硬く柔らかで温度耐性があり鋭い   作:ちゅーに菌

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どうも、ちゅーに菌or病魔です。

何故かまだ続きました。書いていて我ながら何を書いているのだろうと、思いながら書いている小説。そのクセ作者の投稿小説の中ではダントツに書きやすいんですから不思議なものです(やりたい放題)




おるとさんのバレンタインとペット

 

 バレンタイン。

 

 それは恋する乙女や、ホワイトデー戦略を狙った乙女や、世渡り上手な乙女が跋扈する一大イベントであり、大半の野郎や、非リア充には名前を出すことさえ憚られる1日である。

 

『むー……』

 

 そんな日を目前にして、ここにも恋する乙女なのかは不明だが、バレンタインにプレゼントを渡そうとしている女っぽいアルティミット・ワンがいた。

 

 ちなみにおるとさんは女性特効も男性特効も入らないので、見た目に騙されてはいけない。愛するもの特効は入る。人類の脅威特効も入る。フォ↑ーリナー!↑

 

 行動に理由が伴わないおるとさんが、珍しく悩んでいる理由は無論、最かわの藤丸立香に渡すプレゼントについてである。はじめからチョコ渡す気が微塵もないのはおるとさんらしいというところであろうか。

 

 廊下をポテポテと歩くおるとさんは突然、何かの日陰に入ったため顔を上げた。

 

「どうかしたのか? 悩みごとか、おるとさんよ」

 

 すると目の前にはなんか巨大で青白い人型の化け物が立っていた。それを見たおるとさんは看板の文字を変える。

 

『"つぁーり"』

 

「うむ、余は皇帝(ツァーリ)である。そして、汝はおるとさんだ」

 

 それは異聞帯のサーヴァントであり、おるとさんを除くと現状このカルデア最強の戦力であるイヴァン雷帝その人であった。人理修復するときに居てはいけない最上位のサーヴァントである。無論、カルデアに召喚されたのは可能性の獣と書いて、ピックアップと読むせい。はぁ↑人理壊れちゃぁぅ↑

 

「悩みがあるのならば述べるがよい。知らぬ仲でもあるまい」

 

 そして、何故か親身におるとさんの悩みを聞こうとする雷帝。出来る皇帝である。

 

 ちなみにツァーリがおるとさん呼ぶことに違和感しかない気がしないでもないが、おるとさんは神々ですら気を使うレベルで超絶歳上で、色々とスケールがデカいので特に問題はない。寧ろ、格が上がる程おるとさんへの態度は硬化する。おるとさんを全て理解していて尚、尊大な態度の取れるサーヴァントは英雄王ぐらいのものである。

 

 それとツァーリとおるとさんが妙に仲がいいのは、怪物の好みに加えて、おるとさんが高いところが好きだからである。5mのツァーリの肩の上とか、マンモスに戻ったツァーリの上とか最高の眺めだという。

 

『実は――』

 

 おるとさんはツァーリへ、立香へのプレゼントを何したらいいかわからないという悩みを打ち明けた。超可愛らしいお悩みである。

 

「なるほど……それならばやはり――」

 

 それを聞いたツァーリはおるとさんに案を出した。ここで、かの名言を引用しよう。

 

 王は人の心がわからない。イヴァン雷帝はその最たる例である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 言うに及ばないが、カルデアは大施設である。

 

 その規模は南極にありながら完全な孤立無援で、カルデアの機能を麻痺させず、職員全ての生活が自給自足が可能な上、サーヴァントに衣食住に娯楽を付けて提供しようとも特に問題ない程である。ここまで完璧な機能を持った施設というものもそうないであろう。

 

 そんなカルデアであるが、その巨大さ故に問題も幾つかあった。

 

 その最たる例としては空き部屋の多さであろう。巨大にも関わらず、少ない職員でも回せるような設計のため、人数に対してスペースがあまりに広いのである。

 

 まあ、この辺りはサーヴァントの居住スペースを作れるため、結果的には利点とも言える。

 

 そんなカルデアにある倉庫として使われる予定であり、小中学校がすっぽりと二段程積み重ねられる程巨大な大空間の前に藤丸立香は立たされていた。

 

「あの……これはいったい?」

 

「うむ、おるとさんのサプライズという奴だ」

 

 立香はバレンタインの日にイヴァン雷帝に拉致され、肩に乗せられたまま連れてこられた場所が、その倉庫の大扉の前である。

 

「ああ、通りで最近おるとさんは……」

 

 最近あまりおるとさんを見掛けなかったことを立香は思い出す。最もふわふわふかふかの時間には無表情で手をわきわきさせながら必ずやってくるので特に心配はしていなかったが。

 

 そういえば同時にイヴァン雷帝もあまり見掛けなかったことも思い出した。

 

「では刮目せよ」

 

 何故か若干声が上擦っているように聞こえるイヴァン雷帝は、倉庫の大扉に手を掛け、一気に開いた。

 

 

 

 扉を開けると、そこは大聖堂であった。

 

 

 

「は……?」

 

 色々目にしたり、きよひーからプレゼントは私ですされたりした立香でもこの光景は唖然とした。何度か目を擦っては見てを繰り返す程である。

 

 何度見返してもあまりに巨大で荘厳な大聖堂が建っていた。見事な仕事だと関心はするがどこもおかしくはない。

 

『封印が解けられた!』

 

 にょきりと看板を掲げたおるとさんが、立香の目の前から生えてきた。そういうことも出来るらしい。

 

「こ、これはいったい……」

 

『りつかへのバレンタインの贈り物。つぁーりに聞いたら"大聖堂"がいいっていうからそうした』

 

「オマエノシワザダッタノカ……」

 

 振り向くといつの間にか居なくなっていたイヴァン雷帝に向かって片言で妙なことを呟く立香を前で、おるとさんは自分の隣に3m四方の水晶のブロックを出現し、次の瞬間にブロックが音もなく爆発してクリスタル細工の立香の像になった。

 

『こんなかんじでつくった。内装もつぁーりに聞いた』

 

 立香は褒めて褒めてと言わんばかりに目を輝かせるおるとさんを撫でながら、ロマンやダ・ヴィンチちゃんになんて説明しようと考えながら遠い目をしていた。

 

 ちなみに自身の水晶で細工をすること覚えていたのは、やはり黒ひげとおっきーにフィギュアとか作らされたせいである。

 

 尚、イヴァン雷帝監修、おるとさん作の大聖堂は伊達ではなく、非常に巨大でありながら荘厳であり、どこか物静かな派手さで満たされている空間は宗教系サーヴァントに大好評だったという。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 疑似地球環境モデル・カルデアス。

 

 1990年に完成したカルデアの発明の一つであり、惑星には魂があるとの定義に基き、その魂を複写する事により作り出された小型の疑似天体である。いわば地球の小さなコピーであり、アニムスフィア家の魔術礼装だ。

 

 カルデアスは同時に地球のライブラリとして機能する。未来は変動するものであるため、100年先の未来の詳細は観測できないとされるが、確定した過去の詳細は引き出せる。 故にカルデアスは人類史の過去に向かう羅針盤であり、人体を量子分解し過去に出力するレイシフトもカルデアスがあればその成功率は格段に跳ね上がる。

 

 そして、そんな素晴らしい奇跡の産物のようなカルデアスは地球の魂をコピー・再出力した疑似天体であるため、一度回した以上止めることはカルデアスの死と同じなのである。

 

 

 

 

 

「わかったかいORT君? だからカルデアスを"齧ったり"したらダメなんだ」

 

『ムシャムシャしてやった。濃ければなんでもよかった。今は反芻している』

 

「これがあの原初の一(アルテミット・ワン)の成れの果てだと思うとあの姫と黒髭には脱帽だよ……」

 

 現在、カルデアの象徴のひとである疑似地球環境モデル・カルデアスの目の前で、ダ・ヴィンチちゃんに正座されられながらおるとさんは看板を掲げていた。

 

 ちなみにおるとさんは反芻という言葉の意味を知らないし、牛ではないのでしたりもしない。

 

 後、怒られている自覚はあるので、ORT君と呼ばれても特に突っ込みは入れない。おるとさんは空気の読めるアルティミット・ワンなのである。すごいなー、憧れちゃうなー。

 

「どうして……いや、是非を問うべきではないか。やりたかったからやったんだろう?」

 

『おうさ』

 

 そして、もぐもぐと口を忙しなく動かしているおるとさんの背後にあるカルデアスはちょっと欠けていた。

 

 具体的に言えば真ん丸だったカルデアスは十六夜ぐらいになっている。大した違いには見えないが、元々かなり巨大な物体なため、その抉りとられた体積はかなりのものである。まあ、これぐらいならばカルデアスに火を入れていれば疑似天体であるため、勝手に修復されるが、そういうものではないのである。 

 

 ちなみにカルデア自体が"高密度霊子の集合体"かつ"次元が異なる領域"でもあるため、物理的には太陽やブラックホールに等しい存在であり、人間が直接触れてしまえば分子レベルにまで分解されて消滅してしまう。というか、1名分解された実績のある代物であるが、太陽だのブラックホールだのおるとさんにとっては些細なことであった。流石、おるとさんは格が違った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『美味しかった』

 

 一通りダ・ヴィンチちゃんに怒られ、誰に言うわけでもなく看板を掲げたまま歩くおるとさんは、カルデアスの味を小学生並みの感想で述べながら、とあるサーヴァントがいる部屋を目指していた。

 

 歩きながらおるとさんはふとこれまでの出来事を思い出す。

 

 死界魔霧都市ロンドンでは下父上にモーさんが、ブラットアーサーした後にすぐカルデアに帰って来たので、魔術王と対面はしていない。多分、魔術王も精々、無茶苦茶強い人理の英霊ぐらいに思っているハズである。尚、カルデアの人間すらおるとさんの正体に暫く気づかなかったのだから魔神柱達が気づく訳もない。ダイゴさん大誤算。

 

 ちなみにロンドンの終盤、魔術王の攻撃を辛うじて耐えたマシュ・キルエライトと、持ち前の強固さを持って素で耐えたイヴァン雷帝を除く全サーヴァントを失い絶対絶命であったが、ぶちギレたイヴァン雷帝が死力を尽くし、カルデアから魔力をありったけ回して我が旅路に従え獣(ズヴェーリ・クレースニーホッド)を発動した。それには流石の魔術王も驚愕と共に魔神柱を総動員するしかないという神話の戦いのようであったそうな。

 

 セイバーウォーズではおるとさんは特にやることがなく、立香に着いていた。目立ったことといえば、なんとなくアルトリアに擬態してみたら謎のヒロインXに斬りかかられたことぐらいである。セイバァー!

 

 チョコレート・レディの空騒ぎ、もとい2016のバレンタインでのおるとさんの奇行は省略する。

 

 空の境界では何故かおるとさんが、マンションの一室で生活していた。全ミッションクリアが詰んだと立香が嘆いていた。

 監獄塔では当たり前のように精神だけ監獄塔に飛ばして居座っていたおるとさんが、立香を能力変更前のイージス力比べ並の守りを見せていたので、岩窟王も絶妙な苦笑いを見せていたりもした。精神だけでもおるとさんはメイン盾なのである。

 

 北米神話大戦 イ・プルーリバス・ウナムではおるとさんが永続狂気帝国 セプテムの時のように戦略兵器と化していた。味方に星を七日で焼いた全盛の巨神兵がいたようなものである。凪ぎ払え!がわりと洒落にならない。勿論ツァーリもいる。というかツァーリの肩におるとさんが乗っている。あーもうめちゃくちゃだよ。

 

 ちなみに目的のサーヴァントのいる部屋はボイラー室に近い場所である。まあ、隣にあるノッブ達の部屋よりは幾分かマシであるが、それでもかなり暑いことには変わりない。

 

『たのもう』

 

 目的の部屋に来たおるとさんはノックをしてから相手の返事を待たずにドアを開けた。礼儀作法としてノックはするが、相手の了解は取らない辺りがおるとさんである。

 

「あつーい……」

 

 そこには人をダメにするソファーに被さるように乗りながら眉間に皺を寄せているジャージ姿の女性サーヴァントがいた。ついでにものすごいタイミングで呟きをおるとさんは耳にする。

 

「………………」

 

『………………』

 

 バッチリと目があった両者。そして、おるとさんは次の行動に出る。

 

『……俺のログにはなにもないな』

 

「それでよい……」

 

 おるとさんは見たことを忘れた。本能的に長寿タイプなのである。

 

 

 

 

 

「それでなんのようだ?」

 

 芋ジャージからいつものドレス姿に服装を変えたサーヴァント――スカサハ=スカディは、体温が低くて常にひんやりしているおるとさんを座ったまま抱き締めながらそう問い掛けた。

 

 人理修復するときに居てはいけないサーヴァントその2である。いつか立香は可能性の獣(ピックアップ)に殺されるかもしれない。

 

『なんか、カルデアスたべたら薄味があった』

 

「薄味とな?」

 

 おるとさんは身振り手振りを交えながら微笑ましく説明した。

 

 おるとさん曰く、なんとなくカルデアスを食べていたところとても濃くて美味しかったのだが、味の中に薄くて逆に雑味に感じるものが混ざっていたらしい。不思議に思たのと同時にその薄味は何かの生き物の魂の味だと思い出し、折角だからそれをかき集めるように先に食べていたそうな。

 

 5割程その魂を食べて回収したところでダ・ヴィンチちゃんに見付かり、止められて現在に至るのである。

 

 説明を終えるとおるとさんは口を開けた。おるとさんの舌の上では小さく弱々しい魂が揺らめいていた。

 

「なるほど、それでどうしたい?」

 

『かわいければペットにするから蘇生てつだって』

 

「ふむ、よいぞ」

 

 おるとさんがカルデアの冷蔵庫から持ってきた手土産のハーゲンダッツ2ダースを渡しながらそういうと、スカディは二つ返事で引き受けた。

 

 ちなみにスカディはダッツ派だが、おるとさんは舌が子供っぽい為かスイカバーやガリガリ君派である。また、おるとさんの友人のアナスタシアはダッツは量がないという理由でスーパーカップ派である。

 

 

 

 

 

 

「よし、いけるぞ」

 

 約3分程で組上がったルーン文字の帯に囲まれたおるとさんは床に正座をしていた。おるとさんから魂を出すと自然消滅してしまうので仕方なく、そうしているのである。

 

 魔力はおるとさんが肩代わりし、スカディがルーンで代用して願望機の代わりになることで蘇生を行うのである。師匠系サーヴァントの万能感すごい。

 

「行くぞ」

 

『おー』

 

 おるとさんの周りで召喚演出の虹回転のような光が起こる。見るマスターは腐るほど見たことがあり、見ないマスターは確定ガチャぐらいでしか見ないアレである。

 

 ちなみに虹演出だからといって必ず星5が出るわけではないので気をつけるように。作者は虹演出からエミヤとかバサスロットとか引いてスマホをぶん投げたことがある。全くの蛇足だが、レア演出として現在星4以上しか存在しないフォーリナーでも銀カードから金カードに変わる演出が出ることがある。その場合、銀カードでも確定なので銀カードだからといってもめくれるまで落胆することなかれ。作者はアビーで見たことある。最近だと、銀カードのムーンキャンサーというレアなものを見たことがあるが、唖然としている間に写真を撮るのが遅れ、金になりかけな微妙な写真が撮れた。クッソ強いな水着BBちゃん。

 

 そして、虹色の光は晴れ、おるとさんの腕の中に産まれたままの姿をした白に近い銀髪の女性が抱かれていた。

 

 その人物を見たカルデアのスタッフならば驚きの声を上げて言うであろう。

 

 "所長(オルガマリー・アニムスフィア)"と。

 

 しかし、悲しいかな――。

 

『だれ……?』

 

「誰だ……?」

 

 時期的にこのふたりに彼女との面識が無かった。スカディは言わずもがな、おるとさんがカルデアに来たのは冬木の後である。

 

 首を傾げるふたりをよそにオルガマリーは目を覚まし、その金色の瞳が露になった。

 

「…………う……」

 

 オルガマリーは目を開けると、おるとさんとスカディの顔を見回してから不安げな表情になり、呟いた。

 

「あなたたちはだれ……?」

 

『私はおると。おるとさんって呼んで。そっちはスカサハ=スカディ。スカサハ様とかスカスカ師匠とか呼んで』

 

「おい」

 

 おるとさんの微妙にあれな説明にスカディが突っ込みを入れていると、オルガマリーは不安げなまま自身の手を見つめ、再び顔を上げておるとさんを見た。

 

「私は……だれ……?」

 

 オルガマリー・アニムスフィアは自分自身のこともカルデアのことも綺麗さっぱり全て忘れてしまっていたのだった。

 

 ちなみに理由は、半分しか魂が集まってない状態でおるとさんが強行したからである。全部、おるとさんが悪い。

 

 それを聞いたおるとさんは即座に看板を掲げた。

 

『あなたはわたしのペット』

 

 今さら語るまでもないが、基本的におるとさんは腐れ外道である。

 

 

 

 




この小説で所長はリヨぐだ子のとこ並みの扱いを受けます。

Q:なんで所長蘇生したん?

A:安定したふわふわふかふか要員が欲しかった(レギュラー)

Q:なんで記憶消したん?

A:ふわふわふかふかの邪魔(迫真)


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