ソードアート・レジェンド   作:にゃはっふー

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こんな世界だもの、こんなことがあっても良いよね?


第49話・過ごした世界

 フィールドや町を探索中、俺たちは火山地帯と遺跡地帯を調べている。だけど火山地帯は先行するパーティーがいるらしいので、もしかしたらダメかもしれない。

 

 そう思いながらこのゲームを楽しんでいた。

 

「アルゴ、その情報本当か」

 

「アア、間違いない情報源サ♪」

 

 その話を聞きながら、俺はこの世界のゲームバランスに戦慄する。

 

 どこかのクエストである会員に成れば魔力が一日無限扱いされるドリンクがあるらしい。会員になる方法がバカ高い値段だが、魔法を連発するALOプレイヤーがいると言う噂が他にもあった。

 

「アスナやリーファにはもってこいだな。後は」

 

 これは一度でもダメージを受けなければ攻撃力が2倍になるばあちゃん特性スープなど、この世界は料理と言うか、アイテム効果が豊富だな。

 

 カエルやヤモリなども効果があるらしい。この世界は様々なアイテムがある。

 

「キー坊、いくつか情報をタダで渡すカラ、アイテムの効果が正しいか実験台に成ってくれないカ?」

 

「カエルやヤモリだろ? いいぜ、面白そうだ」

 

「それを聞けてオネーサンは助かるヨ」

 

 その後にバッタなども含まれるが、それでもチャレンジしてみる。ほんと、この世界はアイテムが多いな。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 なんて言うかゲテモノが増えた世界だ。俺の感想はそんなもの。シロを懐に仕舞い、料理店を眺めていたら阿鼻叫喚が聞こえる。

 

「《ネボケダケ》のキノコシチューに《アチチの実》と《サッサの実》の木の実ジュース………」

 

 さすがにおかしいと思えるくらいに混ざっていて、いくつか食べる気が起きない。先ほどから店内から聞こえる悲鳴もあるし、ここはパスする。

 

「にゃーーーーーーーーーーーーーーっ!!」

 

 気のせいかウチの《絶剣》の悲鳴が聞こえた気がしたが無視しておこう。これも経験だ。

 

 町には音楽団もあり、その楽器をよく見ると見覚えがある。もう『かぜのさかな』を起こす気は無い。

 

「怖い顔してるわよ」

 

 その言葉に俺ははっとなり振り返ると、少し不機嫌なシノンがそこにいた。彼女は《魚介串焼き》を手に持っている。

 

 その流れで彼女と共に町を巡る。そんな中で俺も手軽に買える《アップルパイ》を買い、食べ歩いた。

 

「ねえ、さっきどうして怒ってたの?」

 

「………ああいや」

 

 少しばかり話すべきかと考えたが、彼女に『夢をみる島』を説明した。

 

 そこで出会った人たち、その結末を聞いて難しい顔をするが、シノンにまでそんな顔をさせたくない。

 

「シノン、シノンや俺にとってこれは〝記録〟だ。記憶ですら無いもので」

 

「あなたにとってそれは本当に〝他人の記録〟なの?」

 

 それに俺は止まる。

 

 その先が言葉にできない。いやするべきことなんだろう。

 

 彼女たちが俺に対して話しかける言葉、全てが勇者のものであり、俺に投げかけた言葉なんて一つもない。

 

 俺が彼女たちにどれほど好感や信頼感を持っても、彼女たちが俺に向けるもの全て違う。

 

 その事実を飲み込めず、俺はシノンの言葉になにも返せない。

 

「ごめんなさい、その」

 

「いや、俺の方こそごめん………」

 

 シノンは敏感だ。俺が抱えるものが複雑なのも理解して、納得できず怒っている。俺も納得はできていない。それでも納得しなければいけない。

 

「ん?」

 

 そしてアスナからメッセが飛び、シノンもなにかあったのかと思い、メッセージを開く。

 

『キリト君がカエルやバッタを食べ始めてるの。止めるためにストレージを掃除したいので彼を見つけたらいつもの宿屋に連れてきてください』

 

 シノンと共にキリトに呆れる。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 ログアウトして時間を過ごす。自分の部屋で考えることはいまと昔の彼らの関係。仮想世界のミファーたちに加え、ゼルダ姫まで加わる。

 

「………」

 

 目を閉じると《ムジュラの仮面》すら含めた仮面が売られ、ユイや他のプレイヤーが仮面をかぶる光景。

 

 夜になると現れるゴースト系やスケルトン系に怯え、アスナが夜の探索から外れ、戦力がガンガン行こうぜに(いつものことだが)なるパーティー。

 

 衣装、ただのデザインだけの装備でハイラル兵士や《英傑の服》を着込むプレイヤー。アスナは朝と昼は元気良いんだけど、キリトが肝系の魔物素材を隠し持っていててキレていた。

 

(気分が良いとは言えない。それでも折り合いをつけないといけない)

 

 色々な出来事を体験したが、どれだけ感情移入しても俺は偽物だ。そうでなければいけないと思うときはいくつかある。ミファーのような勇者に恋する者たちがそうであり、体験の中で俺に向けられた感情は勇者のものでなければいけない。

 

 それは良い、それだけは良いんだ。

 

 だけど………

 

 夢を語られ、願いを聞き、叶えたときや感謝の言葉。その言葉を自分の物にしたくなるときがあったのは確かにある。

 

 意味が欲しい。俺が地獄を見る意味が欲しかった。

 

 だけど意味を求める時点で絶対に、俺は勇者の資格なんて存在しない。

 

(俺はある意味、魔王と同じなんだろう)

 

 勇者や姫が、女神が持つものを奪おうとした彼が自分なのではないか? 彼らの全てを手に入れようとする意思だけは共感できるのでは無いかと考える。

 

 ただその為に全てを犠牲や破壊する手段だけは俺は選ばない。それだけは本心から言えること。

 

「だけど延々と考えるのはな………」

 

 それでもきっと、これは俺に付きまとう感情なのだろう。そう思いながら、今日は少し勉強してから眠る。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 俺はアスナから妙な食材アイテム禁止令を言い渡され、仕方なくユイや他のメンバーの話を聞く。デイジーは相変わらずツェリスカに送る写真撮りに忙しそうだ。

 

 ユウキは色々なお店の食べ物にチャレンジしたりして、凄い目に遭っているらしい。どんな店か聞いておくか。ユイも不思議なお面をかぶったりして遊んでいたりする。

 

「パパ、この町の音楽は綺麗な曲が多いです。オリジナルなのか、お歌を歌う人もいて聞きに行きたいです」

 

「そうか、ならアスナと一緒に行くか」

 

「はい♪」

 

 微笑むユイ。その時にメンバー全員にテイルからメッセが飛んでくる。なにかあったのだろうか?

 

「なんだテイルの奴?」

 

 その内容は………

 

『護衛クエスト?が発動した。内容はミファーの護衛? 内容を聞く限り二人っきりで行動するらしい? ?が多いのはウインドウが開いたりせず、口約束のように城下町を見てみたいと言った彼女に俺が連れていくと言ったらそうなった。クエスト表記が無い。ともかく二人っきりで見て回りたい、内緒の話らしいので、町中で俺たちを見つけてもスルーしてくれ』

 

 その内容を見て、俺も真剣に検証する。ウインドウが開かないクエスト? 報酬が何かが分からないのはいいとして、内容が詳しく分からないものか。

 

「プレイヤーなら少しは分かるけど、NPCでこれは………。みんなはこのクエストをどう見」

 

 その時、俺はユイが物凄い顔をしているのを見た。

 

「ゆ、ユイ?」

 

 光が無い瞳。真っ暗な瞳でそのメッセージを無表情でじっと見つめ、ユウキも同じように表情が消えてそれを見る。

 

 クラインはあーあとなぜか俺を見て、シリカ、リーファ、リズ、シノンも俺を見る。なんで俺を見るんだ。

 

 アスナは頭を押さえながら、静かに長いため息をつく。

 

「これってデートよね?」

 

「は? デート? それって彼とミファーが?」

 

「この文面からそうとしか書かれてないじゃないっ」

 

 クレハはなぜか叫び、ヒカリは悲しそうにメッセージを送ろうとしていた。

 

「ツェリスカへ。マスターはやはり、わたしを捨てるようです………」

 

「待てっ、それを送ると今度こそ収拾がつかなくなるッ」

 

「ほんっと男って勝手よねッ」

 

「まったくだわ」

 

「………」

 

「リズ、シノン。なんで文句を言いながら俺を見る? シリカ、なんで悲しそうに見るんだ?」

 

「自分の胸に聞いてみてよお兄ちゃん」

 

 リーファまで同じようなことを言うが、ともかく彼はクエストのため、二人っきりの環境を整えるらしい。そう話を纏めていたら、フィリアが待ってと叫ぶ。

 

「このメッセージって誰にまで流したのっ!?」

 

「!? ストレアか」

 

 ストレアなら面白がって後を付けそうだ。だが、

 

「違うッ。もうこれだからキリトはッ!!」

 

 なぜか物凄く睨まれて、フィリアはすぐに、

 

「ティアよティアっ。彼女もここに来てメッセージ飛ばせるようにしてあるじゃない」

 

「あッ」

 

 リズの言葉に、俺たちは物凄い殺気、闘志と言うものを感じて店の入り口を見る。そこには大剣を背負うティアが難しい顔でメッセージを見る。

 

 静かにウインドウを閉じて、プレミアは細剣、ゼロも構える。なににっ?!

 

「どうやら私は倒すべき敵を見つけたようだ」

 

「待て待て待てっ」

 

 俺たちが急いでティアたちを取り押さえる。プレミアまでなにをしようとしているんだっ。

 

「キリト、そんなに抱きしめられると照れてしまいます………」

 

「お兄ちゃんこんなときになにしてるのっ」

 

「あーーーーもうっ、お兄さんが女たらしになったのは」

 

「ごめんなさいクレハ………。キリト君っ」

 

 アスナはなんで俺を睨むっ。みんなしてなんで俺を睨んだり悲しんだりするんだっ。

 

 ともかく彼のクエストは無事に済ませるために、俺がしっかりするしかない。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 彼女は赤い髪を隠すように束ね、布を深々と被り、町娘の衣装で町を巡る。

 

 町では見覚えがある食べ物、音楽が聞こえたり、多くのゲームのプレイヤーとNPCが行き来していた。

 

 彼女と共に出店を見て回ったりする中、このイベントはどんな意味があるのか分からない。シロを懐に仕舞いながら、俺は色々見て回る。

 

 だがやはり複雑だ。この世界の在り方があの世界やこの世界。体験の中の物が多すぎるんだ。

 

「難しい顔をしてますね」

 

「あっ、ああ……。すまない」

 

「いえ、無理を言って連れて来てもらっているのは私の方ですから」

 

 その時、リボンなどアクセサリーが売られている店を見つけた。せっかくだからこの猫に付けるリボンでも買うか。

 

 彼女と話して共に店に入り、リボンにも色々あって、彼女と共にシロに合うリボンを決める。

 

「この子なら………、これが似合うと思います」

 

「そうだな、それと」

 

 買い物を済ませる前に、俺はイヤリングを手に取る。それは彼女に合いそうな物を見つけたからだ。それも買うことにした。

 

「えっ、あっ、あの」

 

「気にしないでくれ、リボンを選んでくれたお礼だよ」

 

 そう言って彼女へとイヤリングを買い、猫が気のせいか俺をジト目で見ている気がしたが気にしない。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 結局このクエストはなんなんなのだろう。屋敷に戻り、彼女はいつもの衣装、それに髪の間から買ったイヤリングがちらりと見えていた。どうやらもう使ってくれているようだ。

 

「今日はありがとうございます。おかげで町の人たちの様子や、他の世界の方と出会えて、楽しかったです」

 

「そうか……。それはよかったよ」

 

 そう言って俺はこのままログアウトしようと考える。今日は少し疲れた。

 

「あの」

 

 そう思い帰ろうとすると、彼女がそっと俺の手を繋ぐ。

 

「少しだけ、おかしな話をしていいですか?」

 

 イベントか? 俺はそう思い、静かに頷いた。

 

 彼女の頬は少し赤く、そのまますでに夜近くの夕焼けのテラスを見つめ、静かに呟く。

 

「あるお姫様と、勇者の、夢のお話です。私はお姫様で、異種族の勇者と恋をする話」

 

「それは」

 

 俺はそれを聞いて心だけが遠い場所に行く感覚に見舞われた。

 

「その中で、勇者ではない人が、勇者としてその世界に生きる記憶があるんです」

 

 その時、世界から音が遠ざかる。町の雑音はもちろん、聞こえないはずの俺の心音が聞こえ、なにもかもが遠く、不思議に感覚になる。

 

 ここにいてここにいない、あの体験の………

 

「その人は勇者と同じ軌跡をなぞるように生きて、世界を救います」

 

「………そうか」

 

「………夢の中の私は、勇者様の後ろに彼がいることを感じていました」

 

「それは、きっと悪夢だろうな」

 

 そうだ悪夢だ。最愛の人では無い人間がそこにいるんだから。

 

 だけど彼女は首を振り、俺の手を握りしめて俺の目を見る。

 

「違います。確かにその人はお姫様の好きな人じゃない。だけど」

 

 それは、きっと聞きたかった言葉だろう。

 

 

 

「私たちはあなたにも感謝している。それは確かです」

 

 

 

 その言葉はなんで彼女の口から出たんだろう。

 

 ここは仮想世界、データで、俺の記録から出て来た世界だ。

 

 だけどその世界の住人である彼女は言う。

 

「その人は感謝の言葉も何もかも、勇者に向けられた言葉であると言います。ですけど、そこにいて、勇者の中で戦い傷付き、そして助けようとしてくれた彼は、紛れもなく私たちにとって勇者と変わらない」

 

「違う、そんなのは偽物だ。それは偽物でしかない」

 

 俺はすぐに否定する。そうだ、俺はただ試練の一つとしか見てない。見ていないんだ。

 

「違います、あなたも私たちにとってかけがえのない仲間です」

 

 なぜ彼女からそう言われなければいけない。

 

 なぜここで、この世界で、この世界の住人から言われないといけないんだ。

 

「ごめんなさい、なぜかあなたに伝えないといけないと、ずっと、あの日出会ってからしばらく経ち、この夢を見てからずっと思ってました。伝えないといけない、きっとあなたは、背負い続けるから」

 

「………君は」

 

「夢の中の私は別の私、ここにいる私は、私です。私があなたに対する想いは、私だけのもの」

 

 そう言って手を放して、静かに微笑む。

 

「忘れないでください。例えあなたが自ら偽物と名乗っても、それでも変わらず、あなたに感謝を。あなたはあなた、あなたに贈る言葉は、勇者であろうとなかろうと変わらないと」

 

 なぜ俺はこの言葉をみんなからの言葉と思う。救われたいからだろう。きっとそうだ。

 

 シロが鳴き、俺にすり寄る。

 

「きっとあなたならこの世界を救える。多くの世界を救ったあなた、私たちの、かけがえのない大切な仲間である、あなたならきっと………」

 

 その後彼女と別れ、俺はログアウトしてしばらくアミュスフィアを見つめた。

 

 ただのデータの言葉だ。きっと俺がそうであって欲しいからそうなっただけだろう。

 

 きっと、そうなんだろう………




救いか妄想か、彼には決められない。

少しうじうじ考え込みますが、それだけ根が深いところに食い込んでます。まあそうなるほどきつい体験でしょう。

それはそうと手出し過ぎですねテイル。キリト共々痛い目を見る日は遠くないでしょう。

それではお読みいただきありがとうございます。
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