ソードアート・レジェンド   作:にゃはっふー

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第50話・力の試練

 火山地帯で七パーティーによるボス攻略戦の話が持ち上がる。

 

 ボス部屋を見つけたパーティーはとりあえず楽しもうと思ったのか、場所の公開と共に募集をした。パターンも話に出ていて、攻略方法も情報として表に出ていた。

 

「今度は『覚醒火炎獣マグドフレイモス』か」

 

 キリト、シノンにそのことを告げる。今度はそいつだ。攻略方法は額の宝石を弓で射て、怯んでいる隙に足の鎖を引っ張り転ばせて顔を斬る。

 

 このボスも同じであり、額の宝石がクリティカル。それ以外だとHPの減りは悪いようだ。大きさはかなりでかく、宝石も巨大なものに変わっていた。

 

 数人で足の鎖を掴み転ばせるか、遠距離攻撃でダメージを負わせるしかない。遠距離攻撃はALO、またはGGOプレイヤーがそれか。

 

 転ばせれば宝石への攻撃はクリティカルになり、大ダメージが狙える。

 

 ちなみに攻略方針は転ばせてからの大ダメージ狙い。募集は妖精とGGO。あと数名の力自慢とのこと。

 

 時間指定されていて、その間ボス部屋前に来たパーティー先着順。クリアアイテムは各パーティーリーダーの名前を登録。誰がドロップするか恨みっこなし。

 

 その話を聞いてキリトとシノンは、

 

「今度の戦闘は都合の付くメンバーで先行だな」

 

「これってメイジ系の妖精とかが募集だが行くのか」

 

「ああ」

 

 精鋭チームで一枠狙う方針でチームはどうするか。このあと話し合うことになる。

 

 チームリーダーキリト。テイル、クライン、エギル、シノン、アスナとユウキ。

 

 ヒーラー一人で接近戦ばかり。このメンバーになるが、

 

「ねえパーティーリーダーはテイルがいいんじゃない?」

 

「なんでだ?」

 

「リアルラック高いですからね、テイルさん」

 

「確かに、キリト君よりは絶対にあるわね」

 

 そんなこと言われても別にいいだろう。

 

「残りのメンバーは」

 

「もう一つ、最後のアイテムが眠るフィールド探索っ♪」

 

「まっかせてね~♪」

 

 残りのメンバーも嬉しそうに話し合う中、可愛らしくなっているデイジーが、

 

「皆さん、実はマスターがこっちに来られそうなんです。その際、攻略に参加させて欲しいとのことです」

 

 デイジーが嬉しそうにしてヒカリも喜ぶが、

 

「ツェリスカさん、忙しいのに平気なのかしら?」

 

「確かに」

 

 ツェリスカはGGO運営日本支部の人間。それを知っているメンバーは首をかしげた。確か上司も変わり、色々大変な時期だが、

 

「はいっ、どうあっても出て銃を撃つ。そう言っておりました」

 

「ああうん、分かった」

 

 ストレスが溜まったんだろう。全員がなんとも言えない顔になりながら納得した。こうして明日の攻略戦に備える。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

「ほら、大人しくしてくれ」

 

「マスター? どうしたんですか」

 

 この仮想世界の宿屋。部屋でシロをお風呂に入れている。ミファーの領土とくっついている設定、その為多くのプレイヤーを受け入れられるほど部屋数はあるがかなり設定は高い。

 

 ハウスが買えればいいがそれは無く、中には元の仮想世界に戻ってログアウトする者もいる。

 

 俺はミファー領土の宿を借りて、ヒカリを初めとしたNPCメンバーとユウキを泊めていた。

 

 浴室で格闘後、俺はシロを抱き上げて持ってくる。

 

「テイルって動物の扱い上手だよね~」

 

 ピナは時々頭に止まることを思いだしたのかユウキはそう呟く。

 

 しかしこの子はお風呂嫌いだな。俺にしか懐いてない雰囲気なのにその時だけ全速力で逃げ出す。飼い猫ミケは自ら入ってくる。なぜか詩乃が入ってるときは乱入しないと言う紳士だ。

 

 この子はぐったりする中、ベットに腰掛けて膝の上に乗せた。静かにマッサージをしながら、ミケと同じ扱いでユウキに話しかける。

 

「町で変わったことは無いか確認しないと」

 

「はいですっ。町の人たちはクリアアイテムである《ネールの慈愛》を手に入れてその話題で持ちきりなのです」

 

 ゼルダ姫の話として、女神の血筋であり退魔の力を持つとされている。

 

 動物を始めとして自然を愛しむ、心優しいお姫様として有名と言う情報が浮上して町の人たち、国の者たちは病に伏せている姫を心配しているとのこと。

 

 容姿は長い金髪に綺麗な白い肌。湖のような深い蒼の瞳らしい。

 

「この子みたいだな」

 

「そうだねっ、にゃーにゃー♪」

 

 ユウキも近づいて撫でる。俺自身から離れず、撫でられるシロは綺麗な蒼い瞳。

 

 背中に張り付くヒカリも撫でながら俺は考え込む。

 

「テイムしたのだろうか?」

 

「ピナみたいに?」

 

 ユウキもなついてくるため、なでなでしながら考え込む。

 

 条件らしいことはしたのは確かだ。預ける場合はデイジーに面倒を見てもらう。デイジーが言うには大人しく品がある猫らしい。

 

「今度この子を連れて町を歩こうか。どこかでイベント発生するかもしれない」

 

「飼い猫見つけたとかって言うイベント? 面白そう、ボクもボクも」

 

「マスター、自分も忘れないでください」

 

「はいはい」

 

 ともかく遅くなるからログアウトしなければいけない。明日は巨人になったもどきと対決だ。どうなるか不明のまま、明日に備える。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 ボス攻略戦は壮絶な戦いだった。

 

 巨大な神殿の奥地。いくつもの巨大な石柱がいくつも並び、天井は真っ暗で見えない。僅かな灯火の中、それが暴れ出す。

 

「うっおおおおおおおっ!?」

 

「力込めろクラインっ」

 

 まるで巨人相手に戦っているのは羽根も銃も無いプレイヤーであり、巨大な燃える石像。まさに覚醒火炎獣マグドフレイモスを巨大化させたものだ。

 

 だが吐き出される炎を含め、攻撃は単純だが被ダメがでかい。

 

 あとは体力ゲージと耐久性が高い。銃の雨を受けながら転ばせた瞬間、宝石に殺到する。

 

 メンバーはキリトをパーティーリーダーに俺、クライン、エギル、アスナ、ユウキ、シノンだ。

 

「「うおおおおおおおおおおっ!」」

 

 キリトと共に連撃を放ち続ける。ユウキも負けずと攻撃するが、

 

「これだけやってゲージ二本かよっ!?」

 

「ああ、攻略方針がクリティカル狙いなのも分かるっ。銃と魔法だけじゃ削るのに時間がかかり過ぎだっ」

 

 地団駄を踏むと天上から落石と言う攻撃パターンまである。

 

「ここって洞窟なのか人工物の天井なのか聞きたいぜ」

 

「んなもんそういう設定ですだろっ。いいから避けてからまた鎖引っ張るぞっ!!」

 

 落石攻撃を避けながら、柱をうまく利用して巨大な鎖を引っ張り転ばせる。羽根も銃も無いプレイヤーは必死になりながら動きまくり、羽根を持つキリトたちはその間タゲを取り、ヘイトを集めていた。

 

 銃攻撃班も宝石に撃ち続けて相手を怯ませていた。これがなければこの流れ作業途中で誰かが力尽きるだろう。

 

「これってテイルたちが一番大変な作業だね………」

 

「とはいえ、俺たちも一撃でも食らえばレッドだ。って」

 

 空中で話していると手に付いている鎖を振り回してキリトたち妖精を狙う石像。

 

 ユウキたちも必死になりながら、アスナが回復、魔法組の指揮官をしている。

 

 GGOのシノンは別のプレイヤーの指示の下、自分の位置取りをしつつこなしていた。

 

「やっと一本」

 

「よし反撃だっ」

 

 そうクラインが叫んだ瞬間、鎖を両腕に巻き付けた石像。そのボスのパターンに驚くと、募集をかけた人間の話を思い出す。

 

「そう言えば、ボス情報はゲージ一本の時は無かったが」

 

「ここで新しいパターン?」

 

「嘘だろおいッ」

 

 何度か踏ん張るボスが燃え盛る。マグマの血液のようなものを吹きだして、キリトたちを含め全員が溶岩の雨が頭上から降り注ぐ。

 

「ふっざけんなッ、思いっきり怪獣映画じゃねえかよおおおおおおおおおおおおお!」

 

 クラインの叫びに全員が同意しつつ、どうにか避け、鎖を見るが、

 

「待て待て、溶岩がしっかり地上に残ってるんだが」

 

「ああ、しかも鎖が熱で赤くなってるな。ここで攻撃アップだと?」

 

 エギルがこの光景にさすがにうんざりになる。

 

 フルパーティーによるレイド戦だが、これはボリュームがありすぎるボス戦だ。

 

「やるしかねええええええええええ!」

 

 鎖にいち早くたどり着き、地面に引きずられる鎖を掴み、まだ一人だけなら引っ張ることはできなくても柱を利用する位置取りはできる。

 

 クラインたち引っ張り隊がすぐに合流して、一気に引っ張る。ユウキたちもすぐに前線に出て、うまく誘う。

 

「全プレイヤーに通達っ、もうこれがラストチャンスだっ。ここで全員の攻撃を宝石に叩き付けるぞっ!!」

 

 募集をしたプレイヤーリーダーが叫び、キリトもそれしか無いかとアスナを見る。アスナはすぐに細剣を取り出した。

 

「来るぞっ」

 

 俺たちが鎖を引っ張り、転ばせた瞬間、地面が揺れて石像の火が消える。

 

 瞬間宝石へまずはGGOプレイヤーが一斉砲撃。すぐに妖精たちが飛来して、俺たちは走る。

 

「走ったり引っ張ったり戦ったり、今回のボス戦過酷過ぎるなッ」

 

 そう言いながらユウキとアスナの《マザーズ・ロザリオ》が決まり、俺たちが殺到する。

 

 宝石に一気に叩きこみ、俺の攻撃が済み、立ち上がろうとした瞬間、

 

「キリトっ」

 

「任せろおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」

 

 キリトが宝石に剣を突き刺した瞬間、雄たけびが響き渡り、空間を震わせる。起き上がる石像は一気にヒビが走り、粉々に砕け散った。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

「だーくっそ。今回重労働過ぎるだろオレら」

 

「確かに、キーマンだろうが疲れたな………」

 

 クラインやエギルを始めとしたほとんどのプレイヤーがその場に座り込み、お互いを称え、ボスを見る。

 

 ボスの宝石だけが残っていたが、それにも亀裂が走り砕けた。中からアイテムのような、炎を象る深紅の宝石が別のプレイヤーリーダーの下に。

 

「………やっぱ、テイルをリーダーにすればよかったんじゃね?」

 

「かもねえ~」

 

 クラインの言葉にユウキがそう言いながら、全員が集まる。キリトだけがばつが悪い顔でいた。

 

「アイテム名はなんだろう? 少し聞いてくるね」

 

 アスナがそう言って話しかけに出向く中、キリトとシノンは俺を見ていた。

 

「どうした?」

 

「ああいや………」

 

 少しだけキリトは戸惑うように首を振る。それだけで察しは付く。

 

「あのな、いくらなんでもここまで凄くねえからな」

 

「それは」

 

「体験はほとんど一人の人間? が一人でできる範囲だ。こんな怪獣決戦は無い」

 

 ラスボス戦以外と付くが、俺はそう言っておく。

 

 それでもシノンを含め、キリトはなにも言わずに見つめて来る。そうしていたらアスナが戻ってくる。

 

「アイテムネーム分かったよ。アイテムは『ディンの灯火』だって」

 

 それは力の女神の名前だと記憶が囁く。やはりここまで同じか。そう言う流れではピッタリかと思いつつ、こうなると次は、

 

(次は勇気の女神フロルか)

 

 そう思いながら町へと帰還する。

 

 心なしか手の甲が熱くなる気がする。それはきっと体験により刻まれたなにかだろう。そう思いながら頭を振って帰る。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

「はあ」

 

 ログアウトしたキリトは《アミュスフィア》を手に取り見ながら考え込む。

 

(たった一人か)

 

 誰にも理解されずに、デスゲームに備えて気が狂うような体験をしたのだろうか。つい考えてしまう。

 

 自分が考えても仕方のない、もう済んだ話なのに。

 

「くそ、これも今回のイベントが彼の記憶から作られてなければな………」

 

 カーディナルは何を思って彼から知識を得て、それをゲームのイベントに組み込んだのか。

 

 もっと言えば運営か。そう言えば今回の運営は個人運営から大手含め、合作のようなイベントらしい。

 

「セブンに聞けば、少しは分かるかな?」

 

 彼女も今回のイベントに参加したいらしい。だから仮想世界で会うことができるだろう。

 

 そう考え込みながら、静かに《アミュスフィア》を置く。

 

「まあ今回もただのゲームだ、気にすることはないな」

 

 そう呟き、俺は静かにこの後どうするか考え込む。

 

 それが俗に言う、フラグになるとは知らずに………

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 戦いの中、秘宝が三つになり、一人の少女が本を閉じる。

 

「退魔の勇者様………」

 

 少女はそう呟きながら、王城を見つめる。

 

「ゼルダ待っててね。わたしが必ず、秘宝と勇者様を見つけるから」

 

 隣で眠る友達と共に、異世界の冒険者が行き来する街並みを見ながら、彼女は固く決意する。

 

 一人の青年を苦しめる現実は、形を変えて動き出す。




火山地帯クリア。ともかくでかくなった奴が相手になって、元になったボスよりも強くなった。

キリトパーティーは前衛職が多いな………

それではお読みいただきありがとうございます。
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