―数分後、用意を終えたレイはリィンに言われた連絡通路に来ていた
レイ「待たせたな」
マキアス「大丈夫だ。僕達も今来たところだ」
レイ「その扉が侵入経路か?」
アリサ「ええ。ロックを解除する為のカードキーもちゃんと貰ったわ」
そして、早速入ろうとするがレイが少し考え込んでいる事にリィンが気がついた
リィン「どうしたレイ?何か気になる事があるのか?」
レイ「いや、よく考えたら……最悪の状況を考えに入れておかねばと思ってな」
アンゼリカ「最悪の状況とは?」
レイ「最初の〈特別実習〉の時、偽管理員を倒した後に領邦軍が現れたんだろ?お前達に大市で盗みを働いた容疑をかける為に。だから……」
そこまで言って皆はレイが何を言いたいか分かった
マキアス「そうか。僕達が侵入だの妨害だので色々と領邦軍に言われる可能性があるという事か」
エリオット「確かにケルディックでも同じような事があったね」
アリサ「あの時は領邦軍と猟兵崩れが手を組んでいたのよね」
レイ「あの時は姉さんがお前達の行動の正統性を保証したから良かったが、今回は姉さんも苦戦しているからあまり期待しない方がいい」
クロウ「つう事はお前にも期待できないって事か。なら、どうすんだよ?」
学生である彼らが鉱山に侵入する為には後ろ楯となる人物は必要不可欠だろう。しかしクレアより強い立場にあり、彼らの行動の正統性を証明出来る人物はかなり限られる
レイ「……皇族の人間を連れてくるのはどうだ?」
アリサ「皇族って……」
フィー「確かにそれぐらいの立場なら領邦軍も文句は言えないけど……」
マキアス「だが動いてくれるのか?」
レイ「大丈夫だろう。皇族が動く理由は十分過ぎるほどに集まっている。皇族が所有している鉱山で鉄鉱石が横流しされている事、その鉱山がテロリストに襲撃された事、そして領邦軍が手を組んで鉄道憲兵隊を足止めしている疑いがある事。これだけあれば十分動いてくれる」
指を1本ずつ上げていって動いてくれる理由を述べていくレイ
レイ「皇族や政府にも鉱山襲撃の事は確実に耳に入る。それと合わせてさっきの証拠と証言があれば、100%動くだろうな」
リィン「なるほど、レイの言う事は分かったが俺達はどう行動したらいいんだ?」
レイ「横流しの件を纏めた資料をジョルジュに作ってもらい、それを俺がバルフレイム宮へ届けに行く」
リィン「直接渡しに?」
レイ「他の手段はあるにはあるが、手続きがあって皇族の手に渡るまでに時間がかかる。その点、俺なら顔が利くから直接渡しに行った方が早いと思う。」
マキアス「となると帝都までの移動手段だな。」
レイ「その点も大丈夫だ。なぁ、邪神竜?」
そう言って自分の横を見ると体長が40cm位の邪神竜が現れた
邪神竜「うむ。我の翼があればこのルーレという狭苦しい街から帝都まであっという間だ」
狭苦しい街と言われてアリサの眉間に皺がよるが、嫌味や本心ではないと分かっているので何とか怒りを抑えた
レイ「さて、そうとなればジョルジュに横流しの件の資料を作ってもらわないと…」
そしてレイは
―ザクセン山道
ジョルジュ「はい、これが頼まれた資料だ」
レイ「ありがとう、助かる。」
ジョルジュから鉄鉱石の採掘と鉄鉱の生産に関する資料を受け取り、確認する。
レイ「確かに受け取った。これなら皇族も確実に動くだろう」
ジョルジュ「皇族を動かそうっていう発想が出るなんて凄いね……」
レイ「どのみち動く事になるだろうしな。こういうのはスピードが命、つまり早い方が良いのさ」
アンゼリカ「私達の行動が正統なものだと証明する為にも頑張ってくれ」
アリサ「そっちは頼んだわよ」
レイ「ああ、任せろ。お前達も気をつけろよ」
アンゼリカ「こっちは任せたまえ。四大名門の一角、ログナー家の息女としてしっかりケリはつけるよ」
そう言ってバチン!と掌に拳を打ちつけるアンゼリカはかなり頼もしく見える。普段、可愛い女の子漁りをしているのが嘘のように…
レイ「それじゃ行ってくる。フッ!」
レイは邪神竜の力を解放して背中に赤黒い翼を生やし、飛翔する。そしてレイは真っ直ぐ帝都へと向かった
―30分後・帝都近郊の街道
レイ「よっと。さすがにこのまま帝都に入ったら帝都市民に何言われるか分からないからな。ここからは歩きだ」
邪神竜「難儀だな。」
レイ「仕方ないさ。人間は異形の存在には恐怖するものさ」
そしてレイは帝都に入り、丁度市内を巡回中だった憲兵隊員に頼んでバルフレイム宮まで送ってもらった
レイ「すまない、助かったよ」
隊員「いえ、それより早くバルフレイム宮へ。一刻を争うんですよね?」
レイ「ああ。それじゃ」
隊員にお礼を言ってレイは顔パスでバルフレイム宮へ入る
レイ「さて、無事にバルフレイム宮に到着したが問題は誰に来てもらうかだが…」
?「おや、そこにいるのはレイ君かい?」
自分の名前を呼ばれて振り返るとそこにいたのは、〈カレイジャス〉の処女飛行で会ったオリヴァルトとミュラーだった
レイ「丁度良かった。皇族にこれを渡したかったんだ」
そう言ってジョルジュから渡された資料をオリヴァルトに渡す。そしてオリヴァルトはその場で資料を読んでいく
オリヴァルト「なるほどね。まさかこんな事になっていたとは…。」
ミュラー「やはり、早く向かった方が良いな。レイ君も当然一緒に来るだろう?」
レイ「『やはり』という事は鉄道憲兵隊から連絡が?」
オリヴァルト「ああ、ついさっきだけどね。それより、善は急げだ。折角だから飛行艇の中で詳しい話を聞かせてくれ」
レイ「わかりました。では行きましょう」
レイを戦わせようと思いましたが、〈Ⅶ組〉の更なる成長の為に今回はオリヴァルトを呼びに行く役目を与えました