魔術師と王様   作:からくさ

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夢か現か

 

 

 

 

 

 目が覚めると、なぜか寝転んでいた。

 

 どこにいるのか、とっさには分からなくて固まってしまうはめになる。

 

 あれ?

 

 何だか、記憶が飛んでいるような気分だ。ここは、カルデアだ。カルデアの、自分の部屋の……ベッドだ。

 

 でも自分でここに来た記憶がないし、最近の記憶として、レイシフト先で駆け回っていたものがまず思い出される。

 

 いや、戻ってきたのだ。

 

 戻ってきて……。

 

 あまりの眠さにふらふらになりながら、部屋に行こうとして……。記憶が曖昧だ。

 

 でも、召喚陣の上に現れた、彼の姿を見たような気がした。

 

 

 

 

 ……夢……?

 

 

 

 夢か。

 

 全部夢なのか。どこからが夢なのか。

 

 けれど、自分だけしかいないベッドの上を見ていると、夢だとしか思えてこなくなった。

 

 寝起きのせいか、眠気が残っているのか、重い瞼を閉じて、深く息を吐いた。ごろん、と転がる。

 

「……夢かぁ」

 

「夢?」

 

「うん。夢、見た」

 

「どのような夢だ」

 

「うん……? 俺にとっては、ちょっと残酷な夢かなぁ……」

 

 夢で見たって、会えたって、起きていなければ残酷だ。

 

 ……と、考えながら答えたところで、違和感に気がつく。

 

 

 今、誰と話している。

 

 はっとして、目を開いた。

 

 するとベッドの横に、誰かが、いた。

 

 

「………………ゆめ……?」

 

 

 こんなに目を疑ったことはない。

 

 金色の髪、深い赤をした目。その男の整った顔立ちは、相変わらず芸術だという印象を受けてしまいそうだ。

 

 ――ギルガメッシュが、いた。

 

 しかし、見えてはおれど、頭にはまともに入ってこないし、理解できない。

 

 夢、幻覚……自分が見ている光景が、現実とは思えなかった。

 

 すると視界に映る美しき王は、にわかに身を乗り出してきた。

 

「夢かどうか確かめてみるか?」

 

 ベッドの上に上がり、リンドウを閉じ込めるように手をついた。

 

 見下ろしてくる顔が、近づき、触れた。

 

 唇が重ねられ、あっけに取られていた口の隙間を器用に縫って舌が入り込んでくる。

 

 そこでようやく我に返って、反射的に身を引こうと思っても、ベッドの上で身を引くとか頭を引くとか出来るはずもない。

 

 むしろその瞬間、舌を捕らえられ、絡みつき、逃げる隙はどこにもなくなった。

 

「っふ……ぁ、……」

 

 口内を動くものの感触と熱さは生々しく、しかし熱さゆえに、徐々に現実味が遠ざけられていきそうなくらいだった。

 

 

 

「現実であろう」

 

 気がつくと、口づけは止まっていて、上から見下ろす顔があった。

 

 ──ああ、確かに。こんなの、夢であるはずがない。

 

 酸欠になりかけで、呼吸に精一杯になりながら、現実だと、じわじわと染みてくるように実感していく。

 

「……ギ……ルガメッシュ」

 

 目尻から、熱い雫が流れ落ちた。

 

 ギルガメッシュの指が、頬に触れる。

 

 じりっと小さく痛みが走って、傷がある部分に触れられたらしい。

 

「このように傷だらけになって、何をしておる」

 

「ちょっとね、色々あって」

 

 あなたにまた会うまでに、色々あっただけだ。

 

 それなりの歳月が経ち、環境が変わった。

 

 だが、間に挟まれた時間によるここまでの過程を説明するよりも、確かめたくて手を伸ばした。

 

 触れたくて、実感したくて。

 

 横たわったままだから、ちょっと届かなかったけど、ギルガメッシュが覆い被さるように近づいてくれた。

 

 ぎゅうと、抱きしめる。

 肌が触れ、温かさに触れ、もっと涙が溢れてくる。

 

「…………聖杯は、また、願いを叶えてくれないのかと思った……」

 

 呪いを解く願いを叶えてくれなかったように。

 

 もしくは、何度も聖杯を得た自分の願いなんか、聞いてくれないのかと。

 

 夢を見るたび、泣いて目覚めるたびに、そう思った。

 

「あの時、聖杯に何を願った」

 

「ギルガメッシュに、また会えますようにって」

 

「……たわけが」

 

 言葉とは裏腹に、彼は、強く抱きしめてくれた。

 

「そのようなことは、我に直接言え」

 

 自分のわがままだと思ったから、言えなかった。そう言うと、彼は、何と言うだろうか。

 

 けれど、どれもこれも、この瞬間まで会えなかった時間も、もう良かった。

 

 会えたなら、それで良かった。

 

 

 

 

 

 

 

 しばらくそのままでいると、何だか瞼が重くなってきた。

 

 どうも、やはりまだ眠たいらしい。

 

 安堵した、ということもあるだろう。

 

 このまま、寝てしまいたい。久しぶりに、心の底から安眠できそうだ。

 

 

 しかし、だ。

 

「……何してんの、ギルガメッシュ」

 

 服の下、直に肌に触れた手があって、重い瞼を持ち上げた。

 

 そういえば首に腕を回したままだった彼に問うと、ギルガメッシュが少し起き上がって顔が見えるようになる。

 そうかと思えば。

 

「このような状態にあれば、抱くことは当たり前だろう」

 

 当たり前って何だっけ。

 

 再会したばかりの王様は、実に当たり前のように言って、間違いようもなく服を脱がせようとしてくる。

 

「……ギルガメッシュ、俺、すごく眠いんだ」

 

「我と再会しておいて、早々に寝るつもりか」

 

「いや……うん」

 

 だって眠いから。

 

 そうこうしている間も、極度の眠気が、襲ってくる。

 

「……次、起きたら、何してもいいから、とりあえず……今、ねむい。そんなに、欲張らないから、……せめて、手を握ってて、くれると……嬉しい、かも……」

 

 あと、安心する。

 

 そこにいると、目覚めた瞬間に分かるだろうから。

 

 横に寝ていてくれとまでは欲張らないけど、今はこれだけは欲を言わせてほしい。

 

 

 思いながら、とうとう眠りに飲み込まれていくと。

 

「その言葉、覚えておけ」

 

 そんな言葉が、聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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