長い道のりだったね。
凍り付いた滝のダンジョン。宝玉を使い先に進むことはせず、一度解散し、準備をしてから先に進む。
色々あるがさすがキリト、SAOのラスボスを倒した男だ。
それでもキリトたちの快進撃は止まらず、静かに俺は進む。
「どう?新しい武器」
「全体が軽い………。もう少し重みが欲しい、あとは長さ」
ダンジョンの中で調子を聞くが、それにうなるリズ。嬉しそうにするキリト。
「いやキリの字、なに嬉しそうにしてるんだよ」
「いや、だって分かる。分かるんだぜテイルの言いたいの」
「お兄ちゃん、そんな同類を見つけたような顔をして」
「あはは………」
周りから呆れられるキリト。だがレインだけはこちらを見る。
「安心してくれ」
「えっ」
「足は引っ張らない」
「えっと、そういうんじゃないんだけどな~」
困った顔のレイン。ならなんで俺を見ていたんだろう?
そんなことを話しながら先に進む。
そして、事件は起きる。
◇◆◇◆◇
「ん」
かすかに後方から気配を感じ、キリトも気づき険しい顔になる。
「大勢の人の気配………おそらくスメラギたちが追いついてきているらしい」
その言葉に、ウンディーネの青年が率いる、強者のプレイヤーたちが姿を見せた。
「スプリガンのキリト、どうやら貴様たちもなかなかやるらしい」
「ああ、また会ったな、この前約束したデュエルをしようぜ!」
そうどこか嬉しそうに言うキリトだが、周りのメンバーやスメラギも怪訝な顔でそれを見る。
「いまはダンジョン攻略中だぞっ。いまはどちらが先にダンジョンを攻略できるか………。それが勝負だっ」
「だけどさ、目の前に強いプレイヤーがいるんだぜ。戦いたくなるのは当然だろ?」
「キリトは………」
「どちらかと言えばゲームバカです………」
アスナたちが呆れる中、それは向こうも、
「分からん奴だ、そんなに戦いたいのなら」
そして向こうも抜刀し、デュエルの試合形式がなりたった。
◇◆◇◆◇
試合は二刀流キリトがやや劣勢、そのまま続けるかと言う事態に差し掛かるが、スメラギが構えを解く。
「なかなか腕がたつようだな」
「まだ決着は………ついてないぞ!」
「その実力と気概は認めてやる。だが、いまはダンジョン攻略が優先だ。我々は組織で動いているのだからな」
「だけど」
「さっきも言ったが、ダンジョン攻略で我々と勝負すればいいだろう」
「キリトくんっ」
その時、キリトを心配して前に出たのは、
「レイン」
「レイン? お前………嘘つきレインじゃないか」
それは驚きの方の言葉で、それを言われ、レインはばつが悪そうな顔をする。
「どういうことだ? レインはシャムロックの奴らと知り合いなのか? それに、嘘つき?」
「なるほどな、お前がこいつらを手引きしたのか」
どこか納得した様子で、向こうの話がまとまっている。
どういうことだ?
「少し前に、彼女は嘘をついてメンバーを騙し、シャムロックに加入した。しかし嘘が発覚して、ギルドを追い出された」
だがギルド脱退後も、登録解除までタイムログが発生。
レインはそこから情報を入手していた。
それにレインは、何も言わず、ただ黙り込む。
「………」
正直よく分からないが、レインは本当にそんなことをしたのか?
「いやいや、あはは………バレちゃ、しかたないね………」
「レイン………」
どこか無理をしている気がする、俺はその言葉が信じられない。
ともかくここは一度引き上げ、エギルの店に戻る。
◇◆◇◆◇
「………はあ」
一応キリトが事の顛末を説明して、メンバーに話した。
キリトが情報の入手方法を確認しなかったこともあり、自分は責めないと説明する。
俺は正直後からだから、何かを言う資格は無いだろう。
そしてシノンがそれに納得できないと言って、いまはレインに席を外してもらい、古株メンバーで話し合い。
果たして俺はいていいか、俺は………
◇◆◇◆◇
「キリト」
「テイル………」
「俺はフレンド登録や、ギルドのことは分からない………。だけど、本当に、レインはその方法で情報を得られるのか?」
それに周りは驚く。シノンや他のみんなもだ。
彼は勘が鋭いな。
「それは、だけど本人はそう」
「いいえ、不可能です」
「ユイちゃん」
ユイは説明する。やっぱり、ギルド脱退後、ギルド内部情報を知ることは不可能。
レインが認めた方法では、シャムロックの内部情報は得られない。
シノンを初め、仲間たちはならなぜそれを否定せず、そして何も言わないか。それが分からないと困惑した。
「それに関しては俺にも分からない」
レインは何かあるのだろう。ともかく、話はこれで終わった。
これからも彼女と共に行動する。それはいい。
いいんだが………
「………」
一人、なにか言いたげの彼がいた。
「テイル?」
「………この子は?」
「あっ………」
ユイをテイルに紹介するの忘れてたッ!!
◇◆◇◆◇
それから、攻略が進む。
レインのことは結局、なにか大事なことを隠している。だけど、それを無理に知る必要は無いと決まり、攻略は進めることになる。
そんな中で、ALOのイベント期間に入った。
妖精の世界なのに、日本の縁日とはこれいかに。
「………」
せっかくの縁日だが、俺は武器防具を探すことにしようと、フィールドへと向かう。
「あっ♪ おーい、テーイルーーー♪♪」
ユウキが嬉しそうに腕に張り付き、すでにお祭りを楽しんでいた。
◇◆◇◆◇
いつの間にか、ユウキに連れまわされ、リンゴ飴、綿菓子など、コルクの射撃まである。
「………」
「うわっ、すごっ! テイル射撃もうまいんだねっ」
それからシノンやフィリア、ストレアと、次々と祭りを楽しむ仲間たちと出会う。
「なんていうか、いつの間にか仲間の集まりだね」
「うんそうだね~楽しいね~」
ストレアも買い食いしながら、先ほどかき氷の洗礼を受けていた。
クラインはどうにかこうにかデートをする相手を探していたが、結局できなかったらしい。
「フィリアたちも、浴衣なんだな」
「そうだよ~。いま限定のアイテムなんだから、せっかくだし着ないとね」
そう、女性メンバー全員が浴衣である。俺は全員に似合うと言い喜ばれて、クラインのお世辞は綺麗に流された。
「なんで俺だけこんな扱いなんだよ!」
「いつものことでしょ」
レインもその空気の中、自然と笑顔であり、その様子にほっとする。
「もうここまでくればあれだ、他の奴も見つけて、みんなで回ろうぜっ」
「おー♪」
「と言ってるうちに、おーいっ、リズ」
ユウキが大きな声を出し、少し遠くにいる二人に話しかけようとしたときだった。
二人は敏捷ステータスの限界を超えて近づき、ユウキの口を防いだ。
「うぐっ!?」
「シッ、全員静かに」
「なっ、なんだ? いった………」
そして俺たちの目の前に、キリトとアスナが仲良くデートしている様子が飛び込み、その後女性メンバー全員で、その様子を観察することになる。
「テイル、俺ら、なにしてるんだろう」
「………」
男性は時折買い出しに行かされる。
◇◆◇◆◇
「あー楽しかったよ」
「そうか」
そろそろ終わりそうなときに解散し、ユウキと共に軽くモンスターを倒した帰り道。
「ありがと、手伝ってくれて」
「なんだいきなり」
「ううん、少しね………」
少し下を向き、夜空の星を見る。
「あのさ、テイルは楽しい?」
「ああ」
それに少し微笑むユウキ。
話を聞くと、実はユウキはギルドに所属している。
それがしばらくしたら解散する話になり、最後の記念に、あるイベントをメンバーの名前が刻まれるイベントがあるから、こなしたかった。
他ギルドと組むと、全員の名前がこの世界に残せないから、ギルドに所属していないプレイヤーしか頼めなかったらしい。
キリトとアスナにはすでに話していて、
「できれば、テイルにも手伝って欲しかったんだ」
「そうか………」
だが俺は武器防具が、まだ自分の全てを預けられない。
それに気づき、ユウキがすぐに取り次ぐろう。
「ああごめんっ、別に無理にってわけじゃないんだ。いつも助けてもらったりしてたから」
「そうなのか」
「うん………。テイルとの、あのSAOの戦い、ボク忘れられないんだ。だからかな、あの時のテイル物凄く楽しそうだった」
「………やっと楽しめる。そう思える瞬間だったからな」
そんな話を楽しげに語りながら、ユウキは笑う。
それを見ながら、今日はお互い別れた。
◇◆◇◆◇
隠していること、話せないこと、言えないこと。
特典の一つで、ユウキたちの病気をどうにかして欲しいと願った。
考えれば、それはどのような形で叶っているか分からない。
なにより、確かユウキには、姉がいたはずだ。
彼女はどうした?
そんなことを聞けない。
分からないことが怖い、そう思いながら、学園で静かに過ごす。
◇◆◇◆◇
「はあ」
あくびをしながら、ミルクを飲む。
朝日が昇る休日、果物を食いながら暇をつぶす。
「今日もフルダイブするか、色々と物入りとかあるし」
そんなことを呟きながら、飼い猫の面倒見ている時、電話が鳴り響く。
母親が電話に出て行き、ミルクを飲み干すと、
「ちょっと、あんたに少し用だって」
「はい?」
◇◆◇◆◇
現実世界、病院へ出向く。
「………」
「すいません、お話は済んでますね」
「倉橋先生、ですね」
親には連絡済みで、まずは話だけでもと俺だけが来た。
なんでも、俺のドナー登録で、骨髄移植手術をしてほしいとのこと。
「今回のケース、患者の方が少し特殊の手術方法をしています。それにより状態を安定させていると言う状況でして」
「すぐに話を通したかったと?」
正規のやり方は知らないが、少々重々しい雰囲気で頷かれるところから、重い病気なのだろう。
「それに、患者の方は早い段階で移植した方がよろしい為、こうして呼び出させてもらいました」
「それじゃ、手術日を決めるんですね」
「………そうなのですが」
話を聞くと、このことを、ドナー登録者に自分と合う人がいると知った、その子は、
「受けたくないです………」
そう、患者の子がそう言うのだ。
「そうですか」
「申し訳ございません、まだ準備ができていないうちにお呼びだてしまい」
「いえ」
血縁関係者以外で、拒絶反応が無いのは奇跡。
そもそも、俺のを移植して平気かと思う。あまりに俺は吹き飛んだ人生だからだ。
親からも、
「えっ、あんたので平気?」
我が人生はまあ悲惨と言うか、おかしいというか、うんおかしな人生だからしゃーない。
とりあえず説得を試みるらしいので、連絡先などを交換し終え、こうして病院を後にする。
◇◆◇◆◇
こうして患者の子。プライベートなどデリケートな方面なのだから詳しく聞けない。
俺に説明できない部分ではあり、それは医師たちの仕事。
それでも気が晴れないため、色々歩き回ることにした。
『~~~じゃあ、聞いてください』
不意に路上ライブの歌が聞こえる。
歌を聴き、大切な者たちを思い出す。
(歌だから………じゃないな。いい歌だ)
スピーカーはいい物では無く、観客もまだら。
けど、少し心が晴れる。
どうもメイド喫茶のバイトの子らしく、それの紹介もする。
『じゃあみんなまたね~ダスヴィダーニャ!』
「?」
ロシア語のさようならの言葉に、
「………」
いや待て、俺はどこでそれを聞いた。
いまの歌、どこで聞いたような気がする。
「?」
首をかしげながら、その場を去る。
(人間、外人の区別はつかないと聞くが)
ロシアハーフだろう。まさかこうも分からないとは。
「俺もまだまだだな」
◇◆◇◆◇
ここ最近、ダイブする機会を逃していると、
「………やってしまった」
キリトたちがボス攻略、裏世界と言うエリアを開放したとメールが届いた。
一応おめでとうと返しておくが、攻略に協力しないのはいただけない。
「………レアドロップ品くらい、稼ぐか」
そう思い、集合時間にダイブできないのなら、フィールドでドロップ品やアイテムなど集めることにする。
気晴らしになるし、色々しても問題ないだろう。
そう決めて、少し遅い時間にダイブした。
少しずつ彼らの物語に溶け込むテイル。
いまだに彼のリアルネームは明かされない。
彼のことを最初に知るのは………
それではお読みいただき、ありがとうございます。