ソードアート・レジェンド   作:にゃはっふー

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前回、ジェネシスのチートを暴き、彼のプレイヤーとしての決着を終わらす。

だがティアはたった一人で大地を切断し、物語が終わりへと向かう。


第20話・影の正体

 ジェネシスは常連のチート使いとして、すでに警察からもマークされていたらしい。

 

 これでもうゲームへはログインしないことが、キリトから伝えられた。

 

 だが、ジェネシスの、おそらくゲームの中で強くなる、優れている。そう言った形を残すために、あらゆる手を使った形を残そうとしたプレイヤーの思いを受けた少女は、ねじ曲がる。

 

 彼女は崩壊モジュールと深く結びつき、浮遊城アインクラッドを落とそうとしていた。

 

 運営の動きは分からず、知らないプレイヤーたちはサプライズだと思う。事を穏便に済ませるにはいまのうちしかない。

 

 プレミアはシステムの外側へ、生きたい、みんなと一緒に居たいと叫び、そしていま、またあの城へと踏み込む話になる。

 

 あの影がいまだ、俺の中に残る………

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 城の中ではモジュールが、キーとなるティアを守るように、城の内部を変化させていた。

 

 まずはモジュールとティアを切り離す、その為に、全メンバーで戦いを仕掛ける。

 

 そこにはプレミアもいて、全員で挑む。

 

 モジュールを破壊する中、モジュールと一体化したティアが現れる。

 

「……間もなくここは地上に落ち、世界は崩壊する。ようやくすべてを消すことができる」

 

「そんなことはさせない」

 

「なんであなたたちはわたしの邪魔をする!? この世界に、人々に、なんの意味があると言うの」

 

「意味はある」

 

 キリトは迷いなく、はっきりと彼女に伝える。

 

「確かに、間違った事を行う人間も中に入る。けど世界の広がりや人との繋がりがこれからの自分を作り上げていくんだ。何も無くなってしまえば、自分すら失ってしまう」

 

「わたしはこの世界を見て、不要だと判断した。こんな世界なんていらない! 人なんて、存在しなくていい!!」

 

 その時、あの影が微かに見えた。

 

「すべてなくなってしまえばいいんだ! 嫌いだ嫌いだ嫌いだあぁぁぁーーーーっ!」

 

「ティア」

 

「拒絶しかないこの世界の醜さすべてを、消し去ってやるんだああぁぁぁぁ」

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 それでもキリトたちは諦めなかった。

 

 いるのは見知った仲間、数えられる程度。

 

 だが、

 

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ―――」

 

 キリトが持つ双剣の輝きが、モジュールとティアを分けて、全てが終わる。

 

 ティアは命を絶とうとしたが、プレミアに止められ、説得された。

 

 彼女は細剣をしまい、全員が一息つく。

 

 

 

【人は全て醜い】

 

 

 

 その時、全員が、俺以外の全員が動けなくなる。

 

「な、なんだっ!?」

 

「これは」

 

 その時、黒い影が集まり、人の姿になる。

 

 どういうことだと思いながら、それは形になり、その様子から、

 

(魔王ガノンっ!?)

 

 そのシルエットを持つ黒い影が現れ、ティアを包む。

 

「あっ、くっ、あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 

「! させるかッ」

 

 斬撃で振り払う霧。黒い影は形になり、剣を持つそれは、俺と対峙する。

 

「どう、して……」

 

「守る……」

 

 そう一言言うだけで構える。

 

 影が赤い眼光で静かに睨みつけてきた。

 

【………】

 

「………動けるのは俺だけか」

 

 なぜかは知らないが、魔王退治も加わった今回のクエスト。

 

「女神を救い出したいんだ……。行くぞ」

 

【オォォォォォォォォォォォォ】

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 剣がぶつかり合い、剣が向かい、斬られた。

 

【戦え………】

 

「!?!」

 

 いま斬られたとき、声が聞こえた。

 

 正直、精神が持ってかれてもおかしくない。憎悪のような感情が流れ出しながら、それがラッシュを仕掛ける。

 

 全てを防ぎ、後ろのティアを見た。

 

(後ろに引けないっ、だが)

 

 再度斬られる。

 

【他よりも恵まれている、俺は戦わなければいけない。止まるな】

 

「!」

 

 その隙を突かれて、ラッシュが入る。

 

 

 

【痛いッ、痛い痛い痛い痛いッ!!】

 

【なんで俺………こんなことしてるんだっけ】

 

【人が死ぬ、他に手は無かったのか。これしか無かったのか? これが正しいのか? 他になにか無かったのかッ!?】

 

 

 

(こい、つッ、は!)

 

 それには覚えがある。

 

 いや、知っていて当たり前だ。

 

 再度剣が激突し、歯を食いしばり、防いだ。

 

「お前……まさ、かッ」

 

 斬撃が叩きこまれた。

 

 

 

【戦え、戦えッ、戦えよッ!!】

 

【死にたくない死んでほしくない止まりたくないッ】

 

【俺は………何のために、その為だけにあの日々を生きたんだろ(・・・・・・・・)

 

 

 

 それは俺の負だった………

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

「ガハっ、アァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ」

 

 テイルは叫び声をあげ、剣を落とし、その場に両ひざをつく。

 

「テイルっ」

 

「おいどうなってやがる! 口以外身体が動かねえぇぇぇぇ」

 

「ふざけ、ないでよ!」

 

「テイルさん………」

 

 どうして俺たちの身体だけ、いやアバターだけ動かない!

 

「これって……、キリトっ、あれは私たちのエラー、負の感情データだよ!」

 

「ストレア、それって」

 

 動けないのはストレアも同じ、この場で動けるのはなぜかテイルだけだ。

 

「いまテイルは、大量の負のデータを叩きこまれてる! それは《デジタルドラック》、ううん、それ以上の精神負荷」

 

「それは、このまま負のデータを受け続けたら、テイルはどうなるっ!?」

 

「HPゲージの前に、テイルの精神が待たない」

 

「安全装置、強制ログアウトはっ!?」

 

「………嘘」

 

 ストレアの声から、嫌な予感しかしない。

 

「いまこの状況は私たちだけだけど、安全装置が切り放たれてる。いま安全装置が働かない!!?」

 

「なん」

 

 それでいまテイルは、

 

「このままテイルが一万人の負のデータなんて浴び続けたら」

 

「HPゲージ云々じゃないッ、テイル逃げろ!」

 

 だがテイルは両膝を付き、痙攣しているだけだ。

 

「だめ気絶してるっ、テイルさんっ」

 

「おい起きろテイル!」

 

「ダメだ、目の焦点が」

 

 定まっていないのか、口を開き、天井を見ている。

 

「テイルっ」

 

 影は剣を持って、テイルに近づく。

 

「やめろ………」

 

 まだ本気の戦いをしていない。

 

「やめろ」

 

 まだ彼奴と、

 

「テイル!」

 

 やるたいことがまだあるんだッ!

 

 

 

 動いて!!

 

 動けっ。

 

 動けよッ!

 

 

 

『いま動かないでどうするんだっ!!』

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 その時、剣が振り下ろされた。

 

 だが、一人の男の刀がそれを防ぐ。

 

【ッ!?】

 

「よっしゃ!」

 

「はあぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 

 ユウキたちが斬りかかり、それを防ぎながら、だが、

 

「鈍いッ、この程度ならラッシュで叩きかけるぞ!」

 

「おおッ」

 

 その時、アスナ、シリカがテイルに駆け寄り、プレミアやリズが前にいた。

 

「テイルさん、テイルさんっ」

 

 身体を揺さぶる中、テイルは僅かに反応する。

 

「テイル」

 

 プレミアの声が聴こえる。だがまだ、

 

「テイル」

 

 その時、ティアが呼びかけたとき………

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 俺はなんの為に、この世界に来たのだろう?

 

 なんでここまでして、第二の人生を犠牲にしなければいけなかった。

 

 なんで………

 

「!」

 

 俺の目の前に骸骨の戦士が、あの勇者がいる。

 

 彼はこんなものを背負って戦わなければいけなかったのか。

 

 軽く見ていたのだろうか、俺は、どこか気楽に考えていた。

 

 その結果、これか。

 

『………』

 

 その時、剣先を向けられる。

 

 なにを。

 

『………』

 

 怒っている、そう感じた。

 

 なぜ彼が怒る?

 

『貴方は、貴方だよ』

 

 誰だ………

 

『なんだい君? 僕らのリーダーみたいに、全部一人でどうにかできるとでも思ったの? はっ、だからこんな体たらくなんだよ。君自身がよく言ってるじゃない』

 

『おまえさんは勇者じゃない、勇者の体験をさせられた。だから助けられる奴だって、限られてた? そんなわけないだろ』

 

『例え彼奴がいたとしても、結果は変わらないさ。それは分かるだろ?』

 

 そんなこと、そんなことで納得できるかッ。

 

 なら俺の、俺の日々はなんなんだよ!

 

 ユウキは一人じゃないか!?

 

 多くの犠牲者が、多くの人たちの人生が守れなかったじゃないかよッ。

 

 俺は、俺は知ってた。俺は分かっていたのに、なのに………

 

 なのになんで救えないんだよッ。

 

『勇者じゃないから、とでも言いたいのかいあんた』

 

【ああそうだよッ、そうとでも思わなきゃやっていられるかッ】

 

 暗闇から俺が叫ぶ。

 

【なんでだよ……なんでこれだけなんだよ……。ユウキがなにしたって言うんだよ……。もっと、もっと多く救いたかった!】

 

『勇者の力で? あれは彼の記録だ、君はただ、真似ただけだ。ははっ、滑稽だね』

 

【ああそうだよッ、それでも、それでも……】

 

『貴方はそれでも苦しんでる……、助けられたかもしれない。そう苦しんでいる』

 

【………俺はどうすればよかった】

 

『………背負うしかない』

 

 その時、聞いたこと、いや、聞いたことがある声が聞こえた。

 

【先生………】

 

『勇者じゃない君は、勇者を真似ただけだ。それでも、君はがむしゃらに、救おうと足掻いた』

 

【けど、けどッ】

 

『………いい加減にしてくれないかい君?』

 

【なにを】

 

『僕らのリーダーだって、救えなかった者があるのは知ってるだろ?』

 

【!】

 

『………俺はみんなを、国を救えなかった』

 

【そ、れは………】

 

『だけど、私たちは彼を勇者だからとか、そんな気持ちは一つもないよ』

 

『相棒は相棒だからな、きっちり最後は助けに来たしなっ』

 

『ま、100年も遅刻したけどね』

 

『けど、それを待ったのも、勇者だからじゃないよ』

 

 それは………

 

『貴方は、もう知ってるよ』

 

『彼奴から託されたもんがある。勇者だからじゃない、一番大事なもんをなっ』

 

 その時、誰かに呼ばれた気がした。

 

「………そうだ」

 

 始まりは罪悪感と謎の責任感から。

 

 だがいまはどうだ?

 

 彼らと関わり、俺は次があるとしたらどうする?

 

「………俺に勇気は無い」

 

『………』

 

「だからあなたには成らないし、成れない」

 

 そう静かに言いながら、勇者を見る。

 

「だけど、俺にも譲れないものがある。勇者に負けない、それだけは」

 

『………ああ』

 

 それに頷き、俺は、意識を取り戻す。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 その瞬間、全身に感覚が戻り、焦点が定まる。

 

「………俺は………」

 

 そして彼は、戦う仲間たちを見て、気付き剣を握る。

 

「だめっ、もう戦うのは危険だ」

 

 アスナが止めるよりも早く、彼は駆けだした。

 

 誰もが攻撃を避ける中、そして駆け出し、影に激突する。

 

「テイル!?」

 

「でえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ―――」

 

 激突するテイルは、そのまま仲間たちから引き離す為、そのまま押していく。

 

 影から再度攻撃を受けるが、歯を食いしばる。

 

 何度も剣撃が切り込まれるが、それでも、

 

「ここで」

 

 その時、彼の手の甲が輝く。

 

 影の剣が砕かれ、その瞬間ラッシュが始まる。

 

 これは、彼だけの物語の敵。

 

 だからこそ、彼が倒さなければいけない。

 

「斬り抜く!」

 

 盾で吹き飛ばし、相手が倒れた瞬間、

 

「デエェェェェェェェェェェェェ」

 

 そのまま全体重を乗せ、首元へ剣を突き立て貫き、その瞬間中から光が放たれ、影は雄たけびと共に消え去る。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

「あっ、ぐっ」

 

 その場に倒れかけたが、キリトがそれを支えた。

 

「テイルっ、おま、どうして一人で戦ったんだッ!?」

 

「………お前たち、は……じゅうぶん、背負ったからだっ」

 

 どうにか吐き出せた言葉に、クラインが叫ぶ。

 

「ふざけんな! SAOのことなら、オレらにだって関係あるんだッ。なにより、テメェだけ背負ってないからとは思うな!」

 

「ああ、お前さんもさんざん背負っている。それは俺が、誰もが知っていることだ」

 

 エギルもそう言い、キリトもまた機嫌が悪い。

 

「ああそうだ、お前も背負ってたんだ、あの世界で」

 

「………」

 

 彼らがそう言う中、やっと立てる頃には、静かに、

 

「………ありがとう」

 

 それが俺が言えた言葉だった………

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 ティアは転移でどこにか消え、俺たちは静かに帰ることになる。

 

 だが、一つだけ気になることがあった。

 

「プレミア」

 

「はい」

 

「君に聞きたいことがある……。君は………ペンダントを持っているか」

 

「? いえ……」

 

「そうか……」

 

 それを聞き、ペンダントは彼女の方だろう。

 

 いまも持っているか分からないが、それだけを確認したかった。

 

 そして転移の為に装置に乗った時だ。

 

 いつもと違う、不思議な光に包まれた………

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

「ここは………」

 

「電脳の空間だよ、テイル君」

 

 その時、声が聴こえ振り返る。

 

 そこにいたのは、

 

「茅場晶彦……」

 

「見させてもらったよ、君の戦いも」

 

 そう言われ現れた茅場晶彦に、俺は驚きを隠せない。

 

 彼は死んでいる。彼が隠れて住む場所で、ナーヴギアを装着していた。

 

 ならここにいるのは、

 

「私はデータの残骸だ」

 

「どこまで……、魂をデータに変えたのか」

 

「転生者にとってはそうなのかもしれないな」

 

 その言葉に驚きを隠せない。

 

 だが茅場は気にせず、静かにこちらを見る。

 

「なにもおかしなことは無い。君は転生者、自身と激突しただろ」

 

「そこから知ったのか」

 

「ああ。転生者の存在は、私がこの状態になって初めて知った。私の、私たちの世界がすでに異世界だということを」

 

 茅場は静かに思いをはせながら、静かにこちらを見る。

 

「君は後悔しているのかい? あの世界、ソードアート・オンラインに来たことを」

 

 そう言われ、俺は目を閉じる。

 

 魔王ガノンとして現れた、俺の負。

 

「俺は身の丈を超えた力を求めて、その過程で命を落とし、怪我を負い、それでもあの世界に備え、犠牲者を減らす、阻止することしか考えない、それしかできなかった」

 

 だがそれでも止められない犠牲者。帰還者も多くが、人生がねじ曲がった。

 

 それしかできなかったかもしれない。けれど、考える。

 

 他に方法は無かったのか。

 

 どうしても、それが呪いのように存在する。

 

「この世界は君の想像を超えた負、それに大きく影響を得ている。君は体験したはずだ」

 

「ボスエネミー、それにアイテム類。見知った者たち」

 

「そうだ、カーディナルシステムは君に多大な影響を受けている。モジュールは、そのエラーすら利用した。まるで自我を持つように、君に新たなフィールドを開ける道を導いた」

 

「崖のプレミアか」

 

 そして俺はフィールドを拓き、彼女のクエストを進められるようにした。

 

 モジュールは、アインクラッド創造のため、多くの要素を取り込んだ。

 

 それを聞きながら、静かに見る。

 

「お前はこれから……」

 

「いや、私はいまはデータの一部。それ以上も以下でもない、ただキリト君に託したい物があっただけだよ」

 

「託したい物」

 

「ああ、最後に君に、私たちの世界の代表として言おう」

 

 そう茅場は静かに、

 

 

 

「君はただのゲームプレイヤー、この世界に生きる命だ。ありがとう、この世界に来てくれて」

 

 

 

 それを言われながら、静かに黙り込む。

 

「昔の俺なら、肩の荷が下りたところだ」

 

 だが、

 

「苦しくても、俺はまだ背負わないといけない。思いあがりでも、投げ出したくない。それが選んだ俺の責任だ」

 

「そうか……、君らしい答えだ」

 

「それに、きっともう俺はこの世界の人間なんだ。そう教えられた」

 

「キリト君たちか」

 

「ああ、俺は彼らの世界の住人だ。いまの俺に、揺るぎは無い」

 

「なら行きたまえ、君にはまだ、この世界を楽しんでもらいたいからね」

 

「………言われなくても」

 

 そして俺は歩き出す。

 

 ただ静かに、前へと………

 

「っと、最後に一つ、手の甲の光はなん」

 

 その時、光が辺りに包まれ視界が遮られた。

 

 だが、僅かに一瞬、黄金の三角形が見えた気がした………




彼を勇者かどうか呼ぶかは人次第。

本人はそう否定しても、その道を選ぶ。

そして報告、この物語はオーディナル・スケールとガンゲイルゲーム編まで頑張ります。

次回でオリジン編は終わり、バレット編ですね。

それでは、お読みいただきありがとうございます。
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