ソードアート・レジェンド   作:にゃはっふー

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オマケの話を製作中、ゼルダ要素たっぷりです。時間軸はスルーしてください。

オマケだからセブンとか、誰かをヒロインにするのもいいな的にしたいと思います。

そんな報告の中、最終章も佳境を迎えます。


第41話・ボスラッシュ

 彼奴は臆病者だ。

 

「あの人、悪い人じゃないんだ。ずっと一人で、ギルドの資金集めたりするんだ」

 

 彼奴は臆病者だ。

 

「いっつも無表情で、だけど優しいんだ……。貴方にも嫌いになって欲しくない」

 

 彼奴は臆病者だッ。

 

「貴方に対しても、彼は」

 

 彼奴は戦えない臆病者だ!

 

 だけど………

 

 そして僕は全てを失った………

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

「クラインから話を聞いたけど、SAOの記憶がおぼろげらしい」

 

「決まりか。キリト」

 

「ああ」

 

 キリトと共に今回のイベント戦の場所に来る。

 

 一応記憶スキャンの事件を表に出すべきか考えたが、どうせ誰も信じないだろう。

 

 警察も証拠が無ければ動けないと父さんから言われた以上、ALOのサポート妖精姿の二人が頼みだ。

 

「今回の戦い、俺たちでタゲを取りつつ戦闘を伸ばし、戦闘中スキャンが行われてるか確認だ」

 

 アップしつつ状況確認。今回のイベントでどうにか情報を手に入れたい。

 

「頼むぞ二人とも」

 

「うん、任せて♪」

 

「私たち二人がお二人をサポートします」

 

「ただ」

 

 アップをし終え、二人で一人のユーザーを見つめた。

 

 そこに一人の友人、シノンがいる。彼女もまたこのイベントに参加する。

 

「あんたたちに任せてられないでしょ。私は途中参加だし、もしかすれば条件に満たさないかもしれない」

 

「これだから」

 

 頭を痛めながら、遠巻きにいる母親にも呆れる。彼女を連れてきたのは母親だ。

 

 事情も多少だが知っていそうなのだが………

 

「これでシノンになにかあれば俺は殺される」

 

「なら守ってね二人とも」

 

「ははっ」

 

 苦笑するキリトと共にゲームが始まるのを待つ。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 オーディナル・スケールが発動し、都市部の世界が変わった。

 

 荒廃した世界観であり、爆炎と共に鎖に繋がれた猪の獣人型が現れた。今度の敵は18層のボスとキリトから聞かされる。

 

「今日は13層のはずじゃないのかっ!?」

 

「現在都内各所で10体のボスモンスターが次々と出現しているようですっ」

 

 ユイちゃんが慌てて報告、10体も同時個所で出ているらしい。そんな話は聞いていない。

 

 同時に別の場所で行われるなんて公式でも発表されていない。まさかここでこんなイベントが起きるなんて。

 

「別れるべきだったか」

 

「それにともなわれてボスの出現地がシャッフルされています」

 

「ともかくやるぞッ」

 

 鎖に繋がれているため、最初は行動が限られているが、すぐに鎖を引き抜こうとし出す。そう言うタイプらしい。

 

 ボス攻略戦は出ていないが、シノンは射撃で、俺とキリトは接近して斬りかかる。

 

 ともかくここをどうにかしなければいけない。

 

「サポートはいいからストレアたちはドローンを頼むぞっ」

 

 すぐに他のユーザーが接近するが、キリトが警告した瞬間、鎖が引き抜かれた。

 

 鎖から解き放たれると鎖を振り回すボスの攻撃。

 

 先端が斧であり、それに斬られたユーザーの様子が変わり、悲鳴を上げて彼から光が飛び出た。

 

「くそっ」

 

「切り替えろッ、俺たちもタゲ取られているッ」

 

 二人の妖精がドローンへ向かったのを確認して、キリトと二人で攻めるが、

 

「キリト下がれッ」

 

「クッ」

 

 キリトが攻めに入るが動きがやはりこちらじゃ遅い。

 

 この様子を見ながらキリトには悪いが邪魔でしかなく、攻撃を全て引き受ける。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 振り回される攻撃全てを見切り、剣と盾で弾くテイル。

 

 鎖が蛇のように動き回るがそれすらも見切り、剛腕な一撃を弾く。

 

「………」

 

 冷静。タゲを集中的に引き付けつつ、チャンスを待つ。

 

 放たれる広範囲攻撃を攻撃で無理矢理弾く。

 

「邪魔だ………」

 

 一瞬の隙に何度も斬りながら、即座に体制を整える。キリトにはその動きがVRゲーム内の彼と同等に見えた。

 

 まるで相手の隙を見つけ、斬り込み、即座に死角に消える行為。

 

 身体全体、細胞一つ一つが同じ動きの為に身体に働きかけている。

 

「足を引っ張ってるだけじゃないか………」

 

 吐き捨てるように呟くが、それでも引けないと彼は走り出す。

 

 シノンの銃撃がクリティカルしたのか、鎖が砕かれた瞬間、二人が走る。

 

 片方は片腕を振るい、一刀両断。

 

 片方は回転するように何度も斬り込む。

 

 二人の剣士による攻撃は彼をポリゴンへと変えた。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 戦いの中、ほとんど俺とキリトにタゲが向けられていた。キリトは肩で息をしていて、俺も呼吸を整える。

 

 だがこれで分かる、このボスは俺とキリトがメインに狙われていた。

 

「ノーチラス、『エイジ』はここにはいなかった」

 

「ああ」

 

 そしてキリトが何かに驚き、向かっていく。

 

 キリトの視線を追うと、あのフードの子が見えた。

 

 だがすぐに消えてしまい、どこかに行ったようだ。

 

「キリト」

 

「ああ、無関係、なのか?」

 

 そんな会話の中、シノンと、妖精二人が戻ってくる。

 

「ごめん、元々ドローンが怪しいって言われてたからすぐに気づけたけど、途中でブロックされちゃったよ」

 

「ある特定のプレイヤーのみ、なにかしらプログラムが発動しているのは確かのようです」

 

「そうか」

 

 そんな会話の中、考え込むキリトが急に気づく。

 

「そうだユイ、あのフードの少女と指さした場所は覚えているか? テイル、君も」

 

「ああ」

 

「ええ」

 

「ならすぐ地図上にプロットしてみてくれ」

 

 そう言われ、俺のデータと彼女に渡してすぐにデータを見た。

 

 そして交差する場所にある大学があった。そこには覚えがある。

 

「キリトこの大学、レベルが高く、その気があればSAOサーバー閲覧も可能のはずだ」

 

「本当か」

 

「一応大学生だ、近隣の大学は一応目を通した。確かオーグマーの製作者がここにいたはず」

 

「オーグマーの!? ユイ、いますぐこの大学とエイジが関係つくか調べてみてくれ」

 

 そしてそれは一致した。

 

 お互い目を合わせ、すぐに次の行動を決める。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

「大学生に大学行くなって、あの野郎」

 

「仕方ないわよ、どうもあなたを、彼と関わる役人の人と会わせたくないんでしょうね」

 

 和人曰く、彼と知り合いに問い合わせるから来ないでほしい。なら次のイベント戦に備えて、ミルクを飲み干す。

 

「これで情報を手に入ればいいんだけど」

 

「よく飲むわね」

 

 ミルクを飲みながら、喉が渇くんだ。

 

 キリトは知り合いの役人にも連絡するため、俺には後で連絡すると言って一人で接触しに出向いた。彼の言う役人と俺はどうあっても会わせたくないようだ。

 

 ともかくなんであろうとやることは変わらない。

 

「今後はキリトと分かれてボス攻略………。詩乃は出るなよ、ユナのコンサートがそろそろあるんだから」

 

「はいはい、勝手なんだから」

 

「にゃ」

 

 膝の上のミケが鳴く中、そう言えばと、

 

「ユナか」

 

「どうしたの?」

 

「………いや」

 

 あの子も『ユナ』と、そう名乗っていたが。気のせいだろうか?

 

 そして俺たちは分かれて、ボスを攻略する。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

『ダメだ、証拠も何も無いから動けないらしい。何が起きてるか分からないと』

 

 イベントが始まる夜の時間、キリトからの連絡を受けていた。

 

 記憶の件も含め、いまだ分からないことが多くある。

 

 だがオーグマー製作者はなにか怪しいのは確からしい。記憶スキャンもどう言った目的か、なにもかも分からないまま。

 

「分かった、そっちも任せた。記憶を取られないように」

 

 そう話を終えて、戦いの場に歩き出す。

 

 その時、彼女が目の前にいた。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 気が付けば日が落ちる、あるいは上がるアインクラッドの風景の世界。

 

 そこにいるのは、彼女だ。

 

 電話から聞いている。彼女は俺の知る彼女だと………

 

「キリトから話は聞いた、ユナ」

 

「………始めてね、あなたがはっきり私の名前を呼んだのは」

 

 そう言い、フードを外した少女は、かすかに彼女とかぶる。

 

 こうしてやっと昔の知り合いと認識するとは、俺も薄情な人間だ。

 

「君の父親『重村徹大』はSAO帰還者たちから記憶を奪ってなにを考えてる」

 

「………あなたは考えたことは無い? 仮想と夢は同じようなもの。目が覚めたらまだデスゲームの中と」

 

「無い」

 

 俺ははっきり言える。

 

「あの日キリトたちが切り開いた道、彼らが開けた道だ。デスゲームはもう終わった」

 

「だけどあなたのデスゲームは本当に終わった?」

 

「知らん」

 

 俺の中の戦いは終わったかなんて知らない。知る気も無い。ただ言えるのはそれは俺が背負うものだと言うこと。他人にどうこう言われる筋合いはない。

 

「やっぱりあなたは強いのね」

 

「お前の願いは歌うことだ……。いったいなにが起きてるんだ、君は俺の知るユナなのか」

 

「………そろそろ夢は終わるわ」

 

 そう言い指を鳴らすと共に、この空間が終わる。

 

 彼女はその瞬間まで俺を見つめていたことだけが気になった。

 

 お前は俺に、なにを望んでいるんだ………

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 キリトと分かれて戦う相手、現れたエネミーは、

 

「74層のボス《ザ・グリーム・アイズ》っ!? テイルっ!」

 

「問題ない」

 

「瘴気攻撃と両手用大剣に気を付けて!」

 

 俊敏に動き、攻撃を避けながら特殊攻撃を避ける。

 

「凄い、初戦でどうして分かるの?」

 

 ストレアが離れた位置で確認しながら、しかも避けると共にすり抜けるように切っている。

 

 最短ルートで全て狩りつくす。キリトと分かれてやるが、今回は数が多い。

 

「ちっ、いちいちバイクキー使うのが面倒だ!」

 

 最速でボスを倒し、そう言いながら次々とボスの下へと走り向ける。

 

 全てのボスを倒し切って走行、全てのイベントが終わったのを確認する。オーグマーが繋がる中でストレアが、

 

「おかしい、テイルの担当区域だけフロアボスのレベルが跳ね上がってる。途中で出てきたのもいた………」

 

 自販機からミルク関係の物を買い、静かに考える。

 

「俺を警戒してる? キリトは」

 

「ユイと連絡してる。いまは」

 

 その時、ストレアから話された。エイジから招待状をもらったとのこと。

 

 それを聞き、ミルクを飲み干して静かに、

 

「場所は」

 

「明日のユナのコンサート。チケットあったっけ」

 

「ある。こうなるとキリトは行くか」

 

 そんな会話をしながら次のステップに進む。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 日付が変わり会場の中、ほぼ全メンバーがここにいた。

 

「こんにちは、今日はよろしく」

 

「みんな~、こっちで揃うのは結構初めてだね」

 

 ルクスとフィリアがそう言い、帽子や小物を使い顔を隠すレインやセブンもいる。

 

「ごめんね、席の方。七色の分まで用意してもらって」

 

「気にすんなって。元々クライン用だったんだが、彼奴は来られないから」

 

「私のもね、リーファが来られないから。知り合いが固まった方が気楽でいいわよ」

 

 そう言い合う彼女たちに挨拶をそこそこして、静かにエギルを見る。

 

 エギルには後のことを任せつつ、俺とキリトは指定された場所へと向かう。

 

「キリト、エイジは地下で間違いないな」

 

「ああ、そこで待つ、そう指定してきた」

 

「そうか」

 

 そう言いキリトの背後を取り、すぐに首を取る。

 

「なに」

 

「すまない、これはたぶん俺の問題だ」

 

 そう言った瞬時気絶させた。こんなところで体験が役立つとは。

 

 彼のも含めてオーグマーを起動させる。

 

「ユイちゃん悪い、キリトのことを頼む」

 

 ベンチに寝かせ、全てのパワーリストを外す。

 

「ちょ、一人で行くの」

 

「彼との因縁は俺にある」

 

「テイルさん……」

 

 キリトを寝かせてから、もしもを考える。

 

 もしも今回のように、俺がキリトを気絶までさせてでも物語に関わろうとして居たらデスゲームの内容は変わっていたのだろうか。

 

 だがそれはもう、もしもだ。

 

「ここからが俺の物語だ」

 

 そして俺は指定された場所へと歩き出す。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 指定されたに来ると彼は本を読んで待っていた。

 

「おや、僕は《黒の剣士》を指定したのですが」

 

「そんなことを知らない。いまはエイジか、悪いがお前の暴走を止めなきゃ、彼奴に顔向けできないからな」

 

「臆病者が彼女を語るな!」

 

 本を乱暴に閉じ、静かに置いてお互いオーディナル・スケールを構える。

 

「臆病者か、俺に似合う言葉だ。誰かとの繋がりを恐れ、フロアボス攻略にも行かない男にはな。君のように抗おうとしたわけではない。だが」

 

 その瞬間、彼の纏う空気が変わる。

 

「それでも譲れないものくらいはある」

 

「《沈黙の蒼》程度、名前すら何者にも覚えられない貴方じゃ、僕を止められない!」

 

 瞬間、彼らは激突し合う。

 

 蒼と称された彼の剣と、二位と言うエイジの剣が交差して、お互いの動きが人間の限界を超えていた。

 

「その動きどうやって手に入れた? 人間の動きや予測スピードは軽く超えてるぞ」

 

「それについてきている貴方こそッ」

 

 壁に追い詰められても壁を蹴り、攻撃を避け背後を取ったりと、その動きを見切る。

 

「所詮最前線で戦う攻略組にしかみんなの記憶には残らない。貴方や僕らのような臆病者は、誰の記憶にも残らない!」

 

「それがどうした、ユナの記憶はお前の中に残ってる。それじゃダメだと言うのかッ」

 

「ダメに決まっているだろ!」

 

 攻撃の中、だいたい予測できてきた。

 

 本当の地獄を知っている彼の剣が、現実へと追いつき始める。

 

「なるほど。お前の動き、なにかで動きを先読みしてるようだが、俺のような人の技を超えた動きにどこまで予測できる」

 

「そんな技術を持っていながらッ、なんであんたは攻略組に、あの場に居なかったッ」

 

 無数の斬撃の中、防ぎ、壊し、拳がエイジの顔を捕らえかける。

 

「お前はやっぱり」

 

「ああそうだよっ。見ていたよ、ユナが消えるその瞬間。自分の弱さを呪ったよ!」

 

「そんな中でなんで帰還者から記憶を奪うッ。それになにが意味がある!」

 

「SAOなんてクソゲーの記憶、奪ったっていいじゃないかぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

「ふざけるなあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 ガキンと剣が激突し合い、エイジを睨む。

 

「テメェにとっては思い出したくもない記憶だろうがッ、あれはもう一つの現実だ! その現実を否定されてたまるかよ!!」

 

 その勢いの中、剣で彼が吹き飛ばされ、それに驚愕するエイジ。

 

「なんでお前は、ついてこられるんだよ!」

 

「気合いの入れようが違うッ」

 

 剣を避け、盾を捨て拳を握りしめる。

 

 その瞬間、彼の予測は拳に集まったが、

 

「ハアアアアアアアアアアアアアッ!」

 

 気合いで攻撃を途中でキャンセルし、剣を持つ拳で彼を殴り飛ばす。

 

「バカな………予測を、データを」

 

「それかッ」

 

 背後を取り、スーツらしきものをの襟を掴みそれを引きちぎる。

 

 火花が散る中、斬撃を何度も当てた。

 

 その時キリトが視界に入るが、勝負がついたあとだった………




キリトに任せる選択肢が消えた彼は、無理矢理表舞台に出ました。

彼の中にはもしもがあり、それは永遠に考え続ける物事です。

ボスの連戦、偽物の勇者は自分が関わる物語にどのような答えを出すか。

お読みいただきありがとうございます。

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