もし、特車二課に凄い人がいたら…   作:シャト6

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第10話

俺達は、早朝から隊長に呼び出されていた。しかも呼び出されたのは、1号機のメンツだ。

 

後藤「首都、環状20号線の道路工事が、何者かによって妨害されている。直江、香貫花、泉、山崎。以上4名は本日これより現地に向かい、諸君ら自身の目と耳で事件の調査解決に当たってほしい」

 

野明「あの~、どうして私達4人だけなんですか?」

 

後藤「うん?まぁ、深い意味はない。回り回ってここに持ち込まれた事件だが、無視する訳にもいかんし。かといって、ここを留守にする訳にはいかんからなぁ」

 

香貫花「隊長、お言葉ですが地元の警察では対応できないのですか?わざわざ私達が行かなくても」

 

後藤「まぁ香貫花、そう言わんと行ってこいや。事件の詳細については先方に聞いてくれ。以上だ」

 

「香貫花巡査部長、直江巡査長、泉、山崎両巡査、ただ今より出動します!」

 

後藤「は~い、頑張ってね」

 

そして俺達は隊長室を出ていく。

 

後藤「あ~直江、ちょっと」

 

すると隊長が俺を呼び止める。

 

「はい?」

 

後藤「今回は俺は行けないから、もし万が一何か起きた時、()()()使()()も許可するから」

 

「…分かりました」

 

俺は隊長からあれの許可を貰い、事件が起きた鬼降村に向かうのだった。

 

野明『ひろみちゃん、何だか元気ないね?』

 

山崎『あの…ちょっと気になってるんですが』

 

野明『何が?』

 

山崎『僕達がこれから行く所、鬼降村って言ってましたよね?』

 

香貫花「そうよ」

 

山崎『木の里に、いにしえ人と会わんとて、歌読む鬼こそ哀れなりけり…鬼降村に、古くからある伝説に纏わる歌です』

 

野明『伝説?』

 

すると、ひろみが鬼降村の伝説について話しだした。

 

山崎『大昔、ようやくその辺りに人が住み始めたばかりのころ、恐ろしい鬼達が、山から下りてきては散々乱暴を働いたんだそうです。ところがある時、鬼達が村に下りてくると、自分達が傷付けた動物達を一生懸命手当てしてる娘がいました。村長の娘だったそうです。鬼達は、その内に優しいその娘が好きになってしまいました。ところが暫くして、元々体の弱かったその娘は、流行り病で死んでしまったのです。死ぬことを知らない鬼達は、それっきり乱暴を止め、毎年暮れに山から下りて、娘の墓までやって来ては、娘をしのんで歌を読んだそうです。まるで、鬼達の歌に答えるかのように、娘の墓のあった場所には、見事なケヤキの木が茂り、何時しか村の人々は、大晦日には家の外に出ず、木枯らしの音を鬼達の歌と思って、静かに耳を傾けるようになったとの事です』

 

野明『悲しい話だね』

 

香貫花「そうね」

 

「ですがひろみさん、凄く詳しいですね」

 

山崎『民話と伝説が好きですから』

 

なるほど。けど、今から行く村に古くから伝わる歌…か。

 

「何か今の歌と関係ありそうな気がしますね」

 

香貫花「そうかしら?」

 

「皆さん覚えていますか?隊長がこう言ってたじゃないですか。『自分達の目と耳で事件の調査解決に当たってほしい』と」

 

野明『確かに』

 

香貫花「けど翼は、鬼の祟りと思ってるってことかしら?」

 

「いえ、そういうわけではありません。ですが、この世には私達の常識外の事も起こりうるって事もありますし」

 

山崎『ヒイイイイイ!!』

 

俺の言葉に、ひろみがビビっていた。

 

野明『わああああっ!!ひろみちゃん!ハンドル!ハンドル~!!ああっ!』

 

「おっと、これ以上はひろみさんがビックリして、事故を起こされてはいけませんので、この話はここまでにしましょうか♪」

 

香貫花「そうね」

 

野明『ふぅ…』

 

山崎『す、すみません泉さん』

 

流石にハンドルから手を離すとは思わなかったがな。

 

「さて、まだまだ時間もかかりますし、途中のサービスエリアで昼食を取って、食材も買っておきましょうか」

 

香貫花「そうね。向こうで食材とかが、買えるか分からないしね」

 

野明『賛成~!』

 

山崎『そうですね』

 

俺達は、次のサービスエリアに入り、昼食と食材を買ったのだった。昼食を食べ終わり再び鬼降村に向けて走る。そして、ようやく鬼降村に到着した。そのまま事件が起きた現場に直行する。現場に到着した俺達は、その光景を見て驚いた。

 

野明「何よこれ!?」

 

山崎「酷すぎますね」

 

香貫花「確かにこれは酷いわね」

 

「だ~からもう!言わんこっちゃないんだよもう!!もっとよく調査した上で、路線決定すりゃいいものを!実地見聞もろくにせず、机上の問答だけで工事開始にGOサインなど出すからもう!それでなくとも、十分な日程貰えなかったのに!もう溜まりませんもう!!」

 

工事現場の責任者らしき人が、俺達が着いた瞬間大声で泣きながら、指示した連中に文句を言っていた。

 

「ホントにもう参っとるですよ~!ウチにゃあ、妻と3人の子供が腹空かして待っとるんですよぉ。早く期日までに終わらせないと。だけど、使える機械はもう、1台だって残っちゃいません~!ウエエエエエエン!!」

 

「あ~…お気持ちは分かります」

 

香貫花「けど、今回の事件は道路工事に反対する者の仕業ね」

 

野明「これだけの事するには、レイバーが必要よね」

 

山崎「そうですね」

 

すると、先程まで泣いていた工事現場の責任者が、泣き止み話し出す。

 

「実は、どうも妙なんですよね」

 

野明「と言うと?」

 

「最初にこの変な事件が起こった時、ウチの連中大騒ぎしてたんですよ。そん時、近くで野良仕事してた婆さんが、手を休めて我々の騒ぎを畑から見ておったんですわ。そこでウチのモンが、誰か不振な者を見かけたかどうか聞いてみたらあんた!」

 

『……』

 

「『オラな~んも見てねぇ』ちゅ~んですわ!これが!」

 

おいおい、聞いてその答えかよ。

 

「いえいえ、それだけじゃないんです。つまり…その…」

 

男は俺にだけ聞こえるように耳打ちする。

 

「祟りかも知れねぇと、村の連中が」

 

「祟りねぇ」

 

野明「それってまさか、ケヤキの木の鬼の」

 

「あれ?よくご存知ですね」

 

その事を聞くと、ひろみがビビる。

 

「ほれ、あそこ」

 

男は俺達の後ろに生えている木を指さす。

 

野明「すんご~い!」

 

香貫花「立派なケヤキの木ね」

 

鬼降村の歌にもなってる、ケヤキの木の下に行く。

 

「見事なケヤキでしょう?樹齢1000年はくだらないらしいんですよねぇ。つまり、御神木とはいえこいつには神ならぬ山鬼が籠っとるちゅう訳ですわ。何でもこの村じゃ、おもほり様っちゅうて昔から崇めている御神木なんだそうです。何年か前、ここの村長と神主様が取り殺されたっちゅ事で、週刊誌のネタにまでなっちまったそうで」

 

週刊誌のネタにまでなったのか。

 

「最近じゃ、風の強い晩に見回りの駐在さんが鬼を見たとか。結局駐在さんは、国へ帰っちまたって事ですがね。そんな謂れのある木が、この首都環状線の予定地にデーンと立ちはだかってるんですわ。あ~も~!にっちもさっちもいかん!!」

 

野明「あの、まさか今度の事件が起こったのは、この木を取り除こうとした時から?」

 

「そうなんです」

 

山崎「ヒッ!」

 

その言葉に、ひろみは奇妙な声を出す。

 

野明「どうしたのひろみちゃん?」

 

山崎「い、いえ、別に」

 

別にって、完全にビビってるじゃん。

 

「ワタシはどうすりゃいいんだ!作業員は気味悪がって、この木に手をつけようとしないし。新しい機材も追って到着する筈だから、何とか何とか明日までに工事を再開したいんです!このままの状態で冬になだれ込んだら、正月は田舎へ帰れなくなってしまう!」

 

まぁ、男の個人的な理由はどうでもいいが、どうするかなぁ…

 

野明「ここ避けて道造れないの?」

 

香貫花「あのねぇ…」

 

「野明さん、流石にそんな事が出来たら、そもそも私達は呼ばれませんよ」

 

「んな事できればとっくにやってますって!」

 

野明「アハハ…そうだよね」

 

アハハじゃないよ。

 

「ですが、工事が出来るようになったとしても、この御神木はどうなるんですか?」

 

「ま~ね。これだけ大きけりゃ移植も大変だし、なんせレイバー使うにもこの体たらくじゃ。とにかくお願いしますよ!頼みはお宅らだけなんですから」

 

俺にすがり付きながら、男がそう言う。

 

「分かりました」

 

香貫花「とにかく、これから現場検証を行いますから、現場はそのままにしておいて下さい」

 

「誰も動かしゃしませんよ!山鬼さんでもなけりゃね!」

 

山崎「ヒッ!」

 

再びひろみが奇妙な声を出す。

 

野明「ひろみちゃん…」

 

山崎「泉さん、怖くないんですか?」

 

野明「まった~ひろみちゃんったら」

 

香貫花「普通に考えてレイバーの仕業でしょう」

 

そんな話をしてると、1人の老婆が何かを呟きながら歩いてきた。

 

「た~た~り~じゃ~。た~た~り~じゃ~ぞ~。お~も~ほ~り~さ~ま~の~」

 

野明「あの…」

 

野明は老婆に声をかけるが、あまりの迫力に怯んでいた。すると今度は、“天下御免”“豊作”と書かれ、暴走族が鳴らす音を出しながら1台のレイバーが通り過ぎていった。

 

「こんな場所にも、ああいうのはいるんですね」

 

香貫花「まぁ昼間だからいいんじゃないかしら?別にスピードや暴走している訳じゃないしね」

 

「そうですね。では現場検証をしましょうか」

 

『はい』

 

そして俺達は、先程の工事現場に歩いていく。ただ、俺は地面にあるタイヤの後を見る。

 

「ん~…」

 

どうもこのタイヤ痕が気になるなぁ。

 

野明「翼さん!」

 

香貫花「何をしてるの?置いていくわよ」

 

「今行きます」

 

今は現場検証が先だな。後で調べてみるか。

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