ソードアート・レジェンド   作:にゃはっふー

34 / 77
様々な意見や指摘、感想をへて、より楽しんでもらえていることを願う日々です。


第31話・関係

 次の場所に出向こうと、俺は色々準備していた。

 

 準備とは、一人で行動する準備だ。

 

 言っちゃ悪いが、神獣系やガーディアン系は、一人で戦っていた方が効率がいい。

 

 だからヒカリやみんながいると、困る。

 

 それを言うのもきっとヒカリは傷つけるので、他のみんなで行動していて、俺がフリーの時間帯で、ビークルを走らせて動く必要があるのだ。

 

「んで、クラインはどうして倒れてるんだ?」

 

 そう、なぜか燃え尽きて灰になるクライン。何があった?

 

「はいです!クラインは命がけでクエストをしたのです!」

 

 我がアファシスが言うには、クラインはいつもアタックするアファシスからのクエストに、ウチの子を連れて行ったらしい。

 

 謎の発掘作業をしたら、それが急に飛び立とうとしてクラインはしがみつき、ヒカリとヒカリと共にいたエギル、キリトが見守る中、星になって帰ってきた。

 

 なにを言っている?

 

「いや、君の言いたいことは分かるけど。実際そうとしか言えなくて」

 

 ………まあいいか。

 

「エギル、デイジーの方はどうだ」

 

「ん? 別に問題ねえよ。むしろそのままウチで働いてて欲しいくらいだぜ」

 

「それならいいさ」

 

 そして俺は準備を終えて出かける。

 

「マスター。わたしはこれからシリカたちと狩りに出かけます。知らない人について行ってはいけませんよ!」

 

「ああ」

 

 ヒカリの頭を撫でながら、俺はすぐに出かけていく。

 

 次は何が出るか、そう思いながら………

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

「この辺りのエネミーは狩り尽したか」

 

 ドロップ品を確認しつつ、この山岳地帯もルーダニアを除いてなにもいない。はず。

 

 そう思いながら、集めた素材を確認していると、急にあたりが暗くなった。

 

「なぬ?」

 

 空を見上げると、それはいた。

 

 空高く飛び回り、それはレーザーみたいなものをこちらに向けている。

 

 すぐにビークルを走らせて、ビームを避ける中、それを見た。

 

「今度は『風の神獣ヴァ・メドー』かよッ」

 

 GGOの空を支配していると言わんばかりに飛翔するそれは、鳥の神獣だ。

 

 やはりここは神獣シリーズがいるエリアらしい。

 

 空を飛び、悠々と飛ぶそれに隠れた位置に来て、少しだけ様子を見る。

 

 物陰からそれを見たが、狙撃ポイントは見にくい。

 

「おいおい、これ初見は無理だろう」

 

 空を飛ぶプロペラらしいものが見える中、どうすればいいか悩む。

 

 別にあれを倒す必要は無い。だが血が騒ぐ。

 

 静かに考え、俺流で行くことにした。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 山岳、近づいてきたところをUFGで引っ掛け、浮いているところを確認し、撃つ。

 

 弾丸で狙うのはプロペラ。プロペラに弾丸が当たると、急に空高く浮上した。

 

「のわっ」

 

 すぐに放さないようにするが、視界がグルグル回る。体験でこんなことは何度もあるが、空高く、まるでALOの妖精の時みたいに空を飛びながら、静かに銃を構えた。

 

「おそらくは浮上して仕切り直したら次なんだろうが」

 

 狙えるものは狙う。そう思い、弾丸を放ち続けた。

 

 全てのプロペラを射貫く。体験ではバリアだったが、これでどうなるか。

 

 結果、落ちる。

 

「………マジで」

 

 GGOではあり得ない高度に入る俺は驚きながら、急な空中停止に驚く。

 

 すぐに体制を確認して、UFGを連続使用して中に入る。

 

 UFGを天上に放ち、地面が迫るのを確認しながら、落下ダメージをUFGで軽減できるか賭けに出た。

 

 一瞬の浮遊感、そして全身に重力を感じ、地面をこする音が鳴り響く。

 

 どうにかHPゲージは問題ない。空中で振り子のように動きながら、停止した瞬間、やっと地面に下りる。

 

 それと共に外に出ると、目の前に光が集まり出していた。

 

 今度はカースガノンかと思いながら、ビットを大量に出して現れたそれに、俺は、

 

「多いな」

 

 そう思いながら、ティアマトを構えながら、駆けだした。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 悲鳴のような雄たけびと共に、無数のビットが高速で動くが、軌跡が重なる瞬間、ティアマトでまとめて吹き飛ばす。

 

 ビットを破壊しつつ、カースガノンを攻撃する中、どんどんビットが出て来る。壊れた瞬間から出て来て、HPゲージに応じて数が増える。

 

「めんどくさくなったなお前」

 

 悲鳴のように抗議が響き渡り、無数のレーザーが一斉に放たれた。

 

 だが、いまの俺には怖くない。

 

 瞬間全ての時間がゆっくりと遅くなり、フォトンソードを取り出す。

 

「セイ」

 

 全てのレーザーを纏めて刃が受け止め、身体全体をひねり、全てを纏う。

 

「ヤアアアアアアアアッ」

 

 実体剣でその背中を押し込め、機動を変えてビーム全てを纏めて跳ね返す。

 

 吹き飛ぶカースガノンに向かって、徹底的に斬る。

 

 あの体験では苦戦したが、ここはゲームでGGO。

 

 悪いが負ける気はしない。

 

 こうしてカースガノンを倒し、手に入れたアイテムを見て、

 

「なあにこれ?」

 

 そう思いながら、どうすっかなと、天を仰いだ………

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

「さてと、あと少しか」

 

 あの後、手に入れたアイテムの使い道は保留して帰還。

 

 いまのところ誰にも無茶にソロプレイはバレていない。ユウキと共にのほほんとしているヒカリになごみながら、ほっと一息つく。

 

 その後は今日も今日とてフィールドでカードキー探しと共に、素材集めをしている。

 

 一人なのは仕方ないが、気を付けて進む。フル装備だからとは言え気を抜けない。

 

「って、レイン?」

 

 さすがにビークル移動はこの前の限界が来て修理に出していた。トコトコ歩いていたらレインがなぜかいて、フィールドを進んでいた。

 

 目が良い方と、スナイパーや敵プレイヤー警戒していたから気づいたが、向こうは俺に気づいていないようだ。

 

 確かログインできるか不明だったが、ログインできたらしい。

 

 かなり遠くだが、追おうと思えばまだ追える。

 

 ここはまだガーディアンなど、未確認エネミーが出て来ると噂。少し気になり彼女を追うことにした。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

「これは」

 

 ステージを思わせる岩場で、レインは一人歌を歌う。

 

 ここ最近レインはアイドルとして知名度が上がるが、やはり練習はかかせないようだ。

 

 セブンの話では姉妹でステージに出たい、お姉ちゃんと共演したいなど。

 

 あとは研究ばかりで窮屈、このデータを整理して欲しい、このままウチで働かないか。あれ? ここ最近なんかセブンとの会話がおかしな方向に傾いてないか俺?

 

 ま、まあともかく。このまま聴いていたいが、俺はそっと帰ろうとした………

 

「きゃーーーー」

 

「っ!? レインっ」

 

 悲鳴が聞こえ引き返すと、レインの装備を溶かすエネミーがいて、それを光剣で払う。

 

「大丈夫かレインっ」

 

「あ、ありが、って……」

 

 装備は衣類も含まれていて、素肌がさらされたら、一発殴られた。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

「ご、ごめん。つい」

 

「いや」

 

 いまはコートを貸して、装備を予備の物に変えている。

 

「あんたがまさか聴いてたなんて……」

 

「すまない」

 

「……別にあんたならいいわよ」

 

 そう言われながら、コートを返してもらう。すぐに着ることはせず、後で洗って着よう。

 

「そう言えば、あんたはどうしてここに?」

 

「欲しい素材があったからな」

 

「そうなんだ」

 

 そう話しながら、レインとは、少し思い出しながら話し合う。

 

「SAOじゃ、色々あったけど。あんたとは長い付き合いよね」

 

「世話になったよ」

 

「……そう言えばさ、リアルでも歌聴いてくれてるんだよね」

 

「ああ」

 

 レインは頬を赤くしていた、やはり恥ずかしいのだろうな。そんな感じにしばらく雑談する。

 

 彼女はどこか懐かしく、嬉しそうにしていた。

 

「わたしね、この世界でもコンサート開こうとしてるんだ。もう機材は揃って、次は衣装かな」

 

「ん、衣装?」

 

「うん、どんなのがいいか迷っててね」

 

「………ふーん」

 

 そんなたわいない会話をしながら、グロッケンへ帰る。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

「メッセが来て、様子を見に来たけど」

 

 キリトが戸惑いながら、俺のホームに来る。

 

 いまの俺のホームは、

 

「いっや~、いいなこれ! うんいいっ」

 

 クラインは舞い上がり、俺はお茶と菓子の準備。エギルも手を貸してくれる。

 

 イツキだけ、どうしても抜け出せないことがあるからと、ここにはいない。かなり残念がっていたな。

 

「………」

 

「シノのん、表情が硬いよ」

 

「だって、私はこんなの」

 

「まあまあ」

 

 リーファたち、そう、いまウチのスコードロン女性メンバー全員。衣装《ヴィクトリアン・センチュリー・コスチューム》と言う、可愛らしい衣装を着ている。

 

 デイジーがマスターであるツェリスカの為に、着てほしい、着たがっていた衣装を全員分用意したのだ。

 

 ツェリスカも、本音を言えばこういう衣装を着たかった。それを似合うデイジーに着せていた。

 

 だがかたくなな彼女のことを考え、ユイちゃんも含め、全員分をそろえ、いまお茶会を開く。

 

「テイルさん、場所提供や、素材アイテムを確保、ありがとうございます」

 

「気にしないでくれ、たまたまレアアイテムドロップ率を上げるアイテムが手に入っただけだ」

 

 カジノで手に入れたそれを使うと、さすがと言うか、簡単に入手した。

 

 たださすがに数が数なため、カードキー探しと平行なため、時間がかかっただけ。

 

 途中で血が騒いで、神獣退治したしな………

 

「あっはは、ボクこういうの初めてだよ」

 

「このケーキおいしいですね、紅茶もおいしい」

 

「きゅう♪」

 

「ほんと、テイルって器用よね」

 

「調理スキル、あんたのことだから、上げてないはずなのに」

 

 ユウキは着ている服が新鮮で楽しみ、シリカとピナはケーキを食べ、フィリアとレインは会話を楽しむ。

 

「キリトくん、どう、かな?」

 

「ああ、似合っているよアスナ」

 

「パパ」

 

「ユイちゃんがもう可愛くて可愛くて♪」

 

「ほんと、可愛いぞユイっ」

 

 向こうは向こうで親子が大騒ぎをして、周りは少し呆れていた。

 

「はいはい、あそこは親ばかね」

 

「あっはは、あたしもこういうのは初めてかな?」

 

「ケーキもおいしく、楽しいです」

 

 リズが親子の様子に呆れ、ストレアとプレミアがケーキを楽しむ。

 

 ツェリスカもデイジーやヒカリの様子に嬉しそうにしていて、クレハは少し恥ずかしそうにしていた。

 

 クラインは、キリトとエギルと同じように手を貸しながら、彼女たちを接待する。

 

「クレハも、端にいないで出てくればいい」

 

「それは……、恥ずかしいのよ、もう」

 

 そんなことで怒られながら、ホームが賑やかになる。

 

「テイルさん」

 

 ユイちゃんが両親からのスクショから解放されて近づいてくる。

 

「あの……、似合ってますか?」

 

「ああ、可愛いよ」

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 テイルからそう言われたユイは、少しうれしそうに微笑み、恥ずかしそうにしていた。

 

 その様子を、親は見て固まる。

 

「………キリトくん」

 

「そう言えば、前々からユイはテイルと仲がいいけど」

 

「おやおや~、ついに気づかれましたな~」

 

 ストレアがにやにやとそう言い、リズたちが軽くせき込む。

 

 レインだけは本気でせき込み、何度も二人を見る。

 

 そんな周りの反応を、世界は待たない。

 

「テイルさん」

 

「デイジー」

 

「あの、その……私のことも、どう、ですか……」

 

「可愛いよ、それ以外に俺は言葉が出ないな」

 

「そ、そうですか」

 

 嬉しそうにするデイジーに、嬉しそうにしていたツェリスカは固まる。

 

 ヒカリが嬉しそうに突貫して、彼はその頭を撫でる。幸せそうなその様子に、微笑ましいが、

 

「………テイルって、よく考えればモテない方がおかしいわよね」

 

 リズがシリカとこそこそ話す。

 

 頭が良くて、性格も良くて、有力物件と言う話。

 

 前々から浮上する彼は、なぜか彼女ができない方が不思議なくらいである。

 

「いまインタビューの話もあるから、どうなるか分からないよね」

 

「もっとモテモテになったりして」

 

 フィリアの言葉に、ストレアも参加する。

 

 ユウキとレインはただ黙り、アスナとキリトが心配そうにユイを見る。

 

 クレハもまた黙り込み、プレミアはティアたちに報告しなければと呟く。

 

 ツェリスカは静かに微笑み、テイルは静かに寒気が………

 

 そんな中、あっと思い、彼は何を思ったがレインに近づく。

 

「レイン」

 

「な、な、なによ?」

 

 少しユイたちのことで驚いていた彼女は、彼が突然話しかけて来て、少し戸惑う。

 

 彼はアイテムストレージを操作して、何かを取り出す。それは、

 

「!!? それは」

 

 ツェリスカがそれに驚き、食いついて来た。

 

 それは羽根をイメージした紅いドレスであり、レインは少し驚きながら、それを見る。

 

「これって」

 

「物凄く珍しい、コーディネイトのアイテム。レシピをあなたが手に入れたのっ!?」

 

「ああ、ある奴を倒した時、レシピとそれが手に入ってね。レイン、お前にいいかなって」

 

「わた、しに………」

 

 それを見ながら、少し自分に重ねる。なかなか似合う様子に、周りが微笑む。

 

「アスナにレシピを渡すから、いずれGGOに流行るけど。ここでコンサートでもやるとき、着てくれると嬉しい」

 

「テイル……、ありがとう」

 

 微笑むレイン。だが、

 

「むむむむむ~」

 

「ヒカリ」

 

「マスターずるいですっ、ずるっこですっ。わたしも欲しいですっ!」

 

「あっ、ならボクもっ♪」

 

「ユウキまでそんなこと言われても」

 

 困惑する彼はその後、みんなにケーキを渡しながら、彼女は次のコンサートのことを話し合う。

 

 そんなこんなで、楽しいお茶会は続いていく。




セブンとなにげに連絡を取り合う、姉は知らない。

精神年齢的に彼、彼女できるだろうか?

それでは、お読みいただき、ありがとうございます。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。