そんな思いから、ここに彼を投入します。
パイソンの正体は、ザスカーの、ツェリスカの上司だった。
彼は自分の立場を利用、打ち上げの際、プレイヤーたちを強制ログアウトし、デスエリアの製作に加担した。
彼はいま、警察署でイツキの凄さを熱弁しているらしい。
イツキのリアルは誰一人知る者はいない。ログイン履歴を調べても自宅からではないため、なにも分からなかった。
ちなみに盗まれたナーヴギアは二つ。イツキと俺の分と思われるが、全てのナーヴギアが回収されたわけではないらしい。
「初耳だ」
『いま伝えた、本当なら伝えるべき情報じゃないんだぞ』
連絡し合う中、周りを確認する。この会話を聞いている人間はいない。
『ともかくやるのか』
最後まで反対されていたが、
「やらなきゃ被害者が出る」
『………分かった、こちらも覚悟を決める』
向こうもここでやっと骨が折れ、連絡はこれ以上やめておく。
連絡が終わり、静かにログインした世界を見渡す。
ヒカリにはツェリスカの側にいるように伝えている。いまGGOは、バレット・オブ・バレッツが始まるため、賑やかな中だ。
「さてと、始めますか」
この俺テイルも、大会へと足を踏み込む。
◇◆◇◆◇
「皆さん」
「こんにちは~」
「クレハ、ツェリスカさんたちも」
「わたしもいるのですっ」
「おおアホシス」
「アホシスじゃありませんッ、アファシスです!」
クラインの言葉に憤慨し、デイジーも挨拶する。
キリトホームにて、大会の中継を見守ろうと言う流れであり、集合できる者たち全員が集まる。
とはいえ、完全に全員、集まっていた。
「私たちもここで見させてくれないかしら、彼がどうしても外せないことがあって、レイちゃんを借りてるの」
「マスターは忙しいらしいので、キリトたちをよろしくとお願いされましたっ」
「そうなんだ」
「なら一緒に、パパを探しましょう。パパはアバターを変えて、出場しているらしいので」
そう言われ、大会の様子を見る準備をし出す。
お菓子とかもあるが、それよりもやはり大会、キリトの身を心配し過ぎ無いようにと考慮しているだけだ。内心大勢心配している。
何も無ければそれでいい、そう願うしかない。
「けど、テイルさんの用事ってなんなんでしょう?」
「彼奴は、いえ、テイルさんはたぶん両親と話し合ってるんでしょう。あたしが偽物とは言え、ナーヴギア装着した件は、彼のご両親には話してしまってるので」
「そうなの?」
アスナの問いかけにはいと頷くクレハ。それにツェリスカが補足する。
「一応改造されたアミュスフィアも厳重に法で定められてるから、保護者に話を通さないといけないのね」
「はい、ウチは両親に黙ってて欲しくて、あの人のご両親に変わってもらってます。彼も今回の件に関わるついでって」
「テイルさんらしいですね」
「マスターは優しいのです」
そう言われる中、クレハは苦笑する。
「あの人の場合、こういったことを黙っていられないですから」
「えっ、それってどういうこと?」
アスナが疑問に思う中、
「あっ、始まったわよ」
リズの言葉にモニタを見る。
番組は始まりだした。それは大切な人たちが命をかけた、戦いの場………
◇◆◇◆◇
締め切りには余裕で間に合い、格好も動きやすい蒼の衣装。しばらくして申し込むはずのシノンを探す。
元々歩き回り、人目につくようにもしていた。
「あそこか」
更衣室へ向かう。キリトは別のアバターらしい? に変えていて、シノンと共に着替えるために試着室に入る。
………
共に入る?
………
フォっ!?
◇◆◇◆◇
選手控室で、何事も無く待機する。
(まいったな、こうなると当たる当たらない関わらず、試合で顔を見せるしかない)
キリトのことだから、参加選手は見ているはず。と、噂を耳にするだろう。
「おい彼奴……」
「幸運ニュービーが、もうここに」
「身の程を教えてやろうぜ」
予想通り、情報だけはうまく流れていて、会場は幸運のニュービーが身の程知らずに大会に参加した。
予定通り過ぎて呆れてしまう。
(ここからだ)
狙い通り、あとはこのまま勝ち進む。
◇◆◇◆◇
「俺は勝つ。ツェリスカさんを始めあんなに女性プレイヤーを独り占めする、幸運のニュ」
それを言い終える前に、真横から何かが接近するのを見た。
「バカなっ!?」
瞬間、幾度も無く斬撃が叩きこまれ、静かにコートが風に舞う。
「距離が、あった、」
「UFGと俺の機動力だ」
その二つがある限り、五百メートルくらいすぐに距離を詰められる。
相手の位置も、だいたい予測もできた。
「まずは第一条件クリアかな」
カメラに向かって剣を掲げ、より一層アピールした。
◇◆◇◆◇
「予選は最速クリア……、予定通り」
そして次の時間まで待機する。瞑想するのに慣れているため、それで時間を潰していた。
しばらくして、どかっと隣に誰か座る。
「こんにちはテイル、どーしてあなたがここにいるの」
少しお怒り気味のシノンさんがそこにいて、俺は、
「言ったはずだ、行けるのは大会後だって」
「まさか私の話を聞いて、出場するって決めてたのっ!? あなたいまどうなってるか分かってるッ!!?」
「狙い通り俺の注目が集まり、ターゲットにされやくすなった」
カメラへのアピール、外だけではなく、大会の内側でも目立つ。
もういま話題の中心へと固まる、これほど狙いやすいターゲットは無い。
「だからよっ。いま外も中もあなたの話題一色ッ。あなた死ぬかもしれないのよ!」
「シノンたちが死ぬ可能性が低くなるのなら問題ない」
「………あなた」
自分は目立ち、かわりにシノンたちのリスクが減る。
頭を押さえ、しばらく考え込み、すぐに切り替えた。
「こっち来て、キリトがいる。彼奴アバターを変えて潜りこんでるけど、会えばわかるわ」
「ああ」
見てわかったよとは言えないな。
◇◆◇◆◇
「ラフィン・コフィンっ!? どうしてそんな人がGGOにいるのよっ」
キリトに会いに行くと、キリコになったキリトと出会い、青ざめていたところ話を聞く。
「………それは」
「あなた、私よりSAOにいたのに知らないのっ」
「レッドプレイヤーギルド、そう言えばテイルも分かるだろ」
「………まさか」
SAOの中に、レッドプレイヤー。プレイヤーを殺す殺人ギルドがあることは知っていた。
極限状態であり、死体が残らないあの世界で、感覚が壊れたのか定かではないが、そういうプレイヤーがいたのは知っている。
俺も相手として出て来る可能性ぐらいしか頭になく、いつの間にか牢獄に、としか記憶にない。
キリトたちは深く関わっていたのか、キリトの顔色は悪かった。
そして彼が言うには討伐隊が組織され、そして、キリトは抵抗され、彼らを。
「もういい喋るな」
かなり動揺していて、苦しそうなキリトにそう告げる。
「けど俺、自分が殺した相手を……顔や名前をいまだに思い出せない」
心が拒絶しているのだろう。普通の感性で人を殺すのは、かなり来る。
俺も夢の世界で人と対峙したが、あまり思い出したくもない。
キリトから詳しい話を聞くと、話しかけてきたプレイヤーが
「そう、か……。君がここにいるのは、少し驚きだ」
「気を付ける」
「ああ、もうここのほとんどの話題は君一色だ。外もおそらく、君が一番
そう言って、キリトに頷き、シノンにも頷く。
キリトは罪と向き合わなければいけないと、今度こそと言い、次の試合に立つ。
「キリト」
「テイル」
「気を付けて」
「ああ」
◇◆◇◆◇
「キリコちゃんもかッ、キリコちゃんも、キリコちゃんもか!」
無駄に射撃する彼は、すぐに倒すことはできた。
叫び声にキリコを叫ぶ男プレイヤーは、別の意味で彼にショックを与えそうだ………
本戦は30人がランダムで千メートル配置されるらしい。
選手は《サテライト・スキャン端末》を渡され、15分に一度上空にスパイ衛星が通り、全プレイヤーの位置が分かる。
特定のプレイヤーの位置すら分かるだろうから、ターゲットの俺もすぐに分かるだろう。
こうして本戦が始まる。
◇◆◇◆◇
「そんな」
「まさか」
「信じられない」
みんな本戦の話題にテイルがいたこと、シノンがいたことが分かっていた。
なぜかシノンとテイルのツースクショットが出回ったりしてたら、キリコがモニタに映る。
とりあえずスクショする中、本戦が始まり、しばらく様々な試合が映る。
「パパたちの試合は、数が多いです」
「テイルさんもです。マスター」
「そうね、彼の場合ニュービーであること、フリューゲル攻略最速攻略、トッププレイヤーが所属するスコードロンリーダー。彼の肩書を上げればきりがない」
「討ち取れば名が上がることは確実ってことだな」
エギルの言葉に、ヒカリとクレハは心配そうにモニタを見つめる。
彼の試合回数が多いが、ほとんどライフルと光剣で切り抜ける中。そして次の試合にモニタが映った。
それは衝撃的な状態のスタート………
「シノのんっ!?」
彼女が倒れ込む中、マント男が、拳銃を向けていた………
◇◆◇◆◇
デバフで麻痺だけではなく、それはトラウマからの衝撃があった。
あの銃が自分の前にある。
それだけでシノンの心が恐怖で塗り潰れた。
動けない、動けない、動けない動けない動けない動けない動け―――
(このままじゃ)
横たわるシノンはもう
そして走馬灯が頭をよぎっていた。
『気にするな。助けがあれば駆けつける』
それはあるプレイヤーがなにげなく言った言葉だった。
「たすけ………て」
その瞬間、
「ああ」
それが
「ッ!?」
【貴様は】
「テイル、彼奴じゃなくて悪い」
蒼のコートを翻し、剣士が二人の間に入り込む。
敵の声はマスク越しもあり、ちゃんと聞き取れず、それでもこちらを見る敵に剣を握った。
【テイル。幸運だけで勝利者として祭り上げられる、偽りの勝利者】
「そう言えば、お前はSAOにいたんだったな」
【我が名は
「………」
彼はいつも無表情………
「はっ、バカかお前?」
ではなく、にんまりと口元を釣り上げ、笑っていた。
「へ……」
【!?】
それはモニタを見ている仲間たちも動揺する。
彼に似合わないほど、悪意のこもった笑顔だったから。
「真の力、ね……。なら、撃ってみろよ。その銃で」
「なっ……」
シノンは絶句した、剣をしまい、無謀な姿で
「なにしてるの……だめ、ダメよテイルッ!」
まだ方法が分からない。
殺される可能性は0では無いのに。
その時、シノンの中で彼が殺される光景が生まれていく。
「撃ってみろ、その力で、ラフィン・コフィン」
【………愚かな】
◇◆◇◆◇
「お、おいテイル? なに考えてるんだッ!?」
それはモニタ越しに見る関係者全ての全身から血の気を失わせる。
だがテイルは、にまにまと笑いながら、相手を挑発すると言う彼らしくないダンスのようなことをして、挑発していた。
「ダメ、ダメだよテイル!」
「どうしたのッ、君ならそこから斬り込むこともできるじゃない!?」
アスナの叫びも届かず、その指はトリガーに………
「ダメ………」
ユウキは血の気を引き、身体を抱きしめながら、
「だめぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
◇◆◇◆◇
【幸運を己の力を思い、過信した偽りの勝利者よッ、我が名と共に死ね!】
荒野の世界に乾いた弾丸が鳴り響く。
テイルが………
「あっ………」
シノンが悲鳴にならない悲鳴を上げた。
そしてしばらくして、
「かっ」
彼は苦しみだし、モニタを見ていたアスナたちも悲鳴を上げた。
【愚かな勝利者に、裁きは下った】
そう告げた。
◇◆◇◆◇
「いや……です」
話を聞いていたヒカリはその光景を見て、アスナたちもまた悲鳴を上げた。
「マスター……マスタあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「テイルくんッ!」
「テイ……ル………」
「テイルうぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!」
◇◆◇◆◇
「ああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
銃声が響き、しばらくして、荒野にシノンの悲鳴が響き渡った………
苦しみだすテイルに、
【これが
それと共に、彼は前へと倒れ出した………
「なんてな」
瞬時に蹴り込むテイルの一撃を、
蹴り飛ばされた
【なっ……】
「これがお前の真の力だ、残念だったな。もう若くして死ぬつもりはない」
テイルはいつもと変わらないまま剣撃を放つ瞬間、
だが、
「後ろか」
振り向かず、後ろからの剣撃を受け止める光景に、シノンの理解が追い付かない。
【!?】
剣を逆さに持ち、けして振り向かず弾く。
「お前対人戦少ないだろ? 殺気で位置が分かる」
【………貴様】
その時、シノンが凍り付く。
片手で剣を弾き、同じく剣を握る
だが………
「殺人者なら、これくらい出せ……」
「ッ!!?」
直接向けられたわけでもないが分かる。
殺気。
それが分かるほど、彼の刀身から放たれ、
【お前は《沈黙の蒼》。ただの、臆病者、のはずだッ】
「だとしたらどうする」
【殺すッ】
「殺せないだろ、お前じゃな」
今度こそとまた
【なぜだ、なぜッ】
「これで全ての仕込みが終わった」
【くそッ】
今度は別の銃に変えて発砲するが、
「ハイパーセンス」
瞬時攻撃を受けた瞬間、高速機動で避け、シノンと愛銃を担ぎ上げてその場から去る。
俊敏度は高く、その場から一気に走り去り、バイクを途中で見つけてそれで走る。他のバイクは銃で破壊して………
「ん、キリコ」
「テイルっ、シノン」
キリトをすぐに拾い、まずは距離を稼ぐために、その場から離脱した………
ゼルダ要素が少し出たが、分かるだろうか?
それではお読みいただきありがとうございます。