キリトたちの猛攻に、ヒースクリフは盾で防ぐ。
「こいつは俺たちのスキルの動きを全て知っている! 自分の力だけで突破するしかないッ」
キリトの叫びの中、連携と自身のスキルのみで斬り込む中、ヒースクリフは宣告する。
「ラストバトル用に、私自身も強化されている。君に突破できるかなッ!」
振り降ろされた剣風が、身体を吹き飛ばされそうになる。
そしてスピードも速い。すでにシリカたちは戦闘不能、HPを考え、後ろに下がった。
いまはキリト、アスナ、シノン、テイルが前に出る。
クラインとリーファ、フィリアなどがシリカたちを守る配置だ。
「………」
盾と盾が激突した時、ヒースクリフは僅かに怪訝な顔をする。
「………君はまさか」
その時、剣でヒースクリフの剣を受け止めているテイル。
僅かに思案する彼は、テイルを弾き、剣風を巻き起こし、全員をその場にとどめた。
「っ!?」
瞬間、シリカが身体が浮かんだ瞬間詰められたが、
「!」
そこに割り込む影がある。
「テイルっ」
「………」
同じ盾と剣を振るう剣士同士が斬り込む合う中、盾で剣を弾く様子に、キリトが目を見開く。
「あれは」
剣と盾が激突し、盾と剣が激突する。
「やはりかッ。君は、私と同じ」
「ッ!」
剣と剣がぶつかり、睨み合う。
「《神聖剣》の使い手だ」
それに全員が目を見開く。
「彼奴、キリの字と同じ、ユニークスキルを」
キリトは彼の戦い方を見て、それに気づき、ユイが補足する。
「それらのスキルはラスボス攻略のために、GМが用意した専用スキルです! テイルさんはその一つを所持して」
その時、ユイの言葉を区切るように盾と剣が激突し合う中、シノンの矢や、リーファたちの攻撃も連携に加わる。
だが、《神聖剣》の防御力は、
「突破できないッ」
キリトが歯を食いしばり、全員を蹴散らす中、
「ん………」
テイルの動きがおかしい事に気づく。
スローモーションのように流れる中、テイルは剣を腰の高さに振り構え、ベルトのホルダーに盾をしまい、一歩前に踏み込む。
その様子は、
「っ!? バカなっ」
「でぇあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
ガキィィィンと言う音が鳴り響く。
それは居合切りのように、ヒースクリフを吹き飛ばした。
「ユニークスキル………《抜刀術》」
ユイの言葉に、テイルの連撃が続く。
「!!!」
全員が驚くのは、いつの間にか彼は二刀流を持って、片手剣を持っていた。
「《双剣》っ!?」
「君は」
苦しげに呟くヒースクリフ、連続に叩き込まれる剣撃。
ガッキィンと金属音が鳴り響き、剣が吹き飛ばされるがもう片手剣は仕舞われ、背中の槍をホルダーから取り出して構え出すテイル。
その流れに無駄が無く、それにまさかと思いながら対処し出す。
「やはりこれは、《無限槍》ッ!?」
放たれた無数のラッシュに、ヒースクリフは驚きながら防ぐ。
槍が盾に防がれ吹き飛ぶ中、周りがスイッチして切り替わった瞬間、ヒースクリフはすぐに動けない。
すぐにキリトやクラインではなく、切り替わる彼を見る。切り替わりながらも、短剣など小物を構えるテイルを視界で見た。
「君はッ」
それは手裏剣のように投げる投擲術、それにユイは、
「今度は《手裏剣術》ですっ!」
スイッチしたクラインとキリトは戦いながら驚愕していた。
「テイルおめぇっ、どうしてんなもん隠し」
「隠してたわけじゃない、テイルはずっと、タンクを担当していただけだ!」
キリトが疑問に答え、無言のままテイルはキリトの攻撃の隙をカバーする。
この最終バトル、彼は、
「………悪いが」
いつの間にか両手剣を構えると、それは黒く輝く。
そのスキルを知るGМは驚きながら見ていた。
「《暗黒剣》」
「俺だってテメェにキレてるんだッ!」
激突する剣と盾の乱舞の中、キリトが割って入る。
「くっ」
「アァァァァァァァァァァァァァァ」
「セイッヤアァァァァァァァァァァァ」
ユイはこの中で、テイルと言う個人情報を覗き見る。
それは、
「これは………」
それは、バラバラに武器の熟練度が何もかも、ずば抜けていたこと。
「こんなことあり得ない、一日中、別の武器、戦い方を延々と繰り返さない限り、こんなことはあり得ないです」
「延々………延々と戦う、無言の剣士」
リズがユイの言葉に、彼の異名を思い出す。
それは延々と、黙々と、淡々と、同じことを繰り返す、剣士の異名。
その異名は気の遠くなるほどエネミーの上にあった。
その時、蒼と黒の双剣が乱舞する。いつの間にか落ちていた剣を拾い上げている。
「行けるっ、テイル!」
「ウオォォォォォォォォォォォォォ」
次々と変わるユニークスキルの使い手は、彼も想定外過ぎた。
GМヒースクリフの想定は、十人のユニークスキル使いを想定されたもの。
だがたった一人が、複数のユニークスキルを使い、かつ無駄のない、洗練された動きで組み合わせること。
それは彼の予想を超えたものであった。
キリトはその異質による隙を見つけ出し、構える。
テイルの攻撃が、剣と盾を両方弾いた。
「スイッチ!」
「スターバースト―――」
キリトはその隙を、けして逃しはしなかった。
双剣の乱舞を一身に受け、ヒースクリフのHPゲージは、
「ストリィィィィムゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!」
消え去った。
◇◆◇◆◇
全てが終わり、ヒースクリフはGМ権限で話しかけて来る。
だがそれだけだ。それ以外のことはけして曲げないと言いながら、キリトに話しかけていた。
「そしてテイル君」
「………」
俺にも何か話しかけてきた。正直疲れているんだが、
「君の噂は常々聞いていた、あり得る可能性は十全にあった」
「………」
ただ無言に聞く中、ヒースクリフは呟く。
「片手剣を二本使用する駿足の《双剣》を、防御を攻撃に変える《神聖剣》を、防御を捨てて戦う《暗黒剣》を、構えから放たれる《抜刀術》を、槍の極み《無限槍》を、短剣などの投擲の《手裏剣術》を」
「それほどまでの条件なのか」
「ああ、一人一つが習得することを想定されたもの。《神聖剣》と《暗黒剣》は相対するスキルでもある。並みのプレイヤーですら、習得できる可能性は少ない」
「それじゃ、テイルは」
「並大抵を超え、日々狂おしいほどエネミーを狩り続けた結果だ」
そしてヒースクリフはこちらを見る。
「君はなぜ、そこまで戦えた?」
なぜ?
「………俺はただ、死にたくも、死んでほしくも無かった」
そう言って、俺は本心を告げる。
「あんたは凄いよ、茅場晶彦。この世界を創造し、俺たちをこの世界に連れてきた」
前世じゃ考えられない世界、それがここだ。
夢を、幻想を、現実に変える世界。
もしもデスゲームにならなければ、きっと………
退魔の勇者リンク、その名は邪を払う者。
テイルは違う、だから俺はこのゲームがデスゲームではないことを、心のどこかで祈っていた。
「テイル………」
「だがそれだけだ……。あんたはこの世界を穢した、創造主である、あんた自身が」
「君は………」
ヒースクリフは驚いた顔でこちらを見つめる。
「俺はそれを決して許すことはない。俺はただ、この世界に代わって、ここに来られないプレイヤーに代わって、ここにいるだけだ………」
そう告げると、ヒースクリフは満足したように、俺とキリトを見る。
「君たちがこの世界に来てくれて、本当によかったと思っている。私の夢想の中で、君たちは真剣に生きてくれた………」
「………確かにここはゲームの中の世界だ……。それでも俺は、俺たちはここを一つの現実だったと思っている」
「………」
「そう思ってくれるのか……。ありがとう、キリト君。そして世界の代弁者、テイル君………」
◇◆◇◆◇
茅場晶彦、彼はテイルのことをそう告げた。
彼はこの世界の代弁者なのかもしれない。
この世界のラスボスを倒すスキルを多くその身に宿して、この世界を穢したと彼に言えた彼は、まさにそうなのだろう。
どれほどか分からないが、この世界に向き合い、挑んだプレイヤー。
茅場もどこか満足そうだった。
そして全てが終わった………
◇◆◇◆◇
全てが終わり、一人、また一人ログアウトする。
「………塔の上か」
いつの間にか一人になり、不思議な場所に立っていた。
広がる地平線。日が沈む夕焼けを背に、天空のステージに立つ。
バカバカしいが、それでもここまで来た。
全て本当になんなんだろうか自分は。
デスゲーム化するんじゃないかと思ったため、このゲームに参加した。そしてなったからそれの被害を食い止めたかっただけ。
正しいとかなんなのか、罪悪感か、この時点ではもう分からなくなっていたんだ。
だから最後のあの言葉、俺の本心なのだろうか分からない………
ただ、
「………」
この装備を受け取ったいま、俺は攻略プレイヤーとして最後の、やりたいことをしたんだろう。
仲間、と言えるのだろうか。
分からなかったとはいえ、この事態を予測できた俺は、結局なにができた。
そして一人、骸骨の戦士に鍛えられた俺は何者だろう?
俺は………
「………」
いや、もうぐじゅぐじゅ考えるのはやめよう。
転生者だのなんだの、考えるのは疲れた。
そして終わったんだから………
「やっと………」
その時、人影を見つける。
おかしい、全てのプレイヤーはログアウトし始めているはずだ。
「君は………」
「うわっ!?」
困惑しているときに話しかけてしまい、一人の女の子。その姿をはっきり見て、内心驚いた。
「あれ~ここは。ねえきみ、ここはどこ?」
「きみ、は」
「ボク? ボクは『ユウキ』!」
その少女は、後天的な病により、生まれてから闘病生活で苦しみ、VRの世界で生きて、生き抜いた少女。
ユウキがそこにいた。
「………俺は」
少しだけ口ごもり、静かに、
「テイル、俺はテイル………」
「テイルだね。それでテイル、ここはどこ? VRММOの中だよね?」
「ああ、いまさっきクリアし終えた、ソードアート・オンラインっていう世界だ」
「って、えぇぇぇーーーーッ!! あの出られなくなるってゲームの!?」
「もう終わって、もうすぐ消えるけどな」
「ええぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
そう次々に驚き、はしゃぐその姿は、病魔を抱える少女とは思えない。
ユウキから次々と質問攻めされ、知り合いがボス攻略して、ついにクリアしたことを説明する。
おそらく、もうすぐ全て解放されることも。
「そっか~。テイルの友達って、すっごいんだね♪」
「とも、だち……。ともかく、きっともうすぐ全部終わるさ」
あまり会話らしいこともしていない彼のことを思いだす。キリト、この世界の主人公。
考え込むと、ユウキがこの広大なステージではしゃいでいた。
きっと、ここでのラスボス戦に胸躍らせているのだろう。
「あーーー、なんだかボクも戦いたくなってきたよっ。ねえねえ、テイル」
「なんだ?」
「ボクと、手合わせてしない?」
そう楽しそうに語る少女。
………
どうせ最後だ。
「わかった」
「やっっったーーー!!」
「ただし」
「えっ?」
取り出す剣、ただの剣ではない。友達がくれた、大切な装備だ。
「っ!?」
威圧だけは本物であり、驚くユウキへ、俺は静かに構える。
「本気で行く………」
「! うんっ♪♪」
◇◆◇◆◇
「やあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
「遅いッ」
「くっ」
金属が激突する轟音が響き渡りながら、前へと進む。
「!?」
「懐が甘い!」
瞬時に懐に入り込み、剣は独自のステップも交えて避けられる。
盾で剣を弾き、うまく死角を取るが、ユウキの剣は届かない。
◇◆◇◆◇
どれほど長い間、剣を交えたのだろう。
この装備はラスボスの為に、仲間が用意してくれた最高の装備。
その最後の相手に、ユウキは相応しい。
そう思いながら、時間が続く限り、彼女と戦い続けた。
「ぷはーーー、たっのしーーー♪ テイル次っ、次しよ♪♪」
「いや………」
周りを見渡すと、ステージも消えかけていた。
「もうできそうにない」
もう戦えないと知り、ユウキは残念がりながら、ゲームが終わる。
「君のおかげで、テイルは満足に動けた」
「テイル?」
こいつで遊ぶことは無かった。
色々矛盾していた気がする、遊ぶためにここに来たわけじゃないから。
だが、それはなんだか、悲しい。
なぜならば、ここはゲームなのだから。
「最後にこいつで遊べた、ありがとう」
剣の世界でテイルは終わる。
それを聞いたユウキは、
「もうVRゲームをしないの………」
「………いや」
静かにユウキに告げる。
「これでやっと、遊べるよ………」
そうやっと、この世界、前世から始まったデスゲームが、終わりを告げたんだ………
◇◆◇◆◇
「………ここは」
ベットの上で目が覚めた。
身体が重いが、動こうと思えば動ける。
頭のナーヴギアはすぐに外す、これはもうかぶりたくは無い。
そしたらあれよあれよと看護師が騒いでいるのに気づく。
俺は長い昏睡状態から目を覚まし、生きていた………
◇◆◇◆◇
こうして生き残ったおよそ7000人のプレイヤーは、デスゲーム。SAOから解放された。
二年少しの時間の眠り、リハビリを頑張る中、だいぶ経ったものだが、もとより勉学は、前世のおかげでかなり努力した、問題ない。
須郷と言う男が、あの事件に関わり合いがあり捕まったのを記事で見ながら、俺は俺の知る知識を照らし合わせていた。
もう俺の知る世界とは違う世界なのは明白だ。
こうして俺のデスゲームは終わり、俺は、
「この世界を楽しもう」
そう言い、VRゲームと言う、前世に無いもの、全てを楽しむ。
ここからテイル、俺の、俺だけの
俺はそう決意する。
彼がやっと、遊ぶためにテイルを名乗り、この世界を過ごすことができます。
五歳からここまで狂おしいほどの時間をデスゲーム対策を使った彼は、やっと遊べる。
ここまでが前座(なに言ってるんだ自分)だ。
ロストソング編が始まったら、ゆっくりやろう。
それでは、お読みいただきありがとうございます。
バレット早くしてくれ~。