっけなく海道が答える。
「おねえさん、もの好きだねえ?
こんな変わり者」
口元をきゅっと結んで、深呼吸してから
琴美が答える。
「ええ、私も彼に負けない変わり者ですから。
割れ鍋に綴じ蓋ですわ」
ふっ、とため息をつくと皮肉交じりに牧田が返す。
「おや、なかなか気の強いお嬢さんで。
お友達もどうぞゆっくりなさってください。
ああ、若男子二人は、うちの妹の同級生だったね?」
真己人をかばうように木菟が一歩前にでる。
「ええ、七香美さんと同じ学校です。」
いつもはおちゃらける木菟も、真面目に直球で返した。
「ほぉ・・・なかなかの好男子だね。お二人さん。
君はスポーツ男子のようだね。もう一人の君は
文学少年?」
真己人は答えたくないという思いをぐっと堪え
仕方なく返答する。
「ええ・・・本は好きです。木菟君はめちゃめちゃ
運動神経よくて、高体連にも出ました。ユースでも
トップ張ってます。」
牧田は木菟と真己人の肩をポンポンとたたきながら
二人を見る
「まあ、どちらでもうちの七香美の彼氏候補じゃないなぁ。
運動神経が良くても頭が悪けりゃ困るし、成績がよくても
弱っちぃとなあ。」
握りこぶしに力を入れる煤無だったが
茉莉沙が抑える。
「自己紹介が遅れました。私、霧雨茉莉沙と申します。
かいわい町で、ナカJの店長代理を務めておりますので
どうぞごひいきに」
牧田は振り返ると、茉莉沙を上から下まで嘗め回すように
じっとりといやらしい目つきで侮辱した。
「僕ねえ、この通り筋骨隆々でしょ?オーダーメイドじゃないと
だめなのよ。今度、利用させてもらうよ」
(おい・・・茉莉沙、こんなやつ店に入れんなよっ!!!)
煤無の顔色が変わる。
茉莉沙は目で合図しながら、大丈夫、と煤無の腕をつかむ。
「ええ、ぜひ。来月は新婚旅行で不在にしますが
担当者に伝えておきますわ」
牧田の顔色が変わる。
「ほぉ・・・ご結婚なされるのだね?もしかして
隣にいる、いかにもスポーツ男子ってかんじのチャライ彼?」
煤無が歯ぎしりをする。見かねて海藤がフォローする。
「チャラさじゃ、お前に勝てる奴はいねえよ。
ケガで引退してなけりゃ、今頃日本代表だぜ。こいつは。
茉莉沙さんはお目が高いんだよ」
「なるほどね。そういう男性がお好みなわけだ?
おねえさん、上品そうに見えて、なかなかな肉食なんだねぇ?」
牧田の言動に堪えきれなかったのは弟の真己人の方だった。
「姉を侮辱しないでください。義兄はとても紳士なんです。
そんなところに姉は惹かれたんです。」
(マッキー、いいのよ。こんなやつに何言われても
どってことないから。とにかくミッションを成功させなくちゃ、
だから、冷静にね)
茉莉沙は、念話で真己人をたしなめた。
「そりゃあどうも失礼しましたな。
皆さんの人脈を期待して、牧田グループをどうぞ
よろしくお願いしますよ。会費以外一切お金がかかりませんから。
ガンガン飲んで食べて温泉浸かってってください。
紹介チケットもお渡ししますから、お知り合いにぜひ。
明日は妹も合流しますから、挨拶させますよ」
(げっ、やっぱりあいつも来るのか・・・やだなあ。
まあ、にーちゃん達もいるから大丈夫だけど)
口をすぼめて拗ねた表情で茉莉沙をみる真己人。
「それは楽しみですわ。学校でも評判だそうで。」
なにげに茉莉沙も嫌味で返す。
「どんな評判かな?美人だが意地が悪くて
気が強いとか?」
牧田がボーイに目で合図しながら、シャンパンの瓶を受け取る。
「あら、妹さんの噂よくご存じなのね?
さすが牧田グループの跡取りね。調査に抜かりはないようだわ」
琴美がシャンパンのグラスを向けながら、挑戦的な目で
牧田を凝視する。
「はっはっは。好きだなあ。そういう気の強い女性。
もっとも人のモノには興味ないけどね。さ、どうぞどうぞ
どんどん飲んでください。洋服屋のお嬢さんも」
(ほんっと、どこまでイヤミなヤツなのかしら。
茉莉沙さん、よく我慢できるわね?シュンと茉莉沙さんだけよ。
冷静なの。他はみんな頭から湯気が出てるわ)
茉莉沙の方を見ながら、心で話しかける琴美。
牧田は皆に会釈をするとマイクの方に移動した。
「それでは、皆さん。どうぞごゆっくり。
飲みほ食べほですから、早い者勝ちですよ。
存分に味わってください。それでは、メリークリスマス!乾杯!」
クラッカーの乾いた音が場内に響く。
同時に騒がしいBGMが流れ始めた。
「琴美さん、大丈夫よ。なによりミッションが大事だから。
何を言われても平気。とにかく成功させなくちゃね」
茉莉沙が琴美に近づいて耳元でささやく。
「あのね、正直、昔だったら、思考を読んだ瞬間
あんなやつなら、目を合わせず避けてたんだけど
煤無さんと会ってから、心が安らぐの。
彼が守ってくれるって思うと、それだけでどんなことも
嫌じゃなくなってくる。不思議ね。人を好きになるって
自分も変わるのね」
BGMにかき消され、茉莉沙の声は他には聞こえない。
(そうなのね・・・よかったわ。私、ぶんなぐりそうになったわ。
あなたをいやらしい目で見ているのもわかったの。ほんとに
ゲスな野郎だわ。それにしてもシュンも飄々としているわよね)
琴美はそのまま念で返答する。
「俊君は慣れているのよ。最初からわかっているから
予想ついていたのね。それに、彼も何かあったら、琴美さんを
守るわ。おそらく、彼が怒ったら一番怖いと思う」
(そ、そうね・・・確かに、何も言わないけど、頼りがいは
あると思うわ。)
「私たち、幸せになりましょうね?私は彼さえいてくれたら
何もいらない。なにがあっても全力で受け止めたいわ。
ねえ、琴美さん、ミッションを成功させたら
またみんなで遊びに行きましょう?」
(・・・・・・・・・・・・ミッションが成功したら
私は自分の時代に戻らなければいけないの。)
「何とかならないの?私はずっとあなたと友達でいたい」
琴美はだまって佇んでいた。瞳にうっすら涙を浮かべたまま。
その様子を感じ取った茉莉沙は、唇をかみしめていた。
ケーキは作りました。食べ物です。
おせちもつくりました。食べ物ではありません。DA★SOのふわふわ粘土です。
腐らないのでずっと飾っておこうと思います。
あ、まだ年賀状は書いてなかった・・・
ほとんど出さないんだけど。