部下からザクセン鉄鋼山がテロリストに襲撃されたと聞いたクレアとレイは憲兵隊が所有する車に乗り、鉄鋼山へと向かった
―ザクセン鉄鋼山
レイ「これは…」
クレア「……」
ザクセン鉄鋼山についた姉弟と部下達が見た物は巨大な施設のあちこちから煙が吹き出している状況だった
エンゲルス「テロリストが火を放ったのか?!」
クレア「いえ、煙の出方が不自然です」
レイ「恐らく発煙筒か何かだろう」
その時、レイの部下のザギ中尉が何かに気づいた
ザギ「レイ大尉、クレア大尉!鉄鋼山の入口に領邦軍が!!」
ザギ中尉が指差した方を見ると確かに鉄鋼山の入口に領邦軍の装甲車が停車しており、領邦軍の隊長と数人の部下が入口を封鎖していた
クレア「行ってみましょう」
隊長「また貴様らか。何の用だ?」
レイ「テロリストがザクセン鉄鋼山を急襲したのは知っていますね?」
隊長「勿論だ」
レイ「ならば何故、動こうとしないのですか!」
隊長「鉱山はテロリストによって占拠された。鉱員たちが人質である以上、手出しをするわけにはいかん!」
クレア「だからと言って交渉もせずに様子を見るつもりですか?彼らが目的を持って行動している以上、時間を稼がせてはいけません!」
クレアとレイ、領邦軍の隊長が言い合い、お互いの部下達は武器を構えて向き合っており状況が状況なだけに昨日以上の緊迫した空気が流れている
その様子を見ていたⅦ組A班は…
クロウ「どうやら鉱山はテロリストどもに奪われちまったみたいだな」
アリサ「鉱山長たちは人質にされてしまったのね……」
リィン「そして先に駆けつけたであろう領邦軍が鉱山を封鎖していると。」
マキアス「準備が良すぎるな…」
フィー「て言うか領邦軍も間違いなくグルだね」
マキアス「何だと!?」
フィーの言葉にⅦ組は全員驚く。しかし彼女はいつも通り、確信に満ちたものだった。そしてフィーが話した事はクレアとレイの言った事と全く同じだった
リィン「しかし、だとしたら何の為に?」
アリサ「第一製作所が関係してるかもしれないわ」
その言葉に全員がフィーからアリサへと視線を向ける
フィー「そういえば鉄道憲兵隊と領邦軍は第一製作所について争っていたんだっけ?」
クロウ「そしてこのタイミングで領邦軍が露骨に怪しい動きをしてやがる」
エリオット「鉱山に何か隠してるのかも」
マキアス「なるほど、確かにそう考えればある程度の説明はつきそうだな」
アリサ「問題はその隠したいものが何かだけど…」
全員で少し考えるがそもそも鉱山関係者ではないので誰も口を開けなかった。するとアリサが…
アリサ「一度ルーレに戻りましょう…」
そう言うと仲間達も同意し、ルーレへと引き返した
その様子を見ていたレイは…
レイ(あいつら…)
ドミニク「どうしたのですかレイ大尉?」
レイ「ドミニク少尉、申し訳ないがこの場を任せると姉さんに伝えておいてくれ。」
それだけ言うとレイはⅦ組A班を追ってルーレへと向かう
ドミニク「ちょっ!?」
ルーレ市内・ドヴァンス食堂
ちょうど人が来ない時間帯なのか、食堂にはⅦ組A班と導力バイクのサイドカーの試運転を兼ねてルーレに来たアンゼリカとジョルジュがいた。
そしてアンゼリカは「悪い予感が当たってしまった」と言って情報交換の為にこの食堂に来たのだ
アリサ「鉄鉱石の横流し!?」
アンゼリカ「アリサ君が驚くのも無理はないね。私だって最初は耳を疑ったよ。どうやら採掘された鉄鉱石の量に比べて生産された鉄鉱の量がやや少ないらしい」
ジョルジュ「僕達が調べたところによると数年ほど続いてるようだね。理由は純度の低下だと報告されているけどね」
マキアス「鉄鉱ではなく鉄鉱石の横流しか…」
フィー「その手があったね」
確かに加工した鉄鉱なら確実に鉄道憲兵隊などに気づかれる可能性があるが、鉄鉱石程度の大きさなら少しずつ横流しされても気づかない可能性が高い
クロウ「その辺もトワが全部調べたのか?」
アンゼリカ「ああ。
リィン「やっぱり凄いなトワ会長は……」
エリオット「本当に学生の域を超えてるよね……」
?「本当にそうだな。卒業後は鉄道憲兵隊にスカウトしたいくらいの人材だ」
そう言って入ってきた人物を見て全員が「あっ」という顔になる
レイ「やっている事が学生の範疇を超えているどころか、大人顔負けのレベルだ。彼女が来てくれたら、情報関係の仕事が捗りそうだしな」
「まぁ、敵に回したら怖いが…」と言ってⅦ組とアンゼリカ、ジョルジュが座っているテーブルに座る
フィー「いつから居たの?全然気配が無かった」
レイ「お前達がザクセン鉄鋼山に来て帰った後からだ。どうせお前達の事だから、また何か画策してるなと思ってな」
「そんな前から……(汗)」とA班が思っていると、目を瞑って眉間にシワを寄せていたアリサが目を開いてジョルジュに訊ねる
アリサ「ジョルジュさん、その帳尻が合わない鉄鉱石の量はどれくらいになるんですか!?」
ジョルジュ「そうだな……少なくとも10万トリムぐらいかな」
クロウ「10万…ってどれくらいになるんだ?」
レイ「主力戦車なら2000台分になるな」
リィン「なっ!?」
マキアス「に、2000……」
レイの一言にその場にいる全員が固まる。確かに帝国の屋台骨であるザクセン鉄鋼山なら、やや少ないと言って数年続けばそれぐらいの量になってもおかしくない
フィー「でもそんなに横流ししてどうするんだろ?」
マキアス「貴族派が秘密裏に戦車を作ってるとか?」
アリサ「それは無理よ。戦車製造のノウハウは第二製作所しか持っていないもの。そしてその第二製作所は革新派だから…」
ジョルジュ「それに戦車は技術の塊だ。設計図があったところでどうにかなるようなものじゃない」
レイ「……アリサとジョルジュの言う事が正しいなら貴族派が横流しされた鉄鉱石で戦車を作っている可能性はほぼゼロだな。となればそんな大量の鉄鉱石を何に使っているかだが…それは情報局に調べさせよう。それで?お前達はこの後、どう動くつもりだ?」
アンゼリカ「決まっている。第一製作所の取締役が叔父であり、ノルティア領邦軍が動いている以上、私の実家だって無関係ではない。侯爵家の息女として放っておくわけにはいかないさ」
ジョルジュ「アン……」
クロウ「まさか親父さんと話をつけるつもりか?」
アンゼリカ「いや、父は私の言うことなど聞かないさ。それは領邦軍だって同じこと。だったら自分の力でケリを付けてやるまでだよ」
アンゼリカはそう言って立ち上がり、掌に拳を打ち付ける。その両隣でクロウとジョルジュがため息を吐いているのを見ると、どうやらこうなることは予想していたようだ
リィン「だったら是非、俺達も協力させてください。」
アリサ「アンゼリカさん同様、私にとっても実家が絡む以上は無関係ではありません。」
マキアス「これも特別実習の範囲でしょう。」
エリオット「何よりこのまま放っておくわけにもいきませんし。」
フィー「だね。」
学生である彼らがどこまで出来るか分からない。だが何もしないで見てるわけにはいかない。自分達なりにこの騒動を何とかしたいと考えていた
アンゼリカ「ありがとう、実は少し期待していたんだ。」
クロウ「やれやれ、しゃあねぇか」
アンゼリカ「そうなると領邦軍に見つかる事なく、鉱山に侵入する必要があるね。」
マキアス「でも、そんな都合の良い場所があるんですか?」
エリオット「アンゼリカさんが領邦軍の責任者に話してる内に僕達が侵入するのは…?」
しかしこれは即却下された。だが…
アリサ「……何とかなると思うわ」
その言葉に全員がアリサの顔を見る
アリサ「多分、母様が何らかの鍵を握ってると思うの。」
『鍵』というのがどういう意味のか、皆は分からないがRFの会長なら今回の件も既に耳に入ってるはず。ならば相談相手としてこれほどの人物はいないだろう
アンゼリカ「分かった、そちらはアリサ君に任せよう。私は改めて実家と領邦軍に探りを入れてみる」
レイ「なら俺も協力しよう。鉄道憲兵隊の大尉としては見過ごせない事態だからな」
リィン「いや、でも……鉄道憲兵隊であるレイが鉄鋼山に侵入するわけには……」
レイ「安心しろ。ちゃんとトールズの制服を着れば俺とは分からんだろう。というわけで俺は分室に戻って準備をしてくるから、集合場所が決まったら
そう言ってレイはザクセン鉄鋼山に侵入する準備の為にドヴァンス食堂から出ていった