〈10月22日、15;00〉
衣装合わせを行った翌日、Ⅶ組は早朝から旧校舎でリハーサルを繰り返していた。時折サラも様子を見に来たり、シャロンが差し入れを持ってきてくれた。
そして学院の方はトワ会長の指揮下で明日の学院祭に向けて着々と進んでいき、各クラスの出し物も準備が整えられていく中、Ⅶ組の出し物も完成に近づいてきた。
クロウ「よし、OKだ!」
旧校舎にクロウの声が響くと、全員が体の力を抜いて安堵する。
アリサ「ふう…さすがに疲れたわね。」
フィー「今までで一番良かったかも。」
ラウラ「ああ。やりきった感があるな。」
レイ「俺はのどが少しやばいな。」
邪神竜「こんなにぶっ通しで歌った事は無かったからな。大丈夫か?」
レイ「何とか…」
エリオット「後はこれが本番で出来るかどうかだけど、そこは運と女神様次第だね。」
マキアス「逆に言えばどこまでやっても運に左右されるのか……」
ユーシス「フン、だったら運すら強引にねじ伏せるまでだ。」
クロウ「これ以上やっても仕方ねぇし、後は本番でいいだろ。」
フィー「ていうか今何時?」
フィーに言われて皆が旧校舎の窓を見ると空は赤く、鳥が鳴き始めていた
レイ「もう夕方か。」
ラウラ「今から帰って休めば明日には疲れも取れるだろう。」
マキアス「よし、そうと決まれば早く――」
クロウ「おいおい、何寝ぼけてんだ?」
早朝からぶっ通しでやっていたおかげて曲も演出も完璧に出来たはずなのに、この男は何を言ってるのだろうか?
クロウ「こういうステージにはサプライズとアンコールが付き物だぞ?」
レイ「は?」
邪神竜「サプライズとアンコール?」
リィン「クロウ、お前まさか……。」
エリオット「冗談で言ってたあれをやるつもり!?」
リィンとエリオットはクロウが何をしようとしているのか知っているようだが、全く事情を聞かされていないこちらは首を傾けるしかなかった。
レイ(まぁ、2人の様子からすると、ろくでもない提案だろうがな。)
ユーシス「まさか……この状況で追加の曲をやれと言うのではあるまいな?」
全てを察したユーシスの言葉にクロウは意地悪そうな笑みを浮かべるとゆっくり頷く
クロウ「そのまさかだ。安心しろ、メロディはシンプルかつ有名なやつだ。」
レイ「一応聞くが、拒否権は?」
クロウ「無い。Ⅰ組に勝つ為のダメ押しなんだからよ。」
アリサ「こ、この悪魔……」
クロウ「さぁて、時間も無い事だし段取りを説明させてもらおうか。」
〈同日21;00〉
あの後、クロウの悪魔の提案にⅦ組は再びぶっ通しでリハーサルを実行した。他のクラスの生徒は出し物の準備が終わり、寮に帰って行くが旧校舎の明かりはまだついていた。
レイ「邪神竜、俺ののどは潰れてないか?声が変になってないか?」
邪神竜「多少枯れているが大丈夫だ。今日、しっかり休めば元通りになるだろう。」
ミリアム「づがれだ……ガーちゃん呼んで帰ろっと……」
レイ「やめろミリアム……」
他の皆もずいぶんグッタリしていた。まぁ、あれから6時間、ほとんど休む事なく演奏し歌い続けたので当然と言えば当然だが…。
クロウ「いや~何とかなるもんだな。お疲れさん。」
エリオット「さすがに僕も疲れたかな……。」
リィン「はは…後は本番だけだな。」
しかし、疲れてはいたが全員やりきった顔をしていた。学院祭の出し物は絶対に上手くいくと確信している表情だった。
サラ「あんた達もよくやるわね。」
シャロン「皆様、お疲れ様でした。」
レイ「さて、寮に帰るか。」
エマ「早くベッドで寝たいです……。」
1人、また1人と立ちあがり、フラフラした足取りで旧校舎から出ていく。
〈第3学生寮〉
レイ「あぁ~、眠い…」
クロウ「慣れねぇ事したから疲労が溜まっちまったか?」
レイ「多分な…。まぁ、ここまで疲労したのはどこかのギャンブルバカのせいだが…」
そう言ってレイはクロウをジトッと睨む。
クロウ「まぁそう言うなって。Ⅰ組に勝つにはあれ位やらないとな。」
レイ「全く…。」
邪神竜「レイよ。学院祭の事を彼女に伝えておかなくて良いのか?」
レイ「ん?ああ、ミルディーヌにか?そうだな、念のために伝えておくか。」
クロウ「学院祭に将来の伴侶を呼ぶなんてやるねぇ~」
レイ「フンッ!」
クロウ「ウガッ!?」
クロウの言葉にちょっとイラッとしたレイはクロウの顔面にパンチをくらわして少し眠ってもらい部屋から出て、ミルディーヌに連絡する。
ミル『はい、ミルディーヌです。』
レイ「レイだ。いきなりで悪いが、トールズ士官学院の学院祭は知ってるよな?」
ミル『はい♥️愛するレイ兄様の通う学院ですから、どういう授業内容や催しがあるかは調べてあります♥️』
レイ「やっぱりな(汗)ならその学院祭に来れるか?せっかくだからどういう出し物があるかエスコートするぞ?」
ミル『まぁ、普段は受け身のレイ兄様が珍しくお誘い下さるなんて!!』
レイ「そんなに受け身か、俺?」
ミル『冗談です。そんな事より学院祭、必ず行きますわ!!雨が降ろうと槍が降ろうと!!』
レイ「そ、そうか…(汗)まぁ、無理しないようにな…(汗)おやすみミルディーヌ。」
ミル『おやすみなさいレイ兄様。』
そして
シャロン「レイ様。」
レイ「っ!?お、驚かすなシャロン。心臓が止まるかと思ったぞ?」
シャロン「申し訳ありません。彼女さんと楽しそうに話していたので…。それよりレイ様宛にお手紙が来ていましたよ。」
レイ「あっ、すまないな。」
シャロン「それでは失礼します。」
レイは受け取った手紙の裏面を見ると『クレア・リーヴェルト』と書かれており、その場で手紙を読み始めた。
レイ「………。マジか…?」
姉からの手紙を読んでレイはハァ~とため息をつき、頭を抱えた。
レイ「何考えてんだよあいつは?まぁ、学院祭中とはいえ腕に覚えのある人が多いから大丈夫だよな?もう寝よう。」
そしてレイは自室に戻り、疲れもあってベッドに入って3秒で眠りについた。