だけど、それでも彼は技を授かり、それを振るう舞台へと足を踏み込んだ………
あれから数か月が経ち、死者を止められなかった。
戦闘、ボス戦、こういうところになると、俺の手から離れる。
それでも、自殺者は引き止められたのは救いであったはず。
後は彼らは日々アイテムや武器防具作りなどで、生計を立てている。
そして俺は、
「………」
日々エネミーを倒し、アイテムや使えない物は売り、ただそれを繰り返す。
武器は相手のドロップ品や、様々な物を使用する。後は穴場の鍛冶屋だ。
「………」
はじまりの町にある、とある教会。ここはすでに買い取り、ギルド《
「あっ、テイルだ」
低年齢プレイヤーを助けるだけじゃなく、適応できないプレイヤーも、裁縫、料理などの仕事で働けるようにしているギルド。
彼らを支えるのは、俺のやるべきことだ。
「テイル」
その時、一人の女性プレイヤーと出会う。
彼女は、
「『ルクス』」
ルクス、ある階層の森で所属パーティーが
彼女は現在、このギルドに入り、時折見かける。
「君はまだ一人なんだね」
「………」
悲しそうに言うが、仕方ない。
俺は正直、人との付き合い方が前世から分からない方であり、次のこの人生も、このゲーム対策ばかり考え、人との付き合い方が、ほんと分からない。
彼女はそれを心配、いや、知るギルドメンバーはみんな心配してくれる。
「………じゃ」
「あっ………」
正直、ルクスはかわいい。
どう接していいか分からず、こうしてまた避けていた。
◇◆◇◆◇
彼はテイル、《沈黙の蒼》と呼ばれる。
何事も言葉少なく返答し、黙々とエネミーを狩り、このギルドに貴重な資金を集めるプレイヤー。
当初このギルドは火の車だったが、彼が孤軍奮闘した。
このギルドが現在になって回るのは彼のおかげだと思う。
そんな彼は一人、危険なエリアに出向き、このデスゲームで多くのプレイヤーを支えている。
私が前に所属していたパーティーが全滅し、私も死ぬところ彼が助けてくれた。
だけど彼は一人、いつも思いつめた顔で戦いに出向く。
彼の心中を知ることはできない。
私はただ、彼の無事を祈り、彼の真似事をするしかできなかった………
◇◆◇◆◇
延々と、黙々と、淡々と、エネミーを狩る。
35層のモンスター、『ドランクエイプ』と言う、猿人型モンスターが三組。
相対するは、背中に槍、片手剣、両手剣を背負い。左腰に刀、右腰に予備の武器を持つコートの青年。
懐には無数の投擲武器が隠されていて、全身武器で固めていた。
相手はソロではきつい、群れで戦い、HPを回復する相手だが、彼は狩り慣れしている。
出会った瞬時槍で喉元を貫き、槍を手放し、腰の片手剣を引き抜くと共に切り払い一匹。
瞬時に戦闘態勢に入る敵の攻撃を盾で防ぎ、何度か対峙する。
相手はスイッチ、攻撃する担当を入れ替わる戦法を使う。
だが共に、流れるように投擲武器が後ろに飛ぶ敵を貫き、二匹。
(悪いが回復はさせない)
そして残りは盾と剣でポリゴンに変え、そして、
「増援」
そう、彼が一匹を倒した時悲鳴を上げ、他のエネミーを
「………」
そして増えた数相手に、彼は攻撃をギリギリで避け、全て叩き斬る。
単純に相手が回復するよりも早く斬れ。
それが彼が彼らに対する評価であった。
◇◆◇◆◇
そしてこの作業の終わった後、宿で夢を見た。
今日は訓練の日か。
「先生、お願いします」
骸骨の戦士、何者かは分からない。ただ俺に剣術を教える、師であることは変わらない。
これのおかげで俺はどれほど救われたか分からない。
チートだ。
俺は他のプレイヤーより、βテスターよりも恵まれている。
戦う。
戦え。
それ以外の方法が分からない。
初めは、デスゲームが起きると知って、二次のオリ主のように戦わなければいけない気がしただけだ。
それだけ。
そして目を覚まし、今日も今日とて、エネミー狩りだ。
◇◆◇◆◇
「また君だね、この子はもうだめだよ、新しいのにした方がいいよ」
「………」
盾と片手剣、槍に刀、投擲武器と様々なものを持つおかしな戦士。
蒼を基本にした服装の彼。
ボサボサのショートヘアに、黒い瞳。やや背は高い彼は、この店の常連。
「同じ長さの物があれば」
「はぁ………」
そうため息をついて、静かに奥から剣を持ってくる。
これは彼のために打った、自信作だ。
「はい、貴方用のオーダーメイド。特注だよっ」
「………」
それに僅かに驚く中、彼はそれを手に取る。
彼は片手剣でやや長めの物を使用するから、両手剣と片手剣の間を探るのに苦労したよ。
その剣を見ながら、静かに頷く。
「………ありがとう」
「どういたしまして、お代は、いいや」
「いや」
そう言ってそれなりのお金を出す。
彼からお金を取るのは、少し気が引ける。
このギルドは、最初火の車だったけど、彼が孤軍奮闘したおかげで形になったとわたしは思う。後から入ったわたしが言うのも変だけど、ほんと助かっていた。
すでに彼はもう財布を取り出し、渋々お金を受け取る。
盾や防具もここから買ってくれる、おかげでわたしの鍛冶屋は秘かに有名だ。
「じゃあ………」
「うん、またねテイル」
こうして彼はまた一人、ソロでこのゲームに挑む。
彼の支えになれるよう、私はまた片手剣と両手剣の間を模索する。
◇◆◇◆◇
名前呼ばれた、長くあそこの鍛冶屋を利用してたが、名前を覚えられるほど利用したのか。
しかもオーダーメイドの剣。ちょうどよく使え、軽く振ったが重心も安定している。
これならまだ頑張れるだろう。
◇◆◇◆◇
また時間が経ち、時間が経つと新たな階層に出向けて、新しい狩り場ができる。
だが一般に狩り場と言われる場所は攻略組のものだ。
だから俺はいつも、
今回はいいところができた、いつものように、≪白竜≫狩りに出かける。
55層のこいつは、素材集めに出るイベントボス。
何度も何度も繰り返し対峙していた。
こいつのおかげでレベルも上がるし、レア素材でギルドは潤うし、いい素材が出回り、プレイヤーは助かる。
いいことづくめで俺も助かっていた。
咆哮を上げて来るが、もう慣れ過ぎだ。
「ハアァァァァァァァァァァァァァ―――」
骸骨の戦士の訓練で出る彼らの方が、手ごわい。
◇◆◇◆◇
「いらっしゃい」
「エギルの店はここか……」
「お前さんは……」
肌黒のスキンヘッドの男の下に、武器を多数多く装備したプレイヤーが訪ねてきた。
店の男はすぐにそれが《沈黙の蒼》と呼ばれる、一風変わりすぎたプレイヤーと知っている。
種類を統一せず、武器を多数装備する変わり者。
狩り場を持たず、どこの階層でも見かけられ、ソロで支援ギルドを支えているとも噂される男。
レベル帯も問わず、素材集めばかりするへんてこプレイヤーとも言われていたが、
「この店で買い取って欲しいものがある」
男が持ってきたのは、レア鉱石《クリスタライト・インゴット》と言う、イベントボスが守るアイテム。
それに男の顔はこわばった。
「お前さん、これを一人で集めているのか?」
最近、ここ最近、この素材が出回りやすくなり、大手ギルドがパーティーを組み、何度も素材を回収していると噂される。
だが大手ギルドにそのような動きが無いと、彼が知る情報屋が断言していた。その謎がいま解明した。
「いくつか買い取ってくれ、言い値で構わない」
「言い値だとっ!? お前さんマジで言って」
「中層プレイヤーの生存率が上がればそれでいい」
「!」
エギルの背筋が凍り付く。
(こいつは金目的で売りに来たんじゃねぇ)
自分が中層プレイヤー育成に、支援していると知ってここに来たのだ。
自身のギルドだけでなく、個人まで支援しようとしている。
バカだ、大馬鹿者なのだろう。
命がけでなにを、
「お前、一人でんなこと続けたらいずれ死ぬぞ!」
ついそんなことを言った。
だが、
「死ぬつもりなんてない……」
噂通り、物静かに、無表情でそう告げて、渋々言い値で買い取らせてもらった。
それを何も言わず受け取り、彼は去る。
呼び鈴が鳴り響く中、エギルは戦慄していた。
「………まるで昔のキリトじゃねえか」
そしていまだに、この鉱石が出回るのが止まなかった………
◇◆◇◆◇
数か月後………
おかしい、75層以下に行けなくなった。
話によると《血盟騎士団》の団長が茅場晶彦であり、それを《黒の剣士》が倒したらしい。
だがゲームが解放されず、いまだ続く。
多くのプレイヤーが急に階層が上がり、ギルドに助けを求めてきた。
それにより、やることは増える。
◇◆◇◆◇
ある日のこと、転移装置を利用したら、知らない場所に出ていた。
75層から下に行けなくなって、攻略組が頑張り進めるエリアが広がり、やることも多少安定し出して、変化が無いかなとか思った矢先だ。
「………どこだ」
バカなことを考えた結果がこれかと、内心反省しつつ歩いていると、
「………!」
戦闘音が鳴り響く、そちらに向かうと、黒い格好の、二つの剣を握る剣士。
俺でも知っている、彼は前世で知った。
それは『キリト』、主人公である彼と、もう一人、少女が戦っている。
少なくともこれを見逃すのはまずい、急ぎ盾を構え、間に入った。
「!? 君は?」
「いまはいい、協力して倒すぞ」
「おう!」
「ええ!」
◇◆◇◆◇
その後、オレンジプレイヤーらしい『フィリア』の案内で、この未知のエリアから抜け出せた。
オレンジ、プレイヤーを傷付けた証。
だが俺にはフィリアが悪者とは思えない。キリトもそう言うのだから、そうなのだろう。
おかしな二人を見るようにこちらを見るフィリアをしり目に、このエリアから脱出した。
「アークソフィア、戻ってこれたのか」
どうにか見覚えがある場所に出られて、俺も内心安堵する。
同じく安堵するキリトは、転移門の様子を見たりしていると、仲間の『アスナ』たちが来るのが見えた。
その隙に俺は彼から離れる。彼のことだから、お前も仲間だ的になことになりかけない。
それはまずい、あまり深く関わると、俺が物語を壊す可能性がある。
そう思った時、
「………!?」
その時、『リーファ』とすれ違った。
俺はすぐに彼らから離れ、一人路地に来た時、記憶を整理する。
リーファ、彼女は確かこの事件後に作られた妖精になるゲーム、そのプレイヤーだ。
どんなゲームかは思い出せないが、少なくてもSAOにいないはずの人物。
そもそも日本人キリトの妹のはずなのに、金髪の外人のはずがない。
(見た限り、あんな妖精のようなアバターもおかしい)
ここのプレイヤーは茅場の所為でリアル化されている。後から服装を変えられたりしてもああも変わるのか?
(俺がいる所為で彼女が加わった? いやそんな変化の仕方も変だ………)
近いようで近く無い世界なのは知っていたが、これではキリトがゲームをクリアするかも分からない。
攻略組に参加するか?
それでも俺はソロでゲームをし過ぎた。いまさらパーティーやレイド戦は、勝手が分からない。
そうなるとやることは変わらないが、キリトのことを調べるべきか。
ともかく考え込みながら、宿へと歩き出す。今日は疲れすぎる。
◇◆◇◆◇
「? 彼はどこだ」
「かれ?」
俺がみんなから心配される中、彼、『テイル』と言うプレイヤーがいないのに気づく。
「彼? それってキリトくんの側にいた、《沈黙の蒼》のこと?」
「アスナは知っているのか」
「知ってるよ。だって《血盟騎士団》にスカウトするか、会議に出るほどの腕前のソロプレイヤーだもん」
アスナから、彼が低年齢プレイヤーや、このゲーム攻略に参加することができないプレイヤーの集まり、ギルド《
あまり喋らず、会話らしいことをしたプレイヤーが少ない。彼がどこで、なにをしているもかも、謎のまま。
複数の武器を持つソロプレイヤーで、ただただ強いとしか分からないらしい。
アイテムもほとんどギルドの商品として売りに出し、実力が分からないプレイヤーとして情報が少ないと言うことだ。
◇◆◇◆◇
後でアルゴに聞いたが、宿もよく変え、いまの状況に入ってから、かなりのプレイヤーがギルドに助けを求め、彼は動き回っている。
それだけではないらしい。
「あのギルド、ぶっちゃけ、支援はちゃんとするんだけど、ボス戦には一回も参加してないゾ」
「そうなのか」
「ああ、それでもいいんだけどナ……」
難しい顔をするアルゴ。仕方ないと財布を緩めようとしたが、少しだけサービスで、彼の情報で手を打つらしい。
「彼奴、情報屋泣かせでナ。オレっちも彼奴がなにしてるのか、まるっきり知らない」
「知らない? アルゴでもか」
「アア、戦い方も、槍とか刀とか下げてるからナ。何もかも謎ダ」
そして話で、彼が片手剣と盾で戦ったことがアルゴには満足らしい。
静かに辺りを確認してから、彼のことを言う。
「始め、あのギルドは攻略組として、低年齢プレイヤーを道具作り、武具作りでサポートさせて、攻略するつもりだったらしいんダ」
「ああ、彼らのギルドは、支援ギルドとして有名だよな」
「そうだ。最初は攻略にも出る気だった、だけど彼奴ラ、ギルドは最初火の車で、維持すら怪しかったんダ」
「なんだって!? ならどうやって維持したんだ」
「それが《沈黙の蒼》だヨ、彼奴が一人、ギルドの運営資金を稼いだうえ、低年齢プレイヤーも養った」
「………嘘だろ」
それができるとしたら、どういう計算だ?
アイテム、素材、資金。
どれほど手に入れれば可能になる?
「そこだヨ、キー坊の思う通り、ソロじゃあり得ない。それを良い事に彼奴ら」
「彼の功績を、自分たちの功績に変えたのか!?」
アルゴは静かに頷く。そんなことが許されるのか。
もしも本当なら、彼は凄腕のプレイヤーであり、それ相当の見返りがあるべきだ。
「ちなみに、今回下の階層に行けなくなって、彼奴らのもとに逃げたプレイヤーたちも、あのギルドにお世話になったんダ」
「まさかそれも」
「アア」
「………本人は知っているのか」
「それも謎ダ。なにしてるのかオレっちも分からないんだからナ」
彼に助けられた身としては、お礼もちゃんと言いたいが、どこにいるか、なにを普段からしているか謎のまま。
謎のプレイヤーとして噂だけが独り歩きしているとのこと。
「彼は………」
これが俺、《黒の剣士》と、彼、《沈黙の蒼》が出会ったエピソード。
彼は何を思い、このゲームをプレイしているのだろうか………
スタートから一気にヒーフクリフ戦、インフィニティ・モーメント、ホロウ・フラグメントに飛びました。
勇者に鍛えられたんなら、これくらい行けるだろう。
彼は無我夢中で稼ぎに稼ぎ、いまだに稼ぎます。
それでは、お読みいただきありがとうございます。