海道と琴美がラウンジにいると
後ろの席に座っている女性二人の話声が聞こえた。
「もうさ、いきなりだったから
雷に打たれた気分だった」
「なに、どうしたの?」
「超絶振られたわ・・・」
「あ、バレンタイン?」
「うん・・・諸々の事情があって
直接はわたせなかったの。
直接渡せないことも想定に入れて
シンプルなものを用意して、それを
ある人に依頼したの」
「その人がなにかまずかったの?」
「ううん。その人はとってもいい人なの。
だから、預かって渡してくれるって言ったんだけど・・・」
「ちゃんと渡らなかったの?」
「それが・・・想定外に渡っちゃってたの」
「想定外?」
「うん。頼んだ人に渡したときは
今週は休みだから、来週になると思うけどいい?って
きいてくれて
私もその日しかチャンスがなかったから
それでもいいからってお願いしたの。
その人の分もちゃんと渡して。」
「なるほど」
「そしたら、私ももらっちゃっていいの?って
いうので、食べて~って渡して
預かってもらったの。たぶん、義理って思っただろうし。
そしたら・・なんと今日渡ってたのよ」
「なんでわかったの?」
「本人に会っちゃったから」
「え?どこで?」
「前の職場あたり」
「え!!!なんでそこにいる?」
「私も一瞬そう思って、頭が真っ白に
なったんだけど、一応手を振って挨拶したの。
そしたら、あっちも一瞬驚いて
あ!って顔して。
でも、どうせまだブツは渡ってないだろうと思って
そのままそこを離れようとしたの
そしたら・・・・」
「そしたら?」
「あっちから近寄ってきて
そういうことしないでくれって」
「は?」
「ああ、ブツが渡ったんだなって思って
あ、わかりましたって答えた」
「なにそれ・・・・・」
「で、ぼーぜんとしちゃって、なにをするのかも
忘れちゃって・・・買い物もあったのに
なにを買うかもわすれて、放心状態のまま
買いにいったら、なんと700円のものを買うはずが
4500円のかっちゃった・・・パッケージは似てたんだけど
普通なら気づくのに」
「そりゃあ動揺するよね・・・・青天の霹靂も
いいところだよね・・・・」
「そう。いままであげてたのも、迷惑だったんだなって
思って。」
「はあ?だったら、もっと前に言えよ!だよ。そこまで
気を持たせておいて、そこで落とすってどういうことよ!!」
「まあ、それがあの人だからね・・・
迷惑だって言えなかったのかもしれないね」
「いやあ・・・脈ないなら、とっとと言ってくれっての。
それは残酷すぎるよ」
「まあ、私もすぐに気づいて、場所を教えて
あげればよかったんだけど・・・きっと不慣れだろうから
でも、そんな余裕がなくて。
そしたら、もう一度出口のところで会ったから
『迷惑だったんだね。ごめんね』って言ったら
黙ってた。相当嫌われてたんだ。あたし、おめでたいわって思って」
「いやー、断るにしてももうちょっといい方あるでしょ。
『チョコレートありがとう。せっかくいただいたけど
ごめん。僕(俺)は応えてあげられないんだ』
とか、言わない?やさしい男なら???
あとは好きな人がいるからとかさ。
なんか卑怯だよね!」
「まあ、表現が下手なんでしょ・・・シャイっていうか。
だから、今まで迷惑だっていいたかったけど
言えなかったのかもね。私が勝手に、もしかして・・・って
期待しちゃってたのかもしれない。図々しいのは私なのかも」
「いやーーーー大人のすることじゃないわ」
「いいの・・・そういう人なんだから。
そういう人ってわかって、好きになったんだから
仕方ないわ。
でも、こうやってきいてくれる友達がいるだけで
私は幸せね」
話を聞いていた琴美が心を動かされて、思わずタイムスリップしに
行ってしまいそうな勢いで、海道に目配せする。
ふたりはちょっと離れたところに移動した。
「コトミンのいいたいことはわかるよ。
タイムスリップして、まりさっちを連れて
その男の心を読みに行くってんでしょ」
琴美はミッションが終わるまで、タイムトラベラーであるということは
伏せておくつもりだったが、ふとあることで
海道にそのことがバレてしまっていた。
その時から、海道は琴美への想いを一層強くしていた。
「ええ・・・そんなことしている場合じゃないんだけど・・
どうにも納得いかなくて。」
「そうだよな・・・あきらめるにもあきらめられないような
真綿でしめるような残酷さだよな」
「だって、あの彼女、なんだか他人とは思えないわ。
きっとはっきり理由が知りたいはずよ。
単に気遣い無用って言いたかったのか、
本当に全身全霊を拒否っているのか。
どうとも取れる解釈ってスッキリしないわ。
モヤモヤしたままって絶対よくないから!」
「まあまあ、落ち着いて・・・もうすっさんたちの便
ついてるはずだよ。ラウンジにいるってメッセージ入れといた」
「あ!みんなよ!」
煤無、茉莉沙、真己人、木菟が
ラウンジの方に向かってやってきた。
さて、どうなるのでしょうか?