ソードアート・レジェンド   作:にゃはっふー

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遅れて申し訳ございませんっ!!

あれだね、馬鹿みたいにこんなん思いついたからやろうとか、ノープランはダメと言うことはよく分かった。

と言う訳で、夢を見る島編、やりたい放題にしまくっています。テイル君は頑張ってくれるでしょう。

それではどうぞ、お楽しみください。


夢を見る島編
第60話・ナイトメア・スタート


 それはある日の夢である。

 

「?」

 

 少女は首を傾げながら回りを見る。気のせいか、パジャマ姿の知り合いたちがいる。

 

 二つの剣を振るい、【黒の剣士】と呼ばれるキリト。自分にとって姉のような人、アスナ。

 

 それだけではなく、彼らの仲間であるクラインたちもいる。ただ、いまの自分と同じ、意識があるが喋れず、身体も動かない。

 

(なんだろうこれ……?)

 

 なぜと言う思いの中、周りを見る。

 

 青い空、白い雲。砂浜が広がり、一本の剣が海と砂浜の間に突き刺さっていた。

 

 ザク、ザクと砂を踏む音が聞こえる。

 

 一人の青年が訪れる。緑の服装であり、綺麗な金髪。耳が長く、エルフ、またはALOのシルフのような青年だ。

 

【ああ、今度はこれか………】

 

 ノイズが走る。

 

 誰の声か分からない。それは緑の青年の影のように思えた。

 

 顔だけが分からない。それは爪で喉をかきむしり始める。

 

【ああ、アア、嗚呼ッ!! アアアァァァァァ―――ッ!】

 

 喉から血が滲み、爪が赤く染まる。

 

 顔中をかき出し、血が流れるまで続けた。

 

 髪をむしり取り、青年から絶望を感じ取る。

 

【繰り返す、ああ繰り返すッ!? こんな!!なんで!?どうして!?】

 

 指から血が流れ、ノイズが広がる。

 

【なんで殺さなきゃいけないんだッ!!?】

 

 そう叫び声をあげ、世界が一変する。

 

 階段の上、くじらのような生き物の前で、緑の青年がオカリナを奏でていた。

 

 その周りには楽器が浮かび、奏でられる音色は美しく優しい。

 

 だが青年は音色が響く中で苦しみ、気が狂いだす。

 

【アア………ああ………消える。俺が消す、俺が殺す、俺が壊す………】

 

 景色が泡となり消える中、血の涙を流しながら彼はその光景を見る。

 

【俺は………】

 

 全てが泡になり消える世界で、彼は手を伸ばす。

 

 

 

【みんなをころした………】

 

 

 

 その言葉と共に目が覚める。

 

「いまの………なんだったんだろう?」

 

 そう首を傾げながら、窓の外を見る。

 

 紺野木綿季。そんな不思議な夢を見た。

 

 彼女だけがその夢を見た記憶があり、他の者たちは悪夢を見たとしか認識できなかった………

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

「色々忙しい今日この頃、いったいなにを考えているんでしょうか?」

 

『いや、どうしたんだ急に?』

 

 電話片手にかちゃかちゃととある青年が電話をしながら、パソコンの作業の没頭している。

 

 電話相手、桐ケ谷和人は困惑しながら、彼は気にせず説明した。

 

「俺、一応大学生でね。しかもバイトしながらゲーム仲間であり年下ズの宿題教えたりしてるだろ?」

 

『? ああ?』

 

「まあそれはいい。ただな………」

 

 パソコン作業を終えて、しっかり携帯を持ちながら、

 

「だからと言って当たり前のように課題や宿題、果ては調べ物まで全部俺に頼るなっ! 俺は図書館じゃないし、家庭教師の先生でもないんだぞっ。お前がユイちゃんやストレアたちのために機材集めているのも知ってるけどよ、そのパーツ探しを俺に押し付けておいて今度クエスト行かないかだあっ!?」

 

『あっ、あはは………』

 

 和人の乾いた笑いを聞き、彼は作業に戻る。

 

「レポート云々はいいんだ。ただセブン、七色から頼まれごとを承諾してから」

 

『テイルさ~ん~、英語の宿題手伝って~~』

 

『テイル~、珪子と一緒で数学が、数学があ~』

 

『お兄さんごめんなさいっ。GGOしていたら歴史のテストがっ、次赤点取るとクレハのデータがお母さんたちに消される~~~っ!』

 

「詩乃も今度のテスト不安だから見て欲しいって………。クラインの野郎も、合コンのセッティングをミスってどこか良い店が無いか聞いてきたりして、なんでも聞けば答えが返ってくると思うなよな………」

 

『も、申し訳ない………』

 

 彼の場合、頼られるのは別に構わないが、今回は余りに多すぎた。

 

 学校が違う為、全員に必要なテスト範囲を把握して教えて、和人が探しているパーツを探しに動いたり、それで木綿季の見舞いやVRゲーム。大学生である彼の予定はいっぱいいっぱいだ。

 

「というわけで俺は参加できるか不明だ。クレハの方はデータ消すのは冗談だが制限が付きそうだし、全員放っておけない」

 

『それは大変だな………』

 

「和人くんの歴史の課題は外していいか?」

 

『すいません勘弁してくださいっ!』

 

 学生たちの頼みを全て聞き、全て対応している彼を誘うのをやめて、和人はALOのクエストを受ける話をして電話を切った。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 ALOのとある店。リズベット鍛治店でみんな集まり、苦笑しながらシリカがピナを抱きかかえる。

 

「それは申し訳ないです………」

 

「ま、まあ、彼奴は色々知っているし、どうしてもたよっちまうからな」

 

「けど少し迷惑かけ過ぎよね。わたしもテイルさんに頼り切りだったし」

 

 アスナも頷きながら、ユウキはぶーたれていた。テイルがいないからだ。

 

「まあ今度のクエストは、貴重な素材アイテムが手に入るだけだからな」

 

「ああ。テイルなら普段の行動だけで手に入れそうだね」

 

 苦笑しながら、他になにか目ぼしいことがないか、確認していると、

 

「そう言やあ知ってるか? 例の噂」

 

「例の噂? なにかお宝クエストでもあるのかクライン?」

 

「いんや。最近『出る』、らしいぜ。これがよ」

 

 そう言って両手を前に出しておばけのポーズを取るクライン。それにアスナが固まり、リーファが首を傾げる。

 

「? アンデット系のエネミーですか?」

 

「一応んな話だぜ。何でも黒い影を纏う剣士が、所かまわずPKしてるって話」

 

「? それはプレイヤーがってことか?」

 

 クラインの話を纏めると、ここ最近、様々なVRゲームでそれは目撃されているらしい。

 

 黒い影を纏い、どのジャンルだろうと現れ、攻撃してくるキャラクター。

 

「どのジャンルって、どういうことです?」

 

「いやね、オレも詳しい話は聞いてねえんだけど……。レースゲームや育成ゲームのみならず、個人のサーバで作られたゲーム内にも出没して、プレイヤーキルできねえゲームでも攻撃してくるって話なんだとさ」

 

「それは、ただの噂話じゃないのか?」

 

「パパの言う通りです。このゲームや【ザ・シード】により作られたVRゲームにおいて、そのようなバグは起るはずありませんね」

 

 ユイの言葉を聞きキリトも考え込む。仮にできたとしてもそれはウイルスやたちの悪いハッカー。またはデマと言う線もある。

 

 それでもクラインがその話をしたのは、たちの悪いプレイヤーだった場合。

 

「一応平気だと思うけどよ。変な奴が現れるって可能性があるからよ」

 

「まあ、ここはALO。PKは推奨されてるからな。油断せずに気を付けようぜ」

 

 全員で頷き合いながら、彼らはクエストへと向かう。

 

 気にすることもない、ただの噂話。

 

 そのはずだった………

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 クエストの帰り、地下ダンジョンを進むキリトたち。

 

「今回は少し苦戦したな」

 

「GGOばかりしてたから、弓を使うのも久しぶりだったからね」

 

「キリト以外、全員遠距離から撃ってるからね~」

 

 リズベットがそう言い、シリカも久しぶりにピナと共に戦えて満足しながら歩いている。

 

 

 

「わああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?!」

 

 

 

「って、なんだ?」

 

 誰かの悲鳴がダンジョンの中で響き渡り、全員が武器を構え辺りを見渡す。

 

「次のフロアからか」

 

「確認しに行こう。他にルートは無いんだ」

 

「ええ」

 

 奥の部屋、フロアに入ると怯え、尻餅をつくプレイヤーがいたが、

 

「ぎゃあああああああっ!?」

 

 一人のプレイヤーが斬られた時、ノイズが走り、その場から消えた。

 

「なっ………」

 

「あり得ない。エンドフレイムが残らないなんて………」

 

 蘇生待ちが無く、エンドフレイムができずにそのまま消えた。

 

「パパっ、あれは危険です! ALOのエネミーじゃありません!!」

 

 そう言って、彼らの前に現れたそれは、空間にノイズを走らせる。

 

【………】

 

 黒いモヤのような塊であり、人型のそれは剣を持ち、歩くたびフィールドのオブジェクトが壊れ、崩れていく。

 

 HPゲージ並び、名前すら無い何か。血の涙を流すそれは、口元を釣り上げて向かってきた。

 

「くっ」

 

「パパっ!?」

 

「クラインっ!」

 

「おうっ」

 

 二人がかりでその剣を受け止めると刀身にノイズが走る。

 

「パパ近づいちゃダメですっ! そのエネミーの周りだけゲーム内のデータがおかしいですっ!!」

 

「くっ」

 

 剣戟が鳴り響きながら辺りのフィールドを見る。空間が割れ、ノイズが走り壊れていたりと酷い。

 

「なんなんだお前」

 

【………】

 

 距離を取った瞬間、ピナから魔法攻撃が放たれるが、その魔法は腕を振るうだけで止まり、かき消える。

 

「はああああああああああっ!」

 

 ユウキが剣を振るい、ソードスキルを叩きこむが、それに合わせて剣を放って防ぐ。

 

「えっ………」

 

 驚愕するユウキへと黒い刃が迫る。そこにアスナが割り込み、細剣で刺し貫いた。

 

「っ!?」

 

 だがアスナが持つ細剣にノイズが走り、それが刀身を握ると共に砕け散った。

 

「なっ………」

 

 驚愕するアスナを蹴り飛ばし、ユウキごと後ろへと吹き飛ばす。

 

 その時、アスナの衣類にノイズが走り、防具が一部砕け散る。

 

「パパっ、ママたちのデータが破壊されてます! あれに触れたり、ダメージを受けると壊れるみたいです」

 

「ウイルスかバグ? ともかく倒すことはできないのか?」

 

「HPゲージどころか、アバター名すら存在しない……? ALO、カーディナルシステム下でこんな現象あり得ません」

 

「ともかく、彼奴から逃げないと、オレらのデータが壊されるのか」

 

「キリト君ここは離脱しようっ!」

 

「ああ。とはいえ、簡単に逃がしてくれそうにないけどな………」

 

 全員が身構えて、武器を構える中、それは回りのフィールドをも破壊しながら、キリトたちを睨んでいると、急に空を見た。

 

【………見ツけた………】

 

 そう呟いて、それは盾を持つ腕を振るい、空間を壊す。

 

「空間を壊した!?」

 

 そのままその中へと消え、入口になった割れ目が消えると共に、辺りのフィールドも元に戻る。

 

「………なんだったんだいまの?」

 

「バグかウイルス。にしても妙だ」

 

 カーディナルシステムが働くALO内で、あのようなものがあること自体おかしい。

 

 キリトが首を傾げる中で、ユウキは考え込むようにうつむいている。

 

「どうしたのユウキ?」

 

 アスナに話しかけられて、ユウキは少しだけ黙り込むが、唇を動かす。

 

「最後のさあ、あの剣士がボクのソードスキルを弾いたとき、重なったんだ」

 

 真剣に、真面目にそう言うユウキ。

 

「重なったって、なにに?」

 

「………」

 

 それは、

 

「テイルの剣と似てたんだ」

 

 その言葉に、キリト、アスナ、リーファなど。何名かがあっと気づく。

 

 あの剣士とは少ししか剣を交えていないが、動きや剣筋が彼と重なる。スタイルも似ていた。

 

「テイルと似てたって、どういうこと?」

 

「分からない。けど、少し調べる必要があると、俺は思う」

 

 キリトはそう呟きながら、すぐに相談できる人物を思い浮かべる。

 

 セブン。七色博士へ連絡するため、彼らは行動し出す。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 データを壊し、世界を壊しながら、それはまず一つ、木琴を壊す。

 

【コレデ五ツ目………】

 

 辺りのフィールドも壊れだし、それは静かに動き出す。

 

【後ハ、三つ………ソレを壊せバ】

 

 夢ハ、永遠に続ク………

 

 そう呟きながら、それは全てを壊しながら歩き続ける。

 

 その瞳に何が映っているか、誰にも理解されない………

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 町に戻り、色々調べることにしたキリトたち。その際、

 

「そういやキリの字。今回手に入れたアイテム、どういうアイテムなんだ?」

 

「ああ。そう言えば、まだちゃんと確認してなかったな」

 

 ストレージを確認すると、そのアイテムはこうウインドウに書かれていた。

 

 アイテム名【満月のバイオリン】。悪夢を払う、癒しの楽器と………




始まりはどうでしょうか。この先の展開、色々想像できるようにしてみました。

キリト君たちと遭遇したのは一体誰なんでしょうね~

それでは、お読みいただき、ありがとうございます。

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