ソードアート・レジェンド   作:にゃはっふー

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第55話・動き出す異変

 俺たちはハイラル城へと向かうことになるが、大人数ではいけない。1パーティー人数のみなので俺、キリト、アスナ、クライン、ユウキ、セブン、ツェリスカ。

 

 俺以外全員ジャンケンで決まり、城の中を歩く。

 

 ちなみにアファシスは相変わらず頭数に入らず、ピクシーもそうなのでユイとストレアもいる。ストレアはずっと俺の肩に乗り、懐にはシロがいる。

 

「ラナ様方もご一緒で、お久しぶりでございます」

 

「大臣さんもお久しぶりです♪」

 

 ラナたちへの対応も慣れている城の人たち。俺は回りを見渡す。

 

 城の作りだけはどの〝ハイラル城〟と当てはまらないが綺麗な作りであり、広々とした玉座にたどり着く。

 

 そこにいるのは、

 

「勇敢な異世界の冒険者よ。私がこの国の王である『ローム・ボスフォレームス・ハイラル』だ」

 

 堂々とした声で話しかけて来るハイラル王はまさに、記憶の中にいるその人本人。ここまで知識を引き出されていることについて、俺は〝アンノウン〟についてなんともいえない感覚になる。

 

 その側にいるのがゼルダ姫と紹介され、隣を見ると流れる金色の髪に白いベールで素顔を隠す。美しいドレスを着こむ少女がいた。

 

 謁見の時だから、いまはなにも反応していないが、どこか嬉しそうなラナとリンクル。だがゼルダ姫は無言のまま、こちらを見ている。

 

「最後の秘宝を持って来ていただいたんですね」

 

 そう話しかけてきたゼルダ姫に、俺は全身から違和感を感じた。

 

(なんだ?)

 

 記憶が揺れる、警告を放つ。なんの?

 

(これはゲームだ。違う、やめろ。関係ない)

 

 フラッシュバックする〝ゼルダ姫〟。やめろそれは俺の記憶じゃない〝記録〟だ。首を振りかけたが肩にストレアが乗っている。

 

「どうしましたか?」

 

「………いえ」

 

 目の前にいるゼルダ姫が〝ゼルダ姫〟と違う。当たり前の感覚に俺は困惑する。ここまで拒絶反応は初めてだ。

 

 ミファーたちとは違う、根本的な拒否。いままで見た仮想世界の再現に対してここまで拒絶反応が出るとは思わなかった。

 

「それでは最後の秘宝《フロルの祝福》を渡してくれますか?」

 

 そう静かに話しかけて来るゼルダ姫に、俺の前にYES/NOのウインドウが現れた。

 

「? テイル?」

 

 キリトの声が聞こえるが、なんだこの違和感。警告が頭の中で鳴り響く。

 

 ともかくどうするか考える中、突然シロが飛び出た。

 

「なっ、シロっ!?」

 

「なんだこの白い獣はっ!?」

 

 そう言って飛び出たシロを振り払おうと手を上げた。

 

 それに全身の警告音と記憶が繋がった。

 

「やめろッ!」

 

 すぐにシロを抱き上げ、NOを選ぶ。

 

「………何を考えているのですか、早く秘宝を渡してください」

 

「渡せないッ! お前」

 

「ゼルダ?」

 

 ラナたちも俺の前に立つ。二人も困惑している。

 

 雑音が頭の中で流れる。目の前のそれが、違うなにかと重なった。

 

「誰だお前はッ!!」

 

 俺の反応にキリトたちが驚く中、ウインドウは再度現れたが、NO以外選択は、

 

「黙れッ! ここまで来ればこちらの物だッ!!」

 

 その時、勝手にYESボタンが押される。それにはプレイヤーであるみんなが顔を上げて驚いた。

 

「なんでっ!? テイル君は触ってないのに」

 

 ストレージから勝手に《フロルの祝福》が飛び出て、ゼルダ姫から影が噴き出す。

 

「これはなにッ!? こんなイベント聞いてない」

 

 セブンの言葉と共に《ネールの慈愛》と《ディンの灯火》。《フロルの祝福》が三つそろって影の手に掴まれる。

 

「にゃーーーーーーーー」

 

 その時、シロから白い光が放たれ、それが衝撃波のように広がり、ピクシーであるストレアが吹き飛び、キリトがキャッチするが、

 

「せ、セブンっ!?これは」

 

「知らないっ!? 秘宝を全て集めても邪悪な者が住まう城が現れるだけなの。こんな仕様じゃないわっ!!」

 

 困惑する中、ゼルダ姫から影が生まれる。宝石が砕け散り、ハイラル城が揺れ出す。

 

「これはいったい」

 

【忌々しき女神の血族めッ! 獣の姿になり果ても我が邪魔をするか!】

 

 影からそう叫び声が響き、だがと続ける。

 

【だがもう遅い、全ての世界を闇に堕とす。全てはもう止められない】

 

 ゼルダ姫が消え、影は天井を貫き空に消える。

 

「お、おいなんかまずいぞっ」

 

「ともかく外に出るぞ。シロ」

 

 シロを回収して全員が外に出る。白亜の城は闇に染まり、空が曇り、闇に染まる。

 

「なんなのこれ、こんなイベントじゃない。こんなことあり得ない」

 

 セブンが呆然とその光景を見る。本来のラスボスの城はハイラル城を奪い取り、この世界に異変を引き起こしだした………

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 外ではプレイヤーたちが魔王の城が出現して湧き上がる中、俺たちは宿屋に集まり、外にいるスメラギの話を聞いたセブンから話を聞く。

 

「《カーディナルシステム》が暴走したわ」

 

「それは本当なのか」

 

 この世界は〝アンノウン〟を元に創り出すため、ALOと同じ《カーディナルシステム》を元に創り出されている。

 

 カーディナルにはマップデータを消去する権利があり、ALOなどではカーディナルのクエストにてプレイヤーの行動結果、フィールド全体を変えるクエストが起きた。

 

 それは未然に防がれたが、今回もそれが原因か。

 

「ううん。そのクエストは運営側も把握してるから、今回もそうならないように対策を立てられていた。もとよりあたしもそれを手伝った。なのに」

 

「セキュリティシステム全てを通り抜けて、いまの状態になったのか?」

 

 セブンは苦々しい顔で頷き、ツェリスカもまた困惑していた。

 

「本来運営しか持たないGМ権限、それがイベントに乗っ取られたわ。いまザスカー、上は混乱してる」

 

「ザスカーって、GGO運営にもなにが起きているのか」

 

 セブンと共に頷き合うツェリスカ。テイルもまた困惑していた。

 

「なにが起きてる」

 

「本来のストーリーで秘宝を渡さない選択肢。そもそも選択肢なんて存在しなかったの」

 

「どうしてそんなこと」

 

「あたしだって最初の時に選択肢があるって情報が流れたとき、スメラギたちと一緒にデータを一から見直したけど問題は無かったの」

 

 セブンが最初この世界にログインできなかったのはそれが原因。

 

 さんざんデータとにらめっこしていたがおかしなデータは一切合切見つからず、ともかくそのままにしたらしい。

 

 だが、

 

「魔王の設定は全ての世界を繋げ合わせて、魔物が支配する世界に変えること。それがGМ権限を手に入れて暴走した」

 

「まさか全ゲームに影響与えるとか」

 

「その通り。ゲームをリンクさせているシステムを先に乗っ取られて、いつの間にか全ゲームがカーディナルの管理下に置かれていた。こんなこと信じられない」

 

 セブンが理解できないと頭を振り、ツェリスカも権限を取り戻そうとするが、すでに無意味な状況らしい。

 

 すでにイベントは全ゲームに影響するものになり、このイベントの結果により、リンク先の全てのゲームに影響を与える。

 

「まずはフィールド全ての改変が起きて、出て来るモンスターもレベルが上がる。システム自体全く変わる可能性があるわ」

 

「そんな」

 

 リーファたちが信じられないという顔で窓の外で、いまだプレイヤーたちが挑む改変されたハイラル城を見る。ハイラル城も変わるのではなく、魔王の城へと続く門が現れるはずだった。

 

「ちなみに改変が起きてしまう条件は」

 

「スメラギたちがデータを整理したところ、秘宝を手に入れたプレイヤーのゲームオーバーよ」

 

「たった三人のプレイヤーのゲームオーバーが敗北条件なのっ!?」

 

「そんな、秘宝を手に入れたプレイヤーは」

 

「確認したところ、秘宝入手後、HPゲージが一度でもゼロになった場合、敗北としてカウントされる。他のプレイヤーはすでに一度ゲームオーバーして、あと一人よ」

 

 その時、俺たちは彼を一斉に見る。つまりすでにプレイヤーは敗北間際に立たされている。

 

「な、ならテイルがフィールドに出なければいいんじゃねぇか?」

 

「それもそうなんだけど、敗北条件にある設定があるの」

 

 ゲームオーバー以外に、フィールドへ挑む時間が設定されていて、ログインも一定の時間を過ぎれば勝手にゲームオーバー扱いになる。

 

 つまり彼は一定の時間仮想世界に来て、フィールドにいなければ勝手にゲームオーバーにされてしまう。

 

「んな無茶苦茶な!?」

 

「こっちもそれが急に表示された。調べてみたらあたしたちが見ていたデータの裏に仕掛けられていた。ただのデータのはずなのに、どうしてこんな」

 

「ユイ、今回の事件にもAI搭載型NPCはからんでいるのか?」

 

 今回のことの他に、AI搭載型NPCが関わる事件を俺たちは知っている。

 

 セブンもそれについて教えてくれた。魔王である今回のイベントの最終ボスはAI搭載型NPCらしい。

 

 つまるところ、ラスボスがGМ権限を運営側から奪取、それがバレないよう工作して、いまのいままで隠し通されていた。

 

「全部はプレイヤー側の敗北によって、この世界が作り替えられるという設定をなぞらえられるように仕組みを変えられた」

 

「そんな」

 

 今回のことが公になればVR業界に大きな打撃になる。せっかくまた多くのプレイヤーが仮想世界に来るようになったというのに。

 

 ともかくセブンから詳しい内容を聞くと、いまはラスボスを倒すしか方法が無いらしい。

 

「イベントクリア。それしか穏便にことを片付けられないのなら」

 

「ああ。必ずクリアしてみせる」

 

 ルクスも頷き、ここにいるメンバーは全員が覚悟を決めて城を見る。

 

「だけどいったいいつからこんな暴走が始まったんだ」

 

「初めからよ。一部の設定が改変されていた」

 

 秘宝は設定として門の役割を担うアイテムで、本来プレイヤーは秘宝を全て揃えると元凶である魔王の城へ続くゲートを開く。

 

 だが改変された設定では、魔王はゼルダ姫に化けて秘宝の力を奪い、異世界をまで自分の世界へと変えようとしていると言う設定に。

 

「秘宝は元々この国の偉い人達が魔王から隠すようにしていたものなの。だからみんなが倒したモンスターは、秘宝を守るガーディアン」

 

「だから王家の紋章が刻まれてたのか」

 

「だけどいつの間にかゼルダ姫が魔王にすり替わっていて、秘宝の力を奪う設定に成っていた。それは少しだけ防がれたことになってるけどね」

 

「というと?」

 

「ええ。シロの存在、この子がプレイヤー救済処置として用意されたキーキャラクター。この国のお姫様。ゼルダ姫よ」

 

 静かにシロはこちらを見つめている。この子にそんな設定が隠されていたのか。

 

「ゼルダ姫の本来の役割はどんなものなんだ」

 

「最後の戦い、秘宝の力を使って、プレイヤーたちに退魔の力を宿して、魔王を倒す設定よ。けどいまの設定は魔王によって猫の姿に変えられて、本来の力は僅かにしか使えないって」

 

 それがいまの姫の設定なら、魔王に対して退魔の力などはどうなるのか。

 

「それは心配しないで、改変には改変よ。スメラギたちがアイテムが奪われるとき、ゼルダ姫は残された力を使い、秘宝の力を一部その身に宿したことにした。この子がいれば、魔王を唯一倒せる退魔の力をプレイヤーたちに宿すことはできる」

 

「ならシロは連れて行かないといけないのか。シリカ、途中までは俺が持つが、戦闘の際は君に任せていいか?」

 

「は、はい。分かりました」

 

「やらなきゃいけないことは変わらないが、これでラスボスは攻略できる」

 

「ああ。必ずクリアしてみせる」

 

 全員の意見は揃い、俺たちは『魔城ハイラル』へと攻略が始まった。




全てのゲームが巻き込まれました。運営もNPCが裏工作すると思えず、とんでもない事態に。

それでは、お読みいただきありがとうございます。
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