追加シナリオの話は採用するべきか否か、ともかくいまは先に進めよう。
テイルの物語、スタートです。
おかしなくらい戦った。
大変な事態が降りかかり、資金、アイテムも素材が無くなったらしく、ギルドが火の車。
だから行けるエリアには全て行き、できる限り戦い集め、ギルドに提供。
たき火で食えるキノコを焼き、それを食う。
それくらいで腹を満たして、エネミーを狩る。寝る時間はしっかり宿で取るが、時間ギリギリにしていた。
そんな日々、少しして全プレイヤーが軌道に乗ったらしい。
周りのプレイヤーたちの反応を見るだけで十分、ルクスを初めとした知り合いからも知ることができた。
これも全て、骸骨の戦士のおかげだ。
そして俺は吹き飛ばされかける。
「はあ、くっう………」
いまは夢の訓練中、最近は彼と一対一で戦うのばかり、正直化け物だと思う。
彼はおそらく、退魔の勇者だろうな。
正直、始めはリンクと名乗ろうかと思ったが、この人と戦うようになり、その名の重みが全身に掛かる気がした。
いましていることも彼の真似事でも、名乗りたくないのだ。
全身に重りのような闇がまとわりつく。
俺はこのデスゲームを回避できたんじゃないか? もっと多く救えたんじゃないか?
こんなに優遇されてるくせに………
そして朝起きて、不思議と寝た気がしないはずの訓練後とは思えないほど眠れた。
彼の訓練のおかげで、俺は明らかに強い。
そして俺は俺の
◇◆◇◆◇
「いらっ……、お前さんか」
「アイテムを売りに来た……」
「ああ、いつも通りか」
エギルと言うプレイヤーは、俺のことを心配してか、あまりいい顔はしない。
俺が装備できる物は装備するが、やはり材料などを売る。
向こうはできる限りちゃんと買い取るが、実はギルドの行動で、ここに入る金として戻る形式ができていた。
ギルドマスターは色々と、店や他ギルドに金や素材を回しているからだ。
本人にどういう意思があるか分からないが、この際どうでもいい。
エギルは買い取った金のほとんどをその提供金としてギルドに渡しているのを、おそらく知っている。
「毎度あり」
静かに頷き、外に出る時、先にドアが開き、誰かが俺の激突する。
「あっ、ごめんなさいですっ」
「だいじょうぶか?」
まだ小さな女の子、黒髪の長い子だ。
「はい、私は平気です」
「そうか……」
そして俺は離れていく。
◇◆◇◆◇
「? いまのプレイヤー、色々武器を持ちすぎじゃない?」
シノンはそう呟き、シリカも頷く。
「はい、一瞬でしたけど、服の内側に、投擲用の武器も見えました」
エギルはそれを、深いため息を吐く。
「キリトはやっと前向きになったが、彼奴は変わらず、いや酷くなってるな……」
「キリト? どうして彼奴が」
「キリトと同じ人間、そういうタイプだ。俺もどーにかしてやりたいんだが」
彼のいるギルドは、彼がこの調子で無ければ運営できないと知っているため、あえてそのまま野放しにしている。例え危険なソロプレイしていると知っていてもだ。
「なによそれ」
「最初は確かに、支援ギルドとして期待はされてたんだ。だが火の車が続いて、それを彼奴一人でどうにかしててな……」
「そんな凄いプレイヤーなんですかっ!?」
「だが、彼奴のギルドマスターがしていることは、ギルド管理は、まあ褒めてやるが、彼奴の功績消すのはな」
支援と言っても色々ある。それで話のギルドマスターは、それ以外はしっかりしている。
情報屋が彼の情報を的確に得られないことを良い事に、自分たちの無能さを消していた。
それもここ最近になって目立つのは、最近の目まぐるしい変化。
これもまたそのギルドマスターが悪いかと言われれば黙るしかないが、それでも彼に頼り切っているギルドなのだから、しっかり話せばいいのだろう。
「まあ、信用とかあるから……、誰も何も言えねえんだ」
「あの人は大丈夫でしょうか……」
「俺も、いつもそう思ってるんだがな」
だが彼は変わらない。何一つ、変わることはしなかった。
◇◆◇◆◇
この夢の世界で山登り、風を読み空を飛び、海の中の戦闘や、弓矢等々。
まさに彼のような技を叩き込まれ続けた。
なぜこんなことをするか、主人公になりたいから?
違う、死にたくないからだ。
そして誰かが死ぬのも嫌だから。
だけど
それは訓練の中で常々思う。
初めは来なければいいと思った。だが俺が関わらなければ、デスゲームの被害者は減らせないと言われた。ならこうするしかないじゃないか。
そして死にたくないから、こうしている。
それが俺の
俺はただ戦って、資金確保して、プレイヤーを支える。
そんな物語、主人公なんて、望みたくない。
骸骨の戦士からの一撃を受けて吹き飛ぶ中、俺はそう心に刻まれた………
(だけど)
それなら俺は誰だろう?
◇◆◇◆◇
町の中、淡々と攻略組が進み、その後を淡々と過ごす日々。
その中で、確実に階層が上へと続く中で、
「いたっ」
一人の剣士に話しかけられた。
◇◆◇◆◇
「テイル!」
少しずつ装備を変える彼は、静かにこちらを見る。
蒼の服装、それは変えていなかった。彼もこだわりがあるのだろう。
「俺を覚えているか? 《ホロウ・エリア》じゃ世話になった」
首を振る彼は覚えていないらしい。
転移門で階層では無いエリアのことを言うと、僅かに反応する。どうやら思い出したようだ。
「君にずっと礼を言いたかったんだ、あの時、助けてくれてありがとう」
「………気にするな」
そう静かに彼は言い、また歩き出そうとしたとき、
「っと、待ってくれ! 本題はまだなんだ」
「………」
「明日、100層へ攻略が始まる」
「!」
それには彼も反応を示し、俺はある確証を持っている。
彼は強い、うぬぼれかもしれないが、俺と同格なんじゃないかと思うほどに。
「最後の戦い、戦力が多いほどいい。頼む、力を貸して欲しい」
「………」
彼は静かに考え込むように目を閉じ、
「最後なら、俺も全力を出す………」
そう言い、俺はそれに喜び、彼に場所と時間を教え、彼とフレンド登録をする。
彼は慣れていないのか、そんな印象の中で登録を済ませ、攻略の為の準備に入った。
◇◆◇◆◇
キリトとフレンド登録する。
少しばかり、彼と関わるのはどうかと思うが、俺は彼に気づかれないように、静かに周りを独自に調べていた。
それで分かっている知識、もう薄く覚えている知識で分かる範囲で、知らない彼の仲間が増えている。
リーファは少なくとも、この剣の世界にいないはずのプレイヤーだ。
もうだいぶ変わっているのなら、多少彼の手助けも問題ないだろう。
だが問題は装備だ。俺は彼女の工房へと急いで行った。
◇◆◇◆◇
「攻略に、参加するっ!!?」
彼は静かに頷き、剣や防具を預けてきた。
まさか彼がと、だけど内心納得する。
彼は当初も、ここに来てから、その前からも。
何度も資金や素材、アイテムなどを持ち帰り、いつか帰れると言う希望をわたしたちに示し続けてきた。
いつかが明日来るかもしれない。彼もそのために、参加するのだろう。
それを聞いてわたしはメッセを飛ばした。
◇◆◇◆◇
「テイルっ」
何人ものプレイヤーが俺を訪ねて、工房に来た。
「明日の攻略に参加するんだろっ、こ、これ、レアアイテムなんだけど、持って行ってくれ」
「これが俺んとこで一番いい盾だっ、少し様子見てくれよ」
そう言って彼らは、言葉、アイテム、そう言ったものを俺にくれた。
違う。
俺は嫌なだけだ。
死ぬことも、死なれることも。
デスゲームになるかも知れない。
それを俺が知っていただけに、その罪悪感から戦ってきた。
なのに、これは、
「テイル」
鍛冶師の彼女が、一本の剣を俺に渡す。
「わたしの自信作だよ、持って行って」
「………これは」
「テイル」
彼女は真っ直ぐこちらを見る。
「あたしはその、人と関わるのは、実は苦手でね」
それは俺も同じだ、だから人が少なく、腕のいいここを選んだ。
色々あったことを彼女から言われる中、彼女はそれを渡す。
「テイルもその、苦手でしょ。誰かと話するの」
それに静かに頷く。
「それでもね。テイルが黙々とエネミー倒して、その素材やアイテムを持って、みんなを支えたんだよ」
「そうだぜ」
その時、プレイヤーたちも話す。
「お前がいたから、諦めなかった奴が現れたんだ」
「テイルさん」
その時、教会で低年齢プレイヤーの面倒を見ていた人たちが、ポーションの、最高の物を渡して来る。
「テイルさんが毎日資金を集めて来てくれて、助かっていたのも事実です」
「………」
「私たちは戦えませんが、テイルさんなら」
「ああ、俺たちの分を持って行ってくれ」
そうみんなからの声を始め、俺の装備が一気に跳ね上がる。
そしてそれらを受け取り、俺は宿に出向いた………
◇◆◇◆◇
骸骨の戦士がいる。
だがいつもと違い、剣も盾も無く、俺を見ていた。
「………明日、デスゲームは終わります」
きっと終わるだろう、俺と関係なく。
キリトと言う主人公がいる、それは約束されたものなのかもしれない。
「………俺は貴方になんかなりたくない、俺は俺だから」
リンクと名乗るとき、貴方が過った。
君は君だろ?
そう言われた気がする。
それは俺は他人に責任を渡そうと、逃げようとした気がした。
デスゲームが始まらなければ、始まろうと、そこからは俺の責任だ。
勇者リンクの名を借りて逃げる気はできない。
だがそれは、勇者リンクからも逃げている気もした。
「気付くのに、時間がかかった……」
だが、いまはと、装備を見る。
彼らから受け取ったものは、明日の為に、俺の為に渡してくれたものだ。
キリトではなく、俺の為。
勇者リンクでは無く、テイルと言う一人のプレイヤー。
「明日でデスゲームは終わります、終わらせます」
その言葉を聞くと、静かに去っていく骸骨の戦士。
彼が去り、いつの間にか眠りにつく。
明日、全て終わらせるために。
◇◆◇◆◇
アスナさんが仕切る中、攻略会議が始まる。
最後の戦いに、多くのプレイヤーが集まる中、その中にキリトたちもいた。
パーティーを組んでくださいと言われたとき、俺に話しかけるプレイヤーがいる。
「ルクス………」
「君と一緒に戦える日が来たね、一緒にパーティー組んでほしいんだ」
静かに頷くと、そこに話しかける人がいる。
それは小竜を連れた、《竜使い》『シリカ』と、『エギル』や『リズベット』。
それに『リーファ』に『シノン』たちである。
「久しぶり」
「フィリア………」
「君も戦うんだね」
フィリアも重々しい顔でこちらを見て、俺は頷くと、『ストレア』と言う少女を紹介され、このメンバーがいつの間にか組まれていた。
「タンクがいなくてな、俺たちと協力してくれ」
エギルの言葉に頷き、全員が役割を言い合う。
キリト班はキリト、アスナ、シノン、リーファ、ストレア、リズベット。
俺班は俺、ルクス、シリカ、フィリア、エギルらしい。
クラインと言う彼は、《風林火山》とギルドリーダーとして参加して組む。
俺は盾でみんなを守る、何かあればアタッカーに変わり戦えると伝える。
俺からすれば、彼らはまさにスターなどだろうが、そんな実感はわかない。
ここにいる、ただのプレイヤー。
なら、やるべきことは一つ。
◇◆◇◆◇
「ねえねえ、あのテイルって人、ずっと難しい顔をしてるね」
ストレアが離れた後、仲間たちとで話し合う。
「ああ……。正直、昔のキリトを見ている気がして、ずっと気にかけていたんだが」
エギルの言葉に、全員が仲間を作らず、ソロを貫いていたキリトの話を聞く。
彼もそう言うたぐいなのか?
「だけど、いまは仲間よ」
シノンはそう言い、静かに頷く。
「ああ、腕前は保証する。彼奴は強い」
そう話をし終え、彼らは歩き出した。
◇◆◇◆◇
ボス部屋の前に、キリトたちのメンバーが僅かに話し合う。その時エギルがこちらに来た。
「すまないテイル、お前にも協力してほしいことがある」
「?」
「実は俺たちの戦いをサポートしてくれる子がいるんだが、その子はレベルが低い。もしかしたら、危険かもしれない」
「なら守る」
彼は迷わず、理由も聞かず宣言した。
「! お前」
「理由は聞かない、ただその子を守ればいいだろう」
「………すまねえ」
こうして王座、《浮遊城アインクラッド》と呼ばれた城の奥地へと足を踏み込む。
◇◆◇◆◇
戦いが始まる中、その子は相手の攻撃タイミングを宣告してくれるおかげで、俺は盾で仲間たちを守る。
「テイルさんHPの割合に気を付けてくださいっ、攻撃3秒前!」
そんな中、キリトたちの猛攻が放たれる中、キリトの一撃が決まり、ポリゴン、データの塵へと変わる。
その瞬間、俺は反射的にポーションを飲む。
もしもこれで終わらないのなら、回復はいまだ。
「待てっ、なにかおかしい!」
やはりなにか起きた。
突然、女の子、NPCらしい存在が現れ出す。
戦闘が終わり、これで終わりと一瞬の隙ができた。
だが、守るのが俺の役目。
「テイル!」
何体かの攻撃を受けたが、アタッカーへの先制攻撃は防いだ。
「スイッチっ」
その言葉にキリトたちがすぐに動き、下がった後、俺はすぐに回復し出す。
「助かったっ」
すれ違いざまキリトからそう言われ、彼らが現れた敵と戦いだす。
俺もまだ、戦いが終わらない。
◇◆◇◆◇
戦いの中、俺たちは勝った。
ホロウのストレアが最後に現れたが、テイルがタンクを一手に引き受けて、俺たちはそれを撃退する。
彼のおかげで彼女の暴走を止められた。ホロウのストレアは笑っているのを確認できた、助けるって約束を果たすことができたようだ。
だが彼の防御力は………
いまも彼はポーションを飲む。彼は気を抜いていなかった。
ホロウのストレアを救い、ラスボスを倒した。後は現実に帰るだけだ。
なのに、
「おめでとう、実に見事な勝利だったね………」
なのにどうして、
「ヒースクリフ、茅場晶彦っ!?」
あまりのプレイヤーもざわめく。もうすでに《血盟騎士団》団長、ヒースクリフは、このゲームを作り、デスゲームを始めた男、茅場晶彦であることは知れ渡っていた。
すぐに動けたのは、テイルだけ。すぐに盾を構え、前に出ていた。
それでも、奴は動じず、話を続ける。
「ラストバトル、見させてもらったよ」
「ヒースクリフ………生きていたか」
「身構えないでくれたまえ、君たちにお詫びをしに来たんだ」
「詫びだと?」
「ここまでなんの説明もしないでいたこと………本当に申し訳ないと思っている」
そう言うが、ほとんどのプレイヤーが構えようとするが、ほとんどがボロボロで、ほとんど危険値だ。
たった一人、ラスボスを倒した後、回復したプレイヤーを除いて。
「なぜそんなことになったのかそして、なぜ私が生きているのかを。君たちに説明しなければならないだろう」
それは75層で俺と戦った時、発生したシステム障害が事の発端らしい。
あの時、この世界を制御しているカーディナルシステムに予想外の負荷がかかってしまった。
負荷の要因は、プレイヤーの負の感情によって引き起こされたエラーの蓄積。
俺たちがよく知る、メンタルヘルス・カウンセリングプログラム。ストレア。
「彼女が蓄積したエラーは、やがて抑えきれなくなり。膨大な量のエラーがカーディナルシステムのコアプログラムに流れ込んでしまった」
そして負荷のもう一つの要因は、須郷による、外部干渉。
これらの要因がカーディナルシステムを暴走させ、今回の事態を引き起こしたと言われる。
◇◆◇◆◇
はっきり言う、訳が分からないよ。
キリトたちが、この世界に深く関わる問題にかかわり、解決したくらいしか分からない。
そんなキリトたちをほめる茅場。
ラスボスは想定していたものではないものの、俺たちはラスボスを倒した。だから君たちの勝利だと、そう茅場は言う。
だがキリトはキレていた。
100層のボスがイレギュラーだのなんだのは言い訳だ。
お前をぶっ飛ばさせろと、俺以外はログアウトさせてからな。
キリトはそう言っている。
そしてキリトたちはそんな中、同じ気持ちだと、他のプレイヤーたちが言えない言葉を言う。
俺はそれでいいのか。
正直俺はキリトたちが勝つと確信できる。
だが、だが俺は主人公なんてものになりたくないし、なろうとも思えない。
「テイル………」
ルクスがボロボロの中、心配そうにしている。
他のプレイヤーは彼ら、キリトたちを見守るようだ。
俺は………
その時、
「………」
俺の身体にある、装備を見た。
◇◆◇◆◇
「その話、俺も加えさせてもらおうか……」
「君は、テイル君か」
ヒースクリフは驚きながら、テイルを見る。
「テイル、君まで」
「キリト、俺は死にたくない、死んでほしくないからこのゲームをしていた」
そう言いながら、剣を、盾を、鎧を、服を見ながら、静かにラスボスを睨む。
「だがいまの俺は、ラスボスを倒すために、みんなから装備を受け取った、テイルと言うプレイヤーだ………」
「テイル………」
「君のことは知っている《沈黙の蒼》。君もまた、このゲームで必要なピースの一人と思っていたからね」
「?」
「それでは始めよう、正真正銘のラストバトルを!」
その言葉と共に、彼らは武器を構え、駆けだす。
彼の言葉は一つ間違いがある。
それは、彼がすでにピースであるということを知らない………
ただ、がむしゃらにエネミーと戦い続けた男が、その真価を見せます。
お読みいただきありがとうございます。