どんどん多くの出来事を乗り越えながら、テイルたちの攻略は大詰めに。
ではどうぞ。
ボスを倒し、新たなエリアが開かれた。
「討伐おめでとうーーー」
「さすがだなキリト」
「いや、今回テイルの活躍がでかいよ」
「………」
服装を変えようとしたが、テイルはみんなに止められ、彼が獲得した盾と剣。それは完全に証として、彼が装備していた。
それでバレてしまうのだから、諦めろだ。
アイテムも使い切り、ギリギリの戦いだった。もうログアウトしたい。
プレミアの為に開かれた道、それに軽いお祝いをする。
「ボス討伐ご苦労サン」
その時、猫ひげのようなペイントをした女性プレイヤー、アルゴが訪ねて来る。
彼女曰く、新たな新エリアの道は開いたらしい。
「しかし、よくあんな道を見つけたナ」
「あっ、ああ、その件だけど………」
その時、彼は口ごもる。少しばかり注目を浴び過ぎていた。
ここでプレミアのことを言うのは、彼女にも注目が向くと思い、
「崖でアイテムをな」
と言うしか無かった。
「へえ、さすが《蒼の剣士》に休みはない。SAO時代と一緒なんだナ」
今回は集めさせてもらうゼと笑顔のアルゴ。
アルゴ以外も、多くのプレイヤーが聞き耳を立てているのに気づきながらも、彼は静かに話すだけにした。
「それにしても、キー坊とテイル。いまや真のトップランナーとして、周りから絶賛の嵐だナ」
「俺も?」
「もう一体を見つけたのはキー坊だロ?」
そんな話の中、キリトは苦笑する。
彼もまた、諦めずに探索したのだから仕方ない。
周りを気にしながら、お互いの顔を見る。
「プレミアのクエスト攻略を続けたかっただけなんだがな………」
「………」
テイルも頷く中、仕方ないと諦めている二人。
「普通なら誰もが見落とすはずサ、あそこで騒いでいるヤツだけじゃなくてネ」
その言葉に、何かを蹴った音が宿に響く。
◇◆◇◆◇
「冗談言ってるんじゃねぇ!! ボスを倒しても、ヒントすら出なかったんだぞ!?」
「そ、そんなこと言われても………、実際、これだけ噂になっているんだしさ………」
そこにいたのは《黒の剣士》、ジェネシス。
彼はボスを倒したことで、かなり噂になっていた。
いつの間にかそれらは、ボスを倒したもう一人のプレイヤーテイルと、隠されたボスを見つけたキリトに変わっている。
そして手下たちに当たり散らした後、こちらへ歩いて来た。
「おいテメェ………、もう二匹ボスがいたっていうのは本当か?」
「ああ、このエリアには、ステージボスが三体いたんだよ」
「何で先があるって気が付いたんだよ」
「別に気が付いたわけじゃない、ここで終わらしたくなかっただけだ」
「終わらせたくなかっただけだと?」
その時、エギルが前に出る。その後ろで仲間たちもこちらを見ていた。
「何のために攻略しているか………。その違いが今回の結果に繋がったんだ。自分の為か、人の為かっていう違いでな」
「誰かのために攻略だ? 哲学つもりかよ、吐き気がする」
その時、テイル。彼を見る。
「この世はもっと単純だ、強いか……弱いか……。結局は自分一人だ」
「………」
「テメェだって、一人で倒したんだろ? それともあれか、テメェ、チートでも使ったか?」
「! お前っ」
キリトが前に出ようとしたが、手で遮る。
「俺は不正もしてないし、一人で戦っていたわけじゃない」
「ああ?」
「俺が彼奴に勝てたのは、積み重ねたもので挑んで勝った。それだけだ………」
「ちっ、まあいい………。お前らにもそのうち、そのことを味わわせてやる……必ずだ」
◇◆◇◆◇
「………なんで止めたんだテイル」
立ち去った後、キリトは不満そうにそう言う。
「ケンカして欲しくなかった……」
俺がチートかどうか、それは分からない。
俺は骸骨の戦士から、ただ伝授されただけだ。
必ず死が許させない、そんな気迫を感じる試練。
それをこなしてついた技術は、そう言うものではないとはっきり言えない。
だが、それでも選び、勝ち取った自信はある。
それよりも、キリトが彼奴と悶着を起こす方が、俺にはきつい。
「………悪い」
「気にしないでくれ」
こうして気持ちを切り替え、お祝いは続く。
◇◆◇◆◇
新たなフィールドは砂漠地帯。
「あ、暑い………」
「ほれユウキ、水分含んだ果物だ」
「ありがとうテイル………」
「お前さん、相変わらず妙に準備はいいよな。俺なんか、もう水が」
「ほれ」
クラインたちに果物や水を渡しながら、まさか試練で慣れたとも言えず、こういった未開拓地域に行く際の準備をしていたのは、自分だけ。
とりあえず一通り見た後、すぐに帰還して、備えることにする。
◇◆◇◆◇
砂漠のフィールドも探索するが、クエストもある。
今回フィリアが持ってきたクエストの手伝いで、メンバー全員でダンジョンに戻っていた。
「大きな分岐点のたびに、みんなと別れ別れに進んで、もうボクたちだけになっちゃったね」
ユウキ、アスナ、キリトと俺の四人。洞窟の奥に進んでいた。
何かジメジメしてて、湿気が増す。
「溶岩地帯に繋がってる、ってことはないよね?」
「いや、そこまで強い熱気じゃない」
ユウキの言葉に、俺はそう言いながら進む。
そうして煙が見え、そこにあるのは、
「温泉?」
ちょうどいい温度で、広々とした温泉。
さすがに入るのはどうかと思ったが、アスナもユウキも入りたがっていて止められず、俺たちは岩陰で待つ。
楽し気な会話が聞こえてくるが、キリトが少しそわそわしてる。気にすることではないのだが………
「キリト、他のみんなはどうなんだろうな」
「あっ、ああ。ここに来るまでも、アラームトラップや扉の開閉ギミック。色々やたら用意されてたからな」
「そんなダンジョンにこんな温泉か……、罠だったりしてな」
そうボソッと言ってみる。
装備を外し、モンスターをけしかける………
俺たち二人して顔を見合わせた。
「まずいっ、急いで二人に伝えて……」
その時、モンスターらしきうなり声を聞き、俺は武器を構える。
「キリトは二人を、俺はモンスター」
「分かった!」
そしてキリトが奥に進み、俺は構え、エネミーを持つと、
「っ!?」
岩の形をしたモンスター、それは《イワロック》。弱点の背中の鉱石までしっかりしている。
一体だけだがこれを普通に叩くのは至難だ。
ともかく攻撃を仕掛けながら、背中の鉱石を叩く。やはりダメージの入りが多い。
ともかくアスナたちを呼びに行ったキリト。
………
「あっ」
いまキリトの方が危険なのではないかっ!?
「キリトぉぉぉぉぉぉぉぉ、無事かぁぁぁぁぁぁぁ」
叫び声を上げるがそれより先に突進が放たれ、盾で防ぎ吹き飛ぶ。
◇◆◇◆◇
「アスナ話を聞いてくれっ、これには深い訳が」
「どんな訳なのかなあ?」
仁王立ちして睨んでいるアスナ、ユウキは苦笑している。俺の話を聞いてくれない、いまテイルが大変な事態なのにッ。
そう思っていると、
「があぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
付近で来たテイルが、ユウキに激突して押し倒す。
「あっ」
「ツッ。すまないユウキ! ユウキ?」
「………」
タオルがはだけ、少し危険な状態で、テイルがユウキを押し倒して、ユウキがボッと言う音と共に顔を赤くした。
「あっ、あっ、て、てぇいりゅ?」
「待てユウキ、気持ちは分かるがその手をやめてくれっ」
いまユウキは、メニュー画面を操作して、テイルを監獄送りにしようとしているが待ってあげてくれっ。
「て、テイルさん。キリトくんといくら似てるからって、そんな」
「じゃなくって、モンスターが出たんだ!」
「えっ」
その時、テイルはすぐに気づき、ユウキを抱き上げ、瞬時に動いて避けた。
彼は後ろに目があるようにバク転で避け、すぐにステップで距離を取る。
岩の塊のようなゴーレムで、背中の岩だけ色が違う。
それ以外印象が岩の塊で、テイルにタゲを取っている。
「やばいっ、岩石の固まりのくせに早い!」
「テイルさん、ユウキ!」
「キリト弱点は背中の岩だっ、さっき攻撃したが」
そう言いかけたとき、また岩の腕が迫る。
それをバク転で避けたりと、器用過ぎるだろ彼奴っ。
そう思った時、ひらりとタオルが、
「あっ」
「えっ」
「にゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
その時ユウキが彼の目を覆い隠す。
俺は彼のおかげで見えない。ついでにアスナは装備操作で気づいていない助かった。
そして彼はすぐにバックステップで後ろに下がるが、ガコンという音と共に仕掛けを踏む。
「しまっ」
そのまま彼らの後ろ壁が開き、その中に入る。
その瞬間、天井が落ちて来るのと同時に、扉が閉まった。
「テイル、ユウキぃぃぃぃぃ」
◇◆◇◆◇
危なかった。
ともかく、俺は天井が下りてきたので、ユウキを下ろして天井を支え、外の仲間が助けに来るまで耐える。
ユウキも服を着て、仕掛けが解けないか調べていた。
しばらく外では戦闘音が聞こえていたが、しばらくして入口が開き、外に出られる。
キーアイテムもユウキたちが見つけ出し、どうにかクエストは進んだ。
進んだのだが………
「………テイル」
「キリト、この程度で済んでよかった。だろ」
俺とキリトは女性メンバー全員に菓子をおごると言う謎の罰を課せられ、キリトは泣きそうだ。
どうも少し金銭感覚が、性能が良い武具があるとどうしてもとか言うし。
「あっ、二人とも。今回だけって思わないでくださいね」
………キリトは膝から崩れた。
◇◆◇◆◇
悲しい事件が起きてしばらく、フィールド探索で資金を集める今日この頃。
「ここ最近、なにか身体の感覚がおかしい」
クラインやフィリアたちと、フィールド探索をしている。
ユウキは許してはくれたが恥ずかしそうに、にゃーーと言いながら避ける。心が痛い。
とりあえず、それとは別に。それはライネルを倒してから、ひときわ感じるようになったこと。
それは身体、感覚のズレだ。
「おかしい? それはどんな」
「身体と頭の動きに、ズレがな」
「ズレ? それってまずくないか? どんな感じなんだよ」
「………たぶん、普通の人じゃ分からない。処理落ち、かな? 僅かに本気になった時、ごく僅かにズレがある」
「本当っ!? 安全面は平気かな」
そう言いながら身体を動かす、それでも本気の時の僅かなズレには、いささか気にはなる。
そんな会話の中、メッセージがキリトから来た。
「プレミアのことかな?」
「緊急みたいだね」
「とりあえず、ズレなんてもんは気のせいかもしれないし、気のせいかもな………」
そして俺たちは知る。
プレミアのクエストは、このゲーム正式サービスで行われるはずの《グランドクエスト》だと言うことを………
さらに俺は忘れている。プレミアらしき影のことを。
◇◆◇◆◇
プレミアのクエストは未公開のトップシークレット。
ゲームが正式に起動したときに行われるクエスト、《グラントクエスト》だとセブンから教えられた。
それにより、色々と合点が行く。
虫食いのようなクエスト発動条件や、様々な伝承が絡む物語。
そして所々で違う話のように展開するところ。
「公開前のクエスト、セブンもどうして受理されたか分からないのか」
「ああ、向こうも相当驚いていたよ。ただ、明らかに異常な状況ではあるらしい」
仲間たちは皆浮かない顔だ。
それもそのはずだ。彼女はいまだ、クエストの為に町をうろついている。
クエストが用意されていないクエストNPC。悪ふざけにしても酷過ぎだ。
「パパ、管理者コンソールを探しましょう」
真剣な顔で、ユイちゃんがそう答える。
「それは………」
「SAOにあった、あの端末のことか?」
「はい、開発スタッフがゲームの中から各データを参照し、調整するために用意されたものです」
「それを調べれば、このクエストが動き出したか分かる、ってことだね」
その言葉に頷くユイちゃん。
「けど、このゲームにも、そのコンソールが存在するのかな」
「いや、SAOにあったのなら、それを下地にしたこのゲームにも存在するはず。ただ問題は」
「それがどこにあるか………」
「セブンちゃんなら知ってるんじゃないかな」
「開発スタッフなら知っているだろうから、その時は」
俺を始め、みんなが頷き合う。
場所は攻略中の砂漠地帯、そこを目指し、動き出す。
◇◆◇◆◇
そしてここ最近、探索を続ける中、事件は起きた。
「シノンさんが、最近、ログインしてないの」
「シノンが」
「そう言えば最近見かけてないけど、なにかあったのか? キリトたちはなにか」
「しばらく待ってほしいって」
「なにかあるんだろうな、ったく、こういうとき俺らは蚊帳の外か」
クラインはそう愚痴る。かなりデリケートなのだろうか、キリトは偶然にでも知ったのかもしれない。
キリトから連絡が来るのを、ただただ待つしか無かった………
◇◆◇◆◇
「一つ聞くが、俺たちも聞いていい話なのか」
苦しそうなシノンがそこにいて、静かにこくりと頷く。
「ええ、みんな、仲間ですもの。ちゃんと自分の口で伝えたい………」
それはシノンの過去の話。
シノンは11歳の時、当時住んでた町の郵便局に強盗事件が起きたらしい。
ニュースなどでは誤射により、強盗犯は死んだことになった。
実際はシノンが犯人の持つ剣銃を手に持ち、撃ったと………
シノンがSAO帰還者ではあるが、途中、事故のようなことでログインしたらしい。
それはユウキと同じ、システムの治療法で、心の病と闘っていた。
いまでも拳銃の写真で吐き、苦しんでいる。
「私は、いままで黙って、ずっとみんなの仲間って言っていたの………」
「シノのんっ」
「黙っててごめん………だましていて、ごめんね」
そう言うシノンだが、
「ふざけるな」
「! テイル……」
「そんなことで騙したことに入るわけないだろ」
「えっ………」
その時、驚くシノンだが、それがどうした。
こっちは前世持ちで、みんなのことを最初、小説やアニメの中の者と見ていたんだ。
それを考えれば、俺が一番酷いのかもしれない。
「悲しいこと、言わないでほしい」
「テイル………」
「そうだよシノのんっ!」
みんな、この事件の話を聞いたところで、それで仲間を見捨てたりはしない。
ユウキもそう言い、クラインもまた頼るように言う。
「わたし、いていいの……」
「そんなの、もう答えは出てますっ」
「そうだよシノンっ」
シノンは涙を流しだす。
シノンの過去を知っても、ここに仲間を見捨てる者はいなかった。
◇◆◇◆◇
色々あったが、シノンの過去をいまさら知って、俺は後悔する。
知っていたところで何もできない。ユウキの件で俺にできることは、たかが知れていることは知った。
なら次は?
シノンを受け入れることだろう。
「………結局できることなんて、たかが知れてるんだな」
骸骨の戦士。
彼から戦う術、生き残る術を教わった俺は、チートなのか分からない。
だがこの力は俺が習得したもの、誰が何と言おうと。
俺はなんなんだろうか。
「………俺は」
あの日考えるのはやめたのだが、鉛のような重い感覚が消えない。
もう考え込むのはやめておこう、そう思うが止まらない考え。
チート、優遇された存在なのは間違いないSAO時代。
そしてなにより、勇者の偉業、その重みが意味も無く背負っている感覚。
ただ、いくら考え込んでも答えなんて出なかった………
相談も何もできない問題は苦しいですね。
それではここで、お読みいただきありがとうございます。