現代にカムイコタンの巫女がいるのは間違っているのだろうか   作:N9999

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この度は「現代にカムイコタンの巫女がいるのは間違っているのだろうか」をお読みいただき、まことにありがとうございます。不快に感じたらすみません。


第一話 ナコルルと現代

ここは現代…2018年の北海道。平和なこの地で、ある異変が起きた…

(自然が、泣いている…私が眠っている間に、何があったの…?)

荒らされる大地。失われる自然。自然の悲痛な叫びを聞き、太古の昔眠りについた存在が蘇ろうとしていた。

(ここままではいけない…この自然を、守らないと…!!)

そして彼女は現代に降り立った。

 

カムイコタンの巫女…その名はナコルル。

 

 

札幌市 温泉旅館『とまり』

 

北海道は極寒の地。特に今日は一段と冷え込んでおり、各地の温泉は繁盛していた。

 

「生搾り二丁お待ち~!!」

彼女の名前は「六辺(むつべ)れら」。

この旅館を営む三人兄弟の真ん中の高校二年生だ。今日は休日なので旅館の仕事を手伝っている。

「れらちゃん、最近は寒いから客が多くて大変だねぇ」

「まぁ忙しいけど今が稼ぎ時だから、贅沢言ってられないわよ」

北海道の特産品である生搾りを食堂の客に配る彼女だったが、背後から何者かが迫っていた。

「たくさん稼いだらいつかは家族で沖縄にでも…」

「聞こえますか?自然の声が…」

その声に気付いたれらが後ろを振り返ると、そこに居たのは紅白の巫女服を纏った小柄な少女であった。

その肩には一匹の鷹がとまっており、コスプレ用のぬいぐるみにしてはやけにリアルだ。

あまりに場違いな彼女の姿を見て、その場にいた全員が凍り付いた。

「…どうしました?驚かせてしまったのでしょうか」

心配そうに辺りを見渡す少女を見て、れらは心の中で突っ込んだ。

(…なんて返せばいいのよ!)

そんなれらの心境をよそに、少女は話を再開した。

「心配しなくてもあなた達を殺したりはしません。まずは私の話を聞いてくださ…」

「ちょっと表に出ようか」

「えっ?」

少女の電波発言を見かねたれらは、彼女を連れて屋外へと出た。

 

「全くなんなのよあんたは…なんのつもりかは知らないけど仕事の邪魔されたら困るの、さあ帰った帰った」

「こ、こっちだって遊びじゃありません!!」

少女は必死に反論したが、まず服装がふざけているので説得力は皆無だ。

「その同人で見たことあるようなコスプレといい、あんた一体何者よ」

「そういえば自己紹介がまだでしたね」

少女は胸に手を当て、自己紹介を始めた。

「私はナコルル。自然を守るカムイコタンの巫女です。」

電波であった。

「そしてこの子は私の大切な友達、ママハハです。」

「クエッ」

電波であった上に、鷹は本物だった。

「少しなら触ってもいいですよ?」

「いや…遠慮するわ」

こんな電波(鷹付き)を野放しにはしておけないので、れらはとりあえず話を聞いてみることにした。

「なんでうちの旅館に?」

「私が目覚めた所から近かったんです。」

「目覚めた?」

「はい、実は‥」

ナコルルと名乗る少女は、これまでのいきさつを話し始めた。

 

大自然の守り手であるナコルルは、かつて魔界の使者である「羅将神ミヅキ」と熾烈な戦いを繰り広げていた。

激戦の末勝利を収めたのはナコルルであったが、戦いの余波で自然はすっかり汚染されてしまっていた。

「全てのよきカムイ達よ、私の命の光で木々や野原を救って!!どうか、お願い!!」

しかしナコルルは自らの肉体を捧げ、同じ時代の仲間達が誰も生きていられないほど永い眠りにつく代わりに汚染された自然を元通りにしたのであった。

「みんな、どうか悲しまないで‥いっしょに笑うことはできないけれど、木々や野原をかける風の中に私はいつもいます‥」

それは1789年‥今から229年前の出来事であった。

 

「‥で、200年以上も眠っていたの?あんたは」

「そうなりますね」

ナコルルの電波すぎる発言にれらは頭が痛くなってきたが、話はまだ終わらないようだ。

ナコルルが再び口を開く。

「しかしミヅキが討ち取られた今、再び自然は悲鳴を上げています。その声を聞き付けて私は目覚めました」

そしてナコルルは拳を固く握りしめ、

「この時代の人間達は自然の恩恵を忘れて私利私欲のために平気で自然を汚してきたと聞きました‥自然を汚す悪い人間達を私は許せません!私は自然の大切さをこの時代の人間に知らしめたいのです!!この尊い大地を守るために!!」

自らの計画を高らかに宣言した。

 

「‥あんたが本気なのはわかったわ。でも‥」

ナコルルの計画に対し、れらは現実を告げた。

「それって約64憶の人類に一人残さず自然の素晴らしさを説くってことよね?」

それを聞いた途端、ナコルルは白眼を剥いて絶句した。

「‥!!」

「何人だと思ってたのよ‥」

「てっきり7566人くらいかと‥」

(眠っているあいだに何が起きたと思ってたのよあんたは‥)

どうやらナコルルは現代を激しく誤解していたらしい。

「それにあんた、全人類を敵に回すって事は‥自衛隊や世界中の軍隊を敵に回すって事なのよ。アメリカ軍とかあんた一人で相手できんの?」

「自衛隊ってなんですか?」

「そこ!?そこからなの!?」

せめてもう少し現代の情報を集めてから計画を検討しても良かったのではないだろうか。

そんな無知なナコルルにれらはさらに畳み掛ける。

「じゃあミサイルは?」

「みそ汁‥ですか?」

「‥銃は?」

「それならわかります、ガルフォードさんから聞きました」

「ガルフォード!?」

「『さんふらんしすこ』という異国の町から渡ってきた忍者さんです」

(なんでその時代にサンフランシスコがあるのよ‥っていうかサンフランシスコに忍者?そもそも当時は鎖国中じゃなかったっけ‥?)

などとれらが歴史の矛盾点に頭を蝕まれていると、

「クエッ」

「うわっ、何?」

先程まで大人しくしていたママハハが突然、ナコルルの肩から飛び立った。

その視線の先には一匹の雀が飛んでいた。

「あの雀さんを食べたいみたいですね、ママハハもお腹が空いてますから‥」

「雀も自然の一部じゃないの?」

「あくまで食物連鎖なので話は別です」

しかしママハハは空腹で元気がないのか、なかなか素早く飛ぶことができない。

雀はそんな事もお構いなしにどこかへ飛んでいこうとしていた。

その様子を見かねたナコルルはママハハを休ませ言った。

「大丈夫?私が代わりに捕まえてこようか?」

「クー…」

「あんた動物の言葉がわかるの?」

「はい。自然の声を聞けるのでこちらもなんとなく…」

「…やっぱり電波ね」

ナコルルは雀を捕まえようとしたが、彼女も長い間眠って体が鈍っていたためか動きがぎこちない。そして、

「きゃあっ!?」

その辺の石に躓いて転んでしまった。

「雀にも勝てない奴が自然を救うって…ww」

その光景を見他れらは、つい噴き出してしまった。

 

プツン

 

だが、それはナコルルの溜まりに溜まっていた心の闇に火を灯すには充分であった。

「ならば知りなさい、自然の怒りを…」

彼女が何よりも拒絶する闘争を押し付けられた結果生まれた、心の闇に…

「ママハハ、行って」

ナコルルのその言葉に呼応したママハハは、なんと全身から火を吹き出しながら先程までのゆったりとした動きとは似ても似つかない速度で雀に向けて特攻した。

その先には旅館の壁があり、雀は嫌というほど壁に叩き付けられ動きを止めた。

「自然の怖さを、教えてあげる」

まだ終わらない。ナコルルは『何か』を手にとってこれまた凄まじい跳躍力で雀に飛び掛かり、『それ』を突き立てた。

次の瞬間、旅館の壁に半径3m程度の大穴が穿たれた。

「さよう、なら…」

 

「…ッ!?」

れらはその様子を唖然としながら見ていたが、我を取り戻すと同時に眼前の光景に戦慄した。

紅白だったナコルルの巫女服は何故か紫色に変色し、肌そのものも褐色になっていた。

顔は雀の返り血で濡れ、そして手には小振りながらも鋭く光る…一振りの刀が握られていた。

(ただの電波かと思っていたけど…まさかこいつ、本当に魔界の使者を…!?)

グチャグチャになった雀をママハハに食べさせるナコルルの姿は、全てにおいてこの時代に不釣り合いであった。

 

「でも!それはそれ!!」

と、れらはそんなナコルルの後ろに回り込み髪を引っ張った。

「よくもうちの旅館の壁ぶち壊してくれたな!!」

「ぎぃやあああああああああ!!!!…あれ?私は何を!?」

「どうもこうも壁を…えっ!?」

れらがナコルルの服に視線を向けると、紫色に変色していた巫女服はいつの間にか元の紅白の巫女服に戻っていた。肌の色も元通りだ。

「…あんた、ひょっとして二重人格?」

「…血…それにチチウシ…すみません。巫女として、そして戦士としての責務の重さから心を病んでしまって…」

「な、なんて奴なの…」

ふと、れらはナコルルが手に握ったままの刀に視線を移した。

「ところでこのドスはなんなの?」

「これですか?これは『宝刀チチウシ』。今は亡きお父様から受け継いだ刀で、魔を封じる力を秘めています。ママハハはこの刀を守護する使命を帯びているんですよ。」

(刀であんな穴空けられるの…!?)

普通は刃物で一瞬にして壁にあんな大きな穴を空ける事は出来ないだろう。

どうやらただのドスではないのは本当のようだ。

(…でも性格はどうでもいいとして本気を出したときの身体能力、そしてあの鷹は…)

「あの…先程は、その…お見苦しいものを見せてしまいすみませ」

「あんた自然の大切さを知らしめたいって言ってたわね」

「ん?あ、はい」

「いいわよ」

「…えっ!?」

ナコルルは驚いた。

あんな一部始終を見て自分を受け入れてくれる人間なんて居ないと薄々理解していたからだ。

「ほ…本当ですか!?」

「ええ、今日からここがあんたの家よ」

「あ…ありがとうございます!!!!」

 

翌日

 

「うう…なんで私が…」

 

「ここで働かないと駄目なんですかーーー!!」

こうしてナコルルは温泉旅館『とまり』の従業員となった。ついでにママハハは発火体質を利用した湯沸し器として活用されている。そしてチチウシはと言うと…

「ナコルルー」

「れ、れらさん!?」

「壁の修理代分働かないとこのドス質に入れるからねー」

れらに没収されてしまっていた。

「そ、それだけはやめてください!お父様ぁぁぁぁぁぁ!!!!」

しかしナコルルにとってはこれで良かったのかもしれない。

もしもれらと出会わなかったら、確実に銃刀法違反で裁かれていたのだから。

 

現代社会では淘汰されて生きてはいられないはずの彼女は、現代に生きることを許されたのだった。

 

 

 

続く




…はい、イカ娘第一話まんまでしたね…ナコルル雀殺しちゃってるし…原作の大幅コピーに引っ掛かっていなければ幸いです。
次回からはオリジナルの展開を考えていきたいので、この小説を読んで不快な気持ちにならなかった聖人の皆様はどうかもう少しだけお付き合いできるようお願いします。

…続けば。
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