ソードアート・レジェンド   作:にゃはっふー

71 / 77
どこかの姫の乳母「姫様、役目も分かりますが護衛役である私にも内密に動かないでください。不埒者が現れたらどうするおつもりですか?」

何ルダ姫(もう不埒者が現れたなんて言えない………)

その頃の、胸を触った不埒者「宿が埋まってたぜ………木の上で寝よう」


第65話・ここにいる理由を探しに

「ん~………よく寝たが、時間はまだあるな」

 

 あの後、シークと別れ、木の上で夜を過ごした。宿が祭りの為、全部屋埋まってた。

 

 日が上がると共に目を覚まし、野宿する中、シークとの待ち合わせまで時間はまだある。いまは朝飯を食って、その後にシークと落ち合うことになっている。

 

(しかし、睡眠ができたってことはどういうことだ?)

 

 あの〝体験〟であろうと、眠ると一時終わる。寝ることは現実世界に帰る行動であり、セーブである。

 

 いまの現状が〝体験〟であるとしたら、木の上で眠り出したら現実の自分が活動し出すはず。

 

(なのに普通に寝て起きた。意識だけが仮想世界のテイルにログインして、その身体のまま異世界に来たような状態)

 

 な訳がない。それならばALOを初めとしたゲームのテイル装備になる。だがGGOを初めとした容姿、装備が混ざっている。

 

 まるでこの世界の旅人テイルと言うテーマで、仮想世界の装備や容姿を選んで合わせたようだ。できればALOの弓か、GGOのUFGがあれば助かるのに、それが無い。

 

(ルピーはあるのもなんでだろう?)

 

 そう思いながら朝飯を食う為に、空いている店を探す中で………

 

「………」

 

 顔を上げた、空を見た、そして歩き出した。それを目指した。

 

 早朝の朝に響く歌は優しく、透き通る中で、町から少し離れた海岸から奏でられる歌。

 

 そして………

 

「―――あれ? テイル?」

 

 俺は歌姫、彼女と再会した。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 あたしは彼を家に上げて、朝ごはんの残りを食べさせてあげた。

 

「パンとシチューしかないけどいいかな?」

 

「別にかまわないけど、いいのか?」

 

「いいのいいの、この前のお礼だよ。おじさんもいま祭りの打ち合わせでいないし」

 

 そう言いながら彼に朝食を出し、彼はそれを食べ始める。

 

「いただきます」

 

「?」

 

 そう呟いてから彼はパンとシチューを食べ始める。あたしはその様子を眺めながら見ていた。

 

「ごちそうさま。おいしかったよ」

 

「うん。けどいまのがあなたの国のお祈りなの?」

 

「ん? ああ、食材に感謝するって意味だよ」

 

 そんな話を聞きながら、神様へのお祈りなのか色々聞く。いただきますは彼からすれば食事のあいさつで、食材への感謝らしい。

 

 洗い物をしながら彼はすぐに出て行こうとするが、まだ時間があるらしく、少し外について色々な話を聞く。

 

「やっぱり島の外はすごいな~」

 

 彼から聞く話は珍しく、なかなか聞かない文化で、聞いていて楽しい。

 

 この島は多くの人が行き来する。だから様々な文化や歴史、様々な国があるのは知っている。知っているだけで、あたしは何も知らない。

 

「………気になるのか、外が?」

 

「うん♪ けど少し怖いな………」

 

 危険なことだってあるのは知っている。素敵なことばかりではないのを知っている。

 

 だけど夢見てしまう。海の向こうの世界、その先が見てみたい。

 

 けど………

 

「それにあたしは〝歌姫〟なんだ」

 

「〝歌姫〟?」

 

「この島で守り神様を起こす歌を歌う、その歌を伝える一族なの」

 

 そう言いながら凄いでしょと胸を張る。彼はそれに苦笑しながら話を聞く。

 

「開拓された島なんだろ? なんでそんな伝統があるんだ?」

 

「ん~詳しいことは知らないけど。大昔にそう神託があったらしいとかなんとか、あたしはそう聞いてるの」

 

「誰かに任せられないのか?」

 

「あたしのお父さんと先代であるお母さんはもういないし、おじさん一人だけ、この島に残せられないもの」

 

 それもあるし、もう一つだけ理由はある。

 

「それに守り神様を寝かせ続けてはダメなんだ」

 

 神託の話、この島の守り神の話。

 

 守り神様は夢を見る。その夢は世界になり、悪夢へと変わる。

 

 悪夢になった世界を覚ます為、世界の外から〝目覚めの使者〟が現れ、夢の世界を壊す。

 

 それを繰り返してはいけない。目覚めの使者は世界を壊す。その世界に生きる全てを壊す為に。

 

 目覚めの歌を絶やしてはいけない。その歌がある限り、守り神は眠りについてもすぐに目覚め、世界は生まれない。悪夢は生まれず、使命を背負う者も現れない。

 

「だからあたしたち〝歌姫〟たちが、歌を歌い続けないといけない。誰かに世界を壊す使命なんて、誰にも背負わしちゃいけないの」

 

 そう微笑むと、彼は悲しそうな顔になる。

 

 なんでこの話を彼に話すんだろう? あまり外の人に話しちゃいけないのに……?

 

「………それじゃ、俺は行くよ」

 

「うん。お祭り見に来てね、あたしの歌、綺麗だって評判なんだよ♪」

 

「ああ」

 

 そう言い彼は出て行く。その後姿を見ながら、少しだけ懐かしくなる。

 

 だけど………

 

(………これってなんだろう………)

 

 緑の服を着こむ人、その後ろで彼が苦しみながら歩いている。そんな後ろ姿を幻視しながら、あたしは彼を見送った。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 森の中、待ち合わせの場所に来ると、シークは木々の中、木の上から飛び降り現れた。

 

「待たせたか?」

 

「いや。それより君はどこまで知っている」

 

 すぐにその話をする中で、俺がすることは決まっている。

 

「楽器があるダンジョンを見に行きたい。まずはそこからだ」

 

「………分かった」

 

 こうしてすぐに俺たちは動き出す。

 

 テールのほらあなは崩れていて、すぐに中に入ることはできた。

 

 だが中は壊されていて、奥へと進むと楽器の残骸がある。

 

「これは」

 

「『まんげつのバイオリン』。なぜここに………」

 

「次はつぼのどうくつ。『まちがいのホルン』に行くぞ」

 

 そこに出向くとこれもまた壊れていて、カギのあなぐらの『うみゆりのベル』。アングラーのたきつぼの『しおさいのハープ』。

 

 ナマズのおおぐちで『あらしのマリンバ』。かおのしんでんで『さんごのトライアングル』の残骸を見つけてから、昼食を取る。しっかりと町で買い物していた。

 

 干し肉を噛みながら、パンを取り出す。シークももぐもぐと食べている中、

 

「んなぶっきらぼうに食うなよ。うまいぞこれ」

 

「別に。食事に興味は無い」

 

 そう言い、黒パンを食べ始める。俺もまた食べたがあまりおいしくない。

 

「少し手抜き過ぎるだろ。なんかないかな?」

 

 そう思いながら手持ちを漁ると、良いのを見つけた。やはり所持品が混ざっていた。

 

 キリトからのおすすめの調味料があり、それをパンにクリームを乗せる。容器からスプーンでかけるタイプなのだが、直接かけて大量にクリームを乗せるのが好みである。

 

 おかげで黒パンがクリームパンに変わり、一気に口の中に仕舞う。

 

(………?)

 

 そうしていると視線を感じて、シークがこちらに意識を向けているのに気づく。

 

「使うか?」

 

「………」

 

 静かに受け取り、スプーンも使いパンに乗せる。

 

「………」

 

 急にパンを食べるベースが早まり、それを見ながら食事を終える。

 

 クリームはすべて使い切られた。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 結局、オオワシのとうにある『ゆうなぎのオルガン』は壊れていて、最後を見つけに出向くまでに、シークが口を開く。

 

「君はどこまで知っている」

 

「答える気は無い」

 

 そう言いながら進んでいる。シークはその姿を見ながら考え込む。

 

「………この島は開拓途中で偶然発見された島で、特別な伝統ができたのは、ハイラル王国の姫に神託が下ったからだ」

 

「やっぱりか」

 

 そんなところだろうと思っていた。そのままシークは話を続ける。

 

「当時の姫がこの島に眠る存在について知り、守り神を悪夢から目覚めさせる楽器と共に歌が伝わった。歌は島に住みだした住人、その子供の一人がいつの間にか歌い出した」

 

「子供が?」

 

「ああ。歌姫の一族の伝承では、夢の中、空を泳ぐクジラと共に歌ったのが、歌姫たちが紡ぐ目覚め歌の正体だ」

 

 それを聞きながら、楽器についてはこれもまた不思議な事に、島のどこかで見つかるらしい。

 

 いつからあるか分からない遺跡、天熱のダンジョンからだったこともあれば、どこからか流れついたり、ふとしたきっかけから見つかったりする。

 

「壊れてもいつの間にかどこからともなくそれは見つかり、祭りの時、八つの楽器は歌姫と共に島中にその音色を響かせる。そのはずだ」

 

「はず?」

 

「………いまの、今世の巫女姫が予知夢を見た」

 

 そう言いながら、楽器の残骸を回収したのだろうか、手の中のそれを見ながら呟く。

 

「悪夢から生まれた剣士が、楽器を壊し、悪夢の世界を創り出すと言う夢」

 

「………悪夢の世界をか?」

 

 それにシークは頷きながら、こちらを不審者、疑わしい者として見る。

 

 面倒だからシークが何者かなんかどうでもいいが、シークからすれば俺は一番怪しいのだろう。現に楽器は壊されているし、その場所を知るのだから。

 

(まあ理由が分からない、行動が不明だから、監視程度で済んでるんだろうが………)

 

 そう考えながら、カメイワの前へたどり着いた。

 

 そこはあの時のような状態であり、自然物にしてはあまりにも不自然な岩がある。

 

「ここは無事っぽいが………」

 

「この先はどうするんだ?」

 

「特殊な音色でゴーレム、岩を動かしてバトル。あのカメの頭っぽい岩を壊してダンジョンの中に入る。だがオカリナが無いから、音色を奏でることができない。爆弾無い?」

 

「岩を壊すほどの物騒な物は無い」

 

 そう言って少し考え込んでから懐に手を入れて、何かを取り出す。

 

「これを貸すからその音色を奏でろ」

 

 そう言ってオカリナを渡して来る。そのオカリナにはある紋章が刻まれ、あの日々の中、物語の中で大変お世話になった物。

 

 なんていうかあえて考えないようにしているが、シークは………

 

(まあいいか)

 

 思考を放棄してオカリナを吹く為に口を付ける。このオカリナ、他人に貸していいのだろうか? シークが少し目線を反らす中で、音色を吹いた。

 

 奏でるのはあの世界で知った魂すら起こす歌だ。それが鳴り響き、演奏が終わると地響きが起き始める。

 

「戦闘の準備してくれ」

 

「ああ」

 

 カメの岩が剥がれ、首を伸ばす。

 

「カメ?」

 

「俺に聞かないでくれ」

 

 首は長いし俺もカメかと思ったよ。

 

 そう思いながら二人して駆けだして、カメイワの首を叩き斬る。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 カメのような岩が口を開き、炎を吐き出しながら迫る。待て、混ざってないかテメェッ!?

 

「シークは下がってろッ!!」

 

 攻撃を何度か当てたが変化がない為、頭部を連続で斬り込みながらそのまま首まで進む。

 

 岩のはずが金属がぶつかり合う音が鳴り響く中で、一部の首の岩へと斬りかかると苦しむように変化した。

 

(トライフォースの『デグロック』が混ざってるのか? ん? なら………)

 

 すぐに何かか来ると思い、膝を折り、無理矢理上半身を下げたら、冷凍ビームのようなものが通り過ぎた。

 

 ブリッジの要領で後ろの、ビームが当たった場所を見ると凍り付いている。

 

(マジで混ざっているな。火も冷気も無いから斬り続けるか)

 

 何度も何度も剣を振り回す。首が一つだけでよかった。

 

 そんな中、決定打は無いものの、SAOで鍛えられた方法で戦う。

 

 1でもダメージが通れば、後は時間が解決する。

 

 永遠に思えるほど攻撃を繰り返し続け、倒れるまで敵を切り刻み続けた。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 自分が見る光景に目を疑った。

 

「入口が現れたぞ」

 

 汗もかかず、息も乱すことも無く、長時間怪物と斬り合い続けたテイル。

 

 彼の周りには岩の化け物の破片と共に、それが口から出した熱線などの跡がある。凍り付いた大地に、溶岩のように湯気を放つ黒焦げた岩。

 

 その中でどんどん足場が限られる中でも気にも留めず、攻撃を繰り返すことができる剣士。

 

(こんな腕前を持つ者が国にいるか?)

 

 答えは否。少なくても攻撃を避けつつ、その攻撃で変わった地形を把握し続けながら攻撃をかわし、攻撃を常に続ける剣士など聞いた事が無い。

 

 彼は何者なんだろう。そう思いながら、彼と共にダンジョンの奥へと進む。

 

 歌を途絶えさせては、あの夢を現実に変えてはいけない。

 

 だからこそ気づかなかった。いつの間にか、彼を信用している自分がいたことに。それに疑問を持たないことに。

 

 自分は気づかなかった。彼が何かに憎むようにダンジョンに入る瞬間を………




テイル「はいオカリナ。貸してくれてありがとう」

シーク「別に。必要ならば仕方ない」

テイル「ん? 待て、なにか吹くとこに汚れが………赤い? 唇でも切ってたか?」

そう言いながら口を触るが何もついていない中、シークは少しだけ考え込み、急に真っ赤になる。

シーク「はっ、早く奥に進むぞっ!!」

テイル「あっ? ああ?」

シーク(朝の稽古の時に吹いたけど、吹いたけどッ!? ちゃんと拭いたりして渡せばよかった………)

テイル「???」

お読みいただき、ありがとうございます。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。