ソードアート・レジェンド   作:にゃはっふー

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キリトたちは不思議なメールの指示に従い、閉ざされた島へと足を踏み込み、そこにある遺跡で島の秘密を知る。

そこに現れるのは、悲しそうに微笑む一人の妖精だった………


第63話・相棒妖精

 フェリサと言う妖精は、周りを見ながら静かに呟く。

 

「ほんっと馬鹿だよね。彼奴にとってこの世界はゲームで作り物。勇者のように〝体験〟しているだけの偽者なのに、彼は真摯に受け入れた」

 

 体験と言う言葉に、キリトとシノンは目を見開く。

 

 それはある青年が口にする。生まれ変わった時に得た特典の内容。

 

「全て現実に近い物語として見ていればよかった。もう一つの現実の時みたいに、遊びとして接していればよかったのよ」

 

「………君はメールの差出人か?」

 

「そうだよ黒の剣士キリト。あれを手に入れたのがあなたたちでよかった………」

 

 そう微笑みながら、壁などに着いた血の跡に触れ、悲しそうに呟く。

 

「勇者の視点、勇者と言う役割を体験することで、私たちとの関係も本物に感じて。馬鹿だよホント………全てが終わるまで、そんな馬鹿な人が、優しい馬鹿がいたことに、私たちは気付かなかったのに」

 

 話しかけられてもそれは勇者であり自分ではない。

 

 それでもその青年は真摯に受け入れ、現実としてその世界で行動した。

 

「ここは、この島はそんな人が創り出した、ううん………あなたたちの世界の人間が作った悪夢の世界よ」

 

「なんだってっ!?」

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 キリトが驚き、声を上げる。みんな心配しながら彼女を見る。

 

「この世界は彼の悪夢を元にして、あなたたちの世界の誰かが作り出した悪夢の世界。勇者もかぜのさかなを目覚めさせる楽器も無い、悪夢だけの世界」

 

「かぜのさかなを目覚めさせる?」

 

「【セイレーンの楽器】。それと共に〝めざめの歌〟が必要なの」

 

「それが無いってことは、悪夢ってのは終わらないのか?」

 

「だからこそ私は、彼らと同じことをした」

 

 そう言ってキリトのストレージが勝手に動き、あるアイテムが実体化する。

 

「これって」

 

「仮想世界で生み出されたセイレーンの楽器。その一つ【満月のバイオリン】」

 

 それをアスナが持ち、その楽器に触れるフェリサ。

 

「本来ならこんなこと、しちゃいけないんだけど………」

 

 その様子を見ているユイが、彼女が行っている作業に気づく。

 

「あのアイテムから関連するデータを読み込んで、そこから別アイテムの作成をしているのですかっ!?」

 

「彼らの所為でこの世界、あの剣士は生まれてしまった。これくらいのズルは見逃してもらいたいわね」

 

 そうフェリサが言うと、バイオリンのデータを元に、関連するアイテムも呼び起こしたのか、七つの楽器が現れる。

 

「仮想世界からセイレーンの楽器を作り出して、一つでもいいから持ち込まれればそれでよかった。後はこの世界の悪夢を終わらすために、彼を倒す必要がある」

 

「………そのために俺たちを呼んだのか?」

 

「あなたたち、あなたにしかできない。SAO、夢の世界と同じ、もう一つの現実の剣士。仮想世界の【黒の剣士】キリト」

 

 それを聞き、キリトは目を閉じて考え込む。

 

 その後は周りの光景を見る。床も壁も爪でひっかき続けた跡。それは彼が、彼の悪夢がここで絶望し、苦しみ続けた跡でもある。

 

「分かった。彼の下に連れて行ってくれ」

 

 そう彼は決意して歩き出す。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 キリトの仲間たちは何も聞かず、キリトと共にフェリサの案内で一つの山。その頂上へとたどり着く。

 

 底が見えない穴が広がり、まるで闇と言うものを全て飲み込んだ暗さ。

 

「この先が彼が創り出した悪夢の世界。仮想、夢、幻と言った形の無いはずのものが、形になった空間」

 

「そこに行けば彼がいるんだな」

 

「正確には、あなたたちの世界で仮想として作られた、悪夢そのもの。それがそこにいる」

 

「分かった。それじゃみんな」

 

「ああ」

 

「ええ」

 

「付いてきて、まずは奥に楽器を持って行かなきゃ、話にならない」

 

 全員が頷き、その穴へ羽を広げて下りていく。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 なぜこうなったのだろうか? それはそう思いながらそこにいた。

 

 髪をかきむしり、そのまま髪を引きちぎる。

 

 両手をだらんと下げ、静かに上を見た。妖精たちが降りて来る。

 

【………なんで来た?】

 

 彼らが見たのは、暗闇の中、一人立ち尽くす青年だけしか見えなかった。

 

 彼らからすれば、それはどこの誰か分からない。

 

 大学生くらいの青年であり、頭から血を流し、首筋や至る所に引っかき傷を作り、両手も爪痕から血が滲み、指先は真っ赤に染まる。

 

「あなたは………」

 

【俺? 俺は君たちにとっては何でも無い。何者でも何だってどうでもいい〝過去〟ですらない〝ナニカ〟だろうな】

 

 傷付いた首筋をかき出しながら、充血した目で首を回す。

 

【願ったのは救いだけのはずだった。なのになんでこうなったんだろうな………】

 

 血が流れ出ようと気にも留めず、それはずっとキリトたちを見続ける。

 

【どこが間違いか。いや、初めから決まっている。〝始まりから終わりまで全てが間違いなんだよ〟】

 

 そう言いながらそれは頭をかきむしり始める。

 

【勇者の力があれば救えると信じた。神に願えば誰もが救われると思った。何者でも無いのに、主人公気取りで次の人生を現実として見ていなかったッ!!!】

 

 途端、暗闇の空間から悲鳴が響き渡る。多くの人々の声、それに苦しむ石像が無数に壁に埋められている。

 

【勇者として俺は彼らの物語すら利用して、今の人生すら物語として見て、俺は何様なんだろうな?】

 

「お前が何者かは分かる」

 

 キリトが前に出て、周りを見る。

 

「これはなんだ」

 

【この世界を継続させるには、悪夢で無ければいけない。悪夢を見るのは人で無ければいけない。俺が仮想世界で殺し、悪夢の世界に閉じ込めた人間たちだ】

 

 それに青ざめる妖精たちに、キリトが前に出て睨む。

 

「なんでそんなことをしている」

 

【俺は悪夢。知っていて見捨てたことに絶望した馬鹿な男の絶望そのもの。救われたいんだよ俺は】

 

 そう言い、影から剣と盾を取り出す。勇者の影より作った、影の武器。

 

【俺は救われるには見捨てたものを取り戻すしかない。それ以外に考えることはできない】

 

「彼はそんなことを願っていないッ!!」

 

【俺は願っている。救われること、意味を、自分と言う存在理由をッ!!】

 

 全員が武器を構え、俺は静かに構える。

 

【コホリントは、この悪夢は永遠に消えない。消すためのピースは全て俺が破壊するッ!! だからこそ、仮想世界ッ! それにより作られたセイレーンの楽器は、ここで破壊するッ!!】

 

「止めてやるッ!! それが彼奴の、彼の仲間である俺たちの役目だッ!!」

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 閃光のように走るそれは暗闇でできていた。キリトと剣が激突した瞬間、それは目を見開き、キリトを見る。

 

【俺はお前のように主人公でも何でもない異物。この世界に囚われた者は永遠に悪夢を見るだけで現実には帰れる。デスゲームのように永劫の時を過ごすわけじゃない】

 

「だからって見過ごしていいはずはないッ。お前が関わってるのならなおの事、俺はお前を止めるッ!!」

 

【俺はコホリントを永続させるッ!!】

 

 吹き飛ばされたキリト。その後ろからリーファ、アスナからサポートを受けたユウキとクラインが前に出るが、

 

【遅い】

 

 簡単に盾と剣で刀と剣を弾き、キリトへと迫るが、矢が眼前に迫る。

 

「ッ!?」

 

 だが刺さってもそれは気にせず、血を流しながら片目は潰した。それでもキリトを初めとした前衛三人と斬り合いながら、それはキリトへと剣を振り下ろす。

 

【どうやって俺を止める? ここは幻であってゲームじゃない。HPゲージなんて絶対なものは存在しないッ!】

 

 蹴り飛ばされたキリトは踏ん張り、倒れることは免れたが、背後にリーファたちがいるのに気づく。

 

 ユウキがすぐに横から斬り込むが、それを易々片腕の盾だけで防ぎ、盾をぶつけて吹き飛ばす。

 

【ここはお前の世界じゃない。俺が作った〝悪夢〟の世界。誰であろうとこの世界を目覚めさせることはできない】

 

 その言葉にキリトははっとなり、小声で何かを呟く。

 

 それにそれは怪訝な顔をしたとき、キリトは意を決して猛攻し出す。

 

【………】

 

 それは考え込む。猛攻の攻撃を片手の剣で防ぎながらバックステップを取り、うまく捌く中で、クラインとユウキに警戒しながら考える。

 

【(こいつは何かを呟いた。ゲームの魔法? いや、キリトは純粋な剣士アタッカー。スピード重視で魔法なんてもの、なにより純粋なメイジだろうと、俺を攻略することはできない)】

 

 ならどうする? まさか……?

 

【(まさか)】

 

 その時、盾の手で目に刺さる矢を引き抜き、その目を開き、周りを見た。

 

 いつの間にか僅かに回り込み、自分の背後へと進もうとする四人組を見つける。

 

【セイレーンの楽器を奥に】

 

「ちいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!」

 

 舌打ちしながらキリトは身体をひねり、剣をぶつける。

 

 それを防ぎながらそれが羽ばたくのを見た。

 

【させるか】

 

 自ら剣を持つ腕を掴み、引きちぎる。

 

 ユウキたちがゾッとする中でそれは黒い液体と繋がっていて、それを妖精たちへと投げる。

 

 暗闇が巨大な手になり、アスナたちに迫る。

 

「ママっ!」

 

 ユイがいつの間にかキリトの側からアスナの懐にいた。

 

【(あのナビゲートピクシーに指示を出したかッ!)】

 

 シノンが矢で撃墜し、無防備になった本体をユウキたちはソードスキルを叩きこむ。

 

 それでも手は止まらず、リーファを掴み、そのまま地面に引きずり下ろす。

 

「リーファちゃんっ!?」

 

「行ってくださいアスナさんっ!!」

 

 リズとシリカが暗闇の腕を叩き、リーファを助ける中、アスナは苦虫を噛むように先へと飛ぶ。

 

【とことん邪魔をする】

 

 赤い血と共に流れる暗い液体。それから目のような瞳が開き、鎧や腕になり、それを広げる。

 

「原型が無くなってるぞおい………」

 

【俺は悪夢だ。元の形なぞ忘れた】

 

 キリトの皮肉に、それはそう返す。

 

【ああそうだ、俺の悪夢は、まだ、終わらないィィィィィィィィィッ!!】

 

 暗闇が迫り、キリトたちは戦慄する。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 暗闇の中、階段だけであり、その上を飛ぶアスナとユイ、そしてフェリサ。

 

「ここが頂上? 何も無い」

 

「ここで風のさかなを起こすために歌を奏でるの。大丈夫、歌は私が歌う」

 

 そう言い、彼女の周りに楽器が現れ、歌を歌うために息を吸う。

 

 その瞬間、

 

 

 

 ァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ―――

 

 

 

 悲鳴が響き渡る。

 

 誰かの悲鳴、嘆き、怒り、憎しみ、全ての負が声として鳴り響く。

 

「な、なにこれ………」

 

「凄い声。何人も、ううん、何千人って言う人の声?」

 

 そうアスナが呟いた瞬間、それが現れる。

 

 妖精、ガンマンを初め、多くのプレイヤーアバター、HPがゼロになった瞬間を切り抜いたような石像の壁が周りに現れ出す。

 

「こ、れは」

 

「彼が倒したプレイヤー?」

 

 

 

 ――そうだ――

 

 

 

 その時、奥の闇が瞳を開き、その両腕でセイレーンの楽器を掴み、握りしめた。

 

「な、んで………」

 

 フェリサを抱きしめ、ユイと共に守り、細剣を構えるアスナ。

 

「だれっ!?」

 

 ――我らは悪夢の中より生まれ出でしもの――

 

 ――夢と言う閉ざされた世界に秩序を築くモノ――

 

 ――忌々しき目覚めの使者により、世界を壊された――

 

 ――だが、人が夢を見る限り、我らは滅びぬ――

 

 ――この悪夢が生まれたとき、我らは蘇った――

 

 ――全てを救えると驕り、現実に飲まれた愚かな偽物のおかげで――

 

「黙れッ!! 彼奴は馬鹿だけど、偽物なんかじゃないッ!!」

 

 驚きながらも暗闇の言葉に憤慨するフェリサ。悲鳴と共に複数の笑い声が響き渡る。

 

 ――歌は響かない――

 

 ――悪夢は永劫に続く。これこそが正しき夢の世界――

 

 ――貴様らも、この世界の一部と成れッ!!――

 

 その時、誰かが後ろから吹き飛んできた。

 

「クラインさん、みんなっ!?」

 

 全員がボロボロで、キリトの首を掴み上げ、締め上げている影。

 

【この悪夢は終わらせない。コホリントはもう泡になんてさせないッ!!】

 

「ち、がうッ! そんなこと、誰も望んでいないッ!!」

 

【俺が、俺が望んでいる。そう、それが俺の、絶望の中で生まれた俺の叫び声だッ!】

 

 そう言い黒い影の剣が巨大になり、キリトへと振り下ろされる。

 

 小さな妖精は叫び声を上げた。その叫び声は多くの悲鳴にかき消された。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 拝啓、いかがお過ごしでしょうか。

 

「広がる海、青い空、白い砂浜。俺はどこにいる?」

 

 そう言って俺は人間アバターテイルとして、首を傾げて周りを見た。何があったんだよ?




一方その頃的に、テイルが一番訳が分からない状態でログインしました。

テイル「区切り悪くない?」

申し訳ない。

それでは、お読みいただきありがとうございます。

キリト「俺はこのままか……?」
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