【完結】迅雷の軌跡   作:カオスカラミティ

24 / 63
サプライズ

―翌日、レイは夏至祭に向けて警備体勢を見直したり、書類仕事に追われていた

 

クレア「レイ、ちょっと良い?」

 

レイ「なに?」

 

クレア「この書類なんだけど、エンゲルス中尉の代わりにやっておいてくれないかしら?私はこれからレクターさんに会い行かなければならないし…」

 

レイ「構わないけどよ。しかし夏至祭が近づくといつもこんな事があるな」

 

クレア「仕方ないわ。帝都で一番盛り上がる日だし」

 

レイ「そうだな。ところで巡回は誰が?」

 

クレア「ドミニク少尉が行くわ」

 

レイ「そっか。気をつけてね」

 

クレア「ええ。ちなみにエンゲルス中尉はすでに巡回に出てるわ」

 

レイ「了解。」

 

クレア「それじゃお願いねレイ」

 

そしてクレアは大量の書類をレイのデスクに置き、自分はレクターのもとへと向かった

 

 

―数時間後・夕方

レイ「ようやく終わった…(汗)あぁ~肩がこった~。」

 

大量の書類仕事が終わり、グッと体を伸ばすレイ。するとARCUSの通信音が響く

 

レイ「誰だ?はい、こちらレイ・リーヴェルト」

 

サラ『あぁ、レイ?今、大丈夫?』

 

レイ「大丈夫だが、いったい何の用だ?」

 

サラ『実は〈サンクト地区〉の〈聖アストライア女学院〉に夕方5時過ぎに来てほしいのよ』

 

レイ「はあ?……えっ!?」

 

サラ『それじゃあね~』

 

それだけ言うと一方的に通信は切れてしまった

 

レイ「5時過ぎって…もうすぐじゃないか!あのアホ教官、俺が導力バイク持ってるの知っててギリギリの時間に通信したな!!」

 

現在4時55分。士官学院の制服に着替えたり、導力バイクの準備をしたりしていると本当にギリギリだ

 

―3分後・詰所の外にて

レイ「制服良し!上司への書類提出良し!導力バイクのエンジン良し!行くぞ!」

 

レイは導力バイクのエンジンをスタートし、急いで〈聖アストライア女学院〉へと向かう

 

 

―聖アストライア女学院・正門前

レイ「危ねぇ~、ギリギリだった…」

 

リィン「えっと、大丈夫かレイ?」

 

レイ「ああ、リィンか…。それにアリサ達B班もいるな…」

 

アリサ「ええ。っていうか貴方の乗ってきたそれって?」

 

レイ「後で話す。それより何で俺達〈Ⅶ組〉がここに集められたか知ってる奴はいるか?」

 

だがレイの質問に答える者は誰もいなかった。どうやら彼らもサラに用件だけ伝えられて集まったようだ

 

レイ「あのアホ教官、マジで一度地獄を見せてやろうか?(怒)」

 

マキアス「まっ…まあ、落ち着きたまえ(汗)」

 

ユーシス「あまり怒っていると血管が切れるぞ」

 

レイ「そうだな。サラへの制裁は後にしよう」

 

皆(あっ、制裁は絶対にやるんだ…。)

 

その時、ヘイムダルの鐘が鳴り、聖アストライアの正門が開いて1人の女子生徒が出てきた

 

エリゼ「お待たせしました。10名のお客様で…って兄様!?」

 

リィン「えっ…エリゼ!?」

 

お互いに予想外の出会いだった為に驚くが、すぐにエリゼは冷静さを取り戻してリィン達を案内する。だが女学院なので当然…

 

「ラウラ様…ラウラ様だわ!?あの金髪の方はユーシス様!?」

 

「背の高い方は異国の方なのかしら…」

 

「あちらの眼鏡の方も理知的で素敵ですけど…」

 

「先頭にいる黒髪の方は平民なのかしら?凛々しくて素敵ですわね…」

 

「それより、その黒髪の後ろにいる方って…!?」

 

「まぁ、鉄道憲兵隊のレイ大尉ですわ!」

 

「1年ぶりにお姿を拝見しましたわ!」

 

このように女子生徒の格好の的になってしまう。そのせいでエリゼは物凄く膨れっ面になっていたが…

 

マキアス「これはちょっとこたえるというか…」

 

ユーシス「フン、あれ位受け流せ」

 

アリサ「そういえばレイ、さっき『1年ぶりにお姿を拝見しました』って言ってた子がいたけど、あなた前にもここに来た事があるの?」

 

レイ「ああ、憲兵隊の仕事でな」

 

そして正門から歩き、とある場所に到着するとエリゼは扉を開ける

 

エリゼ「姫様、お客様をお連れしま…」

 

ミル「レイ兄様~!」

 

―ドスッ!!

 

レイ「ゴフッ!?ミ…ミル、タックルのような勢いで抱きつくのはやめてくれ……。腹へのダメージが半端ない……」

 

ミル「これ位は許して下さい。だってレイ兄様と会うのは2ヵ月ぶり位なんですから」

 

レイ「ああ、確かにそうだが皆からの視線が辛いから早く離れてくれないか?」

 

そう言われてレイの背後を見るとリィン達は唖然としており、「いけない」と思ったミルディーヌはレイから離れる

 

ミル「お見苦しいところをお見せしました。どうぞ、お入り下さい」

 

そしてⅦ組とエリゼ、ミルディーヌが中に入ると1人の可憐な女子生徒が待っていた

 

アルフィン「ようこそトールズ士官学院〈Ⅶ組〉の皆さん。私はアルフィン。アルフィン・ライゼ・アルノールと申します。どうかよろしくお願いいたしますね」

 

中で待っていた女子生徒が皇族アルノール家の者だと知り、レイ以外の全員が驚いて一言も喋れなくなる

 

エリゼ「もう姫様!なんでお客様が兄様達だって黙ってらしたんです?」

 

アルフィン「エリゼったら機嫌直して?ちょっとしたお茶目じゃない」

 

その時、ポロロンと音が鳴ってそちらを見るとリュートを持ったアルフィンと同じ髪色の青年が現れた

 

オリヴァルト「やあ、お待たせ。お揃いのようだね」

 

フィー「だれ?」

 

オリヴァルト「フッ、ここの音楽教師さ。…いや、穢れなき乙女の園に迷いこんだ愛の狩人と言った方がいいか。う~んロマン…」

 

―スパーン!

―バコンッ!

 

オリヴァルト「あだっ」

 

アルフィン「お兄様、その辺で。皆さん引いてらっしゃいますわ」

レイ「女学院でそんなシャレにならない事を言うなアホ皇子」

 

アルフィンの「お兄様」という言葉とレイの「皇子」という言葉にリィン達は驚く

 

リィン「お兄様!?」

アリサ「皇子!?」

 

 

女学院・聖賓室

 

オリヴァルト「改めて…オリヴァルト・ライゼ・アルノール――通称“放蕩皇子”さ。そして〈トールズ士官学院〉のお飾りの理事でもある。よろしく頼むよ〈Ⅶ組〉の諸君」

 

そしてオリヴァルトは特科クラス〈Ⅶ組〉を作った理由を話し始める。一昨年での〈リベールの異変〉で心を入れ替え、士官学院に“新たな風”を巻き起こす事を決めたのだった

 

ユーシス「この帝国で起きている実情…貴族派と革新派の対立を知らしめ、考えさせるのが狙いですか?」

 

オリヴァルト「無論それもある。だが私は君達に現実に様々な〈壁〉が存在するのをまず知ってもらいたかった」

 

レイ「なるほど。貴族派と革新派の二大勢力だけでなく、帝都と地方、伝統や宗教と技術革新、帝国とそれ以外の国や自治州までも…。この激動の時代において必ず現れる〈壁〉から目を背けず、自ら考えて主体的に行動する――そんな資質を俺達若い世代に期待したいと思ってるんだろ?」

 

オリヴァルト「その通りだよレイ君」

エリオット「正直、身に余る期待ですけど…」

ガイウス「確かにこの〈Ⅶ組〉ならばそんな視野が持てるかもしれない…」

 

リィン「そういった手応えが自分達の中にあるのも確かです」

 

オリヴァルト「フフ、そう言ってくれただけでも私としては本望だ。〈Ⅶ組〉の発起人は私だが既にその運用から外れている。それでも一度、君達に会って話だけは伝えたいと思っていた。そこにアルフィンが今回の席を用意すると申し出てくれてね」

 

アルフィン「お兄様の為というのもありますけど、エリゼの大切なお兄さんに一度お会いしたかったのもありますわ」

 

エリゼ「ひ、姫様!?」

 

ミル「ちなみに私はアルフィン先輩のお話を聞いて久しぶりにレイ兄様に会えると分かり、参加させてもらいました」

 

ラウラ「先程から気になっていたのだが、そなたは?」

 

ミル「あ、まだ名乗っていませんでしたね。私、ミルディーヌ・ユーゼリス・ド・カイエンと申します」

 

ミルディーヌの自己紹介にレイ、エリゼ、アルフィン、オリヴァルト以外の全員が驚く

 

アリサ「カ…カイエンって!」

 

マキアス「あの四大名門の!?」

 

ユーシス「四大名門の中でも我がアルバレア家と対をなす存在だな」

 

フィー「そこのお嬢様ってわけなんだ?」

 

ミル「はい。そしてレイ兄様の恋人なんです♥️」

 

Ⅶ組「えぇっ!?」

 

ミルディーヌの言葉にまたしてもⅦ組全員が驚き、オリヴァルトも「ほう~」と呟いてニヤニヤしている

 

エマ「レイさん、ほ…本当なんですか?」

 

レイ「ま…まあな」

 

オリヴァルト「話を戻すが、君達に期待しているのは私だけではない。ヴァンダイク学院長も君達に期待している。君達が帝国を抱える様々な〈壁〉を乗り越える“光”となりえる事を」

 

リィン「〈壁〉を乗り越える“光”――」

 

オリヴァルト「フフ……だがそれも我々の勝手な思惑さ。君達はあくまで士官学院の生徒として青春を謳歌すべきだろう。恋に、部活に、友情に……甘酸っぱい青春なんかをね。まぁ、レイ君はすでにミルディーヌ君と青春を謳歌しているみたいだけどね」

 

ミル「はい♥️すでに何回かデートにも行きましたわ♥️」

 

レイ「……///」

 

 

その後、食事は終わり行きと同じようにエリゼの案内で正門まで戻ってきたⅦ組の面々

 

エリゼ「ご足労いただき誠にありがとうございました。皆さん、気をつけてお帰りくださいませ」

 

アリサ「ええ、ありがとう」

ラウラ「案内感謝する」

 

リィン「あのエリゼ…」

 

エリゼ「おやすみなさい。それでは――」

 

リィンがエリゼに何か言おうとしたが本人は無視して扉を閉め、女学院へと戻った

 

リィン「はぁ……」

 

エリオット「ど…どんまい」

 

レイ「まぁ、エリゼ嬢の気持ちも分かるがな。夏至祭初日にある園遊会でダンスのパートナーをお願いされたんだからな」

 

アリサ「良かったわね~リィン。皇女殿下にあそこまで気に入られて」

 

ユーシス「フッ、あのままお受けすれば良かったんじゃないか?瓢箪から駒ということも将来…」

 

リィン「いや、あり得ないから!友人の兄に興味を持たれただけだろう…!」

 

エマ(それだけでもないような…(汗))

 

レイ「それにしても3人の理事についても気になる話があったな」

 

ユーシス「俺の兄ルーファスにレーグニッツ知事、そしてラインフォルトのイリーナ会長。彼らの思惑、目的はオリヴァルト殿下でも判らない、か…」

 

エリオット「サラ教官の経歴もちょっと驚きだったよね」

 

ラウラ「〈紫電のバレスタイン〉…まさかの最高ランクのA級遊撃士だったとは…」

 

サラ「やれやれバレちゃったか~」

 

リィン「あっ、サラ教官!」

レイ「姉さんまで…」

 

サラ「ミステリアスなお姉さんの魅力が少し減っちゃったわねぇ」

 

フィー「サラ、図々しすぎ」

レイ「というか最初からそんな魅力は無かったから安心しろ。しかし、珍しい組み合わせだな」

 

クレア「ええ…実は皆さんに協力していただきたい事がありまして」

 

リィン「俺達にですか…?」

 

クレア「はい。夏至祭をテロリストの脅威から守る為に〈Ⅶ組〉の皆さんの手をお貸しいただきたいのです」

 

 

―ヘイムダル中央駅・司令所

 

あの後、クレアとサラ、Ⅶ組の面々はヘイムダル中央駅に来て明日の夏至祭の対策会議を行っていた

 

クレア「テロリスト――そう言った名前で呼称せざるを得ないでしょう。目的も所属メンバーも規模すらも不明…名称すら確定していない組織です」

 

マキアス「ま、まるで雲を掴むような話ですけど…」

 

リィン「ノルド高原において戦争を引き起こそうとした“あの男”ですね」

 

アリサ「〈G〉――“ギデオン”だったわね」

 

エリオット「そ、それが明日の夏至祭初日に何か引き起こすと…?」

 

レイ「ああ。帝都の夏至祭は3日間…盛り上がるのは初日くらいだ。ノルド高原の事件から1ヶ月…“彼ら”が次に何かするとしたら明日である可能性が高い」

 

サラ「ま、あたしも同感ね。そのギデオンって男がわざわざ名前を明かした以上、本格的に活動を開始するはずよ」

 

エマ「それで私達にテロ対策への協力を…?」

 

クレア「ええ。鉄道憲兵隊も帝都憲兵隊も協力しながら警備体制を敷いています」

 

レイ「だが知っての通り、帝都は広く、警備体制の穴が存在する可能性は否定できないんだ」

 

クレア「そこで皆さんに“遊軍”として協力いただければと」

 

サラ「ま、クロスベル方面で人手不足ってのもあるでしょうしね~」

 

レイ「うるさい(怒)」

 

サラの余計な一言に対してレイは先程の時間ギリギリに通信してきた怒りも込めてサラの腹にひじ打ちした

 

サラ「痛~(汗)…でどうかしら君達?」

 

レイのひじ打ちをくらったサラは腹を押さえながらA班B班に尋ねる

 

リィン「Ⅶ組A班、テロリスト対策に協力させていただきます」

アリサ「同じくB班も協力したいと思います」

 

そして会議は終了し、リィン達はそれぞれの下宿先に戻っていった

 

レイ「明日、テロリストが何処でどう動くか分からない。最大限の警戒をしなければ…」

 

クレア「そうね。明日さえ乗り越えれば、テロリスト達はしばらく大人しくしているだろうし…」


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。