ソードアート・レジェンド   作:にゃはっふー

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第42話・現実の仮想

 キリトが見ていたのは人の動きを超えた彼だった。

 

 だが片方は機械の力を借りていて、片方は培われた身体能力。いや体験で得た経験で動いていたのだろう。さすがに肩で息をしている。

 

「勝負が終わったのか」

 

「ああ。悪いな気絶させて」

 

 キリトは一人で突っ込んだ彼に文句はあるが、あまり他人のことを言えないため、気にするなと告げた。

 

 そう言い合い、二人して膝をつくエイジを見る。

 

「さあ、奪った記憶をどうすれば戻る!? 答えろエイジ!」

 

「………ふふっ」

 

「なにがおかしい?」

 

「気付いていないのか? なぜここにSAO帰還者(サバイバー)がいるか」

 

「………まさか」

 

「もう手遅れさ、いまこの会場にはSAO帰還者(サバイバー)たちが集められている。この会場でSAO帰還者(サバイバー)全員をスキャンして、SAOの記憶を奪ってやる」

 

「なっ」

 

 確かに、二人してここにはおかしなくらいSAO関係者が集まったことに気づく。

 

 シリカたち帰還者学校はタダでシノンは応募、エギルも同じ理由。テイルはゲームの特典。

 

「そしてユナを生き返らせてやるんだ」

 

 唐突に彼はおかしなことを口にした。

 

「何をバカなっ、人が生き返るはずないだろ!」

 

「SAO帰還者(サバイバー)たちのSAO時代の記憶を持つに、AIとしてユナを生き返らせる。それが目的なんだよ」

 

「………お前」

 

「さあ始まったぞ、もう誰にも止められない」

 

「バカが………キリト、会場に急ぐぞ」

 

「ああッ」

 

 立ち去る際、彼は一瞬止まる。

 

 まだ笑うエイジを見て彼女を思い出す。

 

 それはきっと悲しいことなのだろう。

 

「バカやろう………」

 

 そして急いで会場へと向かう。すでに会場の方角から、悲鳴が響いていた………

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 キリトが例の役人と会話しながら、事の事態を聞かされる。

 

 いま会場内のスキャン機能はブーストされていて、部分的な記憶スキャンだけでは収まらないらしい。

 

 ナーヴギアと同じ脳へとダメージを与えることになる。それを聞かされて急いで走る。

 

「扉が」

 

「どけキリトッ」

 

 蹴り一発でロックされた入口を破壊して中に入り、オーグマーを付けるとほとんどの人間がパニック状態だ。

 

 エネミーに襲われる。彼らはSAO時代の恐怖が蘇りながら対峙していた。

 

「どうにかしてオーグマーを外させないと」

 

「この状況で俺たちの話を聞く人間がいるかッ、くそ」

 

 急ぎ入った入り口へ誘導しようとしたとき、シャッターが下りて道を塞がれた。

 

「そう言えば俺たちも帰還者かッ」

 

 キリトは周りを見渡してアスナたちを見つける。アスナたちもすでに戦っていて、急いで駆けつけた。

 

「アスナ、すまん遅くなった!」

 

「悪いみんな、ルクス、レイン、セブンみんないるかッ」

 

「テイル」

 

 全員無事にいるがこのままでは、

 

「どうする、このまま高質力スキャンが始まれば、みんな」

 

「………くそッ」

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

「来るな、来るな来るなあぁぁぁぁぁぁぁ」

 

 一人のSAO帰還者(サバイバー)が叫び声を上げるがその瞬間、エネミーを切り捨てる男が駆けている。

 

「ち、《沈黙の蒼》?」

 

 次々のエネミーの下に飛び、次々と斬り殺す剣士。だが、

 

「ダメだよテイルっ、次から次へと出現するし、蘇生されてる!」

 

「だからって、キリト!」

 

 死神のようなものがキリトに鎌を振り上げたとき、彼のスピードが速まる。

 

 もうなんだろうと関係なく接近したが、その前に一人の少女が現れ防ぐ。

 

「ユナっ!?」

 

 それは現代服を来た、自分たちにヒントを託す彼女だ。

 

(まさかすでにユナのAIが創り出されているとしたら)

 

「キリト、テイル助けて! このままじゃここに来てくれたみんなが危ない!」

 

 テイルが彼女の正体に気づくとき、彼女から状況を説明された。

 

 このまま恐怖が高まれば高質力スキャンが始まり、全員が危険と説明される。

 

 全員がゲームのイベントと思いオーグマーは外さない。だから唯一の方法はここのボス全員を倒すしかない。

 

 その為に全ての工程をスキップして、旧アインクラッドのラスボスを倒し、ゲームを終了するしかないとユナが言う。

 

 機能がほぼナーヴギアと同じのオーグマーを使い、フルダイブするしかないと。

 

 フルダイブ機能を解除してもらい、アスナたち全員も話を聞いて全員で向かうことに。

 

「ルクス」

 

「話は分からないけど私も手伝うよ」

 

「このセブンちゃんを忘れてもらっては困るわね」

 

「私も戦うよテイル」

 

「キリト私たちも」

 

「私も戦闘サポートする」

 

 フィリアとストレアもそう言いながら、そして全員でフルダイブする。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 あの日、ラスボスで現れたのはストレアのデータを使った改変されたものとヒースクリフ。

 

 新たに訪れた100層では巨大なモンスターが鎮座する。

 

 槍と剣を持つ魔人かなにか。それが100層のボスとして存在していた。

 

「茅場の野郎っ、なに巨大モンスター用意してやがったッ」

 

「スイッチ」

 

 巨大なそれが振るう武器に翻弄されてスキル、ほとんど魔法のようなものが使われた。

 

 ゲージを削るが回復する大樹が現れ、敵のゲージが回復する。

 

「ふざけるなッ」

 

 戦いの中、それでもゲージを削ろうとするが石のブロックが浮かび、シリカが潰され、大樹がキリト以外全員を捕まえ、キリトは腕に掴まれる。

 

「くそったれがあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 

 そんな中爆発するのは蒼の剣士。

 

 剣を投げ飛ばしシリカを助け出し、蹴りでラスボスを吹き飛ばし、拳で大樹を破壊する。

 

 だが大剣が振るわられ、テイルは壁へと突き刺さられた。

 

「テイル!」

 

 だが、

 

「なめるなくそったれッ」

 

 盾が砕け回復するボスへと吠える。その砲撃がテイルへと迫った。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 止まる。

 

 止まるな。

 

 止まっていいはずがない。

 

 だって彼女は、彼女の本当に願ったのは………

 

「くそがッ」

 

 なぜここで止まる?

 

 違うのは認める、結局自分は違うのは分かり切っている。

 

「勇者から技教えてもらったんだからッ、せめて………せめて友達くらい救わせろ!」

 

 その咆哮の中、光が彼を包んだ。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 俺はいま信じられない光景を見た。

 

 攻撃を防いだ一つのそれが見る。

 

 ビームのようなそれが放たれた次の瞬間、それに助けられた。

 

 空から降って地面に刺さるのは彼が持つもの。

 

 勇者が、彼が持つ勇者の証。

 

 邪を払う、厄災を斬る、退魔の勇者。

 

 俺に技を教え、戦う術を教えてくれた。緑の勇者の剣。

 

「マスターソード………」

 

 目の前のそれを見た瞬間、歯を食いしばり走り出す。

 

 その大地に突き刺さる剣へと手を伸ばして。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 一本の剣がテイルの攻撃を防ぎ、テイルは事なきを得た。

 

「なん、だ………」

 

 その瞬間、空から魔法が飛んできた。

 

「これって」

 

「お兄ちゃん!」

 

 空から現れたのはリーファであり、ユイも現れた。

 

「パパ、皆さんを呼んできました!」

 

 そう言った瞬間、飛んできたのはALOの妖精プレイヤーたち。

 

「スメラギっ、貴方も」

 

「セブンを守るのが我らシャムロックのメンバーの役目だからな」

 

 他にも多くの妖精たちが来る中で弾幕が張られた。

 

 シノンがいる壁際の通路を見ると、銃を持つプレイヤーたちがそこにいる。

 

「GGOっ!?」

 

「マスターのピンチですっ、わたしが来ないでどうするんですか!」

 

「祭り会場はここかッ。バザルト・ジョーが来たぜテイル!」

 

「デイジーちゃんが来るのだもの、私も来なきゃね」

 

「全力でサポートさせてもらいますっ」

 

「行くわよテイルっ」

 

 その時、大樹の根が大地に張られたが斬り、駆け抜ける剣士たちがいる。

 

「プレミア、ティアに、SA:Oのプレイヤー!?」

 

「キリト、テイル、アスナっ」

 

「「「ユウキっ!?」」」

 

「スリーピングナイツも駆けつけたよ!」

 

 元気に返事をして完全な混合戦の中、ユイがSAOのデータを呼び起こし、ストレアも戦闘モードに入る。

 

 だが、

 

「俺だけオーディナル・スケールっ」

 

「テイルのデータ多すぎだよ!」

 

「待っててください、いま」

 

 そう言われながら、巨大な槍が向かってくる。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 槍が迫る中、データがロードされる前にマスターソードがある。

 

 それを見て俺は一瞬、それを振るおうとした。

 

 だが、

 

(違う)

 

 俺はいままでなにを手に取り、戦っていた?

 

 俺は誰だ。

 

 待つ。

 

 迫る槍、ただ静かに構える。

 

 聖剣が弾かれ、空へと舞う。

 

 だが俺は、手に取らない。

 

「ロード完了ッ」

 

 そうユイちゃんが叫んだ瞬間、俺はテイルとして戦いだす。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 槍が粉々に斬り裂かれてポリゴンへと変わる。

 

 初撃は刀を抜刀した。

 

 居合い、その初撃だけで多くのエネミーを狩ってきた刀はその一撃で仕事を終え、鞘に戻す。

 

 駆け巡る銃と魔法、そして剣技が舞い上がり、多くゲージを持つボスは一気に減っていく。

 

 大樹の回復を阻止するため、回復する水滴が落ちる、それ以前に出来上がる前にその大樹へと大剣を構える。

 

 彼の大剣は防御が硬い、大勢敵がいるなどでエネミーを狩り取る一撃。それがいま大樹を斬り落とす。

 

 大剣は仕事を終え背に戻り、瞬時コートからいくつも投擲武器が放たれる。

 

 これでいくつも武器切り替えの隙をカバーしていた。大剣が彼に降ろされたが背中に背負う槍がホルダーに納められたまま防ぐ。

 

 すぐに取り出し武器を弾く、主にそう言った用途に使用した。

 

 それと共にアスナとキリト、ALOの飛行能力で飛び駆けた。

 

「決めるぞキリト、アスナッ」

 

「ええっ」

 

「おう!」

 

 テイルとキリト、二人の二刀流が攻撃を防ぎ、切り替わるようにアスナが前に出て剣が光る。

 

 そこにユウキも駆けつけて二人の絆の技。マザーズ・ロザリオが放たれると共にキリトの双剣が輝く。

 

「スイッチッ」

 

 彼がそう叫ぶと共に全ての武器を収めて構える。

 

(これが)

 

 その瞬間、全員が驚く、彼の持つ全てが蒼く輝く。

 

「全開ッ」

 

 抜刀された刀の一撃が放たれると共に投げ捨て、槍を取り出し突き刺す。

 

「あれはスキルコネクトっ!?」

 

「って、まさか」

 

 槍はそのまま離れ、大剣のスキルへと流れて繋がる。

 

「11でも、16連撃でもないっ」

 

「刀、槍、大剣、投擲のスキルコネクトだあっ!?」

 

「違いますッ」

 

 双剣のスキルへと繋がり、そして片手で離し、片手剣スキルへと変化する。

 

「エクストラスキル。抜刀術、無限槍、暗黒剣、手裏剣術、二刀流、神聖剣、そして」

 

 空いた手に剣を投げ渡す、その瞬間色が変わる。より一層蒼い色へと、

 

「オリジナルソードスキルの連結」

 

 それが、テイルと言う者の全力だった。

 

「セイッアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ―――」

 

 回転される斬撃が叩きこまれ、吹き飛ばされるボスに、全員が驚愕した。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 会場に戻ると共に、ボスから手に入れた剣を使い、ボスエネミーを倒す。

 

 会場はユナの歌が響き渡り、人々の恐怖が消えて彼女も消えた。

 

 全てが終わる中、俺はエイジの下に来る。

 

「滑稽だろ……」

 

「お前」

 

 彼は通路の入り口でただ笑うしか無かった。

 

「僕も記憶スキャンの対象だったらしい、正直されたかどうかわからない……。なにもかも結局勇者に取られ、僕ら臆病者は蚊帳の外さ」

 

 もうなにもかも、全ての目的が無くなった彼に俺が言うべきことがある。

 

「………お前に言うなと言われたユナの言葉がある」

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

「俺に見てほしい人がいる?」

 

「ええ、お願いできないかな」

 

 そう言われながら静かに歩くのをやめて静かに聞く。

 

「どうしてそんなことを俺に頼む」

 

「それは、同じギルドで、貴方が一番強いから」

 

 ユナはそう言いながら、テイルはため息をつく。

 

「恐怖に勝てないのなら無理に戦わせないよう、説得するべきだ……」

 

「そうだけど、彼、どうしても現実に帰還したいみたいで……。お願いっ、あなたにしか頼めないとの!」

 

 そう言われ懇願される。

 

「なぜそんなにそいつに加担する」

 

 そう聞いたとき、

 

「………死んでほしくないんだもの、彼には、どうしても」

 

 それを言われて彼は歩みを止めた。

 

「それは」

 

「女の子にそれ以上言わせないで」

 

 そう頬を赤く染め、静かに告げられた。

 

 テイルは頭をかき、静かに頷くしかなくなる。

 

「それより、お前も死んだらどうする……。最近外に出すぎだぞ」

 

「その時は……、彼が私を追わないように見てて欲しいな」

 

 なんてねと微笑みながら、彼女はそう願う。

 

 結局全てはなにもしない選択を、誰かと繋がる選択を選ばなかったから止められなかった。

 

 すぐに彼女の記憶から生まれたAIと気づき、ノーチラスのことを思いだしていたら結末は変わっていたのだろう。

 

 結局、偽物が本物を真似ようとしたから、自分の力で挑まなかったから誰も救えなかった。

 

 テイルはそう思い、彼に彼女の全てを話すことしかできなかった………

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 その話を聞いてエイジはうなり声をあげる。

 

「もう分かっただろう、彼女は自分よりも大事なものがあったことを」

 

 誰よりも大切なものがあったから、変わり者のプレイヤーに頼み込んだ。

 

 そしてそれが大切だから、自分を追わないように頼み込んだこと。

 

 それほど大切なものが暴走していたら、彼女はなにを思うのかを。

 

 だからこそ止められる人間の前に、彼女は現れた。

 

 気づかず、キリトと行動してやっと気づいた。本当に道化なのは自分だ。

 

「それが俺がしゃしゃり出た理由だ……」

 

「そ、んな、僕は、僕は………アァァァァァァァァァァァァァァァァァァ」

 

 キリトたちもそれを聞きながら、これ以上彼に何も言わず、なにもできない。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

「………」

 

 エギルの店でリーファ、シノン、シリカ、リズでクラインの退院祝いをする。

 

 ARアイドルとしてユナは残る中、俺はと言えばぼーとしていた。

 

「どうしましたかテイルさん」

 

「最後の奴、エイジに言うなと言われてたが、言ってよかったかと思ってな」

 

「それは……、言ってよかったと思いますよ」

 

 その後ユナ、ARアイドルとして活動する彼女についてセブンに頼み込み、その権利全てを手に入れた俺は、彼女の夢、歌い手の夢を叶えさせた。

 

 彼にも手を貸してもらいながら、エイジはもう一人のユナのため、いま自分がしてしまったことの償いをしている。

 

 クラインもケガを負わせた奴だが話を聞き、もういいわとのことだ。

 

「それにしても、もう身体動かすのきつい……。しばらくは現実で動かしたくない」

 

「ははっ、現実でのテイルさん凄かったですからね」

 

「まあね」

 

 シノンが何か言いたげにこちらを見ている。最後に出てきた剣について、分からないと一応言っている。

 

 やはり勇者なんてものにはなりたくない。身体がもう悲鳴を上げているのだから。

 

「そう言えばキリトたちは」

 

「あの二人ならデートのはずだぜ」

 

 その瞬間、キリトヒロインズからは?と言う、やべっ。

 

 実は彼からキャンプの仕方を教えてくれと言われていて、泊まりでデートと言う、そんな話を知っていた。

 

 このままではキリトガールズに殺される。

 

「そう言えばさ」

 

「なんですかテイルさん、私たちいますっごく聞きたいことがあるんですけど」

 

「怒らないから答えてほしいです、テイルさん」

 

「俺のリアルネーム知ってる人、手上げて」

 

 その瞬間、えっ、あっ、あれ?と言う声。シノンですらあれ?と首をかしげた。

 

 エギルは『アンドリュー』で知られていて、俺は日本人で普通のはずだ。

 

 クラインですら『壺井遼太郎』という名前。

 

 だが結局誰も答えられず、どうにかうやむやにして俺は難を逃れた。




彼はけして本名を覚えてもらえない。

それではお読みいただきありがとうございます。
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