私が以前書いていたポケモン作品との繋がりはありません。また、本作はリハビリ作品です。
このお話には多大な独自解釈、独自設定、キャラ崩壊、オリ主などの要素が含まれます。それらが苦手な方、ならびに不快感を催す方はすぐさまブラウザバックされることを推奨致します。感想、評価、批評を頂けると嬉しいです。0~3のptを入れられた際には、批評を書いて頂けるとありがたいです。
今回ポケモン熱が再発し、書きたい衝動もありましたので真面目系ポケモン小説としてリハビリも兼ね、こうして短編読み切りとして書いた次第です。
それでは、どうぞ。
ポケットモンスター。縮めて、ポケモン。それは未知で、不可思議で、未だ多くの謎に包まれた存在。人間とは全く違うその存在は、時に野生で、時に人間のパートナーとしてその世界で生きていた。
この物語は、そんな世界とは全く関係ない世界に居たハズの青年が、どういう訳かその世界にやってきてしまうところから始まる。
(さて、状況を整理するか)
木々が鬱蒼と生い茂るどことも知れない森の中にて、胡座をかいて座り込む青年が1人。特に慌てた様子もなく頭の中で状況を整理し始めるこの青年こそ、この物語の主人公。黒い無地の長袖のTシャツと青いジーンズを履き、大きな赤と黒のリュックサックを側に置き、黒みがかった首ほどまでの長さの茶髪の青年……名を、コハク。その脳裏には、こうなる前の出来事が浮かんでいた。
とは言うものの、別段可笑しなことをした覚えはコハクにはない。彼はただテレビで見た旅番組に影響を受けて故郷の日本を飛び出し、世界をのんびりと旅をしているだけの至って普通(?)の青年である。実際思い浮かべた出来事も、学も無く住人の言葉も分からない故に名前すら分からないどこかの国の公園で野宿していたくらい。その時には一本の木の下で大きなリュックサックを枕に眠ったハズだったが、起きてみればそこは公園ではなく森の中。本人にしてみれば意味不明、夢でも見ているのかと思うだろう。
(夢……いや、感触はあるし野宿したせいか体のあちこちが痛い。ということはこれは現実……いやー、世界には不思議なことが多々あるもんだ)
しかし旅をしていたからか、それとも本人の気質なのか取り乱すこともなくあっさりと現実として受け入れるコハク。置いてあったリュックサックを背負って立ち上がり、旅の続きだと言わんばかりに歩き出す。道路のような人の手が入った道もなければ土地勘も全くない場所、故に適当に歩いていたコハクだったが、目にするもの何もかもが未知だった。
(んだこりゃ……こんな果物……木の実? は見たことねぇな……ミカンか桃に似てるような気もするが……それになんだあの生き物。イモムシに見えなくもない……やたらデカイが)
それはこの世界においては一般的にも広く知られている木の実……オレンの実、モモンの実と呼ばれる木の実であった。珍しげにしげしげと眺めていたコハクだったが、その木の実の近くの葉っぱにかじりついている生物を見て首をかしげた。
赤い触覚にイモムシのような緑の体。名をキャタピーと言うポケモンで知名度も高いが、そんなことはコハクは知る由もない。やたらデカイイモムシという感想だけを残し、すぐにその場から歩き去る。
それからもコハクは、彼にとって不思議な生物を見掛けた。先のキャタピーの他にはビードル、コフキムシのような虫ポケモンに加え、鳥ポケモンのヤヤコマまで見付け、その都度特に接触することもなく不思議だなぁと思いつつも森から出る為に歩く。そうしてしばらく経った頃、またあるポケモンを見付けた。
(……ん? アレは……怪我してんのか)
茶色く小さな体躯に首回りの白いふさふさな毛、まるでウサギのような耳を生やしたポケモン……名をイーブイ。コハクが見付けたイーブイは、身体中に小さくない怪我を負った姿で森の中に倒れていた。その姿を見て、コハクは少し考える。と言っても、助けるか無視するかの2択だが……怪我をしている動物は放っておけないという理由で助けることにした。
イーブイを抱き上げ、適当な木の近くに座ってリュックの中を漁るコハク。中身はカロリー○イトのような携帯食に500㎜の水の入ったペットボトル2本、この世界では使えないであろう地図と筆記用具、懐中電灯とその電池。後は着替えが幾つかと毛布、いざというときの為の包帯に消毒液、絆創膏等の市販の医薬品、後は裁縫道具。起きた後に食料等を買おうとしていた為、現状では準備不足、道具不足感は否めない。
「……ブイ……ブイ?」
こんなことなら前日に買い足しておくんだったと軽く後悔しつつ、ペットボトルの水と消毒液で傷を消毒して包帯を巻き付けていく。テープが無かったので裁縫道具で包帯を縫い付けて固定していると、それが終わったところでイーブイが目覚めた。
「おう、起きたか」
「ッ!? ブ、イィィ~……ッ」
コハクが声を発し、自分が彼の胡座の上に居ることに気付いた瞬間、イーブイは直ぐ様その場から飛び出す……ことが出来ず、全身に走った痛みのせいでうずくまる。その様子を見ていたコハクは呆れつつもまあ当然かと1つ頷いた。
「おうおう、元気だねぇ。まあ動くのは止めとけ、傷だらけなんだからよ」
「ブイ、ブイ!」
「ほら暴れんな、折角手当てしたのに包帯がほどけるだろうが」
「ブ……ブイ?」
コハクに反発するように暴れるイーブイだったが、痛みを最小限にした動きではじたばたと暴れても彼から離れられなかった。逃げようとしているイーブイに対してコハクは咎めることはなく、まずは落ち着かせようと優しく声をかける。イーブイはコハクの言葉にきょとんと大きくつぶらな瞳をパチパチと瞬かせ、自分の体を見た。そこには確かに彼が言うように包帯が巻かれており
、イーブイは信じられないモノを見たかのような目で、初めてコハクの顔を、目を見た。
「うん? どうした?」
イーブイから見たコハクの瞳はイーブイの知らない名前の通りの琥珀色をしていて、優しげに細めていた。それが自分を落ち着かせる為であると同時にその身を案じているからだと言うことを、イーブイは理解した。少なくとも、目の前の人間は
だが、だからといって警戒を解く理由にはならない。ましてや自分は追われていたのだから……そう思い返したところで、イーブイは青ざめた。
「ブイ! ブイブイ!」
「ちょ、おい、待て待てって。んな傷だらけの体でどこに……」
「こっちから声が聞こえたぞ!」
顔色を悪くしてまた逃げ出そうとしたイーブイを不審に思い、それでも逃がすまいと抱き締めたコハクだが……突如聞こえた男の声に真剣な表情を浮かべる。同時に、イーブイの体が震えだしたことにも気付いた。そして直感する……この腕の中の生き物は、今の声の主に追われているのだと。
「じっとしてろよ」
「ブイ!?」
コハクは直ぐ様イーブイを左手で
「見付けたぞ! 研究所から逃げ出したイーブイだ!」
「おい! 知らない男もいるぞ!」
「どっちも捕まえるぞ!」
「チッ、走り出したのはまずかったか……?」
後方から男達の声が聞こえ、咄嗟に走り出してしまった自身に対して舌打ちするコハクだったがその足を止めることはない。イーブイも流石に今暴れると自分、そしてコハクが危ないことは理解したらしく動かずに居た。
「そこの男! 止まれ!」
「なんかよくわからんが、止まると不味いってのは分かる! お断りだ!」
「そうか……なら、力ずくで止まってもらうぞ」
後ろを振り返ることなく男の言葉を切って捨てたコハク。その答えに男達は苛立ち、追い掛けながら腰に取り付けていたモンスターボールを取りだしてコハクの前方目掛けて投げ付ける。そしてコハクを追い抜いて地面へと落ちたモンスターボールは開き、光と共に中に居たポケモンが飛び出す。
「バウバウ!」
「グルルル……」
「ウゥゥゥゥ……!」
「ブイ!?」
「うおっ!? なんだ!? 犬!?」
コハクから見れば突如として現れたのは3匹の犬……もとい、3匹のデルビルだった。これには流石にコハクとイーブイも驚きと共に足を止める他無く、追い掛けていた男達にも追い付かれてしまう。
「ようやく止まったな……そのイーブイ共々逃がさんぞ」
「クソッ! ……は?」
ついつい足を止めてしまったことに悪態をつき、男の言葉に苛立って振り返り……そして、ポカンと口を開けた。というのも、声の主らしき3人の男達の姿がコハクにとって予想外過ぎたことが原因なのだが。
男達は、真っ赤だった。それはもう赤かった。髪色も赤、サングラスも赤、そしてスーツも真っ赤。上から下まで真っ赤っか(でも靴と手袋は黒いシャツは白い)。オマケに髪型もなんか変。具体的にどうとは言いづらいが、変とは断言できる。
「……あーっと……どちら様で? つーか、随分とその……独創的な格好ですね?」
「「「やかましいわ!」」」
コハクが思わず敬語になりつつ精一杯の感想を述べると男達は一寸の狂いもなく返した。どうやら男達にとってもコハクが独創的と評した格好には思うところがあるらしい。
「おほん! 私達の格好についてはどうでもいい……私達の目的は、君が持つそのイーブイだ」
「あん? いーぶい?」
「ブイィィ……」
3人の中の代表なのか、真ん中の男がわざとらしい咳払いをした後にコハクの腕の中にいるイーブイを指差し、彼も名前を復唱しながら視線を下へと下げる。イーブイは男を睨み付け、唸る。
「そうだ。そのイーブイは我らフレア団の研究所から逃げ出した実験体。痛い思いをしたくなければ、そのイーブイを手渡して今日のことは忘れるんだな」
「「「グルルル……」」」
「……ブイ……」
男の言葉を聞き、イーブイは不安げにコハクを見上げる。男の言う通り、イーブイはフレア団と呼ばれる組織の研究所に実験体として扱われ、隙を突いて命からがら逃げ出してきた。また研究所に戻るなんてしたくはないが、己の体は傷だらけでこれ以上逃げることは不可能に近い。そして今、自分の命が目の前の見知らぬ人間次第であるとも理解している。
……はっきり言って、イーブイはこの時点で諦めていた。イーブイにとって人間は自分に研究や実験と称して痛いことをしてくる存在だ。手当てをしてくれた相手と言えど、その思いは変わらない。自分達ポケモンのことなんてなんとも思っていない怖い存在……そんな存在が、自分の命が掛かっているこの状況で自分を手放さない訳がない、と。また自分はあの場所に戻される……そんな思いから、イーブイは俯いた。
「はっ、実験体だかなんだか知らねえが……取り合えず、あんたらが所謂“悪人”だってことは分かった」
「……そうか。それで、返答は?」
「イヤだね!」
だから、その言葉は予想外だった。思わず俯いていた顔を上げ、この人間は何を言ったのかと凝視する。それは男達も同じようで……少しの間を置き、話していた男が苛立たしげに舌打ちをした。
「英雄願望か? 素直に渡せば良かったモノを……おい!」
「「おお!」」
「「「デルビル、“かみつく”!」」」
「「「ガァァァァ!!」」」
「ッ!? ブイブイ!」
男達が同時にデルビルへと指示を出し、それに従ってデルビル達がコハクに噛み付くべく走り出し、イーブイは思わずコハクに危ない! とばかりに声を上げる。だが、そうしたところでデルビル達はもうコハク達の背後まで迫っている。そして3匹は大口を開けて跳び上がり……。
「いよいっ、しょおおおお!!」
「「「キャインッ!?」」」
「「「……は?」」」
「ブイ!?」
コハクは気合の声と共に振り返り、そのまま右足による回し蹴りを一閃。3匹のデルビルを同時に蹴り飛ばした。蹴り飛ばされたデルビル達はそれぞれ木々へとぶつかり、ぶつかった木々はメキメキと音を立てて折れた。あまりの出来事に男達からは間の抜けた声が出て、イーブイからは驚愕の声が出た。
「さて……」
「「「っ!」」」
「痛い思いが……なんだって?」
足を下ろして再び男達へと体を向けたコハクは、ニヤァと凶悪な笑みを浮かべて挑発するように言った。唖然としていた男達は苦虫を噛み潰したような表情を浮かべ、それぞれが目を回して倒れているデルビル達にモンスターボールから出る赤い光線を当て、回収する。コハクはその自身にとって未知なSFのような出来事に感心したようにへぇ、と漏らした。
(明らかに俺の知る技術ではあり得ない……それにあのワンコ達もコイツも見たことがない生き物。こりゃ、もしかすると……もしかするかもな)
「ポケモン蹴り飛ばした挙げ句に木を折るとかどんな力してんだ……だが、近付かなければいいだけだ。行け、ラクライ!」
「ガウッ!」
「また見たことねぇのが……」
男達を見据えつつ思考するコハク。だがそうしている間にも時間は過ぎていき、男もコハク達を逃すわけにはいかないと新たなポケモンを出す。後の2人は悔しげな表情をしている為、先のデルビル以外に手持ちはいないのだろう。新たに現れたのは、緑色の体が特長のポケモン、ラクライ。それを見たコハクは、そう感想を漏らし、身構えた。
「“じゅうまんボルト”!!」
「ガァァァァウ!!」
「な、にぃ!? くっ!」
「ブイ、ブイ!?」
ラクライの体からバチバチと音がしたかと思えば、次の瞬間にはその体から電撃が放たれる。まさかの攻撃に驚愕するコハクだったが、素早く後方へと跳んだことで回避することに成功する。イーブイは大丈夫かとコハクに叫ぶが、当の本人は“じゅうまんボルト”が着弾した場所……焦げた草むらを見て冷や汗を掻いていた。
(電気にしちゃあ速度が遅い……見て避けられる。が、まさか電撃たぁ驚いた……どうやらこの世界、予想以上にトンデモ世界らしいな)
この世界が自分の居た世界とは違うことに確信を抱きつつ、少しずつ下がるコハク。(人間としておかしいことに)見て避けられるとは言え、その速度は中々のもの。避け続けるのは限界があるだろうし、電撃は流石に蹴り飛ばすなんてことは出来はしない。
ならば近付いて先程のように蹴り飛ばす……と考えるが、近ければ近いほど電撃は避けづらくなるのは明白。もしかすると、接触した瞬間に電気が流れるかもしれない。そんな思考をするコハクに再び“じゅうまんボルト”が飛んでくるが、彼は左へと跳ぶことで難なく避けた。
「じり貧って奴だな……どうするか……」
そんなことを呟くコハクの腕の中で、イーブイは考える。まだ警戒心が完全に解けた訳ではないが、少なくともこの人間が自分を男達に渡すことはなく、むしろ守ってくれているのは理解できた。また、彼だけでは現状を打破することが難しいことも。
(ボクが、この人間と一緒に戦えたら……)
ふと、そう思った。自分だけではとても男達には勝てない。だが、デルビル達を倒し、今も“じゅうまんボルト”を避け続けているこの人間となら……そう、思ったのだ。イーブイの経歴からすればあり得ない思考。それでも、1度そう考えてしまえば、自然と警戒心は薄れていった。
(……? 笑……ってる?)
ふと見上げると、人間がニィッと笑っていた。それは先程のような凶悪な笑みではなく、まるで好奇心旺盛な子供のソレだ。不思議と、イーブイには目の前の人間の気持ちが分かった。彼は今、この状況を楽しんでいるのだと。
(ったく……世界ってのは不思議や危険がいっぱいだなぁ……これだから旅はやめられねぇんだ。自分にとっての未知が、不思議が、知ると楽しいことが山ほどある)
まるで、そんな心の声まで聞こえてくるかのよう。不思議な生き物に手当てをし、それが切っ掛けで訳の分からない組織の男達に命を狙われ、今もそれが継続しているというのに……それでも彼は、“人生を謳歌”していた。それは実験体として生かされていたイーブイにとってとても羨ましいもので……。
(……ボクも……ボクも同じように……君と同じように、生きられたら)
それは、とても眩しい生き方で……。
「だったら、生きようぜ」
「ッ!?」
「俺と一緒に生きようぜ! 世界にはお前の知らねえ楽しいことが、美味い飯が、美しいモノが、山ほどあるんだ!」
「……ブイ、ブイ!」
ー そして、彼と
「チッ、さっさと当てろ! “ほうでん”!」
「ガゥゥ!」
「な、ああああっ!?」
「ブ、イィィィィ!?」
いつまで経っても当たらないことに業を煮やしたらしく、男は技を変える。相手を直接狙う“じゅうまんボルト”から、自分の周囲に満遍なく攻撃する“ほうでん”へと。男達に当たらないように前方に扇状に広がる電撃に、流石のコハクも避け切れない。
“ほうでん”が直撃したコハクはその場に膝を着き、右手を着くもイーブイだけは守るとばかりに左手で抱えたまま落とさない。とは言え、イーブイ自身にも電撃のダメージはある。
「ようやく当たったか……これで終わりだな」
イヤらしく笑う男の言葉に、コハクとイーブイは負けてたまるかと睨み付ける。そんな姿もただの負け惜しみにしか見えなかった男はゆっくりと手を前に伸ばし、ラクライに攻撃を命じる。
その直前、コハクとイーブイは同じことを考えていた。こんな奴等に負けてたまるかと。まだまだ見たいものが沢山あるんだと。
(俺は……)
(ボクは……)
ー この世界を、生きたい!! ー
「ああああっ!!」
「ブイイイイッ!!」
1人と1匹が互いに戦意をみなぎらせ、吼える。不思議とお互いが同じことを思ったのは理解していた。お前が、君が生きたいと願っている。だったら、こんな奴等をさっさと倒して一緒に生きようじゃないかと。
瞬間、コハクの体を蒼く優しい光が包み込んだ。それは彼が抱えるイーブイをも包み込み……イーブイは、不思議な光景を目にする。
(……ここは……これは、まさか)
そこは、まるで宇宙のようだった。自分を中心に足下から真っ白な光の糸が、数多存在する光に向かって伸びている。そして、その光の中には何らかのポケモンと思わしき影があった。イーブイは悟る。これは、自分の未来への……進化の可能性なのだと。自分にはこれだけの進化の可能性があり……しかしよく見てみれば、そのどれもがどこかで光の糸が途切れていた。
だが、1本だけ違った。真っ白な光の糸の間に蒼い光の糸が入り込み、途切れた部分を埋めていた。他は全て途切れているのに、その1本だけは……イーブイはその蒼い糸に導かれるように歩き出し、そして影の元に辿り着く。その進化先のポケモンの名前は……。
「ラクライ、“じゅうまんボルト”!」
「ガゥゥ!」
放たれる電撃は真っ直ぐコハクへと向かい、“ほうでん”を受けた影響で動けない彼は避ける様子を見せることもなく……そして、イーブイから光が溢れた。
「な、なんだ!?」
「この光は……まさか、進化!?」
「バカな! あのイーブイは度重なる実験の末、進化の石すらも反応しなくなった“進化出来ない固体”のハズ!!」
男達が驚愕する中、光が収まっていく。そこに居たのは、相変わらず動けないままのコハク……そして、まるで守るように彼の前に威風堂々と存在する
「サンッダース!!」
「サンダースだと!? 雷の石も無しに進化したのか!?」
「へぇ、コイツは“サンダース”っつーのか……それに進化、ねぇ。てことはさっきの茶色いのか、お前」
「ンダース!」
進化しないハズの、それも本来でも進化の石という特殊なアイテムが必要なハズのイーブイがした有り得ない進化。そんなことはあんまり理解していないコハクとイーブイ……サンダースはそんな会話を交わす。
「だが……進化したところで、傷だらけであることには変わらない! ラクライ、“じゅうまんボルト”!!」
「ガァウ!!」
「ま、待て! サンダースの特性は確か……」
有り得ない出来事に困惑しつつも、男は先程の傷だらけの姿を思い出し、怯むことなくラクライに攻撃させる。その直前仲間の1人が止めさせようとするが、時既に遅し。
「~♪」
「な、幾ら効果が今一つとは言えダメージがないだと!? いや、そうか……“ちくでん”の特性!」
コハクの前に出て彼を守るように“じゅうまんボルト”を受けるサンダース。しかし、本人はダメージを負うどころか気持ち良さそうにしている。それに加え、傷が目に見えて治っていく。
ポケモンには、特性と呼ばれる固有の力がある。あるものは技の威力を高め、あるものは天候すら変化させることもある特性。男が言うように、サンダースの特性は“ちくでん”と呼ばれるモノ。その能力は電気タイプの技を受けてもダメージを負うことはなく、むしろ体力が回復してしまう電気タイプ殺しの特性である。
「なら、電気技を使わなければいいだけだろう! “でんこうせっか”!」
「ギャウ!」
「ダース!!」
「ギャンッ!?」
男はラクライの持ち味でもある電気技を封じられたことに憤りつつ、ラクライに指示を出す。その身にエネルギーを光として纏い、その名の通り電光石火の速度でサンダース目掛けて突撃するラクライ。対してサンダースは、同じようにエネルギーを纏い……これまた同じように電光石火の速度でラクライに向かい、お互いにぶつかった。結果、力負けしたのはラクライの方だった。ラクライは二転三転と地面を転び、男達の前まで逆に吹っ飛ばされてしまう。
「何をしているんだラクライ! もう一度……」
「その口閉じてろ!」
「ぎゃふんっ」
力負けしたラクライに怒り、もう一度“でんこうせっか”を指示しようとする男。だが、その前に動けるようになったコハクから背負っていたリュックを投げ付けられ、顔に命中。真っ赤なサングラスは割れ、首からコキッと軽くもイヤな音を聞きつつ後ろに倒れた。
「サンッ……ダァァァスッ!!」
「「「あばばばば!?」」」
「ギャインッ!?」
更にサンダースから電撃による追い討ちが決まる。哀れ男達は真っ赤なスーツが見る影もなく黒焦げになり、ラクライも目を回してダウンしてしまう。先にリュックを顔に受けた男も同じように気絶してしまったようだ。
「ゴホッ……きょ、今日のところはこれくらいで勘弁してやる!」
「ゲホッゴホッ……こ、これで勝ったと思うなよー!」
そんな捨て台詞を残し、ラクライと気絶した男を背負って逃げていく男達。黒焦げになりつつも気絶しなかった打たれ強さを褒めるべきか、仲間を見捨てない行動を褒めるべきか……そんな彼らを追うことなく、コハクはその場に座り込んだ。
同時に、サンダースの体が再び光に包まれ……それが収まると、先程のイーブイの姿があった。
「お、戻ったのか」
「ブーイブイ」
本来、それは有り得ないことであると彼は知らない。また、イーブイも不思議には思っても深くは考えなかった。
「ったく……目が覚めたら寝てた場所とは違うわ変な生物はいるわ変な輩はいるわいきなり襲われるわ……散々だったな」
「ブイ? ブーイ」
「けどまあ……お前のカッコいい姿も見れたし、いっか」
「ブブイ! ……ブイ?」
コハクの言葉に一瞬疑問を浮かべるイーブイだったものの、続いた言葉には概ね同意だったので頷き、彼からのカッコいい発言に嬉しそうに胸を張る。イーブイとて可愛い姿をしていても♂。やはり可愛いよりカッコいいの方が嬉しいらしい。が、よく考えるとカッコいい姿とは進化後のサンダースのことなのでは? と思い至り、なんとも言えない表情を浮かべた。そんなイーブイを見たコハクはニカッと笑い、くしゃくしゃと少し乱暴に頭を撫でるのだった。
これは、所謂転生者や憑依者、元からポケモンの世界に住んでいた者の物語……などではない。
これは、所謂トリップというものを知らない内に経験し、その世界で出会った人間やポケモン達と時に楽しく、時に慌ただしく……そして、ドキドキワクワクとしながら仲間と共に生きていく。
ただ……それだけの物語。
ここまでお読み頂き、誠にありがとうございます。
お察しかと思いますが、本作はカロス地方でのお話しです。また、私の作品としては初めてのトリップ系主人公でもあります。本作は、私のもうひとつのポケモン作品の主人公が真面目にポケモン世界を生きたら……というイメージで書きました。なので、コイキングは手持ちになりません←
ヒロイン候補としてはセレナかコルニ辺りでしょうか。ゲームストーリー準拠で行くならですが。アニポケとリンクするなら、コルニ他になりますね。サトシ達と旅させるのもいいかもしれません。その場合、保護者ポジではなくユリーカと一緒に好奇心のままに動き回ると思います。
相棒はイーブイ。それもフレア団の研究所から逃げ出した訳ありイーブイです。更に度重なる実験の末に進化出来なくなっています……が、コハクの蒼い光によって“一時的”に進化出来ます。その際、進化の石は必要ありません。言ってしまえば、このイーブイだけ進化の仕方がデジモンです。セイバーズ的な意味で。デジソウルならぬポケソウルですね。いや、ちゃんとした名前はありますよ? ヒントはコルニの相棒です。
衝動発散兼リハビリ作品ですのでこれっきりですが、皆様からの評価感想次第では連載も視野に入れています。その場合はこれをそのまま1話にします。
それでは、皆様からの感想、評価、批評、ptをお待ちしております(*´∀`)