ただその場所は、つい習慣のように狩っていたガーディアンエネミーがいる場所の先でした。
それではどうぞ。
「少し無謀だったかしら」
「さあ?」
所々に出て来るエネミーを狙撃、または斬り倒して、先に進む。
シノンが一人、クエストを受けに出向こうとしていたため、共に同行する。
そう言えばここではあのガーディアンっぽいエネミーが出るので満足していたが、この先は確認していない。
シノンがクエストを受ける理由は一つ、強力な狙撃銃をドロップするエネミーがこの先に出るらしい。
だが、
「どんなクエストなのかしら?」
そう、まだ情報が少ないクエストのため、どんな内容か分からない。それが不安でならない。
ガーディアンが周りに出るエリアのダンジョンかクエスト。
嫌な予感がひしひしする。
「………」
そう思っていたが、当たりだった。
まさか貯水湖のように、巨大な水が張られた場所、周りは岩壁に囲まれた場所があった。
そしてその真ん中、大量の水に囲まれたそこに………
『パワオオオオ』
うなり声を上げる、巨大な像の機械がそこにいた。
左右から滝のように水を流し、鼻からも水を流し続けるそれは象。
あまりにもでかすぎて、建物のように見える動くダンジョン。
少なくても俺にはそう見えた。
「これは、討伐かしら? おそらく受理するタイプじゃないと思うけど、あんなバカでかいエネミーを倒せるとは思えない」
「………ともかく周りを確認しよう」
俺は水の神獣『ヴァ・ルッタ』を見下ろしながらそう言った。
◇◆◇◆◇
「まず鼻以外から、計四か所から水が噴き出していて、近づくには泳ぐか」
「無理よ。水の中じゃ、浸かり続けるとHPが減る。かなり深いと思うから、その前に持たない。乗り物は」
「少し待ってくれ」
彼は狙撃銃のスコープを取り出して、下りられそうな岸を見つけながら、その側に何かないか、見てみると、
「モーターボートがある。ただ下りるのには時間がかかるのと速い方、どっちがいい?」
その質問にはすぐに分からないが、速い方がいいためそちらを選ぶ。
少しだけ後で後悔するが………
まず下りられる岸の崖上に移動して、ロープを取り出す。
「シノン抱き着け」
「………あなた、やっぱりキリトやクラインみたいに」
「いやここから下りる。俺一人ならな」
そう言えば、彼はこういうのが得意だった。現実でなにしてるのかしら?
つまり崖を無理矢理下りる彼にしがみつき、私も下りるのね。
少し数名の仲間の顔が過るが、彼はこういうことでイベントをスキップしている。
まだ出回っていない情報だが、時間がかかるほど、他の、それも大手のスコードロンがこのクエスト攻略に乗り出すだろう。
それを考え、彼女らには悪いが彼に抱き着き、ロープで身体を固定する。
「下りるぞ」
「ええ」
固定する際、向かい合うようにしたのは、
「シノン、もしもサーチみたいな光が向けられたら教えてくれ、すぐに安全地帯に移動する」
「分かったわ」
象の目が時々、赤いライトのように崖を照らす。あれがもし索敵なら、触れるべきでは無い。
最初抱き合う状態にしてロープで固定して、彼はすぐに下り始めた。
苔らしきものが見えたりにするが、彼は楽々と下りて行き、
「そのまま、右からサーチ。少し待って」
指示をしながら、じょじょに下りて行き、下の岸に下りて、ロープを外す。
草陰などを使いながら、水辺付近を確認すると、
「同じような乗り物があるな」
「水が噴き出しているせいで、象がどんなものか分からないわね。さすがにエネミー? にしては大きすぎるわ」
「………水が噴き出しているところに石みたいなものがある」
「? そうね」
紫色に光る石。そこから絶えず水は流れ出る。
「あそこを射撃で壊せれば、水の噴射が止まれば、少なくても象の全貌が分かるはず」
彼は険しい顔でそう言いながら、それに納得して、静かに、
「なら私が狙撃するから、運転お願いできるかしら?」
「ああ、ビークルはこの前の大会で一通り操作したからできる。了解」
そして見つからないように進もうとしたら、
「なにあれ」
「っ!?」
崖の上、そこから数人のプレイヤーが現れた。
◇◆◇◆◇
「居たぞっ」
「情報通り物凄いでかいエネミーらしい奴だ!!」
「我らマシンガンの餌食にするにはもってこいの相手」
「皆の衆、さあ」
「撃て撃て撃て撃て撃ってえええええええええっ」
◇◆◇◆◇
彼らは私たちの努力を無駄にするように一斉にマシンガンを放つ。当たる当たらない考えずに。
妨害も考えたが、彼らの射撃に、場の雰囲気が一気に変わった。
象が怒るように鼻から水を出すのを止め、辺りにアラームのように光が照らされる。
「まずい俺たちも見つかった」
それに反応するように、氷のようなものが作り出される。
氷のブロックやトゲ付きの鉄球がマシンガンバカへと降り注ぐ中、
「まずい」
「急ぐわよっ」
急いでボートに乗り込み、それに湖の上を走り出す。
彼が《アンチマテリアル・ライフル》を取り出し、速射することによりいくつか破壊する中、私はそれを片手でしたのに驚く。
両手持ち必須のそれを取り出した拍子にやり遂げた彼のプレイヤースキルに驚く中、それでもやることは変わらない。
「このまま狙撃するわ」
「ああ」
ここで時間は掛けられない。一周の間に全て私が狙撃しなければいけない。
氷ブロックの隙間を狙い澄まして、撃つ。
「スゥ」
一撃当たると、大ダメージのように象がうなる。
どうやらこれがここの攻略方法らしい。
「スゥ………」
鼻はどうやら対象外。なら四か所の水が噴き出す場所を撃てばいい。
冷静に、彼の運転の中安心して、撃つ。
そして全て撃ち抜くと、
『ブオオオオオ………』
象が僅かに沈み、侵入口のような場所が見えた。
彼はすぐさまそこへと向かい、私たちは象へと侵入する。
◇◆◇◆◇
象はあり得ないほど大きかったけど、まさかダンジョンだった。
とはいえダンジョンだ、なにが起こるか分からない。
私たちの目の前、物陰に隠れながら、奥へと進む。
「戦闘が始まったら俺が囮をするから、シノンは狙撃を」
「ねえ」
その時、私が話しかけて、彼は少し止まる。
「どうした?」
「あなたはどうして戦うの」
初めはなんのことだと言う顔、彼は表情から分かりやすい。
「それは」
「わたしはSAOの頃と、いまの頃の話を聞いてるの」
「………」
その瞬間、彼から光が消えた気がした。
彼は強い、キリトのような、謎の強さを持っている。
それはいつもおかしなときに姿を見せていた。
「SAOは、俺は誰にも死んでほしくないし、死にたくないから。いまは楽しむため、GGOはヒカリのためだ」
ヒカリ、レイちゃんのためと、誰かのため。
彼が本気で強くなるのは、
「誰かのため」
そう呟き、私は彼の強さを少しだけ知った気がする。
いまの彼はきっと誰よりも頼もしい仲間だ。
誰かの為に強くなった………
「………貴方の強さは、誰かの為に得た力なの」
「それ、っ!?」
その時、なにかが私に飛来する。
◇◆◇◆◇
トカゲを大きく、恐竜みたいなエネミーが、口からよだれを流しながら、咆哮を上げた。
「シノン」
「平気っ、だけど動けない………ねばねばして」
「ちっ」
すぐにライフルを連射しながら走り、タゲを引き受けて撃ち続ける。
「カースガノンじゃなくてよかったが」
そう思いながらガンガン撃つと、水がせり上がらないかとひやひやしながら戦う。
シノンも糸のような粘膜で拘束された位置から狙撃し出す。
狙撃して、エネミーにダメが入るのを確認していると、
「!?」
今度は酸みたいに、溶ける音が聞こえる液体を吐きやがる。これならカースガノンの方が幾分かマシだな。
そう思いながら速射し続けていると、そろそろ弾薬が切れる。
「ラスト」
一発を撃ち終えた瞬間、ついに悲鳴を上げて、それは横たわる。
「やった……?」
シノンの声が響く中、次の瞬間それが凍り付く。
部屋の入り口が塞がれ、水が部屋の中に入ってくる。
「シノンっ」
急いでシノンの下に行くと、シノンも慌てて抜け出ようとすると、簡単に出て来た。
ただ、
「!?」
「なっ!?」
スーツが溶かされたのか、そのおかげですんなり抜け出たんだろう。
インナー姿で現れたシノンは、顔を真っ赤にし、猫のようにキッと睨む。
「待て俺は」
「いいからそのコートを寄こしなさいッ」
そう言われ急いで渡す中で水がせり上がり、シノンを抱き上げ、足場へと移動する。
「ちょ」
恥ずかしそうなシノンが視界に入るが、いまはそんなこと言っていられない。
「あんた、後で覚えてなさいよ………」
ごめんなさい。
そして悲鳴のような雄たけびと共に、それが姿を現す。
モーションどころか形態すら変えて、第二形態は、
(カースガノンっ)
水のカースガノンのようなそれが現れ、仕方なくシノンの前に立ち、剣を構える。
「これは」
「シノンは引き続き狙撃、俺は」
悲鳴が響くと、無数の氷ブロックが現れ、これを破壊する。
「くっ」
「まだいけるっ、てかやらなきゃいけないッ」
その時、レーザーが放たれたが、
「いまなら」
そのレーザー攻撃。キリトたちからどうすれば反射できるか散々聞かれたが、フォトンの刃が受け止め、実体刃が後ろから押して反射できているようだ。
少なくとも俺はそう言う感覚で、キリトが試しにレーザーでやったらしい。
受け止められたが重すぎて、そのまま当たってHPゲージが無くなった。
気が付かなかったが俺はフォトンでレーザーを受け止め、実態と共に反射したようだ。
それでひるむ瞬間、水の飛び込み急いで近づき斬り込む。
狙撃とそれの繰り返しの中、かなり疲労する。
それでも、
「シノンッ」
その叫び声と共に、銃声が響き渡った。
◇◆◇◆◇
シノンの狙撃が確実に弱点を射貫き、ポリゴンに変わる。
すぐに確認し終え、シノンの元に戻った。
「シノン」
「……勝ったのね……。まだ頭が切り替わらないけど」
ふらふらした様子のシノン。狙撃はかなり集中するからな。
ふらついたとき、身体を支える。普段なら何か言って離れるが、そのまま身体を預けて来る。
「ごめんなさい、いまは少しきつい」
「別にいい」
「………けど後で殺す」
沈黙の間、コートがはだけ、インナーが見えていた。それを直すときにそう言われ、俺はまた殺されるらしい。
着替えないのだろうか、替えが無いのか、かなり疲れた顔でも舌打ちした。
「………そうだ、ボスのドロップ。確認しないと」
そのままウインドを開き、メニューから確認し出す。
俺も見える位置の中、シオンは気にせずに確認。それは、
「《アンチマテリアルライフル》、ウルティマラティオ・ヘカートⅡ。うそ……」
まさか日本サーバーに十も無い数少ない銃がまた手に入るとは、少しばかり怖いな。
シノンは震える声で名前を呟き、具現化する項目をタッチする。
「ちょ」
待てと言う前に実行し、ふらつく身体で重量がある狙撃銃を持とうとするが、できずに倒れかけ支えるため、持ち上げた。
「ご、ごめんなさい」
「いや……」
狙撃銃とシノンを支えながら、シノンは狙撃銃を見る。
「あなたのリアルラックのおかげね」
「そうか」
そう言って俺はシノンと狙撃銃を支える。
「ごめんなさい、まだ頭が」
「気にするな。助けがあれば駆けつける」
「そう……ね………。その時はまた頼らせてもらうわ」
シオンにしては素直にそう呟く。よほど疲れているようである。
だが、だからこそ本音なのだろう。
「ああ……、!」
「足音」
何名かの音と銃声が聞こえる。まさか別にエネミーでも出たのだろうか?
「まずい、シノン少しごめん」
「わっ」
シノンをお姫様だっこ、狙撃銃は担ぎ、急いでその場から立ち去る。
ここから出るのにどこか別の入り口が無いか見ると、転移装置が出現していてそれで出ることにした。
「ちょ、待ってっ」
「いまの俺もまずいんだ」
銃弾もだいぶ使ったし、集中もし過ぎた。
剣使いだが、そろそろ休みたいのが本音だ。
「だからってこれ、誰かに見られたら、もうっ」
顔を真っ赤にしながら、シノンを連れていく。コートだけだから恥ずかしいのか? まあ見られたらダメだなうん。
こうして俺たちは狙撃銃を手に入れ、水の神獣と言われるようになるダンジョンを後にした。
ちなみに色々奢って、許しを得ました。
その後時たまにここに来るようになったのは別の話。
それではお読みいただきありがとうございます。