ソードアート・レジェンド   作:にゃはっふー

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第57話・仮想世界の勇者と魔王

 武器を整え、体調を整え、時間を確認して向かう。

 

 ほとんどのギミックを飛んで進むALOプレイヤーであるキリト、アスナ、ユウキ、クライン、シリカ、リズ、リーファ、ストレア、フィリア、レイン、セブン、エギル。

 

 UFGを使い、同じように進むシノンとヒカリ。ついてくるラナとリンクル。

 

「大丈夫か?」

 

「はいっ!」

 

「ゼルダやあなたたちだけに、任せ続けることはできません。わたしたちだって、この世界を守りたいですから♪」

 

「にゃー」

 

 ラナの言葉にシロは鳴き、そしていくつものこのゲーム専用のアイテムを使い、ギミックを乗り越えるテイル。

 

 そしてうまく時間内にたどり着くと、他にもプレイヤーがいる中で大きな黒い扉の前で集まっていた。

 

「時間内にたどり着いたな」

 

 テイルが扉の側に近づくと開きだす。事情を知らないプレイヤーたちがボス攻略イベントが始まり、歓声を上げた。

 

 だがテイルたち事情を知る者たちは静かにその様子を見る。

 

 この戦いに負ければ他のゲームにも影響を与えるイベントが起きてしまう。それを防ぐには、

 

「勝つぞ」

 

「応」

 

 キリトの言葉に彼は短く返事をして、彼らも王の間へと入り込む。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 王の間は広々とした空間であり、少しばかり嫌な予感がする。黄昏の姫君、トワイライトプリンセスの作りだ。

 

 玉座に座る男がいる。それは暗闇を纏っていたが、マントを翻すように消し、その姿を見せた。

 

「ようこそ異世界の冒険者たち、我が城へ」

 

 巨大な剣を掴みながら静かに立ち上がる魔王。その視線が俺に向けられているのが分かる。まるで俺を倒せば自分の勝ちと知っている様子で、静かに語り出す。

 

「我が名は『終焉の者』。この世界の女神に封じられ、力を失っていた。君たちの働きのおかげで、秘宝により封じられた我が力は解放された。感謝する。秘宝の勇者」

 

 それを言われたが、この場に秘宝の勇者なるキャラクターはいるのだろうか。

 

 残念ながらこの場にいるのは俺だけのようだ。俺が話をするのかとキリトに助けを求めたが、キリトは呆れただけだ。仕方ない。

 

 他のプレイヤーも俺の方を見てたし、俺がこのイベントを進めないといけないようだ。

 

「いろんな世界を繋げたのはお前の仕業か」

 

「如何にも。何も知らぬ愚か者が必要だった………。本当に、何も知らない者がな」

 

 その言葉に目を細め、向こうもただ俺を見る。キリトとシノンも気づいただろう、このAI搭載型NPCは俺しか見ていない。

 

 俺の情報から生まれた魔王。SA:Oの時とは違う、完全な魔王として把握している。

 

(〝アンノウン〟)

 

「貴様たち異界の冒険者と秘宝の勇者を退ければ、異界共々我が力の支配下にはいる。その為に、その命を捧げてもらおうか」

 

 魔王から暗闇が立ち上り、霧となって身体を覆う。これはまずい流れだ。

 

 暗闇から巨大な四肢を持つ猪が現れ、ゲージは六本も現れ出す。

 

「来るぞ」

 

 魔獣となった魔王との戦いが始まるが、俺はあるものに気づく。

 

 このパターンは知っているが、その場合攻略方法はパートナーが突進する魔王を掴み、投げ飛ばして無防備になった腹の傷へ攻撃する。

 

 だがそこは白い傷跡があるはずなのに、現れた魔獣にはそれが無い。

 

「ともかくやるだけやるか」

 

「猪にはいい思い出ねえんだけどな」

 

「んなこと言っている場合じゃないぞクライン」

 

 俺はゼルダ姫をシリカに渡して武器を構える。

 

【さあ、最後の戦いを始めようか】

 

 咆哮が響き渡り、武器を全員構えてこの世界で重要な最後の戦いを始める。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 突進すると共にすれ違いざま斬り込み、GGOプレイヤーは銃撃でゲージを削れた。

 

 クリティカルは無いもののそれでダメージが入る、なら必ず倒せる。

 

 武器は槍を構え、向かってくる魔獣に対して全体を見るが、

 

(タゲは俺にしか向けられない。向こうは俺を倒せば勝利なんだから当然か)

 

 キリトが率先してダメージを与えるが、クリティカルが無いと少しきつい。今回のボス攻略戦は全てのプレイヤーにチャレンジできるため、地味にだが確実に追い詰めている。

 

「パターン変わるぞっ!」

 

 その時、猪から暗闇が噴き出して、腕のようになると共に黒い球体がいくつも現れた。なんだこの新技。

 

「落ち着けば躱せるか」

 

 そう思う中、身体の大きさもひと際か大きくなり、ヒノックスやイワロックほどの大きさだが、ライネルほど厳しくは無いだろう。

 

 ターゲットは変えず向かってくる。ターゲットが俺にのみ集まるのは、秘宝をゲットしたプレイヤーで話が付くだろうか?

 

 突進攻撃を横に飛んで避けるが、すぐに背中から生えた腕が振り下ろされる。片腕をバネにして飛ぶ。

 

「テイル後ろッ!」

 

 ユウキの叫び声に弾丸のように暗闇が放たれ、刀身でそれを映し見て避けるしかない。

 

 ともかく徹底的に俺のみ攻撃が集中するが、

 

「バカでよかった」

 

 それが俺の感想だ。

 

 振り向く魔獣に無数の弾幕が張られ、その巨体がよろめく。

 

「ひゃっはあああああああああああっ!!」

 

「マシンガァンゥ、ラバァァァアズっ!!」

 

「グレネード行くぞおおおおおおおおおおっ!」

 

 爆発に爆発が続き、土煙が立ち上る。セブンの歌が鳴り響き、バフとしてプレイヤーたちを強化する。

 

「レインっ!」

 

「【エック・カッラ・マーグル・メキアー・レクン】ッ!!」

 

 レインの周りに無数の刀剣が現れて、雨のように降り注ぐ【サウザンド・レイン】が一斉に降り注ぐ。

 

「大盤振る舞いにあたしの武器入りよっ!」

 

「畳みかけるぞッ!!」

 

 ソードスキルが一斉に叩きこまれ、ゲージが削れる中で俺は静かに武器を変えながら迫る攻撃をかいくぐり攻める。

 

【ぐっ、ぬっ………】

 

(お前は俺しか見ていないし想定していない。だけど)

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!」

 

 キリトが猛攻する中、俺はいまはただターゲットとして囮をしていればいい。

 

「お前の敗因は他のプレイヤーなんて眼中にないことだ」

 

【グオオオォォォォォォォォォォォォォォォ―――】

 

 雄たけびと共にまた身体が大きくなる。今度はフィールドを壊しながら地面に落ちていく。

 

 シノンたちはUFG、俺は瓦礫を使い崩れる城の中で草原に出た。

 

 草原に出たら魔獣が巨大化して、記憶の最新版以上に大きくなった魔獣。

 

「まあ驚かない」

 

「ただでかくなっただけだろッ!」

 

 そう言って攻撃するクラインたちだが、甲高い金属音が響くだけでダメージが入らない。

 

「げっ!?」

 

「なんだ急に」

 

【なめるな人間め! 退魔の力が無いお前たちなぞ敵ではない】

 

 向かってくる魔獣に対して俺は擦り抜けるように避けながら、キリトを見る。

 

「まさか、シリカっ!」

 

 キリトが動いたのを見て、俺はシリカから離れるように距離を取る。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 やっぱり向こうはゲームバランスを無視してテイルばかり狙ってくる。そんな中で彼奴は退魔の力と言った。

 

 急に俺たちの攻撃が効かなくなり、俺は彼から聞いた話を思い出す。

 

 本来彼の知る〝ゼルダの伝説〟は退魔の勇者が【退魔の剣マスターソード】を持って、女神の血筋である姫様と共に倒す物語。なら、

 

「シリカ、ゼルダ姫を」

 

「えっ、この子?」

 

「にゃーーーーーーーーっ!」

 

 シリカの懐から出て来た彼女は光を放ち、急に魔獣の身体に光が波紋のように広がる。

 

 その時、その波紋へマシンガンが入るとダメが入るのを見た。

 

「キリの字っ!」

 

「ああ、みんなあの光の波紋に攻撃を集中するんだッ!」

 

 全プレイヤーが集中攻撃する中、腕が四つに成り、どうあっても彼にのみ攻撃を止めようとしない。だが、

 

「俺たちを無視するなッ!!」

 

 その叫び声はユウキとアスナも同じであり、彼女たちと共にソードスキルを叩きこむ。

 

 ゲージはあと二つ。彼も自分が攻撃できるタイミングの時は攻撃している。

 

 だがついに魔獣はゲームを無視した。

 

「ッ!?」

 

 彼の周りを囲むように光の壁が現れ、魔獣は闇の粒になり、彼の前に人型に成って現れた。

 

「テイルッ!?」

 

 彼へと斬りかかる魔王。持っていた槍が斬り裂かれ、彼はいつものスタイルに入る。

 

 光の壁は空すら覆い隠し、ドーム状のフィールドが二人を囲む。

 

【退魔の剣すら持てぬ者がッ! これ以上の抗い、できぬと思えエエエエエッ!!】

 

 振り回される剣を防ぎながら、剣で弾くテイル。

 

 だがテイルはこの瞬間、笑っていた。

 

「無駄だ」

 

 俺はそう思いながらその戦闘を見る。何度も斬り込む彼の剣が魔王を捕らえ斬り裂く。

 

 奴は魔王だ。勇者の剣、勇者自身で無ければ倒さない。だけど、ここはゲームの世界だ。どれほど強かろうとダメが入れば俺たちが負けることはない。

 

 そして彼奴は〝アンノウン〟を持つテイル以外、敵視していなかった。だからこその敗北する。手に持つ剣が退魔の剣で無いことに油断している。

 

「彼は負けないさ」

 

 俺は、俺たちはそう断言できる。

 

「いっけええぇぇぇテイルうぅぅぅぅ」

 

「そこだやっちまええええええええ」

 

「マスター、そこですっ!」

 

「決めてくださいテイルさんっ!!」

 

 彼奴には勇者(ほんもの)に負けない、力がある。

 

「いっけええぇぇぇぇぇテイルッ!!」

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

【認めん、認めんぞッ! 勇者で無い貴様が、我に勝つなぞ】

 

「そうだろうな」

 

 剣戟の中、俺は魔王を睨みながら同意する。俺は勇者では無い。ただ勇者の記録を体験したただの人だ。

 

 だが、その勇者から認められた人間であると断言できる。

 

「俺が勇者でないように、お前も魔王じゃない」

 

【ヌッ!?】

 

 剣と剣が激突し、魔王の剣を弾く。

 

「悪いがこの剣は俺が全てを預けられる鍛冶師が打った剣だ。けして折れないし、退魔の剣にも負けないッ!!」

 

 剣を弾き、盾を持つ手で突き飛ばす。

 

 吹き飛ぶ魔王に対して、身体をひねり、地面に倒れた魔王へ剣を差し込む。

 

【ガアアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァア―――】

 

「同じ偽物なら俺は勇者の偽物として、お前に勝ち続ける勇者に成ろう」

 

 ゲージは全てが消え、剣を引き抜き、静かに構えを、

 

【オワ………ラヌウゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!】

 

 その時、光の壁が俺の剣と腕の間に現れた。

 

「なッ!?」

 

 無理矢理武器と俺を斬り裂き、ダメージとして腕が斬り落とされ、ゲージが無くなったはずのボスが傷口から闇を拭きだしながら剣を振り上げた。

 

「テメ」

 

【アアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ―――】

 

 横に飛び、斬りおとされた腕を見る。エフェクトで手首より先は無く、空いた手は盾を持つ手。籠手と一体化させているため握るための手はあるが、武器は、

 

「テイルッ!」

 

 その時、目の前に黒曜石の剣が横切る。

 

「ユウキっ!?」

 

 即座にキャッチして構える。ユウキの剣マクアフィテルを。

 

【ガアアァァァァァァァァァァァァァァァ―――】

 

 一閃。向かってくる魔王の首へと振り切る。

 

「―――」

 

 その一瞬だけ剣に光が宿っていた気がする。だがこれはきっと仲間がくれたものだと断言できる。

 

 首を斬られた魔王。それでも向かってくるそれにすぐに構え直し、

 

「ぶっ倒れろ、ここはお前の世界じゃないッ!!」

 

 そう言い魔王を両断、ぶった斬る。

 

 その時、暗闇と共に光が身体から溢れ、ついに魔王の身体は光の中に消えていった。

 

 しばらくの静寂の中、万雷の喝采が響き渡り、俺はユウキの剣を振るい、肩に乗せて向こう側を見る。

 

「………」

 

 ユウキの剣を投げた光の遮蔽だけが砕けていた。ユウキ自身も投げ渡せたことに驚く中、その背後、フィールドの端に誰かがいた。

 

「………まだまだってことか」

 

 目は良い方だ。そこにいたのはSAOの時代、さらに俺が幼い頃から稽古をつけてくれた存在であるのが見えた。

 

 彼に勝ったことを伝えるため、俺は剣を掲げる。

 

 彼もまた、剣を掲げ、光の中へと消えて行った………




偽者とはいえ、彼は勇者として魔王を仲間と共に討つ。そして少しだけ登場する勇者。彼も大切な仲間。

次回は平和になった世界で。お読みいただきありがとうございます。
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