〈10月30日、8;00〉
ガレリア要塞が原因不明の異変により消滅。その知らせから数日間はエレボニア帝国はかつてない緊張に晒される事となった。
しかし、それに追い討ちをかけるようにクロスベルにあるIBCが資産の凍結を宣言したのだ。これによって帝国は軍方面と経済面の2つで混乱していた。
そして長年の宿敵であるカルバード共和国がこれを機に帝国に進撃してくるのでは?という噂まで流れ始めた。
レイ(ガレリア要塞が消滅してから正規軍は何度もクロスベルに軍隊を送り込んでいるが、全て返り討ちにあっている。そしてクロスベルが手に入れたと噂される“謎の力”か…)
レイ「邪神竜、今回の異変で〈騎神〉が必要になるか?」
邪神竜「まだ分からんな。あの少女、キーアと言ったか?がどう動くかによるな。」
レイ「という事はやはり彼女は……」
邪神竜「造られし存在だ。魂魄の感じが少し違ってたから、まず間違いない。」
レイ「そうか。」
シャロン「レイ様、そろそろ学院に向かうお時間ですわ。」
シャロンにそう言われて時計を見てみると、そろそろ登校しなければ遅刻になりかねない時間だった。
レイ「おっと、もうこんな時間か。それじゃ行ってくる。」
シャロン「行ってらっしゃいませ。」
第3学生寮を出たレイはそのまま学院まで行き、〈Ⅶ組〉の教室に入るのだが…
レイ「ん?なぜ誰もいないんだ?」
邪神竜「学院内のあちこちに彼らの気配は感じるが…」
レイと邪神竜が教室に仲間達はいないが、学院内のあちこちにいるという状況に頭を捻っているとARCUSの着信音が鳴り響く。
レイ「こちらレイ・リーヴェルト。」
リィン『ああ、レイか。リィンだ。』
レイ「丁度良かった。今、Ⅶ組の教室に来ているんだが何故誰もいないんだ?」
リィン『実はな…』
リィンの話の内容は今日の授業が全て休講となった事。理由はオズボーン宰相が全国民へ向けて声明が発表されるからだと。
レイ「なるほど。この状況で閣下が声明するという事は…」
リィン『間違いなくレイが予想している内容だと思う。それでラジオ放送が始まる正午まで自由行動になったんだ。』
邪神竜「それで皆、あちこちに散らばっていたのか」
リィン『でも、ミリアムとクロウだけどうしても連絡がつかないんだ。』
レイ「じゃあ、俺と邪神竜も探してみよう。」
リィン『助かるよ。じゃあまた後で。』
通信が終わってから数時間、レイはミリアムとクロウが行きそうな場所をくまなく探した
レイ「クロウはパトリックが帝都に行くのを見たと言っていたがミリアムがどこだ?」
邪神竜「後に残ったのは騎神が眠っている旧校舎だな。」
そしてレイは旧校舎に向かおうとすると丁度そちらからミリアムとリィンが来た。
レイ「やはり、ミリアムは旧校舎にいたのか。」
リィン「ああ。後はクロウだけだな。」
レイ「それならパトリックが帝都に向かったのを見ている。」
リィン「ならこれで〈Ⅶ組〉全員の所在は分かったか。」
ミリアム「それじゃ、教室に帰ろっか♪」
そう言ってⅦ組の教室に帰ろうとするミリアムの肩をレイはガシッと掴んだ。
レイ「待てミリアム。」
ミリアム「ん?なに?」
レイ「話がある。」
ミリアム「……。分かった。リィン~、悪いけどレイとお仕事の話しなきゃいけないから先に行ってて~!」
リィン「分かった。あまり遅くならないようにな。」
そしてリィンの姿が見えなくなるとレイは手を離し、ミリアムを睨む
レイ「さて、お前がここに来た理由を話してもらおうか?」
ミリアム「ん~?何の事~?」
レイ「情報局所属のお前が何の理由も無しにここに来るはずがない。これは俺の勘だが〈帝国解放戦線〉関係でここに来たんじゃないのか?」
ミリアム「あはは、さすがレイ。クレアの義弟なだけはあるね~。うん、その通りだよ。ボクがここに編入した1番の理由はね、〈帝国解放戦線〉のリーダーである〈C〉を見つける為だったんだ。」
レイ「やはりか。しかし、〈C〉は本当にこの学院の生徒なのか?」
ミリアム「うん。そこまでは何とか特定できたんだけど、鉄鋼山で爆発しちゃったから正体は分からないままなんだ。」
レイ「なるほどな。だがまさか〈C〉がこの学院の……生徒……」
ミリアムの言葉にレイは頭の中で何かがパチッとはまった。
レイ(待てよ。俺は帝都の地下墓所で〈C〉と戦い、僅かに仮面の額部分が欠けて黒いバンダナを見た。そして〈C〉はトールズ士官学院の生徒。……まさか!!)
ミリアム「レイ?さっきから黙ってどうしたの?」
しかし、レイはミリアムの言葉に反応せずに〈帝国解放戦線〉とのこれまでの戦いを振り返る。
レイ(“あいつ”は帝都やルーレでは別行動をしていたから誰も姿を見ていない。その間は自由に動ける。ガレリア要塞では飛行艇から声が聞こえたが、そんなものは録音しておけば事足りるし自分がその場にいるというアリバイも作れる。)
レイ(ルーレの時だってそうだ。あの時、人形兵器の閃光に全員目が眩んだ瞬間に彼らは逃走したとリィンは言っていた。つまり、彼らが飛行艇に乗ったのを誰も確認していない。あの後に現れた飛行艇から聞こえた音声も録音した物を流し、その後に飛行艇を撃墜して自分が死んだと思わせる事が狙いなら辻褄が合う。)
レイ(何より、閣下が声明を行うこのタイミングでトリスタにいないという事は……)
ミリアム「ねぇ、レイってば!!」
レイ「ミリアム!!すまないが俺は今から帝都に向かう!!」
ミリアム「えっ?いきなりどうしたの!?」
レイ「〈C〉の正体が分かったんだ!!奴の正体は―――――だ!!」
ミリアム「本当!?」
レイ「ああ!!とにかく俺は帝都に向かう!!」
そう言ってレイは赤黒い翼を広げて飛翔し、物凄いスピードで帝都に向かった。
〈C〉の正体が分かったのはミリアムが「〈C〉は士官学院の生徒の可能性」を言った時でした。