-次の日・ホテルのロビーにて
ユーシス「さて、兄はどんな依頼を纏めたことやら」
ホテル支配人から受け取った依頼が入った封筒を開けようとするとマキアスがユーシスに話しかけてきた
マキアス「ユーシス・アルバレア」
ユーシス「なんだ?マキアス・レーグニッツ」
マキアス「ARCUSの戦術リンク、なんとしても成功させるぞ。新たな手配魔獣の依頼も出ているし、昨日のリベンジをしようじゃないか」
その言葉に全員が驚き、ユーシスはフッと軽く笑う
ユーシス「やれやれ、我らが副委員長は単純だな。大方昨日の俺とリィンの話を聞いて絆されたといったところか?」
マキアス「き…決めつけないでもらおうか!君やリィンの家の事情など、僕はこれっぽっちも……あっ」
フィー「語るに落ちた」
エマ「フフッ」
レイ「あのマキアスがユーシスと息を合わせようとは…成長したな~」
マキアス「ぐうっ……(汗)」
ユーシス「良いだろう。俺の方が合わせてやるから大船に乗った気でいるがいい」
そして実習を始めようとした時、アルバレア公爵家の執事アルノーが現れてアルバレア公爵が話があると言ってユーシスを家に連れて行った
レイ「さて、ユーシスが戻るまでに出来るだけ依頼を片づけて楽させてやるか」
エマ「そうですね」
フィー「異議無し」
その後、5人は手分けして依頼を片づけていき、1番早く終わったレイはバリアハート中央広場のベンチに座っていた
レイ「皆遅いな」
「ニャーオ」
暇を持て余しているレイの前に薄紫色の美しい毛並みの猫がチョコンと座った
レイ「おっ、可愛い猫だな~」
そう言ってレイは猫を抱き上げる
レイ「でも人懐っこすぎと言うか警戒心が無いのか、お前?」
「ニャアッ!(怒)」
レイの言葉に怒ったのか?猫はレイの腕から抜けて横に降り立つ
レイ「もしかして怒ったのか?」
「当たり前よ。私はそんなにのほほんとしてないわよ」
レイ「なっ!?猫が喋った!?」
するとレイは喋った猫を抱き抱えて人気の無い所に移動する
レイ「さっきの発言に対しては謝罪する。だがお前は一体何者なんだ?」
「私の名前はセリーヌよ」
レイ「セリーヌか。俺に何か用なのか?」
セリーヌ「実はあんたが昨日〈結社〉の人間と戦ってたのを見てね。その時にあんたから溢れ出てた力が何なのか聞いておこうと思ってね」
レイ「見てたのか。実はあの力は元々俺の力じゃない」
セリーヌ「と言うと?」
レイ「〈幻獣サンダードラコ〉を知ってるか?」
セリーヌ「雷の力を持つ幻獣よね?…ってまさか」
レイ「そのまさかさ。俺は数年前にそのサンダードラコを倒した。その後、俺と奴の力の相性が良かったのか、奴の力が俺の中に入ってきた。それ以降、昨日セリーヌが見た力が使えるようになったってわけさ」
レイの言葉を聞いたセリーヌは唖然としていた
セリーヌ「まさか1人で〈幻獣〉を倒すなんて……。でも納得したわ」
そう言ってセリーヌはベンチから降りる
セリーヌ「それじゃ私は行くわ。普段は学院か公園のどっちかにいるから何か聞きたくなったら来なさい」
レイ「分かった。その前に1つお願いがあるんだが…」
セリーヌ「何よ?」
-数分後
セリーヌ「ニャアァァァァ~。気持ち良いわねぇ~、あんた何で撫でるのそんなに上手いのよ~?」
レイ「猫好きだからな。どう撫でたら気持ち良いかは分かるよ」
セリーヌ「なるほどね~。それより、さっきから鳴ってるわよ~」
レイ「ん?」
ARCUSを取り出し、通信に出るとリィンからで内容はマキアスが無実の罪で捕まったという物だった
レイ「悪いなセリーヌ、ちょっと急用が出来た」
セリーヌ「そう、気をつけてね」
その後、レイはリィン達に合流しどうやってマキアスを救出するか喫茶店で話し合う事になった
レイ「あらぬ罪で帝都知事の息子を拘束し、さらには邪魔されないようにユーシスを実家に軟禁する。アルバレア公、予想以上に腐ってやがるな」
エマ「はっきり言い過ぎでは……(汗)」
フィー「とにかく今はどうやってマキアスを助けるかだね」
フィーの言葉に皆が思案顔になるが何も良い案が浮かばない
その時、カウンターに座っていた青年の話が耳に入ってきた
青年「なあなあマスター。地下水道の魔獣、最近どんなもんだい?」
リィン・レイ(地下水道…?)
マスター「ああ、お前さんが入ってから3ヶ月位経つか。よく分からんがまたぞろぞろ湧いてるんじゃないか?領邦軍も相変わらず放置しているみたいだしな」
青年「やれやれ、麗しの都の足元の魔獣を放置しているとはねぇ」
マスター「まっ、そんな話が聞こえたらまた連絡してやるさ」
青年「サンキューマスター。また美味いエスプレッソ期待してるぜ」
マスター「ああ。レグラムに戻る前にでもまた寄ってくれ」
そして青年はコーヒー代を払って店をでようとするとリィン達に気づき、話しかける
青年「ん?へぇ、珍しい格好だな。赤い制服…どこかの学生さんかい?」
レイ「ええ。トールズ士官学院の者です。それよりさっき『地下水道』と言っていましたが、その地下水道はどこからどこまで続いていますか?」
青年「そうだな。丁度…駅前辺りから貴族街の辺りまでになるな」
レイ「そうですか。どうもありがとうございます」
青年「良いってことよ。それじゃぁな」
その後、リィン達は地下水道の入口を探し始めたがなかなか見つからなかった
リィン「う~ん、見つからないな…」
その時、橋から身を乗り出していたレイが3人に話しかける
レイ「おい、あれがそうじゃないのか?」
レイが指さした先には確かに扉があり、4人はその扉の前まで行く
レイ「さて、喫茶店の店主の話じゃ鍵がかかっているらしいがどうやって開ける?」
エマ「私に任せて下さい」
そう言ってエマはヘアピンを取り出し、鍵穴に差し込む
エマ「Aperio(開け)」
エマが小声で呟くと鍵が開き、4人は地下水路へと入っていく
リィン「地下水路と言っても結構綺麗だな」
エマ「さすが翡翠の公都ですね」
そして4人は魔獣を倒しながら地下水路を進んでいくと…
?「フン、わざわざこんな所まで来るとはな」
目の前に実家で軟禁されているはずのユーシスがいた。どうやらレイ達と同じようにマキアスを助けに向かおうとしていたようだ。本人は「奴の泣きべそを見るためだ」と言っていたが…
領邦軍詰所・牢屋部屋にて
レイ「ここだな」
リィン「きっとどこかに…」
マキアス「き、君達どうしてここに……。まさか忍び込んできたのか!?」
エマ「マキアスさん!」
ユーシス「フン、無事だったか」
レイ「話は後だ。フィー、俺はマキアスの武器を取り返してくる。お前はこの南京錠を頼む」
フィー「任せて」
そしてレイはマキアスの武器を取り返しに行き、フィーは南京錠に何かを貼り付ける
フィー「下がってて」
リィン「えっ?」
南京錠に何かを貼り付け終わったフィーはガンソードを構える
フィー「起爆〈イグニッション〉」
ガンソードの引き金を引くと南京錠に貼り付けられた物が爆発し、南京錠は破壊された
マキアス「なぁぁぁぁぁっ?!」
エマ「フィーちゃん、今のは……」
フィー「携帯用の高性能爆薬」
マキアス「爆薬!?そんなものを持ち歩いているのか?!」
リィン「フィー…普段の身体能力の高さといい…君は一体何者なんだ?」
フィー「--士官学院に入る前、私は〈猟兵団〉にいた。爆薬も銃剣の使い方もそこで全部教わった。ただそれだけ…。もしかしたらレイは初めから私が猟兵団にいた事を知ってたかもしれないけど…」
マキアス「〈猟兵団(イェーガー)〉…!」
リィン「一流の猟兵部隊…そうだったのか」
ユーシス「信じられん…死神と同じ意味だぞ」
フィー「私、死神?」
マキアス「あ…」
ユーシス「いや…そうだな。名に囚われる愚は犯すまい」
その時、巡回の兵士が近づいてくる
リィン「まずいな…」
-ズガガッ!
レイ「一丁上がり」
マキアスの導力銃を取り返したレイが巡回の兵士を気絶させた
エマ「レイさん?!」
レイ「マキアスを助け出したか。こちらもマキアスの銃を取り返した。他の巡回の兵士が来る前に逃げるぞ」
レイの仕事の早さに全員呆然となるが、すぐに我に返って侵入してきた地下水路へ向かう。しかし、領邦軍の指令が異変に気づき、部下にある物を出撃させた
一方、地下水路を逃げていた6人は背後から響いてくる雄叫びに気づく
マキアス「何だ?!地下牢の方から!?」
フィー「ひょっとしたら軍用に訓練された魔獣かも」
そんな話をしながら走っている間も足音はどんどん近づき、遂には軍用魔獣2体に囲まれてしまう
エマ「あくまで退路を塞ぐつもりですね」
フィー「だったらこっちも遠慮なく撃破するだけ」
ユーシス「あぁ、せいぜい躾てやる」
レイ「俺達を敵に回した事を後悔させてやる」
リィン「特別実習の総仕上げだ!士官学院〈Ⅶ組〉A班、全力で目標を撃破する!」
皆「おおっ!」
そして全員、各々の武器を構えて挑むが軍用魔獣は素早く動いて攻撃してくるので手強く、苦戦を強いられていた。しかし…
ユーシス「レーグニッツ、俺の魔法で1体を足止めする。お前の銃でもう1体を誘導し…」
マキアス「っ!2体を1ヶ所に集めればいいんだな。分かった!」
ユーシス「よし、いくぞ!」
なんとあの仲の悪かったユーシスとマキアスが連携し始めたのだ
レイ(今なら戦術リンク、上手くいくかもしれないな)
ユーシス「ARCUS駆動、エアストライク!」
マキアス「くらえ!」
-ズガガンッ!
フィー「1ヶ所に集まった」
リィン「さっきの魔法も効いているみたいだ」
マキアス「ユーシス、後は頼んだ!」
ユーシス「任せろ!クリスタル……セイバー!!」
-ズガァァァァンッ!!
ユーシスのSクラフト・クリスタルセイバーで2体の軍用魔獣を倒した
リィン「ハアッ…ハアッ…なんとか倒せたか…」
フィー「ふ~、かなりの手応えだったね」
マキアス「さ、さすがにもうダメかと思ったぞ……」
ユーシス「フン…たかが獣ごときに遅れを取ってたまるか」
エマ「フフッ…」
リィン「ハハ…」
マキアス「まったく……笑い事じゃないだろう」
ユーシス「フン。そういう貴様こそ何をニヤついている…?」
マキアス「き、君の方こそ……!」
フィー「やれやれ」
リィン「実習の仕上げとしては上々すぎるくらいだな……」
エマ「えぇ、戦術リンクも全員で繋げられましたし…」
レイ「良いムードのところ申し訳ないが早く逃げた方が良いぞ」
しかし既に遅く、領邦軍が駆けつけて6人を取り囲む。そしてユーシスの怒りに恐れながらも武装解除をしようとした時…
?「その必要はなかろう」
隊長「なに?っ!!ル…ルーファス様!!」
サラ「は~い♪」
リィン「サラ教官!?」
ユーシス「兄上!?帝都に行かれていたのでは…」
ルーファスとサラ教官が現れ、ルーファスの指示で領邦軍は撤退した
マキアス「どうして教官もここに?」
サラ「いや~、実はとある筋から早めに連絡貰ってね。急いで帝都にいた理事さんに連絡を取ったのよ。それで帝都からの飛行船に一緒に乗せてもらったってわけ」
エマ「理事?」
ルーファス「まさか私の留守中にあんな無茶を父が押し通すとはな…。相当頑なではあったが今回ばかりは引いてもらったよ。理事として生徒への不当な拘束は断じて認められないからな」
ユーシス「え…兄上まさか…」
ルーファス「改めて--士官学院の常任理事を務めるルーファス・アルバレアだ。今後ともよろしく願おうか」
-翌日
〈Ⅶ組〉A班はサラ教官と共に列車に乗り、トリスタへと帰還した。サラが柄にもなく良いことを言ったのでリィン達から大爆笑されたというオチ付きだが…
-バリアハート近くの林道にて
少女「ふぇ~無事に帰ったか。力ずくで助け出す必要がなくなって良かったよ~。ニシシ…砦で見つかっちゃった時はどうしようかと思ったけど」
その時、少女のARCUSに着信が入る
少女「もしもーし、こちら〈白兎〉♪うんうん…一応何とかなったよ。まー細かい事は良いじゃん♪ちゃんとお仕事は終わらせたんだし。あ、でも色々面白いのはいたけど『連中』の気配は全然なかったよ?」
『……』
少女「えっ?ダミー情報!?君とおじさんの裏をかいたの?あはは、凄いなぁー結構やりがいのある相手だね。ボク?これからクレアと合流するけど。……了解。まったね~『レクター』」
そして少女は通信を終えた
少女「そういえば『シカンガクイン』だっけ?何だか楽しそうでいいなぁ…。ガーちゃん」
そう言って手を上げると少女の傍にオーロックス峡谷道でリィン達が見た銀色の戦術殻のような物が現れた
?「……」
少女「そうそう。ここでの仕事は終わりだよ。行こっか〈アガートラム〉」
そして少女は銀色の戦術殻の腕に乗り、どこかへ飛んでいった
その頃、列車の出入り口付近では
レイ(まさかルーファス卿が士官学院に3人いる常任理事の1人とは驚きだ。まぁ、それは置いておいて姉さんに報告しておくか)
レイはARCUSを取り出し、クレアに連絡する
クレア『どうしたの?』
レイ「オーロックス砦についての報告だ」
レイは見た事の全てをクレアに報告する
クレア『やはり軍備増強をしていたのね。ご苦労様レイ』
レイ「特別実習のついでだから全然苦じゃなかったよ。後、報告する事は変態紳士と神速の相手をして久々にあの力を使った事かな?」
クレア『あまり無茶はしないようにね。怪盗紳士と神速の事はこちらから報告しておくわ』
レイ「ありがとう。あっ、報告ついでにあのバカ兎に言っといてくれ。『調子に乗るなっていつも言ってるだろ!俺が自由行動日に帝都に帰ったら、3時間の説教コースだからな!』って」
クレア『アハハ…分かったわ(汗)それじゃまたねレイ』
レイ「ああ。じゃぁね姉さん」
通信が終わり、レイはリィン達の元に戻った
幻獣の名前やレイが力を手に入れた経緯は作者の考えたオリジナルの出来事です
ちなみに今回は幕間は無しです