本日も平和な日が続いている。だが現在、非番である俺は隊長室に呼び出され、公安の人の話を聞かされている。
「公安部外事1課の高畑です」
後藤「で、公安がいったいなんの?」
高畑「その前に…」
男は俺を見る。
高畑「私は、隊長に話をとお伝えしましたが」
後藤「彼?第一小隊と第二小隊の兼任副隊長」
高畑「副隊長…ですか」
男は俺をサングラス越しに見る。ってか隊長!?いつ俺が第一小隊と第二小隊の兼任副隊長になったんだよ!しのぶも否定しろ否定!!
高畑「…まぁいいでしょう。昨夜の事です。要注意人物として、兼ねて我々がマークしていた男が、尾行中だった捜査員を襲い、拳銃を奪ってその場からタクシーで逃走するという事件が起きまして。これがその男です」
高畑は、容疑者の写真を俺達に見せる。
高畑「犬走一直、東京都大田区蒲田出身、28歳。平成5年陸上自衛隊入隊、同8年新設された空挺レイバー部隊に転属。この頃より海の家新派として活動。除隊後は同伴の非公然部隊の一員としてテロ活動従事。逮捕歴8回、いずれも証拠不十分として釈放。宇都宮付近で、ガス欠となったタクシーを乗り捨てた奴は、その場に通りかかった単車を強奪。追い縋るパトカーをぶっちぎり、白河、福島、郡山、米沢、寒河江と、あらゆる信号を無視して暴走。2時間後には鶴岡市内で無銭飲食をやらかし、今早朝酒田市に潜入した時点で行方を眩ませた」
後藤「派手だねどうも」
「そうですね」
高畑「性格は杜撰だが、過去に無数の修羅場を潜り抜けた筋金入りのテロリストでしてね。レイバー乗りとしての腕前も超一流」
後藤「でもねぇ、それだけじゃあ」
高畑「レイバー隊は動けない。しかし、これならどうです?」
すると、隣にいた男が別の写真を見せてきた。
後藤「何ですこりゃ?」
高畑「レニングラード軍事アカデミー設計、クロンシュタット工廠製。ソビエト地上軍次期主力攻撃レイバーL99。コードネーム、ドシュカ。機密のベールに包まれた…赤いレイバー」
後藤「ほぉ」
高畑「それが酒田に入るんですよ。今夕方」
南雲「な、何ですって!?」
「……」
高畑の言葉に、動揺するしのぶ。
高畑「今年の夏、ソビエトと東南アジアの某国との間に、新たな武器援助協定が締結されましてね。その一貫として、それが供与される事になったんですが、えっと…なんせ最高機密だ。大方の裏をかき、ナホトカからソビエト船籍の貨物船に乗せ、日本海経由で運び込もうと」
後藤「その船が酒田に?」
高畑「偶然にしては出来すぎている」
後藤「で、我々にどうしろと?」
高畑「小隊を派遣していただきたい」
後藤「無理ですな」
隊長の言葉に驚き、高畑は持ってた写真を落とす。
高畑「何故?」
後藤「県警からの要請なりなんなりがあるならともかく、任地を離れての行動となると…それなりの手続きが」
高畑「事の性格上、正規の手続が踏めないからこそお願いしている。犯罪を未然に防止するための独断専行。超法規的行動は、特車二課の十八番じゃなかったのかね?」
後藤「大変な誤解ですなぁ。それに最新鋭の軍用レイバーが相手じゃどうも。自衛隊にでも持ってってもらわにゃ」
高畑「連中の手を借りるくらいだったら、わざわざこんな所に!貴様それでも警察の人間か!!」
あらら、声をそんな大きくしてまぁ。
後藤「皆で幸せになるってのが、ウチのモットーでしてね。すいませんね♪」
すると高畑は立ち上がり、サングラスを取り拳銃を突きつける。だが…
「ちょっとオイタが過ぎるんじゃねぇか?おい」
俺は高畑の顔寸前に蹴りを突きつける。
高畑「なっ!?」
「さっきから聞いてりゃ、此方の都合は無視。挙げ句の果てに小隊出さねぇって言ったら拳銃を突きつける。ウチの人に手ぇ出してんじゃねぇよ」
『……』
後藤「あらら、怒らせちゃった。俺知~らない」
「き、貴様!課長から離れろ!!」
素早く別の男が拳銃を出す。
「だから、物騒な物出してんじゃねぇよ。パーティテーブル・キックコース!!」
俺は拳銃を出そうとした男の顔を掴み、その上で回転して他の連中も蹴り飛ばす。
「ふぅ…で、何か言うことは?」
高畑「で、でしたら非番である隊員を出して頂けませんか?勿論経費は我々持ちにしますから!」
「……」
後藤「直江、もうその辺でいいだろう。経費も全部そっち持ちだって言うんだしさ」
「…分かりました」
俺は掴んでた男を離す。
後藤「ま、誰を行かせるか後で連絡しますよ」
高畑「わ、分かりました!」
そして男達はさっさと帰っていった。
「……」
後藤「やれやれ」
隊長は俺の横に立つ。
後藤「ムカつくのは分かるけど、流石にやりすぎじゃないの?」
「すいません。つい」
後藤「いや、俺はいいけどさ。あっちどうすんの?」
隊長はしのぶを指差す。
「あちゃ~」
後藤「ま、頑張ってね」
そして隊長は部屋から出ていった。隊長室には、俺としのぶだけが残され、気まずい雰囲気が流れる。
「えっと…」
南雲「直江…いや、翼君」
しのぶが俺の事を名前で呼ぶときは、甘えたい時かプライベートの時だけだ。
「は、はい!」
南雲「翼君…もしかして、普段はあんな感じなのかしら?」
「いや…普段からって訳ではないですが、酔ったり先程みたいに頭に血が上ったりしたらですけど」
はいすみません!半分嘘です!ぶっちゃけ後藤以外は、他人で俺の正体知らねぇんだよな。言うわけにもいかねぇし。面倒だから。
南雲「そう」
俺の言葉に考える素振りを見せるしのぶ。何とか普段からこんな口調って事だけはバレねぇようにしねぇと。ウチの家系、他人相手には俺と同じ口調なんだが、身内や本当に信頼した奴の前では口悪くなるからな~。
南雲「…まぁいいわ。この事は私の中だけに留めておくわ」
「ありがとうございます」
いや~、しのぶが理解ある奴でよかったよかった。
南雲「それに、貴方の秘密は独り占めしたいしね」ボソッ
いや、俺に聞こえない声で言ってるつもりだが、悪いけどしっかりと聞こえてるからな。自分で言うのもなんだが、ウチの家系俺を含めマジで化け物揃いだからな~。ま、とにかく話は終わりみたいだな。後は、アイツが誰を選抜して、公安の連中と一緒に行かせるかだな。確か今日非番なのは、第一小隊の2号機とウチの小隊の1号機連中だけだよな?
「なんでしょう。嫌な予感がしますね」
俺の勘、こういう時は絶対に当たるからな~。…で、案の定俺の勘は当たったのであった。今現在、俺は公安の連中と、目的地の酒田に向かう新幹線の中だ。そして、一緒に来たのが…
野明「私日本海初めて行くんだ~。お土産物なんにしようかな♪」
香貫花「貴方、完全に旅行気分ね」
野明「だって、隊長がそれくらいの気持ちで行ってこいって言ってたじゃん」
そう、1号機のメンバーで、山崎を除いた俺、野明、香貫花の3人が行くことになったのだ。で、左右に挟まれた俺は、溜め息を吐くのであった。