ソードアート・レジェンド   作:にゃはっふー

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ストーリーとして成り立っていると戦々恐々しています。

もっと分かりやすくしたいな。


第37話・転生者

 洞窟内で隠れる、ここから上空のサテライトもしのげるだろう。

 

「悪い、プレイヤーに何度も出くわして遅れた。大丈夫だったか」

 

「ああ」

 

「……じゃない」

 

 平然とキリトに答えるテイルはHPを回復させながら、それに近づくシノン。

 

 シノンは震えながら、テイルの両肩を掴み、頭突きした。

 

「大丈夫じゃないわよバカッ!」

 

 泣きながら叫び、何度も何度もテイルを触る。

 

「し、シノン?どうした、なにがあった?」

 

「彼、死銃(デスガン)に、死銃(デスガン)に撃たれたのッ。変に挑発して」

 

「なっ……」

 

 キリトも言葉を失い、何度も触るシノン。

 

「ギラヒムをイメージしたのが悪かったか、少し落ち着けシノン」

 

「平気なの、ねえ平気なのッ。ねえ!」

 

「落ち着いてくれ」

 

「落ち着けるはずないじゃない!わざと銃を受けてッ!!」

 

「じゃなきゃ、彼奴の犯行を止める手段が無かったから」

 

「えっ……」

 

「今頃」

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

「タイムセール忘れてたっ」

 

 そう叫び、主婦がバイクに慌てて乗り、その家から去っていく。

 

 その様子を見ていた青年は、すぐに玄関へと移動する。

 

「!」

 

 その扉は開いていて、鍵の閉め忘れに、僅かに口元が笑ってしまう。

 

 彼は大きく扉を開き、中に入って、

 

「すいません」

 

「!?」

 

 その時、男性二人が背後から現れ、ある物を見せて、青年を凍り付かせた。

 

「警察の者です、最近この辺りで不審者を見ませんでしたか」

 

「えっ、あっ……いいえ」

 

 青年は驚きながらそう言い、刑事の男は静かに尋ねた。

 

「この家の人ですよね? 親御さんにも話を聞きたいのですが」

 

「い、いや。父も母も出かけてて」

 

「………」

 

 その言葉を聞いて、

 

「それはおかしいですね」

 

「えっ……」

 

 

 

「ここ、私の家なんですよ」

 

 

 

 それに青年は凍り付いた。

 

「もう少しターゲットの情報を調べておくべきだったね。悪いが、君がなぜ妻が鍵を閉め忘れた扉から、我が家に入ろうとした理由を聞こうか。ポケットのそれのこともね」

 

「!!?」

 

 青年は逃げ場が無く、家の中に入っていった次の瞬間、衝撃が走った。

 

「残念、家から出たのも妻では無く、私の同僚」

 

 その言葉を聞きながら、世界が反転して気を失う。

 

 彼が投げ飛ばされたと知ったのは、後のことだ。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

「君の両親が警察関係者? はっ?えっ?」

 

 キリトも訳が分からず、困惑する中、まあ家族の仕事なぞ話していない。

 

 もしかしたらユウキとアスナくらいだろうか? それも怪しいが考えてくれ。

 

 身内でもない少女の親権を手に入れる手助けをする人脈、仕事関係で弁護士などコネクションを大いに使った両親なのだ。そこまで無ければ、ユウキの面倒などを見られるようにするのは無理だろう。

 

 正直、親の部署は知らないが、かなり面倒な部署なのは確かだ。それで得たコネクションをえげつなく使い、木綿季を親権を手に入れた。

 

 いまだってクレハや俺の事件のことを、裏で引き受けている。そんな中俺は静かに言う。

 

「キリト、ソードアート・オンラインでの死因も思い出せ。あれはどうやって死んだ?」

 

「それは、HPが0にな」

 

「違う、それは条件だ」

 

 その言葉にキリトがハッとなり、静かに、

 

「脳をナーヴギアに破壊されたから」

 

「そうだ。条件『SAO内でHPが0』で、死因は『現実世界で脳を破壊』されたから」

 

「それは」

 

「SAOでも、仮想世界で人は死んでいない。切っ掛けになっただけだ」

 

 それに二人はハッとなり、静かに続けた。

 

「俺はキリトから話を聞いて考えた。条件が『死銃(デスガン)に撃たれる』なら、死因はと思って、すぐに気づいた。被害者はゲーム中に殺されたのなら」

 

「第三者が無防備な被害者を殺した。待ってくれっ、ならなんで君はなにも言わなかった!」

 

「言ったら俺のように自分を囮にしただろ。ちなみに住所なりは、シノンが見ただろうけど、姿を消すステルス機能のアイテムだ」

 

「アイテム? 姿は消してたけど、アイテム、ガシェットなの?」

 

「俺は町中でUFGを使用した。調べたけど、リアルマネーでそういったアイテムがあったと、噂程度だが拾えた」

 

 そう、まずは住所などの情報だが、ある時、リアルマネーの引き換えなどの操作するとき感じた〝視線〟から、俺はまさか姿を消しているプレイヤーがいるのでは?と疑問に思った。

 

 そしてセブンと共に、過去の情報を洗いざらい調べてみたら、リアルマネーでの買い物で、そんなアイテムがあるのに気づく。

 

「だから俺は死銃(デスガン)の正体が、総督府でリアルマネーのやり取りなどで、リアルの住所、個人情報を、姿を消して覗き込み知ったプレイヤーであると判断できた」

 

「………それじゃ」

 

 まあここまで来れば、キリトから話を聞いてしばらくして、死銃(デスガン)の犯行が分かっていたのがバレるだろう。

 

 だけど、その後はどうするか。

 

「キリトから大会を聞いて、シノンが出るからな。こうなるともう出るつもりだった。キリトと当たる前に、誰かが死ぬ可能性が高いから」

 

 ここまで言うと彼は静かに口にする。

 

「テイルと言う、死銃(デスガン)が最もターゲットにしたいプレイヤーを前に出して、大会の注目度を上げて、自分の力の証明にしたい彼、いや彼らをおびき寄せた」

 

 彼らの犯行は、確かに人を殺していた。

 

 だが信じられず、誰からもただの偶然と笑われ、相手にもされない。

 

 犯人なら、確実に自分の力を誇示するため、明確な結果が欲しいのだ。

 

 それは、多くの人が注目する、エサがあれば、それを狙う。

 

「俺の住所はギリギリで知ったはずだ。わざと口でも出して今回の大会登録で見せたしな」

 

 複数犯の可能性が高いが、ほぼ自分がターゲットにされると踏んでいた。

 

 複数犯でなんであろうと、必ず自分を殺す為の準備に自分を優先する。これならば、

 

「他のターゲットは見逃して、君を殺すことに集中する………」

 

「今頃父さんや、父さんの部下が取り押さえている。俺が生きているのがその証拠、今頃他の仲間も一気に捕まり出しているはずだ」

 

 連絡の取り合いをしているのなら、そこから調べて動く。もともと何があってもいいように準備もしている。

 

「ちなみに大会が終われば白バイと共に、シノンの家に向かう気だ」

 

「そ、んな、準備を、してたの」

 

 全てはテイルと言う、彼らにとって有名になるためのエサが無ければいけない、囮作戦。

 

 二人は何も言わなくなり、そしてもう一つ、

 

「俺が撃たれて死なないことで、彼らの力は否定された」

 

 デマとして片付けられていたが、死銃(デスガン)の話題は微かにあった。

 

 それを徹底して消し去ることにも繋がったはずだ。

 

「そうか、模倣犯対策もしてたのか……。君は」

 

「今回は勝手にさせてもらった」

 

 元々このトリックに気づいたのは、俺が転生者だからだ。

 

 この世界に不思議な力やそれに近いものなんて何も無い。

 

 あるのは物理方式に従う世界の法則。よくてデータを超えた想いの力。

 

 だから現実的に、とことん考えてトリックにたどり着いた。

 

 後は父親の説得だが、すでに知り合いが警察関係者しか知らない情報を俺が持っていることで巻き込まれていると知り、頭を痛めていたな。

 

 キリトに繋がる人間も、警察関係者の子供がいるとは思っていないだろう。

 

(イレギュラー、転生者って言う異物らしいことだ)

 

 ともかくこれで完全に死銃(デスガン)は終わった。

 

「後はキリト、お前がトドメを。シノンは念のため動くな、捕まっていない仲間もいるだろうが、すでに警察関係者が動いていることは知られていない」

 

 仲間がドジを踏んで自分を殺すタイミングを大きく外した、よくてそう思うし、悪くてもいまシノンなどの、待機中の犯人たちは動けない。

 

「あとはこの大会を速攻で終わらすだけだ」

 

 そうすれば死銃(デスガン)は終わる。それを知り、キリトも頷き立ち上がるが、

 

「なんで……」

 

 シノンが俺の手を弱々しく握りしめてきた。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

「シノン」

 

「どうしてあなたはそんなに戦えるの、どうして自分の命を軽々と賭けられるの?」

 

 泣きそうなほど、小さな声で彼を離そうとしないシノン。

 

「どうして戦えるのッ!?ねえどうして!」

 

「………シノン」

 

「わたしはだめだった……、あの銃を見たら、麻痺と関係なく動けなかった……。私は弱い……戦えなかった。どうしてあなたは戦えるのッ、見返りも何も無いのに! どうして誰かを守れるのっ!?」

 

 叫び声を上げた後、消えそうなほど細い声で問いかける。

 

「………死んでほしくない、もう誰にも。そして死にたくないからだ」

 

「………どうして」

 

 彼はしばらく考え込む顔をして、静かにその手を握る。

 

「止まれないだけだよ、俺もキリトも。そういう考え方から抜け出せないだけだ」

 

 彼の言う通りだ、俺はもう止まれない。

 

 俺たちは止まれないんだろう。

 

「………キリトも聞きたそうだから、大会が終われば話す。だからいまは彼奴との決着を付けないといけない」

 

 そう言い彼は立ち上がり、こちらを見る。

 

「………分かった、けど私も戦う。いまここで戦わないと、私はきっと弱くなる」

 

 そう言って立ち上がり、彼を睨む。

 

「全部終わったら教えて……。あなたが、ずっと一人で、ただひたすらにアイテムや資金を集めるために戦い続けた理由を」

 

「それは俺も知りたい……。君が戦い続けられた理由を」

 

「………」

 

 彼は俺たちの問いかけに、いつものように短く頷く。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

「ここにいる者たちは即席のチームだッ」

 

「ただでさえ少ない女性プレイヤーを独り占めするニュービーに鉄槌を!」

 

「この先だ野郎どもっ、俺たちは魂で繋がれたチームだッ!!」

 

 そう言い、狙撃者もいる中、彼らは進む。

 

 狙うはニュービーであり、その頭を狙う。

 

「! 前方に人影在りっ」

 

「奴はUFGで加速するっ、俺たちは囮だ。せめて散るとしても確実にダメを与える」

 

 そう覚悟し、それが蒼いコートを翻し、俊敏に向かってくる。

 

「来たぞっ、撃て撃て撃て撃てえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」

 

 無数の射撃予測線(バレット・ライン)が彼を射貫くが、弾丸は射貫かれない。

 

 ダインスレイブを振り回し、全て叩き斬る。

 

「バカなっ」

 

 サブマシンガンだろうが何だろうが、弾丸全てが見えているかのように躱し、斬り、突き進む。

 

「ハイパーセンス」

 

 瞬間彼は光速の軌跡を描き、彼らの側に出現した。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

「魂の兄弟たちよ、お前らの死は無駄にしない………」

 

 スナイパーライフルを構え、スコープで一人の男を狙う。

 

(いくらお前でも、この距離は縮められることは)

 

 カンっと言う音が鳴り響く。

 

 一瞬なんだ?と思い、僅かに視界がそれを追う前を思い出す。

 

 その光景は実在の刀身を持つ光剣に、何かを乗せるるような仕草をして、こちらに向かって全力で剣を振ったターゲット。

 

 そして次の視界には、グレネードが側にあった。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

「ふざけるなッ、あんなの、ニュービーじゃなく化け物かなにかだ!」

 

 気づくのが遅かった。

 

 剣にグレネードを乗せて、遠方の敵に投げつけるなんて馬鹿げたことをしでかす敵。

 

 それは森の中に侵入し、すぐに駆け寄ってきた。

 

「化け物があぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 

 ガトリングが火を噴くが、彼のスキルが発動してすり抜ける。

 

 彼が出現した瞬間、彼は全てを切り裂く。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

「最後の敵プレイヤー撃破、後は残りは」

 

 サーチが始まり確認すると、キリトとシノンがいる。

 

「向こうは決着がついたか。さてどうする」

 

 と思った次の瞬間、二人の反応が消えた。

 

「?」

 

 そして残ったのは俺であり、第三回《BoB》の優勝者は、

 

「おれ?」

 

 これが二人からのお仕置きだった………

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

「死ねる………」

 

 そう言いながら自分の部屋から出て来ると、

 

「どうしたのバカ息子」

 

 母親が静からで迎えていた。

 

「いや、選手の仲間に、優勝を押し付けられた……」

 

「あら、あなたゲームの世界で有名人ね。インタビュー受けたら」

 

「………」

 

 母親がそう言いながら、バイクのキーを投げ渡された。

 

 この人は元女性刑事、いまは専業主婦だが、後輩との繋がりはまだある。

 

「あの人の部下が数名待機してるわ、急ぎなさい」

 

「はい」

 

 そして急ぎ、朝田詩乃の住所へと向こう。

 

 大会中、ログアウトした者はなく、誰も強制ログアウトされなかった。

 

 後は彼女の下に急ぐだけだ。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 そしてバイクで急いだ結果、キリトが急ぎ中に入るを見た俺は瞬時に急いで出向く。

 

 こういう時、身体を鍛えていてよかった。部屋に入り、キリトに向けて、何かしらの機具を持つ男の顔を蹴り飛ばした。

 

「シノン、キリト」

 

「テイル……君か、はは……助かった」

 

 白目をむいて気絶する男を見ながら、父さんの同僚が中に入り、それが注射機具であると知る。

 

 それと共に静かに彼を運ぶと共に、今日は我が家に泊まるように、母さんが説得して、全てが終わりを告げた………

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 その後の話をしよう。

 

 朝田詩乃は安全の為に我が家に泊まり、さすがに事件が起きた後の部屋に居続けるのもだし、親がそのまま住まわせようとする。

 

 父さん経由でキリトと繋がりのある男は、まあ本人了承しているためなにも言えないらしい。父さんは子供を巻き込んだことに腹を立てているが、犯人は捕まったことでお互い不問になった。

 

 死銃(デスガン)はやはり俺がいなければ数名のトッププレイヤーを殺害する気だが、急きょ俺の住所が発覚して、ターゲットとして絞り込まれたようだ。

 

 被害を最小限に食い止めたからなにも言われないが、父さんからしばらく母さんの手伝いをしろと言われた。

 

 詩乃のことも少し話せば、キリト、和人の提案に乗り、俺は彼女の送り向かいを買って出たら怒られる。

 

 彼女をエギルの店に連れて行き、彼女の事件で、同じ被害者の方である親子と出会う。

 

 詩乃は確かに人を殺した。悪人だからとはなにも言えない事件だが、彼女が引き金を引くことで、まだお腹の中にいた子供を含め、彼女を救った事実も受け入れてほしいと和人は伝えた。

 

 こうして後日、大会優勝兼、心配させた者たちと言う名目でパーティーが開かれて………

 

「それじゃマスター、インタビュー承認メールを送ります」

 

「やめてくれ」

 

 ヒカリがまさにどこかのインタビューを承諾するメールを出すところ。

 

「許す、と思いますか?」

 

 アスナが笑っているが、目が笑っていない。

 

 ここにいる全員がキリト、シノンよりも、俺に怒っていて、許されないようだ。

 

 パーティー材料費も俺持ちらしい。

 

「どんな話題なのかしらね~。フリューゲル最速攻略? 《BoB》優勝? ランキング1位?」

 

「いまGGOはテイルの話題で持ち越しダ、もう情報の差し押さえも無理だナ」

 

「覚悟してねテイル?」

 

 クレハはいい笑顔で笑い、メールは送信された。

 

 もう腹をくくるしかないらしい。

 

「あんまりだ……」

 

 俺はそう言い、みんなが苦笑し、楽しいパーティーの時間が始まった………




テイル、インタビューを受けることで、彼の胃にダメが。

次回、GGO編終了。

それでは、お読みいただき、ありがとうございます。

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