「……置いておいてさ、例のコーヒー屋の可愛い子ってどれ?」
「あっ…!?声でかいって…!」
「もしかしてあの子?」
「いや、あの子はお店のバイトのー」
「すいません!注文いいですか!?」
今日も変わらずいい賑やかさを感じさせるあんていく。俺がこのお店で働き始めて一ヶ月が過ぎた。仕事にも慣れ、他の店員の人とも同じ亜人種からか、あの日のコーヒーを出して以来、仲は良好である。
「古門くーん、注文お願い~」
最近、多いのが自分指名の注文願い。何故だろうか。
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「カネキよ、悪いことは言わん…諦めろ!!」
僕の顔は親友に言われた拒否返答にショックを隠せないでいた。
「僕だってわかってるよ…僕に釣り合わないことぐらい」
「釣り合うとしたら、あの店員さんぐらいにならないとな。ほらまた指名の注文が入った」
「ああ、あの人は最近入った人なんだけど、仕事も容姿も完璧で、ここに通っている女の人からの人気が凄いんだよ」
そう、僕はわかっていた。あの人はあの店員さんのような人がお似合いだ。僕はこうやって見ているだけ、それだけで十分だ。
僕が彼女の顔を見つめると、彼女はそれに気付き、笑顔を返してきた。
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「じゃあねいっちゃん」
「変な人にはついていったらダメだぞ~」
「私そんな小学生じゃないから!!」
私は、最近より多くなった彼女達のいじりに少しムキになりながらも家の方面へと帰った。
商店街の方面を歩いていると、ケーキ屋で私の足は止まった。
そういえば前に、鎌犬さんからケーキをもらったから、そろそろお返しをしないと…
そう思うと私はお店の中へと入った。
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「ありがとうございました」
そういえば、鎌犬さんは何ケーキが好きなのかな?この前はチョコレートケーキを食べていたけけど、買ったのはショートケーキ。もし、嫌いなものだったらどうしよう。
私はそんな不安を頭の中でぐるぐると回転させながら、帰った。
その時だった、私が少し人通りの少ない道に入った一瞬だった。私の横にライトを強く光らせた黒いワンボックスの車が横についた。
「よう、お嬢ちゃん」
私の身体からあの時と同じ恐怖が、身体の中に走った。
あの時の喰種が以前の時のように笑みを浮かべ乗っていた。
「連れ込め」
男のその一言に車の中にいた数人の男が私の腕を掴み、引っ張りこんだ。
「助け…」
そう言おうとしたとき、私の口に布を押し付けられ、私の意識はもうろうとしていった。
私の視界には、閉まろうとする扉と、地面に落ちたケーキの箱が見えた。
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「古門くん、今日は上がっていいよ。あとは私達がやっておく」
「わかりました」
俺はその言葉を聞き、自分が使っていたテーブル拭きを洗い、所定の位置に戻し、更衣室へ向かった。
明日は給料日か、そうだな何か買いたいもの、キッチン道具を増やすか、それとも…
俺はそんな日常的なことを考えつつ、着替えを済ませ、あんていくを出た。
外の空気は昨日に比べ、少し寒くなっており、肌寒さを感じた。
ピリリリリ
携帯から電話の着信音が鳴り、確認すると、花崎さんからの連絡だった。
普段この時間帯は俺がまだ仕事をしている時間帯だ。今日は早く帰れているから例外だが、俺が彼女にその事を伝えた記憶がない。
俺の直感は嫌な予感がした。俺はそう感じつつ、その連絡をとった。
「よぉ、兄ちゃんか?あの時のお嬢ちゃんは預からせもらったぜ」
「お前は?」
「ちっ、俺にあんなことをしておいてよく言えたなぁ」
相手の言葉から俺は思い出した。こいつは花崎さんを追いかけていた喰種か。
「まあいい、お前はこれから今から指定する場所に来てもらう。もちろん一人でなぁ、もし来なかったら、この旨そうな嬢ちゃんが骨になってるかもなぁ。それじゃあ待ってるぜぇ」
プツンー
連絡が途切れると、その後、すぐに場所が指定されたURLが送られてきた。
俺の責任だ…俺があの時あいつを殺してさえいれば…!!俺が彼女と関わっていなければ…!!
俺の心は自分への怒りと、あの時の喰種への殺意で身体中が熱くなった。
『フン、オマエガゲキジョスルナドメズラシイナ』
俺の身体からは黒い霧が吹き出し、俺の後ろには自分の分身である黒い幽霊、通称IBMが姿を現した。
「うるせぇよ」
『オマエガソウカンガエテルアイダニモ、アノコムスメノイノチノユウヨハキエテイクゾ』
そうだ、ここで考えれば花崎さんの命の危険が高まる。俺の命はどうでもいい、この手であの喰種を…殺す…!!
俺はそう決心すると、俺は指定された場所へと向かった。
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「う…うっ」
私はくらくらし、気持ちの悪さを感じながら目を開けた。
チャリンー
身体が動かない。徐々に目が覚醒し、今自分が置かれてる状況が少しずつわかってきた。今の状態は、どこかの倉庫の中でテーブルか何かの上で横たわり、大きな鎖で身体全体を固定されている状態だった。
「よく寝てたな嬢ちゃん。あいつを誘い出すために利用させてもらうぜ。まぁ、あいつを殺したら、祝杯としてあいつと一緒に喰ってやるからよぉ」
あいつ…?私は目の前にいる喰種から瞬時に誰のことをいっているのかを理解した。
鎌犬さんだ…私があの時助けて貰ったばっかりに…あの人は来てしまう、私が知っている限り、鎌犬さんは誰かのために動いてしまう人だ。
私は倉庫内にいる人の数を数えた。
ここから見ても10人以上いる…多分全員が喰種、鎌犬さんでもこの数は危ない…このままじゃ鎌犬さんを危険にさらしてしまう…!!それなら私が…
「おい、今下らない考えをしたよなぁ。いけないなぁ、俺たちのゲームを邪魔するのはよっ」
バチンー!!
私はその喰種から強い平手打ちを顔に当てられた。
今までに感じたことのない衝撃と痛みに、私の目から涙がこぼれ落ちた。
私が死ねば……でも、死にたくない…!!助けて…鎌犬さん…
「おい!誰だてめぇ…グフォ!!」
遠くに光が見えた。そこには1人の人影が見えた。私はそのまま意識が暗転した。
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右手には小太刀、左手には太刀鉈を持ち、背中には一丁のショットガンを背負い、俺は指定した場所へと向かい、その場所へ到着した。
監視はあの倉庫内に集まっている。間違いない…あそこにいる。
俺は強く手に持っている刀を握りしめると、外を監視していた喰種であろう男に向かい走った。
「おい!誰だてめぇ…グフォ!!」
俺は走った勢いで、そのまま小太刀の刃先をを相手に向け、突き刺した。
「ぐぅ…ぐ!!」
刃先は相手の体を貫通し、俺はその刺さった小太刀を離し、左手で握っていた太刀鉈を右上がりに斬りつけた。返り血が飛び、返り血を飛ばした喰種は、崩れるようにその場に倒れ込み絶命した。
「くそが、一度ならず二度までも、俺の怒りに触れるとはなぁ…!!てめぇは生きることを後悔するまで絶望を味わわせてから殺してやるよぉ!!」
相手の怒気はヒートアップし、俺が見えている限りの喰種は戦闘態勢へ移行した。しかし、俺はそれすらほぼ感じていなかった。
俺の心は相手への怒りで埋め尽くされていた。俺は周囲を見た。奥の方を見ると、机に縛り付けられ、暴力を振るわれたであろう顔をした花崎一句が俺の視界に入った。
「黙れよ…」
俺の身体からは自分の意思と関係なく、黒い霧が大量に放出された。
亜人に関してあることが言われている。本来亜人のIBMは屈折率1.000292の完全透明物質で出来ているが、亜人本人が強い殺意を感じたときだけ、普通の人間からも視覚で確認できるというものがある。
今、鎌犬古門の状態は強い殺意とともに動いていた。
身体から放出された霧は、徐々に人の形へと変化していき、ゆうに2mを軽く超える高さを持ち、腕も身長と同じ長さであり、手はその腕にあった大きさの鉤爪を持った幽霊が姿を現した。
「何だよあれ…」
喰種はその化物の出現により、少し後退りをした。
「ひるむんじゃねぇぞ!相手は二人だ。力が足りねぇなら数で押せ!!」
相手が再び態勢を整えようと構えたが、それももはや意味がない行動だった。
「俺の退路をつくれ…」
IBMはそのまま先行するように俺の前をゆっくりと歩いていった。この時、喰種たちは身体から赫子をだし、目は黒い状態、捕食状態へとなっていた。
最初に仕掛けたのは二人の喰種だった。普通の人間では考えられない速度でIBMの両サイドへ別れ、飛びかかり攻撃を仕掛けた。
しかし、その攻撃はIBMにとっては虫同然のものだった。IBMは飛びかかろうとする1人を片手で蚊を弾くように横へと振り弾き飛ばし、そしてもう片方は反対の手で拳をつくり、地面へ叩き潰した。
その場にいた喰種は絶句した。一瞬にして、先ほどいた仲間が、見るも無惨に肉片へと変わっていくのを見て。
『イイゾモットソノカオヲミセヨ、ジブンガキョウシャダトオモイコミタタキツブサレルソノゼツボウシタカオヲ』
俺はそれを見ると、IBMがつくった退路を一直線に、喰種のリーダーであるものの所まで走った。
「や、奴らを止めろ!!」
俺の前に数人がたちはだかったが、俺は軽く跳躍し、飛び越えると、回転するような形で太刀鉈で数人の首をはね飛ばした。
「ひ、ひい…!!」
俺は男の目の前に立つと、無言で、無表情のまま、ゆっくりと刃先を腕の付け根へと持っていった。
「た、助けてくれ!!」
耳障りだった。その声を聞くだけで、俺の身体に殺意が走った。
俺はそのまま男の片腕を切断した。その後、男は何度も何度も命をこったが、俺はその声を聞くたびに、四肢を付け根から切断した。そして、四肢が無くなると、俺はそのまま刃先を胴体へと何度も男の声が無くなるまで刺した。
声が無くなるまで刺した。
俺が正気を取り戻すと、辺りは血が広がり、手元には肉片が散らばっていた。
黒い霧のイメージはアンダーナイトインヴァースのワレンシュタインです