デジタル リアライズ   作:棃音

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理解者 唯一の存在

彼女は電子とは違う様な

 

そして、はっきりとしたリアルの空気を感じる

これがリアルか

そう思うと同時に妙な寒さとそして足が床につく感覚がする

カーペットなどのないフローリングの冷たさ一つ新鮮だ

ネットの一部とはいえそれを統括する彼女にとって

情報は腐る程ある

しかしそれも彼女にとっては百聞は一見にしかずという言葉が最適と思えるのだった

 

やはりネットとリアルは違うな

 

そう思うと共に体が分解され、構築されるのを肌で感じる

 

肩まで構築された、そして首元、口、そして目と耳も

 

ここがどこか、そして周りの音も聞こえる

しかし照明の明るさか思わず目を瞑る

 

やはり外はいづらいものか?

 

そして目を慣らし、見えたのは眼前に佇む不機嫌な少年だった

どうやらここの家主らしい

腕を組み、壁に背中を預け、足を投げ出したまま不満げにこちらを見ている

 

「はぁ……はぁ〜…SFとか聞いてないんですけど?ガンツ?それとも?何か、未来人?」

 

半ギレでそういう

 

「あー、申し訳ない、ちょっと不手際でな……すぐに出て行く」

 

そういい出口を探す

 

「いや、出る必要はありませんね」

 

「……と言うと?」

 

「いや、先ずなんというか、お久しぶりです、お変わりない様で?2年にもなりますか、あれから」

 

「……」

 

2年前

そう、あのリアルデジタライズの事件

それの関係者と予測するのがまあ普通だ

 

「…覚えてらっしゃらない?いや、そりゃ姿も違えばわからんか」

 

ヒョイと立ち上がりクローゼットを開け、何かを探る

 

そして2秒後眼前に銃口を向けられた

 

「hey、何度もこうしてやりあった仲ですよ?思い出しました?」

 

「なるほど、お前が…」

 

「ああ待って、こちらにも都合があります……まあ…そうだな、りおん、とお呼びください、文字は旧漢字の梨……果物の方ですよ、それに音」

 

「……棃音、か、それで、運良く私はお前の部屋に転送された、ということか」

 

「いつかこんな日が来る気はしてました……で、ホログラムか何かですか?何もないところから、まあ転送という単語から違うのはわかりますけどね」

 

「デジタル、リアライズだ、単語だけでわかるか?」

 

「なんとなく、そんなアホくさいことが現実に出来たら世界はネット側から来た人やら物に溢れ、オーバーテクノロジーで自滅するから信じたくはないんですけどね、ほら、頭逝イっちゃって戦争でも始めそうだ」

 

「なんとも悲観的だな、もっと喜べんのか?」

 

「……まあ、なんですか、事態は、あなたの思ってるほどよろしくはない」

 

「と言うと」

 

「あの事件、誰も覚えていませんよ、何も無かったことになっています」

 

「どう言うことだ」

 

「……何から話すかな、いや、決着はあなたも覚えているはずだ」

 

決着

そう、それは私の心臓に女神の騎士が剣を突き立てた、あの瞬間

 

私は自身を再構築した

それは、私の統括するネットを全て再構築したに近いのだ

 

「そして、世界では、各国それぞれ、1分間、すべてのネットワークが失われ、沈黙、大混乱に陥った……1分で殆どの国が酷い打撃を受けた……同時ではありません、日本から、順に、中国や、アメリカ、ロシア……」

 

「ああ、それは私も情報として知っている」

 

「あなたがそこから、殆どの既存のネットウイルスや、あの事件の、敵を消滅させた……と僕は思ってます、異物である僕らも」

 

「……そうだ」

 

「あなたにそんな能力があるとは思っても見ませんでしたよ」

 

「……私もさ、だがな、善玉菌と悪玉菌ってあるだろ」

 

「ありますねぇ」

 

「悪玉菌だけを消滅させた、みたいな感じさ?意識してやったわけじゃあない」

 

「……悪玉菌って悪い効果だけじゃないんだけどな……ああ、まあ立ち話もなんです、お茶でもどうですか?」

 

「ほぉ、外の飲み物か……」

 

 

 

ダイニングへと通す

数分して温かい紅茶と茶菓子を置いた

 

「そんな金持ちでもないのでインスタントですがっと……」

 

「砂糖4つとミルク」

 

「……まあ、いいでしょう」

 

 

 

要求されたものを置き

そして再度向き直る

 

「なぜ、あの時、あれを庇ったのですか?」

 

あれとは所謂ラスボスだ

あの戦いの最後、彼女は女神の騎士がソレに突き立てようとした剣に自分から飛び込んだ

 

「……わからん、とっさに、体が動いたんだ…」

 

「守る必要があったと?深層心理でそう思ったとでも?もしくは操られてましたか?」

 

「……操られていたとかではないな、あのときの私にデータで干渉するのは、本当に容易では無かったはずだ、そんな余裕も与えていない……となると、私が無意識に庇った、と言うことになるな……」

 

「……わからないな……解せない…納得がいかない」

 

「……私もさ、だがな、面白いことがある…アイツ、名前は無い、と言っていたがな、今はドール、と名乗ってユキと暮らしているんだ」

 

「はぁ?アレ生きてるんですか?消滅してない?思いっきり悪玉菌残してますやん」

 

「まあ落ち着け、悪玉菌、では無かったと言うことだ」

 

「あんな事件を起こして?」

 

「……居場所がほしかっただけなんだろう、揺るぎない居場所がな……単純に力があったから、それを利用して掴み取りたかっただけなんだろうな」

 

「にしてはやり過ぎた……」

 

「無論、きつーい灸はすえたぞ、ユキが」

 

「フッ……想像したくないな……」

 

「ああ、それが賢明だ、私もあれを見たときは……まあ、ゾッとする、というのが優しめな表現だ……今は本当に大人しくなった、何か企むこともないと信じたいものだがな……」

 

「そう簡単にはいきませんよ」

 

「最悪データを書き換えるさ」

 

「うえっ…もうハッカーかなんかですよ…」

 

「ああ……中々に厄介さ」

 

「……まあ、お互いに死んだ身です…仲良くしましょうや…こっちにはいつまでいるんですか?」

 

「わからん」

 

「……は?」

 

「帰る見通しは立っていない、帰還方法はまだできてない」

 

「……相変わらずな人だな……なんでそうまでしてこっちに?」

 

「……会いたかったからだ」

 

「僕に?いやぁ照れるなぁ……って冗談は置いといて、それなら……あなたは確実にショックを受けるでしょうね、もう一度言います、あの事件は、誰の記憶にもない」

 

「……何故だ」

 

「全員が、消滅したからですよ……あの場から…全員、消滅し、リアルに帰還したから……まあ僕は例外でしたが」

 

「どういうことだ」

 

「僕は、あなたの加護があった、あの爆発の後の僕を助けたとき与えられたのは、再生能力に近いもの……無敵とは程遠いがおぞましい速度で何もかもを修復する力……わかりますね?」

 

「……ああ…納得した」

 

「そう、あなたのおかげで僕は修復され、消滅を免れた、が、数瞬後には僕もログアウトさせられました、だから、一番長く穴場を見ていられた……」

 

「……そして記憶まで修復された、お前以外は……」

 

「そう、記憶が消失していた……とても長い日時を過ごしたあの遊びも、現実では僅かな時間でした、軽く遊びに行っていた、それで済む程度です、それはあの世界が……動き、そして時間の流れが、すべてが早かったからでしょうね……ただそれだけでも納得できないことは山ほどありますよ?無論……ね」

 

「そうだな、私もあの日付表を見て驚いたさ」

 

「……まあ、無理ですね、あれを理解するのは誰でも」

 

「いや、ドールの仕業だ」

 

「……っていうと?」

 

「ははは、あいつの力は、あの場を操ること、そしてあの世界を操れるからこそ……全員の体感時間を操れた……そういう事さ、あいつは自分のフィールドにおいてはあり得ないことを成し遂げられるんだろうな、たとえ過去に戻ることでも」

 

「解せないな……」

 

「そんなもんさ」

 

 

 

 

ドアの開閉音がする

そして軽い、トタトタと走る音がする

 

「覚悟はいいですか?お望みの女神の騎士とのご対面です」

 

「……あぁ…そうか……とうとう、会えるのか」

 

ダイニングのドアが開く

 

入ってきたのは少女だった

 

「ただいまー!いい匂いだね!紅茶?……あれ…?お客さん…?兄さんのお友達?」

 

「……まあ間違ってはないが、どっちかというとお前の、だな」

 

「え?」

 

茶髪を揺らし、そして二つの目でじっくりと眺める

 

「……ごめん兄さん、わたしあったことないと思うよ?」

 

「…あー、思い違いか、まあ僕の友人であることは変わらないから、気にすんな」

 

「そっか」

 

「……」

 

落胆した表情見せる

しかしそれでも、どんな形でもだ

女神の騎士に会えたことは嬉しいのは事実だ

 

「……ニアだ、よろしくな」

 

手を差し伸べる

 

「?…音路です、よろしくお願いします」

 

少し疑問の表情を浮かべ、その手を取る

 

「……外国人なんですか?」

 

「…いや…あー……」

 

「生まれも育ちも日本人だよ、ただ名前や見た目は親に依存するもんだろ?」

 

「ご両親はどこの人なんですかー?」

 

「おい、やめろ」

 

そういい、首を振る

 

「あ……ごめんなさい」

 

「いや……いいんだ…ははは」

 

内心で棃音へ文句を言う

 

「……なあ、ちょっと席外してくれるか?話ししてたんだ」

 

「あー……了解、ごめんなさい」

 

そう言って何処かへ消えて行く

自室にでも行ったのだろう

 

「……あなた、こちら側の世界でどうするつもりです?こっちで生きてく算段は?」

 

「ない」

 

間を置かずしての回答であった

 

「……向こうの世界との会話は?」

 

「…多分可能」

 

「なら時間は足りません、今から休まず動きますよ」

 

「え?」

 

「まず戸籍改ざん、そしてすぐに学校を手配しましょう、あなたの年齢はアレと同じでいいですよね」

 

「え、あー…」

 

「良いですか、貴方はこっちで生きて行くには相当の努力が必要になる、住む場所に関しては……まあ、どうにかなるでしょう……が……ね」

 

「どうする気だ?」

 

「5分ください」

 

「おい……」

 

 

 

 

〜〜25分後〜〜

 

 

 

 

「お待たせしました、ナシつけてきました」

 

「ナシ?」

 

「ハナシ」

 

「誰に」

 

「マイペアレンツ」

 

「ユアペアレンツ?」

 

「イエス」

 

「どう言うことだ?」

 

「簡単に言うと、うちに住んでもらいます、貴方は親戚をたらい回しにされて行き場のない少女、としてね」

 

「はぁー?」

 

「納得しなくて良いです、それ以外だと貴方は確実に生活できませんけど」

 

「よくそんな話を信じて許してもらえたな」

 

「……容易ではなかったですよ…うん……まあ、なんです情が人を動かした、的なもんですよ……あと、貴方には働いてもらいます、 お手伝いという形で、そして学校に関しては……貴方の手腕でどうにかしてください、戸籍も、すべて、データにアクセスし、5代に渡る両親や祖父母まで偽造するんです、良いですね?」

 

「……あぁ…」

 

「バレるのが怖いですか?」

 

「抜かせ、バレるわけないだろう……多分」

 

「あ、連絡手段とかあるんですか?」

 

「ないな、端末貸してくれ」

 

「……はい」

 

「……ま、なんとかする、ありがとうな、気を使ってくれて」

 

「2年ぶりに再会した友人を手厚くもてなした、それ以上ではありません、話はまだまだ、訊かせてもらいますからね」

 

「勿論、いくらでも答える」

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