多少の解釈違いは、何卒お見逃しを・・・・!!
誰だって、体験したい奇跡の一つや二つあるだろうし。
遭遇したい未知の一つや二つあるものだと思う。
そして、『実際に出逢った』という人がいれば、心から羨ましがる。
語り部である『私』は、そんな『羨ましがられる側』の人間だ。
死んだと思ったら実は超常的な存在のミスで、お詫びとしてアニメやゲームの世界に転生させてもらう。
『異世界転生』をまさに経験して、第二の人生を生きている一人だった。
能力も貰っている、みんな大好き『無限の剣製』。
流石に幼い頃は能力に振り回されることもあったが、今では一端の使い手に慣れている(と思う)。
とはいえ、今生が順風満帆かと言えば、そうでもなかった。
『子どもは生まれる場所を選べない』というが、まさにそのとおり。
私が産声を上げたのは、銃弾飛び交う紛争地帯の真っ只中だった。
いやぁ、剣製なかったら十歳迎える前に死んでたっぺよ・・・・。
何より、まだ生き残っている家族もいたから。
私はより一層能力の研鑽に励んだ。
だから何に代えても守りたかったし、そのために強くなりたかった。
まあ、とにもかくにも必死こいて生き残った私。
戦場から『孤児院』に変わっても、決意は決して揺るがなかった。
炎が翻っている。
無機物は炙られて、真っ赤になっている。
その中で立っているあの子は、誰がどう見ても重傷だった。
「――――セレナッ!!」
着地と同時に妹を回収してとんぼ返り。
気をつけたつもりだったが、二度目の着地の際に上がったうめき声が罪悪感を駆り立てた。
外傷は見当たらないが、やはり血涙と吐血が酷い。
素人目でも、内蔵にダメージがあることは読み取れた。
「・・・・ッ」
小さな体で、こんなにボロボロになるほど頑張ってくれた。
誇らしいと同時に、自分が情けなくなる。
「姉さん!セレナッ!」
「二人とも無事ですか!?」
自己嫌悪しかけたところで顔を上げれば、『母』と上の妹が駆けつけてくる。
「セレナッ!セレナ、ああ、しっかり!!」
「マム、セレナを早く・・・・!」
「ええ、救護班は手配済みです」
末っ子のあんまりなボロボロ具合に、上の妹は大分うろたえているようだったが。
その体を抱きしめて支えるだけの余裕は残っていたようだ。
『母』に付き添われながら歩き出した妹達を見て、さあ自分もと、歩き出そうとして。
「――――」
気付く。
首元をひりつかせる第六感。
これまでの経験で裏打ちされた結論は、すなわち。
「■■■■■■■■■■■■――――ッッッ!!!!」
瓦礫を吹っ飛ばして現れたのは、妹が封じ込めようとした『巨人』。
人とはかけ離れた姿を持った、異形のバケモノ。
「な、ネフィリム!?」
・・・・妹が血を流してでも止めようとした敵は。
忌々しくも健在だった。
躊躇わない。
また引っ張り出して、両手に握る。
「姉さん・・・・!」
「構わないわマリア、誰かが引き受けなきゃ」
こちらを、正確には後ろの妹を唸りつつ睨み付けていた。
健在とは言え、それなりのダメージを叩き込まれた恨みでもあるのだろう。
私さえいなければ、即座に飛び掛りそうだった。
「・・・・セレナを搬送次第、すぐに援軍を手配します。それまでどうか・・・・」
「オーケィマム、任せて・・・・ああ、けれども」
構える。
右手にまっさらな刀身の剣、左手に赤い亀甲模様が入った真っ黒な剣。
恐怖を押し殺すように、握り締める。
「時間稼ぎは構わないけれど、別に倒してしまってもいいんでしょう?」
背中を向けていたけれど、マムが驚いているのがよく分かった。
「マリア、セレナをお願いね」
「そんな、姉さんッ!!」
返事を待たずに剣を天井へ。
突き刺して瓦礫を降らせ、こちら側とを隔てる壁にする。
瓦礫に阻まれたことで、相手はターゲットをこちらに向けた。
再び剣を両手に握り、睨み返す。
バケモノは腕を振り上げ、叩きつける。
飛び散る砂利、煽られる熱気。
ステップで回避して、地面に刺さった腕へ一閃。
かすった程度で、大したダメージを与えられない。
それでもバケモノにとっては『ちょっかい』であることに代わりはないらしく。
怒りの雄叫びを上げたバケモノは、無茶苦茶に腕を振り回して暴れまわる。
単なる駄々こねのように見えるそれも、ごん太の腕ともなれば立派な鈍器だ。
当たれば即死なのは確実なので、必死に避けてまわる。
しかし、瓦礫が散乱した足場の悪い中では、姿勢を崩すなと言うほうが難しかった。
「っしま・・・・!」
案の定、足を取られて体がよろける。
当然バケモノはその隙を見逃さない。
思いっきり振り払われる腕。
しゃがんで避けたが、余波をくらった。
軽い女の体が、びっくりするほど吹き飛ぶ。
「あっぐ・・・・!」
背中を強く打ちつけ、痛みに悶える。
だがバケモノは待ってくれない。
牙を向き襲ってくるのを見て、咄嗟に飛びのいた。
燃え盛る炎が、容赦なく熱気で体力を奪っていく。
目の前には未だ健在のバケモノ。
マムは増援を送ってくれるというが、正直こいつに太刀打ちできるだけの戦力があるとは思えない。
しかしここで奴を止めなければ、妹達だけでなく。
多くの命が危険に晒される。
・・・・それゆえに。
切り札を切ろうと、腹を決めた。
「――――I am the bone of my sword.」
今度は弓を引っ張り出して、矢として刀身が捻れた剣も一緒に出す。
弓につがえながら狙いを定め、矢に『力』を籠める。
そして十分にひきつけてから発射。
着弾と同時に爆発が起こり、バケモノが思わず防御するのが見えた。
ひるんだ隙に走り出し、死角へ回りこむ。
「Steel is my body, and fire is my blood.」
再び黒白の双剣を握り、こちらに気付いたバケモノへ投げつける。
風切り音を立てて飛ぶ二つの刃。
「I have created over a thousand blades.」
もう二つ同じものを取り出して、再び投擲。
互いに引き合った刃たちは、程なくバケモノの下へ。
飛来の回転による多彩な斬撃を以って、全身へ切りかかる。
「■■■■■――――ッ!■■■■■■■――――ッッ!!」
体を切り刻まれる痛みに悶えるバケモノ。
「Unknown to Death.」
駆け出す。
両手に三度双剣。
「Nor known to Life....!!」
今度は投擲ではなく、握り締めたままにする。
『力』を流し込めば、肥大し、ささくれていく刀身。
一見すれば羽のようにも見える。
「
変化を遂げた剣を叩きつければ、その胴体を大きく掻っ捌いた。
普通の生命体なら即死するダメージに、手ごたえを覚える。
しかし、
「■■■■■■■■■――――ッッッ!!!」
「なっ?っぁが・・・・!」
怒りの雄叫びが轟き、振り払われる腕。
紙一重で胴体への直撃は避けたが、代償に腕を損傷した。
骨が砕け切り、激しい痛みと脱力感を覚える。
痛みに怯む間もなく、バケモノが反撃に転ずる。
殴打で壁に叩きつけ、引っつかんで瓦礫に投げ込む。
「――――」
飛びそうになる意識。
限界に近づきつつある疲労が、眠気を
鉛のように重たい体は、指一本動かすことすら億劫だと訴えていた。
――――目蓋が降りる。
這い寄ってきた暗闇に、身をゆだねようとして、
――――姉さんっ
――――守りたいものが、頭を過ぎった。
「――――ぐ」
踏みとどまる。
熱気の力を借りて、何とか意識を繋ぎとめる。
見上げれば、案の定健在なバケモノ。
「・・・・そう、ね」
息も絶え絶えながら、自分が笑みを浮かべたのが分かった。
「お姉ちゃんだもの・・・・負けるにしても、かっこよくなきゃ」
再び剣を握って、投擲。
バケモノの眼前で爆発させ、再び死角へ潜り込む。
「――――Have withsteood pain to create many wepons.」
当然ながら、声を出せば位置を悟られる。
即座に振り向き、飛び掛ってくるバケモノ。
だが、不思議と焦りは覚えなかった。
「Yet, those hands will never hold aniythung.」
地面を揺らして突進してくるバケモノを見据えながら、
「――――So as I pray,」
最後の小節を、紡ぐ。
「――――Unlimited blade works.」
瞬間、炎が翻る。
元から燃えていたものではなく、自身のうちから漏れ出た炎が。
自身を中心に、バケモノを、地面を、壁を。
その場のこと如くを、侵食して。
「■■■■■■・・・・!?」
――――熱気が失せる。
歯車が軋む音に混じって、バケモノの驚く声が聞こえて。
それがなんだか可笑しく思えて、再び笑みを浮かべた。
「ご覧なさい、ネフィリム。今からあなたが挑むのは、無限の剣にして、剣戟の局地・・・・!」
一本手繰り寄せる。
「恐れずしてかかって来いッッ!!!」
相手への挑発と言うよりも、この期に及んでまだ怯む己を鼓舞するため。
ありったけの勝気と大声を張った。
◆ ◆ ◆
――――セレナは、無事に一命を取り留めた。
高い水準を誇っていたフォニックゲインを失ってしまったけれど。
それでも五体満足で生きていることは、あの状況から考えるには奇跡としか言いようが無くて。
今はマムの助手として、精一杯頑張っている。
・・・・あの日のことは、今でも忘れられない。
私とセレナを逃がすため、たった一人で戦った姉さん。
援軍が駆けつけた頃には全てが終わっていたらしい。
休眠状態に戻ったネフィリムと、虫の息になっている姉さんが発見されたそうだ。
ネフィリムはそのまま機関の奥深くで封印。
重傷を負った姉さんは、コールドスリープで一度保存されることになった。
だけどその後。
姉さんの入ったコンテナが、組織に入り込んでいた内通者によって運び出されてしまったらしい。
捜索の成果は芳しくなく、あのフィーネが狼狽してしまうほどだった。
・・・・私はと言えば、あの日から後悔ばかりだ。
昔からずっと、姉さんには守られてばかりだった。
頑張ってくれるその背中を、ずっと見つめているだけで。
何か返せた例なんてなかった。
だから、せめて並び立つくらいにはと思っていたけれど。
それももう叶わない。
時は流れて、あの日の姉さんの年に追いついて。
――――気がついた時には、もう六年が経っていた。
姉さん(仮)
転生者、剣製使い。
名前は特に決めていない。
カデンツァヴナ姉妹の実姉、マリアより5つ離れている。
マリアとセレナを足して二で割ったような容姿。
ここまでの閲覧、まことにありがとうございます。
多分続かない()