ソードアート・レジェンド   作:にゃはっふー

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今回彼は新体操選手になる。


第40話・僅かな繋がり

 それはSAO時代、一人の戦士はおかしなほど戦い続けていた頃。

 

 槍、刀、投擲武器、両手、片手剣を装備する。一人の戦士はいつも重々しい顔で歩く。

 

 だが彼も歩みを止める時がある。それはあの少女の歌を聴くときだ。

 

「貴方、いつも歌を聴いてくれる人でしょ」

 

 そう言ってある日、彼女に話しかけられて静かに頷く。

 

「君は……、色々なところで歌うんだな」

 

「ええわたし、歌うことが好きだから」

 

 そんな中、何度かレベリングを頼まれた。これは時々頷いた。

 

「あなたはどうしてそんな顔で戦うの?」

 

「………」

 

 フィールドで休んでいる時、彼女からそう問われた。

 

 彼は静かに両手を見る。

 

「これほどしていても、こぼれるものがある」

 

「………それは、貴方が石碑を見ることと関係あるの」

 

 石碑、それはプレイヤーが死んだ印が刻まれるものを指しているのだろう。

 

 彼は静かに頷く。

 

「全てを救える気は無い、だけどできることをやる」

 

「強いね、あなたは」

 

 その時、彼は首を横に振る。

 

「俺より、君は強い」

 

 そう言われても彼は結局歌を聴く間、笑うことも何もしなかった。

 

 だけど重々しい歩みを止めることはできていた………

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 急いで開けた場所を目指したが、唯一の入り口は人によって塞がれていた。

 

「テイルさんっ」

 

「ユイちゃん、今回はボス二体か」

 

 ALOのような小さな妖精姿のユイちゃんはこちらに情報を言いに来てくれた。

 

 仮想世界の住人だが、オーグマーを付ければこうして彼女とも話せるのは便利だ。

 

「はいっ、今回は12層と91層のボスですっ」

 

「なにっ!?」

 

 それに言葉を無くす。一気に難易度が跳ね上がっていた。

 

「キリトは」

 

「人込みの中を駆け分けています。ママたちはフィールドで戦って、シリカさんはいま《ドルゼル・ザ・カオスドレイク》に狙われてます!」

 

 それを聞き、辺りを見渡すと確かにシリカが狙われていた。

 

 どうするべきか、キリトのように人込みに飛び込むか。

 

 そう考えているとシリカは別ユーザーとぶつかった。

 

「!?」

 

 そして彼に突き飛ばされたのが見えた。

 

「!」

 

 瞬時後ろへと爆走して構える。

 

 あのままではシリカがドラゴンに攻撃を受ける。なぜかそれは危険と察しした。

 

 ならばやることは一つ。

 

「テイルさんっ!!?」

 

 ユイちゃんが驚くと共に瞬時駆け出し、橋の塀を蹴り飛び上がり一気に下りた。

 

「テイルっ!?」

 

 前に進む為、地面には転がるように足から着地する。

 

 そのままシリカたちに向かって転がっていく。片腕に力を込めて前転した。一秒でも前へと進むためだ。

 

 ほとんど勢いを殺さず、前へと転がりながら進む。

 

「!?」

 

 ヤドカリのようなモンスターがこちらにタゲが取られ狙われたが、ほとんどスピードを殺さずに前に滑るように進み、そのままアスナがシリカをかばう瞬間に割り込む。

 

「セイッ」

 

 爪の斬り込みを盾で弾き、地面に身体を削られた。

 

「アスナっ、シリカ!」

 

「テイルさんっ」

 

「無事か」

 

「は、はい」

 

 その様子を突き飛ばした男が見ている。キリトもすぐに向かってくる中、気配を感じてすぐにエネミーを見る。

 

「キリトタゲ取られた、このままひきつける。後は任せた」

 

「!? 分かったっ」

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 炎が火球となり放たれるが盾で跳ね返し、撃ち落とす中、ヤドカリを睨む。

 

 すぐ側に誰かが来る。ユイちゃんだ。

 

「あれは《ザ・ストリクトハーミット》ですっ、背後の守りが硬いので、前方の攻撃を捌いてくださいっ」

 

「アシスト了解」

 

 瞬間、あの世界へと入る。

 

 巨大なハサミがスローに入る瞬間、これは、

 

「音速高速最速で倒す!」

 

 剣と盾でハサミを捌きながら突進するように前方のヤドカリを切り刻む。

 

「ドッケエェェェェェェェェェェェェェェェェェ」

 

 元々HPゲージは少なかったかすぐに消える。そのまま走り抜ける。

 

 背後からの気配は消えない。

 

「背後から来ます」

 

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」

 

 建物の壁へと走り出す。

 

「突進、来ますっ」

 

 その瞬間、壁を駆けあがりその突進を避けた。

 

「うそっ」

 

「マジかッ!?」

 

「人間じゃねぇッ」

 

 身体をひねり背中を取る。

 

「セイッアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァア」

 

 何度も背中で斬撃を加えて切り刻む中で、後ろへと着地してすぐに剣を構える。振り向く頭部を睨みながら構える。

 

「トドメ」

 

 そしてそのまま刺し殺し、ドラゴンは悲鳴を上げて消え去る。

 

「時間切………、って、えぇぇ、凄いっ、ギリギリでモンスター退治成功よっ♪♪」

 

 ユナがそう言い、全員に経験値が入る中、剣を振るい背中にしまう仕草をする。

 

「っと、背中に鞘は無いか」

 

 青年はそう呟き、すぐにユナが来る。

 

「今回のМVPはあなたっ、凄いなキミっ♪♪」

 

 そう言われ頬にキスされたが、それよりも気になることがあるためすぐに動く。

 

 その時、

 

「!」

 

 物陰からあの子がいた気がした。

 

 そして何かを指さす。

 

 すぐに視線がそちらを向くと、このゲームを投影させているドローンが目に入った。

 

「………」

 

 視線を戻すが誰もいない。

 

 すぐにアスナのもとへと駆けつけた。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

「アスナ、シリカ、二人とも無事か」

 

「あっ、はい……」

 

「まったく、あのナンバー2なんなのよっ。テイル、あんたさっさとナンバー1にでもなりなさいよ! いまの動きVR並みじゃない」

 

 リズにそう言われながら、それよりまだ座り込むシリカとアスナ、立ち尽くすキリトを見る。

 

「それよりキリト、彼は」

 

「いや……」

 

 気になる様子で考え込むキリト。アスナの手を取りながら、俺は、

 

「ユイちゃん、君に頼みたいことがある」

 

「はい、なんでしょうか」

 

 ALOのように妖精として飛ぶユイちゃんに、先ほどの話をする。

 

「君もかテイル」

 

「君も……、キリトもあのフードの子に会ったのか」

 

 彼もまた探してと頼まれたらしい。

 

 詳しい話を明日することにして、いまは彼女たちを家に帰す。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

「やっぱあんな動きするもんじゃないな」

 

 身体を動かしながら、今日はパワーリスト外すべきかと考えながら家に帰る。

 

「お帰りなさい」

 

「詩乃、父さんも」

 

「少しな、またイベントでなにかなかったか」

 

 二人ともイベントで話があったらしく、待っていたようだ。

 

 それに12層と、一気に話が飛んで91層のボスが現れたことを伝え重々しい顔になる。

 

「そう言えば」

 

「どうしたの?」

 

「いや、彼奴の、91層だけ少し違う気がした」

 

「どう違う」

 

「シリカにだけ、ああ、知り合いの子。にだけターゲット、つまり狙いをずっとつけてた」

 

「他にタゲが回らなかったの?」

 

 詩乃の言葉に頷き、だが自分が出てきたら自分にと、

 

「どういうことだ? それに父さん」

 

 少しだけ父親を見る。

 

 どうしてこんな話を聞きだそうとするのか。

 

「交換だ」

 

「………」

 

 少し黙り込むが、ため息をつきながら話す。

 

「ここ最近、一時的な記憶障害を起こす人間がいる。そのほとんどがある事件の記憶だけ思い出せなくなり、いま検査を受けている」

 

「ある事件……」

 

「SAO事件、その事件の間のことだけを忘れて、一時倒れた者もいる。しかもあるゲームをしてからだ」

 

 その言葉に驚きながらすぐに勘付く。

 

「あるゲームは、ARか」

 

「………どうせ止めても止まる気は無いのだろう。証言を聞く限り例のイベント、SAOのボスキャラが出ると言うのが始まってからだ」

 

「………シリカと俺はSAOからの帰還者。まさか」

 

「貴方たちを狙ったって言うの、そんなまさか」

 

「………キリトにも言わないと、彼奴もかなり勘付いてる。彼奴が話して止まる気が無いだろうからな」

 

 ため息をつくと共に、この異変に深く関わりだす。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

「SAOの記憶が無くなるなんてッ」

 

 血の気が引き、青ざめるみんな。

 

 ユウキも話に加わるここは、ALOのキリトたちのホーム。

 

「ああ、父さんの話ではそういう話だ。詳しく調べたがそう言ったことは仮説だが、SAOを思い出される環境下での記憶スキャンらしい」

 

「それって」

 

「まずあのイベント、SAOのボス戦が関係してるとは思う」

 

 アスナが青ざめて、ユイが側に駆け寄る。

 

「私ばかりにタゲが取られてたのって」

 

「もしかすればSAO帰還者(サバイバー)だからと考えられる……。キリトあの男、彼がなにか話してなかったか?」

 

「それは……、君を見て驚いていた。臆病者のはずだと」

 

「それは」

 

 どういうことだと思うが、アスナが彼のことを説明する。

 

 それは《血盟騎士団》の《ノーチラス》と、

 

「ノーチラス、彼が」

 

「待ってくれ、君は彼を知っているのか」

 

 キリトに驚かれる中、静かに頷く。

 

「彼は、知り合ったプレイヤーから紹介された人間だ」

 

 彼は《血盟騎士団》で一年足らずで入った実力者。

 

 だが死の恐怖に勝てず、ボス攻略戦には一度も参加していない。

 

 そうアスナから説明を受けたとき、

 

「違う、正確には打ち勝てていた」

 

「? どういうことだ」

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

「はあはあ……」

 

「………」

 

 一人の騎士と一人の戦士が武器を構え、ぶつかり合った。

 

 そして戦士は彼に、死刑宣告を告げる。

 

「君は戦えない、君は恐怖に勝てない」

 

「そ、んな」

 

「正確には勝てても動けない」

 

「っ!?」

 

「どういうこと」

 

 側にいた吟遊詩人の女性プレイヤーが剣を仕舞う戦士に聞いた。

 

「君は理性よりも先に生存本能の命令が、アバターを動かしている。君の生存本能が戦いを拒絶してしまうんだ」

 

「それは……」

 

「君はボス戦では戦えない、ナーヴギアが君の意思や理性よりも先に、死を拒絶する人間の思いをくみ取り動かさないから」

 

 騎士は必至な思いで騎士になり、友人を現実世界へと帰すためにここまで来た。

 

 だが一人の戦士により、それは不可能と告げられる。

 

「そんな、そん、そんなことはッ」

 

「なら俺の剣を向けられて、お前は動けたか?」

 

「ぁ………あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 

 友人に抱きしめられ、悲鳴を上げる。

 

 剣の世界で戦えないと言われた彼は、心が折れかけた。

 

「ふざけるなッ、あんたになにが、ボス攻略にも一度も出ていないあんたにッ、あんたになにが分かる!」

 

「………俺は臆病者だから」

 

「それは」

 

 女性プレイヤーが何かを言おうととしたが首を振って、悲鳴にも似た叫びから目を背けて、ただいつものように歩き出す。

 

 なにか言う権利も無いし、言ったところでなにもできない。だからこそただ現実を知らしめることしかできない。

 

 それが彼、ノーチラスと《沈黙の蒼》テイルの出会いだった

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

「それじゃ、彼は」

 

「恐怖にいくら勝っても、機械がそれをよしとしない。少なくてもあのゲームにおいて致命的な障害を背負ったプレイヤーだ」

 

 それを聞き驚くアスナ。彼女はいままで恐怖に勝てないから攻略戦に出られなかったのではなく、出る覚悟ができても出られなかっただけだった。

 

「その後どうしたのあんた」

 

「………」

 

 なにも言わず、しばらく黙り込んだ後、

 

「………俺が彼と出会う切っ掛け、女性プレイヤーが伸び悩む彼と手合わせしてくれと頼んだから知り合った。彼女がいなきゃ、もう会うことはなかった」

 

「まさか」

 

「彼女は迷宮区で救助に向かった。だが攻略組最精鋭はフロアボス攻略中、攻略志望のプレイヤーで出向き、モンスターに囲まれ彼女がモンスターたちを一手に引き受けて救助を成功させた」

 

「その彼女は」

 

「死んだ、俺が聞いたのは《血盟騎士団》の誰かがそう報告したらしい」

 

「まさか」

 

 安易に尊像したのは、彼がそれを目撃した光景。

 

「あなたはいなかったの」

 

「分からない、俺はSAOは人との関係をあまり持っていない。攻略中なのかどうかも分からず、日々を過ごしていたからな」

 

 その話を聞きながらともかくと、

 

「キリト、俺からはお前もイベントに参加してほしくないが」

 

「こんな話を聞いて来るなと言う気か」

 

「VRはともかく、君は現実では《黒の剣士》じゃないんだ。君になにかあればどうするッ」

 

 俺の言葉にキリトは黙るが、静かにアスナたちの視線を受ける。

 

「それでも、この事件にSAOが関わるなら」

 

「………なら現実で今後活動しよう。パワーリスト、今度はいるな」

 

「ああ。ごめん、アスナ」

 

「キリトくん………」

 

 アスナに謝りながら次に、

 

「ユイちゃん、これをエギルを初めとした仲間たちにメール。それと、ストレアに俺のオーグマーに来てほしいと言ってくれ」

 

「ストレアをですか?」

 

「ドローンが気になる、あのイベント戦においてあれが気になる」

 

「ユイは俺、分散したときか」

 

「その時は片方は頼む」

 

 キリトに頷きながら、リズたちは心配そうに俺たちを見る。

 

 だが止まる気は無い。

 

「テイル」

 

 心配そうに服の裾を掴むユウキ。

 

「悪い、せっかく会ったのに、心配させる話で」

 

「テイルだって記憶のことで問題になるんだから、気を付けて」

 

「………ああ」

 

 その時、シノンとキリトがこちらを見ていた。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

「それじゃ、キリトと合流してくる」

 

「分かったわ、ねえ」

 

 詩乃に呼び止められ止まる。話の内容は予測着く。

 

「俺にとってSAOの記憶はほとんどない。それより濃い記憶が俺の中に根付いてる」

 

「………だからって、記憶スキャンが起こらないってことはないでしょ」

 

 詩乃がそう言うが俺は詩乃の頭を撫でる。

 

「俺の記録はそうやすやす読み切れないさ、大丈夫だよ」

 

「そう言えば貴方は年上なのよね。どちらにしても」

 

 呆れながら俺は家を出たとき、ふと疑問に思う。

 

「記憶をスキャンしきれない? 何が目的でスキャンしてるにしても、その場合どうする?」

 

 キリトとの相談内容が増えたと思いながら、ストレアを受け取りに彼の下にと走り出した。




すでに出会った過去を持つ。

そして高いところから飛び降りて、前へと転がるように前進するどこぞの超人のようなことをする。

その後彼は身体がボロボロで家に帰った。

お読みいただき、ありがとうございます。
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