妄想墓場   作:ひなあられ

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幼女戦記より


おおかみくんが幼女を拾うお話

 ヨーロッパの古森は、南の森と違って閉塞的だ。拒絶し、拒み、隔て、恵みを産まず、慈悲を遮断する。南はとても平和な木々が立ち並んでいた。暖かで感情を持ち、一年というサイクルの中で様々な感情を見せてくれる。

 

 それに比べてここはどうだろう。常に深い霧と静寂が支配し、四季による変化もどこか薄暗い。特に冬などは死が支配する鈍銀の迷宮と化す。何人たりとも立ち入る事を許されない土地。そんな古森に俺は住んでいる。

 

 人を拒む不気味さは、俺のような者からすると全く違う意味を持つ。静寂は静謐。薄暗さは安寧。死の象徴は見事な芸術品。全てを包む神秘に理解を求める方が無粋と言うもの。知りたがりの人間は、知らない物に恐怖しか抱かないのだから。

 

 そんな森の中を獲物を求めて彷徨い歩く。この辺り一帯は俺の縄張りであり住処。侵入する不埒な輩は全力で排除するに限る。この季節だと東の大熊か、それとも西の蝙蝠か。

 

 かつて崇められた神の跡を踏み、森の途切れをなぞるようにして見回っていると、嗅ぎ慣れた匂いが鼻をつく。

 

 また、あの空か。

 

 そうだった。最近は空からもやってくるのだった。大熊が空を舞う古鷲をはたき落としてやったと自慢していたのを思い出す。しかしアレには敵わないのだろう。

 

 曰く名状しがたい混ざった匂い。人と信仰と新しい神の匂い。喰み殺してやろうかとも思ったが、今更一人二人を殺した所で止まらないだろうと考え直す。

 

 

 その内一際大きな爆発と共に、ボロ切れが目の前に落ちて来た。強い新しい神の匂いを感じる。使徒でも遣わしたのだろうか。はて、見る限りまだ終末ではなさそうだが。神話の始まりでも語り出したのか?

 

 落ちたボロ切れを確かめるべく、久方ぶりに森の外へ踏み出す。近頃急速に力を高めた神の切れ端。気まぐれな感情に誘われるのも悪くは無い。

 

 近づいて見てみれば、それはボロ切れなどではなく人だった。それも幼げな女。否、幼児に等しい齢の貧弱な子供。まだ10にも満たないであろうか弱い命は、黒焦げに焼けた身体を外気に晒して空を睨んでいた。

 

 何を怨むのか。人か定めかそれとも人を外れた者共か。その有様に一片の興味を抱く。成る程面白い。この幼子に宿る魂、輪廻を外された堕ち者か。

 

 それは情け。或いは憐憫。そして好奇心。かつてそうであった俺と同じ境遇ならば、助ける理由になり得よう。

 

 僅かに残った布切れを喰み、自身の住処へ持ち運ぶ。血と硝煙に揉まれた荒々しい匂いを鼻に焼き付けながら、入り組んだ古森を駆ける。

 

 俺は白。白闇の大狼。霧を引き連れる者。人の名残を宿し、銀と言う弱みを持つ男。人の信仰により人の知恵を得た者。

 

 呼び名は数あれど、人は俺をこう呼ぶだろう。

 

 即ち狼男と。




神や悪魔の存在や、その他の空想上の生き物が認知されている割に、そう言った神秘は無いんですよね。フェアリーとかサラマンダーとか。

なので狼男を出して見ました。全長10メートルを越す文字通りの怪物。元ネタはモロとヘルシングのあの人です。
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