テイルたち、ボス攻略戦始まります。
フィールドは氷でできた床であり、かなり広々としているボス部屋。巨大な塔の内部を思わせて、広さは俺の知る部屋よりもだいぶ広い。七人、七パーティー用でもあるのだからそれなりの広さが必要なのだろう。
だが、
「氷の床が滑りそうだ」
床が鏡のような映るほどの氷の床。感覚が滑る床と同じの為、どうしてもあの戦いを思い出す。
「正直これがネックだ、妖精プレイヤーはもう飛んでいた方がいい。ガンマンは彼らを撃つなよ」
「それってフリかしら?」
「ピトさんフリじゃないからねっ、いまは仲間だからねっ。ここはGGOじゃないからね!?」
ピンクの子が騒ぐ中、キリトたち妖精は飛び上がる。
「いざとなればヘイトを集めるよ」
「そうしてくれると助かる。なんせここは銃で動きながら撃つには難しいからな」
そうして奥へと進むと一つの像がある。
かなり凝った作りであり、大柄の人間ほどの大きさで、近づくとそれは宙に浮く。白い空気が部屋に流れ込む。吹雪のような吹き荒れてそれが氷を創り出す。
「純粋な氷は綺麗な透明と聞く」
「あれでかき氷はうまいだろうね~」
「かき氷、いまは食べたくありません」
「あらやだこの子ノリがいいわ。欲しい」
ピトとフカと言うプレイヤーのノリに乗るうちの子。ともかく全員が置いておいて戦闘準備。コアとなる氷を除き、氷塊は大岩のように現れて五つ浮遊する。
「来るぞ、全員戦闘準備っ」
こうして俺たちの《覚醒大氷塊フリザーニャ》もどきとの戦いが始まる。
◇◆◇◆◇
それはかなりの重量を感じる戦いだ。
「ヒャッハアアアアアアアアアアア」
「撃て撃て撃て撃てーーーーーッ」
「わっはははははははですっ」
わたしたちはMMTMのメンバーを主催にボス攻略戦に出ることになった。正直ピトさんがこれを承諾したのに驚いた。
曰く、最初のボス攻略戦なんだから派手にやりたいとのこと。確かに最初にいたメンバーはGGO。ピトさんの好きなガンマニアたちの集まりだ。
それ以外のプレイヤーまたはゲームの人は氷のエネミーにかなり苦戦している。ここまでくるのにもそう言う印象だ。
それでも混合チームでまさかの、あのGGO最強プレイヤーの一人と言われているプレイヤー。テイルとその仲間の人たちが加わった。
「やっぱいいわあのアファシス。ノリって言うかテンションが好きだわ」
「マシンガンズと楽しそうに青いアサルトライフル持って弾丸ばらまいてるね~」
ボスのHPゲージは四つあり、いま一つ消し飛んだ。
「パターン変わるぞっ」
フカが言うにはALOで有名のプレイヤーたちらしい。その中で黒服の人が叫ぶと共に氷の数が増えたし、こっちの頭上にも現れたっ!?
この床走りずらいッ、滑るッ、敏捷値が高くてもうまく走れないッ。
「あっはははははは、マスター滑りますッ。つるつるなのですっ!!」
あの子全身で滑りながらマシンガン撃ってるっ!?
「よし決めた。レンちゃん、GGOでテイル見つけたら狩るわよ」
「あのアファシスはマシンガンの申し子、神の子だ………」
なんかマシンガンズの人たちが神託を受けた信者のような顔をしているし、その持ち主の人は呆れながらハンマー振り回して氷を破壊している。
「増えた数五つっ、攻撃パターン変化っ!!」
「妖精はそのまま指示してくれっ、聞こえたらすぐさま全員行動しろっ」
なにげにこのレイド戦司令官のような人が多くて助かる。Mさんみたいに指揮官っぽい黒い人、キリトさん?も指示してくれるし、Mさんもそう指示した。
すぐに滑りそうな身体で体制を整えてピーちゃんで狙い撃つ。
「アファシスちゃんや、こうして滑るのかい?」
「はいなのですっ」
フカはなにげにあの子のように滑りながらグレネードランチャー撃ってる。なにげにあの二人、撃つ反動で身体を滑らせて降り注ぐ氷のつぶても避けてるし、なんであんなに仲良いんだろう?
「こんのッ」
シノンと言う人が使うスナイパーライフルは一気にHPゲージを削る。あの銃《アンチマテリアル・ライフル》か。
「っと、レン上っ」
「ひゃああああ」
エヴァの声で気づいたけど、いつの間にか頭上に氷が降ってきた。急いで横に飛んでわたしも全身で滑る。冷たいし濡れるんだけどこれ。
「大丈夫かいっ? 向こうも一撃が重いみたいだから気を付けなよ」
「う、うんっ。けど火力はまだこっちが上だね」
「ああ。まさかあのマシンガンバカに加えて、後から来たテイルチームが強い」
そうです。彼らの火力もバカにできないくらい貢献してます。
「見た限り、彼奴らがだいたいの氷を砕いて破壊。落ちてきたのをハンマー組が的確に破壊して、妖精たちは一斉攻撃で撃ち漏らした氷を空中で破壊してる」
そうこのパーティーの意外なところで、ヘイト集めや撃つと滑ってしまうリスクも彼らのパーティーが補ってくれている。
「レンちゃんこの戦い楽しんでるぅう?」
滑るように銃、いまはアサルトの良い物で遊んでいるピトさんも、楽しそうに攻略戦していた。
「いっや~後から来たテイルチームが慣れてるね」
「レイド戦? そうだね、おかげで助かるよ」
ここで銃撃戦は滑って大変だけど、中にはクレハと言う人がUFG。テイルしか持っていない移動サポート銃で攻撃を避けて撃っている。このパーティー間違いないねっ。
「行けるっ、行けるよピトさんエヴァっ♪」
そう言った時、
「もうすぐパターン変わるっ。一斉攻撃停止っ。地上組が体制整えたら一気に削れっ」
「了解」
そう言った途端。ほとんどの人が攻撃を止めた。わたしたちGGO組は体制を整えたり、リロードがあるからね。ほんとたすか
「「「「「へっ?」」」」」
その時、マシンガンラバーズは一向に引き金から指を離さず、弾丸が一斉にボスのHPゲージを削った。
「あのバカ」
その瞬間、残り二本になったボスは本気になり、吹雪が部屋を包み、氷の固まりは大小合わせて20個以上出て来て、小さいのはムチのように固まりが繋がって振り回された。
ちなみに地上組の体制はかなり崩れている状態。
「このマシンガンバカあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
一斉に降り注ぐ攻撃に、全員が必死に回避し出す。
◇◆◇◆◇
二本でこれか。オリジナルの攻撃を避けながら、アスナとリーファが空中で回復魔法使用して削れた人たちの回復を始めていた。
アスナとリーファの回復のおかげで隊列は崩れているが、まだ落ちたプレイヤーはいない。ピナもピンクの子の頭の上にいる。
うちの子はリロードしながら全身で滑って攻撃している。あの子アクセサリーでいまある銃でいい物装備させて良かった。蒼い色だからお気に入りみたいだしね。
クレハも前もって渡していたUFGで生き残る中、氷を砕いておこう。こうして戦う中、氷の中の像を確認する。
(………?)
像は人型であり、自分を抱きしめるような形であるのが見えた。
それと共にその中央に三つの三角形が一つの三角形になるマークがあるのに気づく。あれは王家の紋章、俺の知る知識のシンボルでもある。
それに違和感を感じながらユウキたちがソードスキルを叩きこむ。ともかく氷を砕く中、全員攻撃を再開した。
「マスターっ」
無数の氷が檻のように降り注ぐがパターンは見切った。ギリギリで当たらない位置に氷を引き寄せて、ハンマーを振り回して纏めて破壊する。
転がり滑りながらこの景色は覚えている………
(ああくそ、嫌なこと思い出す)
その時ついにゲージが一本になり、ここは、
「一斉攻撃して一気に削るっ、出し惜しみは無しだっ」
「フカっ」
「オッケーイッ」
「肩借りるよッ!!」
シンクのパーティーの中で仲間の肩に銃を乗せて安定させたり、なにかリロードする弾を変えたりして全員が構える。
一斉射撃。すぐに銃と関係ないパーティーは離れた。その瞬間、撃ち放たれる爆撃音。部屋に響き渡り、ついでにヒカリが何か取り出す。
「あの子は」
プラズマ・グレネード。それを取り出してぶん投げた。
地上では無いから、跳ね返ったりすると誤射するのだが………
(あとで説教か)
二重の意味でそう思い、剣を構え投剣の応用で真っ直ぐ投げた。リズすまない。グレネードが核に跳ね返る瞬間、グレネードを貫く剣。
直後別の爆発音も鳴り響き、部屋が揺れた気がした。
「ひゃっわあっ」
どうも金髪のちびっ子もプラズマ・グレネードの弾薬を使ったようだ。
一気にゲージが文字通り吹き飛んで、氷と像が地面に落ちると共に床の氷が砕け散り、滑る床はただの床に変わる。象の方は氷が砕けて姿を出す。
その象もまた砕け、その中から何か蒼い涙のような宝石が現れた。それがこのレイド戦で登録したプレイヤーの誰かの元に下りた。
「アイテム名はなんて言うんだ?」
「あっ、ああ。待て、いま確認する」
ストレージを操作してすぐに分かったのは、
「『ネールの慈愛』って名前だな」
それを聞き全員が集まる中、こうして初攻略戦は無事に果たされた。
◇◆◇◆◇
「いっやー戦った戦ったっ」
「めちゃくちゃ楽しかったねっ、凄かったね、はちゃめちゃだったねっ♪♪」
フカとピトさんは楽しそうにそう言いながら笑い合っていた。
プラズマ・グレネードを投げたヒカリって言うアファシスちゃんは少し怒られて、それでも頭を撫でられてうれしそう。
「ナイトファイト、おかげでボス攻略戦は勝てたぜ」
「これはこちらが言うことだ。妖精との連携も悪くなかった」
向こうではリーダー同士が握手している。テイルさんはなにか考えていると言うか、アファシスの面倒を見ていた。
「とはいえ、根っこからGGOプレイヤーだからこういうファンタジー系のクエストはどうすればいいか分からない。悪いがこれから城にこいつを献上する。なにかこの先のイベントの為に確認や、見ておくべきところがあったら教えてくれるかい?」
「いいぜ、こっちもたぶん知りたいことだからな」
そう言う話でキリトさんから注意するべきところをいくつか聞くMMTMのリーダーさん。まずは王様に渡した時の反応。次にお姫様に関する情報らしい。
そう言えばこのイベントの始まりは、お姫様が神託を受けたかららしいからね。少し分かる。
重要アイテムでも渡すときの様子を気にかけなきゃいけないらしい。
「ファンタジーには結構変なのあるからね。大抵魔法で後からんなこと言われても困るって状況が起きる、選択肢は重要だぜ」
「うわっ、大変」
それらの話を聞いて少しばかり天を仰ぐ。
「どうも、これは謁見の様子を情報で売ってみるか。こんな大規模イベントそうは無いから楽しいが、やはりファンタジーは肌に合わなそうだ」
そう肩をすくめて、後は情報屋経由と言うことで話を終えて解散することになった。
◇◆◇◆◇
戦いを終えたあと、GGO組は弾丸補充に戻り、俺はと言えば、
「あんたって………。ここでも一応鍜治場レンタルできるから作れるけど、ほいほい壊さないでくれないかしら?」
「すまない」
リズに剣の補給を頼む中、ストレアやプレミアが見つけた料理を出す店に出向く話になりつつ、一時解散。キリトと共に詳しい話し合いをすることにした。
食材アイテム《魚介串焼き》や《串焼き肉キノコ添え》など手に持ちながら話し合っている。
「それじゃ、今回の敵は獣人の奥さんが鏡の魔力で豹変してあんな風に戦うのか?」
「ああ。今回はただの像だが、妙なんだ」
俺は王国の紋章が刻まれた像の中から、秘宝が出て来たことに疑問に思い、彼もそれを聞いて頭をかしげる。
「あれを守るように石像が作られたのなら、自分を抱きしめるように設計されたのも分かるな。王家の紋章入りなのは、聖地から出たときの入れ物ごとなのかどうか」
「そうなんだよな」
「ちなみに《ネールの慈愛》って言葉に聞き覚えは?」
「ネールはこの世界作った知恵の女神だな。別の話じゃ時の巫女として出て来た」
そう言いながらキリトは少しだけ難しい顔をする。
「どうした」
「あっ、いや別に」
キリトはそう言い、その後は別れる。しかしまあ、
「嘘が下手だな」
おそらく俺の体験のことを薄々勘付いているのだろう。
俺が体験した、実体験がゲームとして体験する。少し思うことがある。
俺自身は折り合いはあるが、気分がいいかと聞かれれば返答に困る………
「なんか果物食って、みんなと合流するか」
シノンも勘付きそうだから、色々考えなければいけない。そう感じていると、
「ん」
鳴き声が聞こえる。何かが何かにいじめられる。そんな動物の鳴き声。
すぐにそちらに向かうと、お祭り騒ぎのような町から外れ、カラスが猫を突いている。
「このやろう」
カラスはトリ肉だ。そんな解釈をして振り払う。
「俺がいま剣持ちじゃないことを感謝するんだな」
そう告げてから猫を見る。綺麗な白い猫であり、瞳も綺麗なもの。
ポーションを取り出し、傷付いているから飲ませてみると、
「? クエストか」
目の前にウインドウが開く。保護しますか? YES/NOの画面。
「YES」
猫は大切だ。こうして猫を懐に仕舞い、俺はその場から去った。
これがこのゲームの重要な選択肢とはまったく気づかずに………
確かカラスも出て来て鳥肉になったはず。あの世界鳥は肉だからな………
それではお読みいただきありがとうございます。